真祖の眷族   作:賢者神

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 マジで書くのが楽しいwww って書く人を変な目で見てたけど今ならその気持ちがわかるわ。






怒る

 

 

 

 

 フーハハハハと高笑いする同行者に他人のフリを無性にしたくなる。何でこんなにテンションが高いんだコイツは。

 

 

「これがキヨミズデラか! 見事なものだ! フーハハハハハハ!」

 

「連れがすいません。マジですいません」

 

 

 ここで他人のフリをすればエヴァンジェリンの機嫌が下がるのは目に見えているので青筋を立てて怒る清水寺で働いている巫女の男バージョンに謝る。坊主と言えばいいのか?頭がツルツルだし。

 何でこうなった。割と困惑して頭を抱えるしかないのだが。

 

 銀閣寺から始まってうろ覚えをしている有名どころを案内して清水寺に連れて来ればこうなってしまった。例の飛び降りるあれに興奮しているのは見ればわかる。

 前に修学旅行で来た時は少し傾いていたので怖い記憶しかないのだが。飛び降りても死ぬ確率は低い方なので大丈夫なんだろうが怖いものは怖い。つまりは引き摺り下ろす事もできないわけだ。

 もうひたすら謝るしかねえ。気が済むまで見させて待とう。もうどうにでもなれクソ野郎めが。

 

 今度からロリにさせる時はこういうところに気を付けよう。うん、そうしよう。

 傍から見たら手のかかる妹の世話をする兄か娘を放置する駄目親父なんだよねぇ。清水寺が苦手でごめんなさい。

 

 

「あー、イヴ? そろそろ迷惑になるから下りよう? 餡蜜も買ってあげるから」

 

「む。そうだな」

 

「ほんっっっっとうにすいませんでした。この子にはキツく言っておきますので」

 

 

 返事はいいえ大丈夫ですよではなく二度と来んなみたいな顔だった。本当にすいませんでした。

 

 ハイテンションのイヴ、エヴァンジェリンを引き摺りつつ京都の町並みを歩く。前に見た京都の町並みと変わっていないので少し感動した。変わらぬ美しさというものが残っていると不思議とそう思うのだろうか。

 餡蜜やら京都名物のお菓子も見覚えがあるものが多く、エヴァンジェリンが食べたそうに店に走ろうとしているのがよくわかる。お願いだからもう少しお淑やかでいてよ。

 大人なら逆にリードするのに何でロリだとこんなにも手がかかるんだよ……誰かベビーシッターでも呼んでくれ。

 

 

「おい! あれが食べたい! あそこに行くぞ!」

 

「どうどう。美味しい場所は聞いているからまずはそこね」

 

 

(あんまりまずいと凍えるじゃん)

 

(む)

 

 

 機嫌が悪くなり、冷気の魔力がエヴァンジェリンから漏れて大気の温度が急激に下がって寒くなる。そういう事にならないためにも機嫌は上機嫌に留める必要があるのだ。

 

 

「未来だと老舗になっている有名店だったはずなんだ。あんまり記憶がないからそうだとは断言できないけど美味しかった気がする」

 

「お前の舌を疑うわけではないが今と先では味の仕組みは違うから少し不安だ」

 

「何かうん百年の伝統の歴史ってーの? 変わらない味こそが味ってのが京都には多かったような多かったような?」

 

 

 修学旅行だけだもん。行ったの。ハッキリと覚えているわけがないじゃないか。

 八つ橋は何度か友人、オカンの友人のお土産で食べた事がある。味も覚えているがいっぱいある店のどの味なのかよくわからん。これ、お土産ねーとしか言われてないもの。

 

 

「むう。京都の料理は美味しかったが果たしてお菓子はどうなのだろうか」

 

「あー、確か懐石料理だっけ? ゴメン。そこまで詳しくないから正しくないかもしれないよ」

 

「いい。何度も言うがお前の知識はうろ覚えでも面白いものばかりだ。間違ってても構わんから何でも言って教えろ。いいな?」

 

 

 何とも嬉しい言葉か。普通ならちゃんと覚えてろ豚野郎とか言いそうなんだが。何度も罵倒されるのはいつまでも慣れん。

 悪い魔法使いと言われるのも本当は心が痛むんだぞ。悪だの悪だの悪だの。心臓に毛が生えていても傷つくんだぞ。死ねよ馬鹿野郎。ボクだって傷つきやすんだよアホー。次に言った奴はケツを掘られる幻覚でも見せてやろうか。くそみそテクニックという偉大な先人がいるんだぞアッー!

 やめよう。

 

 や ら な い か ?

 

 とか幻覚でも見たくないよホント。女の阿部さんならいいけど男の阿部さんはゴメンだ。阿部高和ならぬ阿部高揚か高揚を紅葉にしてもみじか?

 

 

「や り ま せ ん ? アッー」

 

「……何を言い出すんだお前は」

 

「あ。ごめん」

 

 

 いかんいかん。思考に没頭し過ぎて変な言動になってしまった。

 エヴァンジェリンに変な目で見られた上に掴んでいる手から逃れようと暴れ始めてた。確かにボクが悪かったけどそんなに引かなくてもいいじゃない。

 

 

「離せ。変態と一緒にはいられん」

 

「ハァ? 処女厨で血液中毒のイヴには言われたくないよ。女なのに女好きの同性愛好者でもあるじゃん。そんな変態に変態と言われたくないんだけど」

 

「ぐぬぬ。言い返せないのが悔しい」

 

 

 悔しい。だけど感じちゃうビクンビクン。エヴァンジェリンはそんな事をするとは思えんけどそんな展開はノーだ。

 エヴァンジェリンを相手にするのも疲れてきた。緩やかに伸びる髪の毛をボリボリと掻きながら目的の場所の前に佇んだ。見た事もない店に少し不安を感じた。

 縁のない場所だし高そうな場所だから腰が引ける。どうしてエヴァンジェリンはこんな高そうな場所に慣れてんだよ。ボクは貧乏人根性だしブルジョワにも触れてもブルジョワになるのは未来に影響が出そうだから嫌だ。

 未来に帰ればその金持ちの影響で安い物だと舌が満足しそうにない。エヴァンジェリンは高いものしか食べないんだもんよ。

 

 ……ってあれ? エヴァンジェリンは?

 

 

「ここからここまで全部くれ。この金で買えるだけな」

 

 

 お、おいぃぃぃぃぃぃぃ!? 何威風堂々と商品を指を差しながら注文してんの!?

 

 ちょっと目を離したらエヴァンジェリンは偉そうな、貴族らしい振る舞いで和菓子を注文していた。それも高いのばかり、大量に。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 

「畏まりました。少々お待ちください」

 

「金額を計算いたしますのでそちらでお待ちください。お客様がお持ち帰りになりますか? こちらでは指定された場所までお届けできますが」

 

「うむ。宿に届けてくれ」

 

「やめろォォォォォォ!!」

 

 

 先の事を考えていると必ず今の事を考えなければならなくなった。未だかつてないバカ買いをするエヴァンジェリンを止めようと注文を止めようとした。

 が。店の人もノリノリで商品を包んでテキパキと手際良くどんどん準備し始めていた。こんなにも昔の人は仕事が早いのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこ座って」

 

「む。何だ。お前もこれが食いたいのか? たくさんあるから少しは食べたらいい」

 

 

 ふてぶてしく帰還したゼロと共に和菓子を食べるエヴァンジェリン。その態度にもうブチ切れた。もう今日のボクは容赦しない。

 

 

「ハッハッハッハ。もう一度しか言わないよエヴァンジェリン……座れテメーこの野郎」

 

「ケケケケ。コイツオ怒リダゾゴ主人」

 

「テメーもだゼロ。芸術的な正座をしろクソボケ」

 

「? 何でそんなに怒ってるんだお前は……ふぎゅっ!?」

 

「マジで怒るぞテメー等。いいから正座しろってんだよ」

 

 

 ふてぶてしいままのエヴァンジェリンを重力魔法で無理矢理跪かせた。普段ならこんな事は、エヴァンジェリンと同じように女と子供には理由がなければ手はあげない性格だが今はそんな事を考える余裕はない。

 今のボクは笑顔だろう。言うなれば母の笑顔、笑っているだけなのに妙な威圧感を発するのと同じような笑顔をしているに違いない。

 

 突然だがボクは若干のマザコンかもしれない。母の言いつけはできるだけ守るようにしているし、母に迷惑だけはかけまいとする親孝行な息子だと思っている。

 そこまで貧しいわけではないがオカンにオトン、既に働いている社会人の姉。姉は独立しているがオカンは金のやり繰りを毎日しては小さい頃から教わっていた事がある。

 その中に家計簿がある。エヴァンジェリンの浪費癖を解決しようと家計簿を作り始めたわけだが今のボクはオカンと同じ気持ちだろう。ここまで金を使えるなんて呆れを通り越してもう感心するしかない。

 どんだけ使うんだコイツ。子供のアルバイト代をパチンコに費やす駄目親父のような奴じゃないか。

 

 

「ねえ、ねえねえねえねえねえねえ。これボクが作った家計簿だよ? よぉく見て。ここの欄。エヴァンジェリンにもわかるようにわざわざ英語で書いたんだよ? ほら。莫大な金額でしょ?」

 

「う、うむ」

 

「誰がこんなに使ったと思う?」

 

「わ、私だな」

 

「うん。わかってるようだね。もししらばっくれたら媚薬漬けにして別荘に放置してたよ。ボクの良心も痛むからやめときたかったけどやらなくて済んだ済んだ」

 

「(目がマジだった……!)」

 

 

 めくるめくる監禁調教も良かったけど正直な子は大好きだよ。それに初めてだからエヴァンジェリンを壊してしまったかもしれないからやらなくて済んでホッとした。

 正座するエヴァンジェリンは恐怖しており、隣のゼロは正座しつつケケケと笑っていた。鬱陶しいので重力を倍加させておいた。いい気味だふへへへ。

 

 

「ボクさぁ。エヴァンジェリンの知らない間に出稼ぎしてんの。結構エヴァンジェリンの使った金を補充してるんだよ? なのに湯水のように金を使いやがって馬鹿野郎。テメーの金でもないのに何でそんなに使えるの?」

 

「そ、それはだな。貴族たる者、優雅たれとだな……」

 

「自画自賛の自作名言だろ?」

 

 

 沈黙するエヴァンジェリン。言い訳も子供より酷い。

 不思議だ。不思議と今のボクなら何でもできそうだ。時間を越える事はできずとも相手の心くらいは容易く読めそうだ。エヴァンジェリンが何を思っているのかもすぐにわかるように思えてならない。

 ぶっちゃけると今まで自分の賞金首以上に金を使っている。円ではなくドルなのだから凄まじい事だとわかるだろう。というかボクとエヴァンジェリンの賞金首を合わせても届くんじゃないかと思うんだが。

 

 

「用途がわからない分だけでも450万ドル。何にそんなに使えるの? ボクでも高いの、オークションで競り落とした8万ドルぐらいだよ?」

 

 

 800万円ぐらいだぜ。円にしたら。今と昔の金銭価値は違うだろうけどボクの中のイメージはそんな感じだ。

 

 

「8万ドル以上の価値があるんだよ? このお手軽仮契約セット。数に限りがあったけどアリアドネーで作り方も教わったし実物もあったしね……逆にエヴァンジェリンのは何かに役立っているの?」

 

「……か、鑑賞?」

 

「……アハハ。やっぱりエヴァンジェリンはユーモアもあるんだねぇ……というわけでご褒美に重力を七倍に引き上げてあげよう」

 

 

 ぎゃーと心地良いような悪いような声が耳に入る。ニッコリと笑っているだろうな、ボクは。

 

 

「まあ、そんなこんなでここの宿代はあるけど先の事を考えると少し多めに荒稼ぎをする必要が出てきました。働け」

 

「だ、だがな!」

 

「あん?」

 

「わ、わかった」

 

 

 となるとどう稼いだものか。この時代には宝くじもないし一攫千金は狙えない。金をコツコツしか稼げないし賞金首の身だから仕事も自然と狭まるし。

 クソ。エヴァンジェリンのせいで普段なら考えなくてもいい事を考えなければならないなんて。浪費癖がなければ少なくとも三年は持つはずだったのに。何で貴族はこう、金を使いたがるんだ。

 

 

「むむむむ……ぬぅ」

 

「オイゴ主人。スゲー考エコンデルゾ」

 

「わ、悪い事をしたかな?」

 

 

 何かないのか一攫千金。考えろ、思い出せ。記憶の片隅に確かにそれはあるはずなんだ。どうでもいい情報として脳が情報ではなく脳の金庫に入れているはずなんだ。

 引き出せ。引き出せ……人間には誰もがその方法を本能的に覚えているはずなんだ。

 

 んなもん、ボクが人並みにできるわけないだろ。真面目に考えたがすぐに忘却の彼方にぶん投げた。もうなるようになれだ。

 

 

「ふぅ……」

 

「おい、何か賢者もーどになってるぞ」

 

「疲レテンダロ」

 

「もういいよ。解除するから好きにして」

 

 

 何かもう色々と疲れた。重力魔法を解除してエヴァンジェリンとゼロを開放した。

 解除すれば何故だかエヴァンジェリンは不安そうにこちらを見上げていた。まるで迷える子犬のようだ。

 

 

「も、もしかして……嫌いになったのか?」

 

「ん? 別に嫌いにはなってないけど少し残念に感じただけだ」

 

 

 よ。と続けようとしてエヴァンジェリンの意図がわかった。

 ああ、そうかと。不安そうにしているのはボクに愛着が沸いていて捨てられるのが怖いと感じているのがわかった。まさかとは思うがボクにサトリの能力でも芽生えたのだろうか。

 どうやらロリになれば子供らしい一面が大きく表に出ているようだ。見たまんまのエヴァンジェリンで性格に変化もするという新しい事を見い出せたようである。年齢詐称薬は精神までに及ぶのだろうか。

 

 

「ああ、大丈夫だよ。ボクはエヴァンジェリンの眷族である事は変わらないからね。立場は上っぽいけど帰るまではエヴァンジェリンと共にあるよ」

 

「……そ、そうか。ならいいんだ」

 

 

 ホッとしたエヴァンジェリンも可愛い。子供が親に甘えるように痺れた足を我慢して腹に抱き着いてきた。何というか本当に子供っぽい。

 こうなるととことん甘えるだろうから好きにさせる事にした。ゼロはケケケと笑うだけだったが。

 

 ……ハァ。ゼロの後ろの刀の山さえなかったら穏やかだったのになぁ。

 

 

「ねえゼロ。その刀の山は何なの?」

 

 

 今まで黙っていたがもう聞くしかないだろう。

 

 

 

 

 

 

 





 オリ主はエヴァとは仲が良いですが、始まりは最悪なものでした。

 お互いに共通するのは絶対に裏切らない存在。エヴァはレイプ犯だろうと自分だけを見てくれると錯覚し、正義の魔法使いのボスを倒して眠った時にその愛情は更に深まりました。あれだ。看病した相手に恋するナースみたいな?

 反対にオリ主はエヴァは世界最強種で守ってくれ、世界を越える手段に最も近い存在。前は守ってもらった存在ですが今では愛おしくも思えるエヴァを守ろうとしている。ある意味ではエヴァ以上に愛情を感じているのだと思ってください。彼女がいるのに浮気してんぞー。

 まあ悪い言い方をすれば傷の舐め合いをする異性同士ですかね? だけどそういう愛情が一番美しいと思えます。甘えて甘えられ。歪んでいようとも二人がいいのであればそれでいいんです。



 フヒヒヒwww こうなると本編後のオマケの妄想が浮かびますなwww 1.5部をご期待下さいwww(作者がハイテンションで壊れてるだけです)





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