ポケモン世界に来て適当に(ry   作:kuro

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この話の時系列的にはバレンタイン話の後です。


外伝9 シロナとヒカリの実家ご訪問

 ホウエン地方。

 カントーやジョウト、シンオウとは異なり、比較的温暖な気候である。平坦な地形が多く、さらに海や熱帯雨林などの緑が広がるなど、自然が豊か。

砂嵐吹き荒ぶ砂漠や、火山灰が降り注ぐなどの、他の地方ではなかなかお目にかかれない地域もあったりする。また各地方の中で、海の占める割合が最も大きい地方でもあり、ホウエン地方の道路の半分が水道であったり、海上の島に町が多く存在することはその証左であろう。

さらに気候の温暖な穏やかな気質は人々やポケモンたちに心に余裕を持たせてくれるのだろうか。

 人と人とのつながり、人とポケモンとのつながり、ポケモンとポケモン同士のつながりが強く、『豊縁』という言葉も生まれるようになった。

 

 さて、そんなホウエン地方の北西部の一角にハジツゲタウンという町がある。えんとつやまのふもとに位置する小さな農村で、風の影響により、噴煙を上げているえんとつやまからの火山灰が多く降り注ぐ土地であるが、『火山灰にも負けない』という野菜を作っている。また、この近辺は隕石の落下によって出来たと伝えられている流星の滝など、隕石の多い、あるいは縁の多い土地でもあり、それらを研究するために、この町に研究所を構える研究者も存在する。

 そんな一農村ではあるが、ここを訪れるポケモントレーナー、あるいはポケモンコーディネーターは多い。なぜなら、この町には彼らの興味・関心を惹きつけてやまない魅力溢れる施設が存在するからだ。

 その一つがバトルテントと呼ばれる、あるルールに則ってポケモンバトルを行う施設である。これはホウエン地方にあるバトルフロンティアの、ある一つの施設を実際に体験できるという施設である。ホウエン各地に存在し、このハジツゲタウンではバトルアリーナを体験できる。ちなみに勝ち抜くと、このハジツゲタウンではすごいきずぐすりが景品としてもらえる。

 そして、もう一つがポケモンコンテストのコンテスト会場。ここではスーパーランクと呼ばれるランクのコンテストが開催される。

 ホウエンでのグランドフェスティバルは『ノーマル』『スーパー』『ハイパー』『マスター』とあるランクの中で、マスターランクでなければ出場資格は与えられず、マスターランクに上がるには、ノーマルランクから一歩ずつ着実にステップアップしていかなければならない。そのため、ハイパーにランクアップするために、コーディネーターたちは特に多くこの町を訪れたりする。

 また、彼らほどではないが、研究者たちも訪れることがある。それはこの町の西のはずれにホウエン地方のポケモン預かりシステム管理人のマユミの家があり、化石のマニアが高じて化石の研究者になり、自宅を研究所兼採掘現場としてしまった兄妹を訪れるためでもある。

 

 閑話休題。

 

 そんなハジツゲタウン。マユミや化石マニアの兄妹の家ではないにしろ、やはりハジツゲタウンの西のはずれにはこの物語の主人公、ユウトの実家がある。

 今日はそんな彼の生家を訪れたとある二人のお話。

 

 

 

 *†*†*†*†*†*†*†*†

 

 

 

 ハジツゲタウン中心部から外れた郊外に建つ、郊外特有の土地の広さに比例した大きさの、ごく普通の庭付きの一軒家。それが初めて見たときの印象だった。

 

「こんにちはー! サエコママさんいますかー!」

 

 玄関を開けて声をかけるヒカリちゃん。すでにそれは勝手知ったるというもので、よく見慣れた光景だ。

 すると、家の奥からパタパタとスリッパの音を響かせて、前掛けを掛けた女性が一人現れた。

 

「あら! いらっしゃい、ヒカリちゃん、シロナちゃん!」

 

 この長くもなくかといって短くもない赤みがかった黒髪の女性はサエコさん。ヒカリちゃんが言ったとおり、ユウト君のお母さま。私より年が一回り以上は軽く上で、かつ一児の母なのに、それを全くと言っていいほど感じさせないその若さ、美しさには、初めてお会いしたときには衝撃的だった。今ではいろいろお世話になっています。

 

「サーナ」

「ダネダネ」

「ブスター」

 

 そしてサーナイトにフシギダネ、ブースター。この子たちは、サーナイトとフシギダネ以外、ユウト君からサエコママさんにプレゼントされたポケモンで、サエコママさんのお手伝い、護衛、手持ちポケモンを兼ねていたりする。

 家の中ではこの三体が活躍するが、外ではまた別のポケモンたちが活躍する。ちなみにサエコママはトレーナーではないのでポケモンの所有六体制限はなかったりするのだけども、ママさんはあまりそれ以上を持とうとしなかったりする。

 

「こんにちは! みんなもこんにちは!」

「ご無沙汰しています。あなたたちもね」

 

 彼らも含め、サエコママさんは私たちを知らない仲ではない、というよりも半ば(九割以上)身内として私たちを扱ってくれている。なので、

 

「二人とも案外早かったのね。とにかく上がって。まずはお茶にしましょう。この前おいしいお菓子もいただいたから一緒に食べましょう」

 

と、簡単に家に上げられる私たち。そのままリビングに通されてお茶をいただいた。お菓子は仰るとおり、大変美味しゅうございました。

 

「ごめんねぇ、急に呼び出しちゃって」

「いえいえ、ぜんぜん。むしろ将来的にはおいしいかなと」

「そう? とりあえずこっちからもプッシュかけてるし、応援してるから頑張ってね」

 

 さて、一息ついたところで、私たちがサエコママさんと知り合ったキッカケについてを話しておきたいと思う。

 それはホウエン地方を代表するトップコーディネーター、“ホウエンの舞姫”の異名を持つハルカちゃんだ。なんでも、ついこの前カトレアの別荘でチョコを作っていたときのカミツレちゃんとの会話を聞いて、

 

『“将を射んとすればまず馬を射よ”かもね、二人とも!』

 

ということで紹介されたのである。初めてのときは緊張といろいろな意味での衝撃を持ったが、大変気さくな方で助かった。

 そして『女三人揃えば姦しい』とはよく言ったもの(実際は四人だったけど)。話の内容はいつのまにかコイバナの方にまで姦しく発展していった。

 

「女の子はいつだって恋の話が大好物なのよ!」

 

 それが若さを保つヒケツかもね、と冗談めかして言っていたことは今でも耳の奥に残っていたりする。そしてついでというか、こっちが本命だけど、サエコママは私たちのことを応援してくれるらしい。私もヒカリちゃんもどちらも譲る気はなく、ただ、どちらかは諦めなければならないという思いが頭の中を持上げていたのだけど、

 

「男なら、女の二人や三人面倒見る甲斐性がないとダメね。安心して、ユウトにはきちんと二人を娶るよう強権働かせるし、「社会通念上ダメ」なんて言ってきたら、その社会通念ごとぶっ飛ばしてあげるから。いくらあの子がチャンピオンだろうと、私の子供であることに変わりはないんだものね」

 

なんていうありがたいけど、正直言って何を言っていいかコメントに困るような、そんな言葉をいただいた。ちなみに、最初は冗談だと思ってたけど、それ以後、会うたびにいろいろなところに連れ回されて挨拶をしたり、何やらかなりのお偉いさん(かなりボカシてます)を呼び出してお話をしたりと、なんだか本格的過ぎて私もヒカリちゃんもいつのまにか信じるようになっていた。

 

「周りを固めてしまえばあとはどうにでもなるわ。あとはあなたたちのお嫁スキルを磨くだけね」

 

 そうしてサエコママは私たちを扱き出す。

 

 ……初めは全然ダメダメだった。サエコママは次こそはがんばろうねという感じだったが、サーナイトやフシギダネには呆れられ、ブースターにはため息を吐かれてしまった。

 ちなみに、サーナイトにフシギダネはきちんと家事をこなせたりする。なんとなくサーナイトはわからなくもないけど、フシギダネはつるのムチやはっぱカッターで器用に掃除や料理などをこなすさまはかなりシュールだった。

 

「ポケモンにすら劣るあたしたちって何なんでしょうかね、シロナさん」

 

 その日は二人で枕を濡らしたのは今でも記憶に残っている。尤も、初めはそんなだったが、年単位で過ぎていけばそれも随分改善されたもの。今では「炊事洗濯得意です。家事全般余裕で出来ちゃいます」と胸を張って言えますよ。

 

 言えますよ。

 

 

 言え

 

 

「……サーナ」

「……ブスター」

 

 そこの二人、あからさまに首を振ったり、ため息をついたりしない! それから、ブースターはため息ついでに若干炎が出ちゃってるから!

 

「ダネダネ、フッシッシー」

 

 ありがとう、フシギダネ。慰めてくれるのね。……でも、どこか笑っているように感じるのは気のせい、よね?

 

「フッシッシッシッシー」

 

 ま、まあそれは置いてといて。

 でも、昔よりかなり改善されたのは確かなんですよ!?

 

「……昔がヒドすぎただけなんですけどね」

「ボソッと言うならもう少し声落としなさいよ、ヒカリちゃん! 聞こえてるんだからぁ!(泣)」

 

 ゼッタイ。

 いつかゼッタイ見返してやるんだから!(泣)

 

 

 追伸

 

 かたづけはきちんとできる女になりました。

 

 シロナ

 

 

 

 *†*†*†*†*†*†*†*†

 

 

 

 皆さん、お久しぶりです、ヒカリです。私はいまユウトさんのママさんにお呼ばれして、ユウトさんのご実家にシロナさんと一緒に来ています。初めてここを訪れたときは、ハルカさんの紹介で、想いを寄せる人のお母さんといった感じだったんですけど、あたしたちとユウトさんのことを聞いたママさんが、あたしたちのことを「あなたたちとっても気に入ったわ」ということ。以来、『花嫁修業だ』『義娘に会いたい』『息子とはあれからどうなのか』『ちょっと手伝って』『ある人に紹介したいから来て』『お料理作り過ぎちゃったから食べに来て』『一緒に買い物行こう/旅行に行こう』だの、他にも様々な理由でお呼ばれして、今やすっかり身内としての扱いを受けています。てか一時期、「帰らないでー!」と引き留められてしばらく滞在していたこともあります。

 

 で、今日の用件はママさんが近所の人と一緒にパーティーをやるということでそのお手伝い。

 ついこの前は、

 

「お義母さんって呼んでね」

 

なんて言われちゃいました。もうその日一日は舞い上がっちゃいましたよ。

 で、その話をシロナさんにしたら

 

「孫の顔はいつ見れるのかしら。楽しみね」

 

なんて言われたそうで。

 うん、あたしもその後似たようなこと言われたけど、あたしが先なのでそこのところはよろしくお願いします。

 

「そうね。楽しみだわ。うふふふふ」

 

 なんてやり取りもあったりしたけど、なかなか楽しくやってます。

 すこぶる良好ですよ、あたしとシロナさんとの仲は。疑似一夫多妻だけど、ママさんが

 

「そんな細かいことは気にしなくてぜんぜん大丈夫よ」

 

なんて言われ、その後のママさんの様々な側面を見たら、たしかに気にするのもアホらしくなりました。

 てか、あの人がどんな人物なのか未だに見当もつかない。何気に――

 

「ヒカリちゃーん、これよろしくー」

「ハーイ!」

 

 ととと。

 それよりも準備準備。なんでも、ママさんがパーティーを開くとかで、設営の手伝いとして私たちにお呼びが掛かったのだ。サーナイトもサイコキネシスで手伝ってくれて、ママさんから受け取ったものをひとまず、リビングとテラスを隔てる大窓の許に置く。

 

「サーナイトはママさんのところに戻って。ヌマクロー、それ置いたらあたしと一緒にこれを持っていくの手伝って。ゴーリキー、このテーブルとイス四セット運んで。あ、おかえりオニドリル。じゃあお勝手の方に持っていってね」

 

 それで、今あたしは一階のテラスとリビングの設営を指揮しています。

 このテラス、それから二階のベランダにもですが、以前みんなで協力してアルミ製の屋根を取り付けてみました。この近辺はえんとつやまの影響で火山灰が降るので、主にそれを防ぐためにです。覆いが掛かっているところは昔に比べるとだいぶ汚れなくなりました。そこの部分に関しては雨の後は灰が固まってものすごく掃除が大変だったりする苦労はだいぶ軽減されたように思えます(ただ、やっぱり大変なようでシダケタウンあたりに引っ越すことも考えているそうです)。

 ちなみにシロナさんは今、家の中の掃除です。あの人、料理はまあうんそうなんだけども、それ以外にはすごい才能を発揮しています。

 

 ただ、それを利用してユウトさんの部屋の発掘、じゃなくて物色、でもなくて掃除を行うというのはなんだかビミョーに納得いかない。そこそこきれいな部屋でそんなに物が置いてあるわけじゃないのに、なかなかの時間をかける。ベッドの下や本棚の後ろ、机の引き出しの底の方を“掃除・整理”という名目で覗くのもよろしくない。

 

 ……あたしだって、あたしだってこれくらい…………あー、スタイルもっとよくなりたいわぁ……。

 

 ちなみにそれに気づいたのが、たまたまですが、シロナさんがベッドに潜り込んでなんかしているのを見掛けたときです。

 そのときはどうしたか? とりあえず、思いっきり布団を剥いで引き釣り出しました。幸せそうな顔をしていたのですが、ちょっと興味本位でその布団にくるまってみると……うん……なんか包み込まれている感じがして幸せでした……。

 シロナさんも我慢できずに思わずということだったそうですが、でも、こういうことは抜け駆けでやるのではなく、あたしも混ぜるべk、じゃない、ゴホンゴホン……道徳的に非常によろしくはないと思うわけですよ?(*⌒▽⌒*)

 ちなみにその後、シロナさんの手伝いでユウトさんの部屋の片付けをしてました。

 

 

「ゴリッキー、リッキー?」

「ああ、ごめんごめん。ちょっとボーっとしてた。えーと、次はー——」

 

 気がついて彼を見れば、ゴーリキーが手持無沙汰だったので、指示を出して支度を続ける。ちなみにこのパーティー、あたしたちのことを知らせるために開くというような話もママさんから聞いていた。

 

「確実に外堀埋めてってるよね」

 

 まあ、それは致し方ない。ユウトさんがなんだかんだでハッキリさせないのがわるい。

 いや、あたしたちのこと大切にしてくれてるのはよくわかる。ただ、それがあたしたちが特別なのか、それともごく普通の、他の人に対しても同じものなのか。

 

「ユウトさん、言葉にしてくださいよ。言葉にしてくれないと……」

 

 こちらとしても不安で不安で仕方なくなる。あなたの気持ちが分からなくなる。

 “以心伝心”なんて言葉もあるけど、あんなもの、少なくともこのことに関しては絶対ウソっぱち……。言葉にしないと伝わらない思いもある。

 

「やれやれ……。なんだかなぁ……」

「ヌマクロ?」

「ん?」

 

 はたと気づくとヌマクローが不思議そうにあたしを見ていた。

 

「おっと。ごめんね、ヌマクロー。おつかれさま。次はー……」

「ヒカリちゃーん、だれか連れてちょっとこっち来てー」

「ハーイ、わかりましたー! じゃあ、ヌマクロー、一緒に来てくれる? それからゴーリキーあとよろしく!」

「ヌマクロ!」

「リッキー!」

 

 まだ日が傾く前の時間。あたしたちの将来のために、万事物事は進んでいく。

 




ユウトのママ、サエコ初登場。というかサエコママンって何者よ?(笑)

途中、あまりにカユクなって恋愛系からは脱線してしまいました。
それと前のとあまり変わってなくてすみません。

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