外伝1 ヒカリ Four years later
みなさん、お久しぶりです。ヒカリですよ、と。
さて、あのシンオウリーグスズラン大会からすでに四年ほど経過した。おかげでもうすでにあたしは出会った頃の彼の年齢と同じになってしまっている。あ、言っておくけど、年齢とかは聞くんじゃないわよ?
さて、そんなあたしは現在、ジョウト地方という地方で旅を続けている。
「へぇ、32番道路っていうのね」
「ポチャー」
相棒のポッチャマも一緒。そうそう、今の現在地をライブキャスターで確認してみよう! ちなみにこれ、だいぶ前に拡張機能がついて、その地方のポケモンセンターに寄って手続きをするとマップ等がダウンロードされるのである。
「えーと、北は今朝出発してきたキキョウシティ、北西にはアルフの遺跡、南にはつながりの洞窟か。次のポケモンセンターまではまだあるわね」
尤も、ずっと歩いていれば日没前には余裕を持って着きそうだ。その後はつながりの洞窟を抜けてヒワダタウンを目指していくつもりである。ヒワダジムへの挑戦も勿論する予定である。
さ、張り切っていきましょ――
「もお! 待ってくださいよー、センセー!」
ちっ! もう追いついてきやがったか。
振り返ると、ドドドドドという効果音と大きな砂埃と共に走り寄ってくる人間、ではなくなんらかのおぞましい物体、もといクリーチャー。
「ポッチャマ」
「ポチャ!」
あたしの声にポッチャマはフンと鼻息荒く、既にアレの排除の準備が完了したようである。
「センセー、私を置いて行こうなんてヒドイじゃないですか! あぁ、愛しのセンセッ!」
そうほざいてあのクリーチャーがあたしに向かってダイブを敢行してきた。
「今よ、ポッチャマ!」
「ポッチャマー!」
ポッチャマがやったのは掛け値なし、全力全壊のハイドロポンプである。人間にやるな? お生憎、人間に対してはかいこうせんぶっ放す奴だっているし、それにあれは人という形を被った何かなんだから、別にかまわないのよ。
「ギャオオオオオオオオス!!」
ポッチャマのハイドロポンプで吹き飛ばされていった変態女はそのままお空に向かって飛んでいき、そのまま、キラリと輝くお星様になった。よかったぁ、これで悪は退治された。
「――もぉう、ヒドイじゃないですかぁ、セェ~ンセ」
突然耳元で聞こえる甘ったるい声。それによって全身を悪寒がかけぬけた。
「ポッチャア!?」
ポッチャマの驚きと粟立つ肌を抑えつつ振り返れば、
「なんであたしたちの後ろにさも平然として突っ立ってんのよ、アンタはァ!?」
ハイドロポンプで綺麗さっぱりに消し飛んだはずのクリーチャーがそこにいたのだった。その恍惚とした表情に思わず二、三歩下がってしまう。
「なんで!? ウソでしょ!? どうなってんの!?」
「いやだなぁ、センセ! みがわりですよ、みがわり、私のマリルたんの」
んな!? なんでポケモンの技が人間に適用されるのよ!?
「ハァ、愛しのセンセ」
「ぐぇっ」
そういって抱きついてくるこのド変態。やばい……! 力が、強くて……離せない……!
「ええい! いい加減にしろ、このド変態のレズっ気女! まとわりつくな! 気持ち悪い! 離れろ、このアンポンタン!」
「ハァァ、センセェ、そのツンデレ、超グッドですよぉ。それにすごくいいにおい。スー、ハー、スー、ハー」
ひえええええ! 気色悪いいいいい! 胸元にコイツの息が、生暖かい息が!
「ハァァァ、おっぱいもいい感じに結構大きいですし、このプリプリのお尻もキュートです。ていうかスタイルいいですよね? なにやってるんですか?」
そうして後ろにまわした腕の内の片方でさわさわと触ってくる。ちょっ、キサマはチカンかよ!?
「や、やめ! んはぁん、ちょ、どこ触って! んっ、だめ、も、揉まないでっ」
「ハァハァ、や、ヤバい。かわいすぎるっ。 も、もう食べちゃいたいっ。ぬ、脱がしてもいいですかっ。おそってもいいですかっ。えっ、いい!? いやったっ。許可は取りましたよ!」
だめ、このままじゃ、おかしくなる……! も、もう、もう限界……っ!。
「お願い、エーフィ! こいつを、早く何とかしてぇぇぇぇ!!」
「フィィィ!」
そしてボールから颯爽と登場したエーフィ。
「お? およ? あらっ? ちょっ!」
エーフィのサイコキネシスで引き剥がすことに成功した。
「ハァ、ハァ、き、気色悪かった……」
「アアン、涙ぐむセンセも、ス・テ・キ!」
昔、携帯電話を使った未来予知能力者たちのサバイバル・ゲームのアニメを見たことがあるが、あれのヒロインが最初の方で主人公に見せるあのポーズそっくりなものが、今、目の前に体現されていた。あの恍惚な表情までそっくりである。
正直マジでシャレにならない。貞操どころか、下手したら命すら危ないんじゃないかと思ってしまった。
「ヒッ、ヒィッ! エ、エーフィ! サイコキネシスでこのバカでヘンタイでゴミ虫以下のチリに等しき存在を捩じ切りなさい!」
「フィー!」
「え? ちょっ! センセ、それヒド!? ってアイタタタタタタタ! 痛い、痛いです、センセー! 捻じれてます、捻じれてます! 人間、何かいけない方向に捻じれてます!」
「そう!? なら違う刺激も必要ね! ポッチャマ、くさむすび!」
「ポチャ! ポチャチャチャチャ!」
「えっ? ちょ、なんですか、このくさむすび!? くさむすびって相手の足に草を結び付けて倒す技でしょ!? なんでそれが縛られて、何度も地面に叩きつけられるような技になってんの!? セ、センセ、センセ! 助けて、助けてください!」
「うるさい! だまりなさい! 都合のいいこと言ってんじゃないわよ! 頼まれた手前、あたしがキサマを正常に戻してやろう! うまくいけばだけどね! ピカチュウ、出てきて!」
そしてピカチュウ様降臨。
「ついでに、電気ショックも加えてあげるわ、感謝しなさいよね! ピカチュウ、最大威力でかみなり!」
「ちょっお! センセ! それ、マジにシャレになってないです! センセー、お、お助けを~~~~~~!」
「問答無用! ピカチュウ、GO!」
「ピ~~~~~カ~~~~~、チュウウウウウウウウウウウウウウウウ!」
「ウッヤーヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤ!!」
* * * * * * * *
「うぅ、センセェ、ヒドいじゃないですかぁ」
涙目で怒るこの女。
だが、ここで気を許してはいけない。ここで不用意に近づくとまたさっきみたいなことになるからだ。
「ったく。いつまでネコ被ってるのよ!」
「だってセンセーが私のこと置いてくから」
「アンタがすべての原因でしょうが!?」
ああ、そうそう。このド変態女のことを紹介するのを忘れてたわ。
この女はコトネと言ってワカバタウンに住むウツギ博士の娘さんの一人。ウツギ博士にはシロナさんやグリーンさん、リーフさん、オーキド博士経由で知り合っていたので、カントーとジョウトを結ぶトージョーの滝経由でワカバタウンに立ち寄ったとき、挨拶に行ったんだけど、そのときに知り合った、いや、知り合ってしまったのだ。
「え、尻合い? もう、センセってばエッチなんですから! コトネはいつでもバッチ、ゴハァ!?」
うん、思わずその辺にあった石ころで以て殴りつけてしまった。
え? 殺人? 大丈夫、コイツの耐久力は並みじゃないから。こんな程度じゃ死にはしないから。
さて、話が脱線してしまったけど、コイツはウツギ博士の娘。
ウツギ博士は二人の娘さんをもつパパさんで、姉がゴールドさんの恋人になったクリスさんで、妹がコレ。ちなみにゴールドさんとは幼馴染ですと本人は言っているけど、ゴールドさんの方は、聞いてみたところ、それを頑なに否定。
まぁ、この惨状を見れば、ねぇ。そして姉にもひっついてくることが多いらしく、クリスさんは旅立ってから一度も帰ってきてないんだとか。
間違いなくコレが全ての元凶ですね、わかります。
おかげでウツギ博士も頭を悩ませていたそうだ。
そしてあたしがコイツと不本意ながらいっしょに旅をしている理由なんだけど、ウツギ博士からの依頼ということで引き受けた。
ところが、それはなんと表の理由。
真相は、まず、このヘンタイもトレーナーとして旅に出たいという年頃になったというものがあった。ただ、ウツギ博士としては、彼女のその性癖から見知らぬ人にも発情してしまうことも多く、旅に出せないと悩んでいた。そしてちょうどそんなところにあたしが訪ねてきて、ストッパー兼ストッパー兼ストッパー兼ストッパー兼ついでに気が向けば教師役として彼女に随行してくれというわけだったのである。
ちなみにこれが判明したのは、30番道路に住む“ポケモンじいさん”という人から聞いたから。というか、聞かされたから。ていうかこの時点ではなんとなく察していた。だって、初日の夜にいきなり襲ってきたんだからね。もう少し寝覚めが遅かったら間違いなくあたしの貞操は食われていた。
ちなみに今、家にヘンタイのいなくなったウツギ博士はクリスさんにさかんに帰郷を募っているのだそうです。
復讐? うん、つかもう殺意湧いてます。
とりあえず、カイロスのハサミギロチンから始まって、エーフィのサイコキネシス、ゲンガーのさいみんじゅつ→あくむとかいろいろ考えていますよー。カイリキーのきあいパンチ連打とかウインディのだいもんじとか、あっ、ウツボットのようかいえきで溶かしつくすのもなかなか乙でいいですねー。あとはあたしの馬鞭とかでビシバシと。
まあ、次に博士と会ったときが博士の命日ですので、それまでせいぜい残り少ない生を謳歌しておいてくださいねー。
* * * * * * * *
まあ、旅立ったばかりで知識も経験も全然ないド変態な彼女ですが、一つだけ、“一つだけ”、“一・つ・だ・け!”、良かったところがあった。それは例えば今みたいなちょうどお昼時。
「よーし、みんなご飯よー。出ておいでー、ってあいた! こら、チコリータ! 勝手に出てきてもいいけど、たいあたりとか飛び乗るのはやめなさい! こらっ、ジグザグマ、まだ勝手に食べない! え? マリル、食べさせてほしいの? って、マリルだけじゃなくてあなたたち全員!? んもう~しょうがないなぁ! あ~ほらほら、みんないい子だからしてあげるね! 大好きだよ!」
ポケモンたちには無上の愛情を持っていること、そして彼らからも信頼と愛情を受けていることだ。
マリルはもともと彼女が持っていたそうだが、チコリータは旅立つときにウツギ博士からもらい、ジグザグマは旅の途中でゲットしたものである。
それがあんな風に彼女のことを慕っている。そして、彼女も寄ってきたポケモンたちをやさしく抱いてあげている。ポケモンたちもそれが嬉しいのか非常に幸せそうな顔をしていた。
『強いポケモン、弱いポケモン、そんなの人の勝手。本当に強いトレーナーなら、好きなポケモンで勝てるよう頑張るべき』
あたしが口にせずとも、この言葉は今やいろいろな地方のトレーナーの心に息づいている。この子もそうだし、今まで出会った様々なトレーナーにもそれを感じることが出来た。
こういうところであの人のことを思い浮かべることも出来たりする。
尤も、変化はそれだけではなく――
「あなたはシンオウ・カントー準チャンピオン、そしてナナシマチャンピオンのヒカリさんですね?」
お昼の休憩も終わり、さあ出発するかというときに掛けられた女性の声。
「あなたは?」
「ワタシはナナシマ地方3の島出身のフウコと申します。エリートトレーナーをしております。ワタシはあなたに勝負を挑みたい。よろしいですか?」
「うん、いいよ! 一応自己紹介しておこうか、あたしはシンオウ地方フタバタウン出身ヒカリ!」
「ハイ。ルールですが、使用ポケモンは三体のシングルバトル、アイテムの使用はなしですが、持たせるのはあり、持たせる道具の重複はなし、でよろしいですか?」
「うん、いいよ! じゃあやろっか!」
“道具を持たせる”
これはポケモンが自力で使えるものに関してポケモンに持たせて使うことはあり、というものだ。
各地方のチャンピオンが動き、リーグ、それからコンテストの方が一体となって宣伝し、この四年で浸透してきたことだ。尤も、まだまだ走りであるので、「その道具のチョイスはどうなの?」というのもあったりするが、それは仕方のないことだろう。
ちなみにコトネには見学ついでに審判をしてもらうことにする。これはあたしに挑まれた勝負だし、見取り稽古っていうのも大事なことだからね。
バトルが出来そうな少し開けた場所に移り、お互いボールを構えた。
「では、参ります! いでよ、ゴローニャ!」
「あたしの一番手はカビゴン! あなたよ!」
ゴローニャにカビゴンが出揃う。
「先手はいただきます! ゴローニャ、ロックカット! そしてまるくなる!」
こんな風に、攻撃技だけでなく、変化技を使うトレーナーが非常に多くなった。 尤も、まるくなるはこの後の連携に繋がることだろう。
「カビゴン、はらだいこ!」
「はらだいこですか。たしか体力は半分まで減る。ならばゴローニャ、ストーンエッジ!」
まるくなる+ころがるコンボはやめて半分なら削りきれると思ったのか、相手はタイプ一致物理技で急所に当たる確率が高いストーンエッジを選択。それがはらだいこ中のカビゴンに決まった。
しかし、あたしのカビゴンは元々の特殊耐久とHPの高さに加えて、のんきな性格(防御↑素早さ↓)と努力値振りによって物理耐久底上げもあって、並の攻撃では、はらだいこをしていようとも簡単には落ちることはない。今回もゴローニャのタイプ一致ストーンエッジを見事に耐えきってくれた。
ちなみにあの人も、あたしと同じ戦法を得意とするカビゴンを持っている(昔、シロナさんと対戦してたとき、はらだいこ→ねむる→ねごと→ねごと→他の物理技→……(体力が減ったら)ねむる→ねごと→ねごと→他の物理技→……といった感じで六タテし、『まさに鬼ね』とシロナさんをして、青い顔でそう言わしめていた)。
真似するのもどうかとも思ったんだけど、あたしがカビゴンの性格を見極めて、それが一番合ってると思ってカビゴンと話し合ってそういう戦略を取ろうということにしたのだ。
「カビゴン、ねむる!」
「くっ! かたいいし持ちでも落ちませんでしたか! ならば、ゴローニャ、きあいパンチ!」
「ねごとよ、カビゴン!」
かたいいしとは岩タイプの技を一.二倍にアップさせる技。つまりタイプ一致と併せて岩技は一.八倍である。
さて、あたしの予想通り耐えきってくれたカビゴンは、ひとまずねむるで全回復。そこで相手はきあいパンチを指示した。きあいパンチは格闘技なので、カビゴンには効果抜群である。
そして、そのゴローニャのきあいパンチがカビゴンに迫る中、カビゴンはねごとによりれいとうパンチを引き当ててくれた。
それがそのまま、きあいパンチとはクロスカウンター気味に決まる。
「ゴローニャ、頑張ってください!」
カビゴンも効果抜群のダメージを負ったが、耐久を上げているし、もちものにはたべのこし(一定時間ごとにHPが一定量回復)を持たせているので、余裕で持ちこたえていた。片や相手は弱点に加えてはらだいこによって最大まで上がった攻撃での一撃によってかなりのダメージを食らったようだけど、まだ戦闘不能には至っていない。
「特性はやっぱり『がんじょう』ね。カビゴン、もう一度ねごとよ!」
そうして今度はしねんのずつきを引き当てた。ゴローニャは今度こそダウンした。
「ゴ、ゴローニャ、戦闘不能です! カビゴンの勝ち!」
コトネの宣言により、相手はゴローニャをボールに戻す。
「お疲れさま、ゴローニャ。次はこの子です! いでよ、ナッシー!」
今度は草・エスパータイプのナッシーね。
「ナッシー! 相手の体力はかなり少ないはずです! リーフストーム!」
リーフストームが大方の予想通り、カビゴンに炸裂した。
「やった! これで!」
たしかに、きあいパンチのおかげでカビゴンの体力はかなり減っている。
でもリーフストームは特殊技。カビゴンの特防とHPはもともと相当高いし、その二つにも努力値を結構振ってあるから、物理アタッカーじゃないとなかなか落ちないんだよね。
「カビ、カビカビ」
「なんですって!?」
なんでもないというような様子を見せるカビゴンと、その驚異的な硬さに驚きを抱く相手のエリートトレーナー。
「カビゴン、もう一度ねむって、ねごとよ」
「カ~ビ~~~……Zzz」
そして、カビゴンはまたねむって体力が満タンまで回復。
ねごとでは今度はあくびを引き当てた。
「あくび!? 眠らされてはたまりません! 戻って、ナッシー!」
あくびの効果も知られるようになった。というか、四年前のシンオウリーグスズラン大会はもはや伝説と化しており、あたしやあの人、シロナさんが使った技や持ち物の数々(あくびやアンコール、バトンタッチにトリック、そしてしんかのきせきやこだわり系アイテムはおろか、なんとカウンターシールドや必中技を必中技で落とすといった技術まで)は、あのときから爆発的に有名になった。
「ワタシの最後のポケモン! 出番です、マッスグマ!」
マッスグマ。このポケモンもやはり四年前から一躍人気が出てきたポケモンである。理由はもはや言わずもがなといったところか。
「マッスグマ! カビゴンが未だ寝ているうちにはらだいこ!」
マッスグマといえばはらだいこ。もはや、マッスグマの代名詞的な存在である。
「いいわよ、マッスグマ! 『くいしんぼう』オボンの実で回復よ!」
はらだいこを決めた段階できのみを食べてるから特性『くいしんぼう』って判断したのかもだけど、回復系のきのみは体力半分以下なら食べるからね?(『くいしんぼう』は体力半分以下になったらもっていたきのみを食べる特性)
まあ、『くいしんぼう』マッスグマだったら、カムラの実(体力四分の一以下で使用、素早さ一段階アップ)の方がメジャーな戦法な気もするけど、これもいいかもしれない。
「カビゴン、ねごとよ!」
そして再度ねごと。だけど、ここで出た技はなんとゴーストタイプの技のシャドーボール。当然、ノーマルタイプのマッスグマには効果がない。
だが、ここでカビゴンが目を覚ました。
「よーし、カビゴン、きあいパンチから!」
「カ~ビ~~~!」
「マッスグマ、避けなさい!」
「グマッ!」
マッスグマは持ち前のスピードできあいパンチを避けようとする。
「横に転がってマッスグマにのしかかりなさい」
「カ~ビ~!」
「マッスグマ!」
しかし、マッスグマが避けた先にカビゴンがのしかかってきたため、避け切ることが出来ず、のしかかりを食らってしまった。
「マッスグマ、戦闘不能です! カビゴンの勝ち!」
* * * * * * * *
それから、ナッシーが出てくるも、ナッシーは特殊アタッカー的な性質なため、カビゴンを落とすことが出来ず、逆にこちらは、かえんほうしゃでナッシーが怯んだところをギガインパクトを決め、勝負はあたしの勝ちとなった。
「ハァ~。やっぱ、センセーはすごいねぇ。私もああなるかなぁ」
なんてことを言いながらあたしの隣を歩くコトネ。
「なるわよ。なんたってあたしだってなれたんだし」
「いや、それチャンピオンや準チャンピオンであるセンセーが言ってもあんまり説得力ないですって」
そんなことはない。
あたしはあの人の教えに従って修行してなんとかここまで――
――ナナシマ地方ではチャンピオンになり、カントー、シンオウではチャンピオンリーグには優勝するもレッドさんやシロナさんといったチャンピオンには勝てず、あたしも四天王にはならなかったので、準チャンピオンという称号をもらった(タマランゼ会長には「ユウト君の弟子とはいえそこまで似ずともよかろうに」と嘆かれたんだけど)――
――来ることが出来た。
その教えをあたしはこの子に今教えている。
あたしにだってなれたんだから、きっとこの子も将来は――
「にしても全国チャンピオンでしたっけ。センセー見てると、正直その人は化け物かなんかですかって思っちゃうんですけど」
そう。あの人は、あたしに教えを授けてくれたあの人は今そう呼ばれている。あの人が旅をしてリーグに参加した地方は全てあの人がチャンピオンになるからだ。
旅した先の地方は全て制覇する。
だから、全国チャンピオン。聞けば制覇してなかったカントーも制覇したようだ。
尤も、未だに全て即刻辞退しているみたいだけど。
あたしとしては、とにかくあの人に追いつこうと思っても、どんどんあの人は先に行ってしまう。
負けたくない。
負けたくないから、いっしょにあの人の隣を歩いていきたいから、あたしはもっともっとたくさんの地方を旅して修行する。
そしていつか――
「あ、ポケモンセンターが見えてきましたね。今日はここで一泊しません?」
空は茜色に染まっている。今からつながりの洞窟を抜けてヒワダタウンに行くとなると、今日の満月が東から西の空に向かってしまうだろう。つながりの洞窟には最深部の方にも用があることだしね。
あたしはコトネの提案に頷いた。
もちろん当然だけど、部屋は別室にしてもらった。鍵もしっかり掛けた。
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夜
「うふ、うふふふ、センセー。えへ、えへへ」
怪しい笑みを浮かべながら照明の落ちた廊下を歩く人影があった。
その人影は目的の人物が寝泊まりする部屋の入口に着いた。
「えへへ、センセー、今愛しのコトネたんがあなたの許に参りますよ~」
だが、彼女は近づく気配に気がつかなかった。
「ニド、ニドー!」
ニドラン♂のどくづき!
「ハムフラビ!!」
コトネの急所に当たった!
「フィィィ!」
エーフィのサイコキネシス!
「ちょっ! 待ってぇぇぇぇぇぇ…………!」
コトネは外に叩きだされた!
「うう、コトネ、こんな事じゃへこたれない! 厳しい困難を乗り越えた先には極上の喜びと快楽が待ち受けているのよ!!」
しかし、ポケモンセンターの入口はカギが掛かっていて入れなかった。
「せ、センセェェェェェェェェェェェェェェェェ!!」
コトネはその日一晩、外で夜を明かした。
クリスはクリスタルの女主人公、ゴールドは金銀での主人公です。
そして旧版に比べて変態度がパワーアップしてしまったコトネ。ジュンサーさんに見つかったら、逮h……いや、逆にジュンサーさんを手篭めにしちゃうのも……アリ!!
※追記
う~ん、ここまで評判が悪いとは思いませんでした。
不快に思われた皆様申し訳ありません。
コトネの性格につきましては、申し訳ありませんがこのままでいきます。
事情としては、性格等によるキャラクターの書き分けが登場人物が増えるに従って、難しくなるからです。
よろしくお願いします。