ポケモン世界に来て適当に(ry   作:kuro

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活動報告へのコメントありがとうございました。
正直ほとんど知らなかったもので「こんなにもいるものなのか」とビックリしている次第です。ですが、大変参考になりました。
まだまだ受け付けていますので、これはというものがありましたらよろしくお願いします。



挿話12 エスカレートしていくバトル シロナ

『シンオウリーグスズラン大会の最後を飾るこのラストバトル! 一体全体、だれがこんな結果を予想できたかーーー!? なーーーんとなんと! 我々が知る限り、一度も土がついたことがないあのガブリアスが! あの最強無敵を誇り、チャンピオンマスターシロナのエースポケモンである、あのガブリアスが! ほとんど一方的に攻撃を封じられてダウーーーーーーーンッ!! 序盤から大波乱を見せるこのバトル! はたしてこれからいったいどうなってしまうんだーーー!?』

 

 さて、とりあえず最強の手札であろうガブリアスは突破した。でも、まだまだ油断できない相手がたくさんいるということは確かだ。最初に出たあのルカリオだって馬鹿にならない火力を持っている。果たして次に出てくるのはどんなポケモンか。

 

「モンジャラ、もう少し頼むぞ!」

「(ファイトよ、モンジャラ!)」

「モッ!」

 

 オレは、ひとまずこのままモンジャラで様子見だ。耐久は物理に関してはかなりの高さを誇るし、パワースワップで得た攻撃二段階アップはおいしい。

 さて、次に彼女が出すポケモンは――

 

「華麗に踊れ、ロズレイド!」

 

 出てきたのはタキシード仮mげふんげふん、ポケモン界で仮面舞踏会があったら超イケメンさんになれるだろうロズレイド。あ、後ろのマントみたいな葉っぱがオレのロズレイドより随分と長いからメスっぽいな(ロズレイドは後ろのマントが長いほうがメス、短い方がオス)。まあゲームでもポケモンワールドトーナメント以外、シロナさんの手持ちはほとんどメスだから一致しているのかもしれない。

 

『チャンピオンシロナ、二体目は優雅で気品あふれる姿から人気が高いロズレイドだ! 草・毒タイプを持つロズレイドに対して草タイプしか持たないモンジャラは相性として不利! 挑戦者ユウトはどう乗り切るのか!?』

『加えてロズレイドは草タイプなので、粉系統の技ややどりぎのタネは通用しません。しびれごなもねむりごなも使えないのでは相当ツライと思います』

 

 いやはや、うーん、たしかに些かキツイ。二人の言う通りな上、ロズレイドは特攻がバカ高いので、タイプ一致ヘドロばくだん、二倍弱点、モンジャラの特防はそう高いものではないこと、ガブリアス戦でのダメージなどの要因が重なれば、シロナさんのロズレイドなら一発で間違いなくこちらを落とせるからだ。

 ただ、ロズレイドは物理耐久が非常に低いので、つるぎのまい効果も併せて一発物理技を当てればチャンスはある。というより、交代しない場合はそこを狙うしかない。ロズレイドに有効そうな子は一応連れてきているが、たぶんまだ出すべきところじゃない。ここはモンジャラに賭けよう!

 

「さあ、反撃開始よ! ロズレイド、ヘドロばくだん!」

「頑張れ、モンジャラ! かげぶんしん!」

 

 そうしてかげぶんしんの発動の方が僅かに早くて、ヘドロばくだんを寸前のところでかわした。

 

「くぅ! うまく避けたわね! でも、いつまでも続けられるものではないわ! ロズレイド、ヘドロばくだん!」

「モンジャラ、ギガインパクト!」

 

 かげぶんしんを引き連れてモンジャラがロズレイドに迫る。

 

「ヘドロばくだん連発よ!」

 

 一方、かげぶんしんに当たって単発のヘドロばくだんが不発に終わるのを見たシロナさんは、それを連続で放つ数打ち戦法に切り替えた。

 

 そして、結果は――

 

 

「これは――モンジャラ、戦闘不能!」

 

 

 ギガインパクトが決まった瞬間にヘドロばくだんを当てられてしまって、予想通り、モンジャラは倒されたが、ロズレイドは倒しきるには至らなかった。

 

「(でも、すっごく惜しかったわ)」

「ああ、本当によくやってくれた。ありがとう、お疲れさま、モンジャラ。今はゆっくりと休んでくれ」

 

 オレはモンジャラをボールに戻した。

 

 

 

 *†*†*†*†*†*†*†*†

 

 

 

「ふう、なんとか一体突破ね」

 

 緊張が一時解けたことから私は思わず息をついた。このバトルは私の全力を出し尽くす真剣勝負。それで、なんとか一体を倒したんだから、先はまだ長いといえど、ちょっとぐらいはいいでしょうと思う。

 それにしても今のバトルも危なかった。

 かげぶんしんを引き連れながらのギガインパクトでのモンジャラの特攻。かげぶんしんにしか当たっていなかったヘドロばくだんに結構焦っていたんだけど、幸か不幸かギガインパクトが決まった瞬間にこちらのヘドロばくだんもモンジャラに命中。それでダウンを取ったのだ。

 尤も、こちらも手痛いダメージを負ってしまった。

 

「ロズレイド、大丈夫?」

「ロズ」

 

 本人は頭をぶるぶると振いつつも気張っていて、大丈夫そうに振舞っているけど、どうやら半分、いえ三分の一近くは体力を持っていかれたかしら。くろいヘドロを持たせているからちょっとずつ回復していくけど、どこかでギガドレインでも撃って回復させたいところね。……ヘドロばくだん連射でかげぶんしんは減っていたのだから、当たる前に当ててほしかった、と言うのは贅沢なんでしょうね。それに、少し休ませましょうか。

 

「一旦戻って、ロズレイド」

 

 かざしたボールスイッチから走る赤い光線に照らされて、ロズレイドがボールに収まった。

 

「ありがとう。またあとでお願いね、ロズレイド」

 

 それに応えるようにして微かにカタカタ揺れるボールを見つめながら、次に出すべき子について考えを巡らせる。

 その間にユウト君は次のポケモンを繰り出した。

 

 

 

 *†*†*†*†*†*†*†*†

 

 

 

「あのモンジャラはやばかったな、ヒカリ! まさかあのシロナさんのガブリアスを倒してしまうとは」

「そうね。でもそれがユウトさんのポケモンでもあり、しんかのきせきというアイテムのすごさなのよ」

 

 このチャンピオン決定戦、いえ、決勝リーグが始まって以来ずっと、ユウトさんのバトルのときはあたしの隣の観客席にはこのシンジが座っている。なんでも、ユウトさんのバトルを解説してほしいのだとか。これはユウトさんの方のお願いでもあることから、ユウトさん的にはあたしの復習にもなるからいいだろうみたいな感じなのだろう。

 

『挑戦者ユウト新しいポケモンを出したぞ! 出てきたのはあのきょうあくポケモン、ギャラドスだ! 一方チャンピオンシロナもここでポケモンを交代! 出てきたのは大変な希少さとその美しい姿からまたまた人気を誇るポケモン、ミロカロスだ! おっと、どうやらどちらも水タイプのポケモン! これは両者ともにあまり好まない状況だぞ! 両者いったいどんな戦略を取ってくるのだろうか!?』

 

 さて、バトルはお互い一体を失った形(尤も、シロナさんのロズレイドは体力を消耗している分、ユウトさんの方が優勢ではある)で次に進んだ。

 

「ギャラドスにミロカロスか。たしかにどちらもタイプ一致メインウェポンの水タイプが効果いまひとつではなぁ。ギャラドスの飛行タイプの技はあまりいいものがないし、ミロカロスはあまり技のタイプが多彩ではないし」

「尤も、ギャラドスには10万ボルトやかみなりといった電気技で弱点を突ける。ただ、ミロカロスの方はそれを受ける特殊耐久が高いし、ミロカロスの持つ氷技はギャラドスには効果抜群ではないけど普通に通る。やり方はいろいろあると思うわ。その辺のことはあの二人も熟知しているだろうし。 ん!? 動いた!」

 

 ギャラドスの方がりゅうのまいをし始めた。技の名前の通り、龍が舞うがごとく、ギャラドスを渦巻くように禍々しい風が吹き荒れて、それが天に昇っていくようにして消えていく。

 一方、ミロカロスはそれを黙って見ているということはもちろんない。あの長い蛇みたいな体格をうねらせながら接近しつつ、目の上に生えている触角みたいなものをギャラドスに向かって突き出した。すると白く輝くような風がフィールドに吹き荒れ始めた。

 

「あれはこごえるかぜだ。たしかこごえるかぜは追加効果で相手の素早さを百パーセントの確率で下げるんだったな。素早さだけでも帳消しにしようという作戦か」

 

 それに氷タイプの技だからギャラドスには水タイプよりは通りがいいはずなので、いい選択だと思う。ただ、素早さは下がっても、上がった攻撃をどう対処するのかは気になるところなんだけど――

 

「「あっ!」」

 

 目を皿のようにしてフィールドを見下ろしていたあたしたちだけど、思わず声が重なった。

 

『な、なんと! ミロカロスの尾が白く光り、それがギャラドスに当たったかと思うと、ギャラドスがなんと挑戦者ユウトのモンスターボールに戻ってしまった!』

『あれはドラゴンテールですね。これは相手のポケモンを強制的に交代させるドラゴンタイプの技です』

 

 ユウトさんは若干口元を押さえている。「やってしまった」とでも思っているのだろうか。

 

「なるほど。嫌な相手は無理に相手をする必要はないということか。それにこれでりゅうのまいの効果は完全に消え去った。実に考えられている戦法だ」

「おまけにドラゴンテールみたいな強制交代技はフィールドのいなくなった分の代わりのポケモンが勝手に出させられてしまうから、ユウトさんとしてはまだ隠しておきたい隠し玉がさらけ出されてしまうなんてこともあるかもしれないわね」

 

 ちなみにこの後すぐ、あたしの言葉は現実となった。

 それとユウトさんの教育のおかげで、シンジは順調にあたしたちよりに染まってきていますよと。

 

 

 

 *†*†*†*†*†*†*†*†

 

 

 

『挑戦者ユウト四体目のポケモンはなんとボーマンダだ!』

 

 私のミロカロスのドラゴンテール、それが特大の爆弾を引き当ててくれた。まさかボーマンダがいたとはね。

 

『なんだって!?』

 

 ガタッという音とともにそんな声がスピーカーから響き渡った。『何事?』と思って放送席に目を向けると、あのダイゴが放送席に手をついて立ち上がっていた。口元が無造作に半開きになっている。しかし、すぐさま冷静さを取り戻したのか、キッと口元を結び、倒れた椅子を直しながら座り直した。視線は今まで以上の強さで以て、このフィールドを睨み付けるがごとく、見下ろしている。私としてはあのダイゴが見せたこれらの様子から、それがいかに意外で、かつ想像よりもずっと今が厳しいものかということが理解できた。

 

「……フフフ、いいわ。この大波を乗り切って見せようじゃない……!」

 

 同時にこれを御してみせようという気持ちが強く湧いてくる。ピンチのときこそふてぶてしく笑うものよ。

 

『どうかしましたか、ダイゴさん?』

『……いえ。それよりも』

 

 さあ! いきましょうか!

 

『みなさん、ここからは一時(いっとき)も目を離してはいけません。こんなバトルはめったに見られませんよ』

 

 

 

 *†*†*†*†*†*†*†*†

 

 

 

 くっそ~。今回の隠し玉だったボーマンダが引きずり出されてしまった。もう少し違う場面で出したかったのにと思ったのだが、この際仕方がない。いっちょ、やってやるとしようか。

 

「ミロカロス、れいとうビーム!」

「ボーマンダ、かえんほうしゃだ!」

 

 やっぱりあのミロカロスは氷技持ち。まあ、氷タイプの技は非常に有用度が高いから覚えさせることが出来るなら絶対に覚えさせるものだ。

 そして逆にこっちは氷が四倍弱点。相性は極めて不利だ。

 ならば、ここは――

 

『ボーマンダのかえんほうしゃとミロカロスのれいとうビームが激突! その瞬間激しい爆発が起きてフィールドは白煙で覆われてしまった! これではどうなっているのかわからないぞ! いったい何が起こっているのかー!?』

 

 実況の言うとおり、辺りは()が火で急激に熱せられたことによってほんの軽い水蒸気爆発みたいなことが起きたのか、大爆発が起こった。その爆風から目を守るように腕を組むが、完全に視界を閉ざすわけにはいかない。爆風をやり過ごしながら、組んだ腕の隙間からフィールドを覗いた。ただ、その視界は爆風と白い靄で覆われていて、ここからではどういう状況なのかは読めなかった。しかし――

 

「いけぇ、ボーマンダ!」

 

 オレのボーマンダなら、きっとうまくやってくれる――!

 オレはそう信じていたし、ボーマンダを信頼していた。

 

「ドラゴンテーーール!」

「ガアアゥ! マンダー!!」

 

 すると、白煙の中から雄叫びとポケモンがボールに戻っていくときのあの独特な音が返事として返ってきたのだった。

 

 

 

 *†*†*†*†*†*†*†*†

 

 

 

「ファゥオオオ!」

 

 今、フィールドに聞こえた鳴き声は私のルカリオのもの。そう、ミロカロスの代わりに引きずり出されてしまったのね。

 そしてフィールドを覆っていた白煙は、ボーマンダがミロカロスに接近するときによって起こった風の流れや羽ばたき、そして攻撃により、完全に晴れ渡った。

 

『おおーっと! チャンピオンシロナのポケモンがいつのまにかミロカロスからルカリオに変わっている! あの白煙の中で何が起こったんだーー!?』

『おそらくですが、――』

 

 ダイゴが解説してくれているが、簡潔にいえばあの視界不良の中をボーマンダがミロカロスに接近、そしてドラゴンテールを放ったのでしょう。そして代わりにルカリオが引きずり出されたと。ボーマンダにとってみれば、ミロカロスはまさに戦いにくい不利な相手。六対六のフルバトルならなおのこと、さっき私がやったみたいに戦いにくい相手は無理に相手をする必要がない、ということね。

 それに――

 

『結果的にですが、ユウト選手が先程チャンピオンにやられたことをそのまま意趣返しした形になりますね』

 

 ……今ダイゴがああ言った瞬間、あの子ニヤッて笑ったわね。いやらしい。やっぱ性格悪いわよ、あのクソガキ。どうとっちめようかしら。

 

『なるほど! よく練られている素晴らしい戦略と高度なバトルだ! 正直ボクはこんなバトルを見せられて、もう次に何が出てくるのかウズウズして仕方がないぜ!』

 

 何やら観客の方はこの煽りを受けて歓声が一層ヒートアップしたように思う。

 さて、気持ちを切り替えていきましょう。

 ボーマンダとルカリオでは、ボーマンダは炎や地面や格闘タイプの技で、ルカリオはドラゴンや岩タイプの技でそれぞれ効果抜群を狙える。だけど、ここで違うのは、ルカリオには氷タイプの技であるれいとうパンチがあることから、ボーマンダに対して四倍の弱点を狙えるということだ。これが決められれば確実にルカリオ優位の方に天秤が傾く。うまくこのボーマンダさえ突破できれば、バトルの流れもこちらにたぐり寄せることができるだろう。

 

「気張っていくわよ、ルカリオ! ストーンエッジ!」

 

 まずは弱点を突きつつ、牽制の意味も込めてのストーンエッジ。ルカリオの周りに石というよりも寧ろ岩というべき破片が浮かび上がると、それが一直線にボーマンダに向かって飛んでいった。

 

「ボーマンダ、やや前方に向かっていわなだれ!」

 

 すわ、岩が雪崩を打つようにルカリオの頭上に降ってくるかと思いきや、なんとボーマンダの正面にそれが降り積もっていった。一つ一つも大層な岩だが、それらがうず高く、そして広く降り積もり、今やその高さや幅は数メートル程にもなってボーマンダの姿などいとも簡単に隠してしまっていた。ここからでは、まるで真正面に崖でも出来たのかと思うほどのものである。

 

『ストーンエッジを撃つルカリオに対してのボーマンダはいわなだれをルカリオの頭上ではなく、ボーマンダの前方に降らしたぞ! こ、これは!? これはスゲェ! 積み重なったいわなだれは今やまるで大岩のバリケードのごとくボーマンダを守っている! ストーンエッジはこのバリケードに衝突していくが、突破できない!』

 

 とりあえず、次を考えましょうか。

 そういえばボーマンダは飛べるのに対してルカリオはそうでもない。空対地戦なんてやりたくはないわね。

 ならば、相手の上を取って無理やり地面に縫い付けて地対地戦にもっていくことにしましょう!

 まずは――

 

「ルカリオ、あの大岩を回り込みなさい!」

「ファグァ!」

 

 当たり前かもしれないけど、相手に接近することが大切。そしてルカリオが私の言を実行するべく、膝のバネを利用し、体勢を僅かに沈めて初速からトップスピードで以て駆けだした。

 

「ボーマンダ、がんせきふうじ!」

 

 するとボーマンダがあの崖の上にひょっこりと姿を現した。図らずも頭上を取られてしまった格好だ。

 

「しまった! ルカリオ、避けなさい!」

「ファオ!」

「マンダー!」

 

 しかし、ルカリオもその指示の通りの急な方向転換をよくもこなしてくれている。しかし、ボーマンダのコントロールが絶妙なせいか、大岩がルカリオの行く手を阻むように巧妙な位置に降り注いでくるため、次第に動きを封じられて、とうとう周囲を岩に挟まれて一歩も動くことが出来なくなってしまった。

 

「ルカリオ、グロウパンチ連打! 周りの岩を破壊しなさい!」

「ファオオ!」

 

 ルカリオが雄叫びと共に自身の周りを窮屈に取り囲む大岩にパンチを打ちつける音が連続で聞こえてくる。

 

「ボーマンダ、足元の大岩をアイアンテールで砕き飛ばせ!」

 

 ボーマンダはその指示によってその水色と赤色のツートンカラーの尾を銀色に光らせてしならせた。一方、ルカリオが殴りつけていた大岩は破片と共に砕け散っていった。

 

「飛ばせ、ボーマンダ!」

「マンダー!」

 

 しならせた尾がボーマンダの足元の大岩を抉る。そのままその大小たくさんの礫がルカリオに向かって飛来してきた。がんせきふうじは追加効果として百パーセントの確率で相手の素早さを一段階下げるというものがあるけど、今この下げられた素早さではこれを(かわ)すのは厳しいわね。

 ならば――!

 

「ルカリオ、ボーンラッシュ!」

「ラアァ!」

 

 ルカリオが両手を突き出す。すると長さがだいたい八十センチメートルほどのやや半透明なホネがルカリオの手の中に浮かび上がり、収まった。それを一度ブンと横に振るうと、今度はそれを真正面に持ってきて両手をうまく使いながらそのホネを回転させ始めた。地面とは垂直方向に回転するホネはルカリオにとっての、(あたか)も盾のような役割を果たすこととなった。

 

『アイアンテールによって飛来する大小数多の石礫の数々! その数の多さ、細かいものまで含めればとても避け切れるものではなぁい! しかししかし、あのルカリオ! ボーンラッシュのホネを回転させて円盤の盾のように見立てることによって飛来する礫を弾き飛ばしている!』

『しかし、あのホネの盾は本来なら、あの礫を弾き返すには厳しいものがあったでしょう。これは、先程のグロウパンチがここで生きましたね』

 

 そう。グロウパンチは攻撃を一段階上昇させるという追加効果を百パーセントの確率で発動させる。おそらく今ならつるぎのまいを二回舞ったぐらいに相当するほど攻撃がアップしているぱず。

 これでれいとうパンチを当てられればもうボーマンダを一撃で突破することだって難しくはない!

 

「ボーマンダ、もう一度がんせきふうじ!」

 

 石礫を弾いている最中に再度ルカリオの上から降り注ぐ大岩の数々。でも、このシロナにそう何度も同じ手は通用しないわよ!

 

「ルカリオ、わざわざ食らう必要はないわ! しんそくで以って上に跳びなさい!」

「ファァァ!」

 

 ルカリオは自分に直撃するだろう岩をジャンプすることで回避する。そのままフィールドに落下した岩の上部に足を掛けて、さらに上へ飛び上がった。次にまだ落下途中の岩の一つに見定めて、そこに上手く足を掛ける。そしてまた自分より高い位置を落下している岩に向けて飛び上がった。それらの繰り返しで、ルカリオはうまい具合に、降り注ぐ大岩を足場にしながら跳び移っていき、それらを(かわ)しつつも上に飛び上がっていく。そうしてルカリオはついに中空に躍り出た。

 

「お待ちかねですよ! シロナさん!」

「なんですって!?」

 

 見れば同じくボーマンダもルカリオと同じくらいの高さまでに飛び上がっていた。

 

「ボーマンダ、だいもんじ!」

「チッ! ったく、相変わらずイヤミなガキだ(イヤミが上手ね)! ルカリオ、はどうだん!」

(「……あのー、シロナさん、)(本音と建前が逆になってますよ。)(や○夫じゃないんだから」)

 

 大口を上に向けて反らすボーマンダと両手首を右の腰に持ってくるルカリオ。一瞬の溜めの後に、その大口から吐き出された『大』という字を象った炎の塊と、前方に突き出した両手から放たれた水色の光弾が衝突した。

 なにかユウト君が言っていたようだけど、それは小声だったのと衝突によって起こった大爆発でかき消えて聞こえることはなかった。

 さて、大爆発は黒煙と吹き荒れる爆風を生じさせ、ルカリオはとらわれてしまった。

 

「ルカリオ、しっかり!」

「ファオ! ――ファ!?」

 

 ルカリオの驚きの声に注視すると、あの黒煙の中からボーマンダが超スピードで飛び出してきた。マズイ! ボーマンダの牙がオレンジに輝いている!

 

「ルカリオ! 避けて!」

「ファオオオ!」

 

 ルカリオも必死だけど、空を自由に飛ぶことのできないルカリオに、宙に跳んでいるこの状態をどうにかする力は少々足りなかった。

 

「いけっ、ほのおのキバ!」

「マン、グァ!」

 

 ボーマンダがルカリオの足に噛み付いた。途端、ルカリオの身体全体に炎が走る。

 尤も、その炎はすぐさま消えてしまったけど、ダメージは結構負ってしまったらしく、ルカリオの全身が煤で汚れている。

 しかし、ルカリオの瞳にはまだ力強さが十分に宿っていた。そして左手でカムラの実を齧る。二口で飲み込むとルカリオの体が赤く発光した。

 

「今よ、ルカリオ! トドメのれいとうパンチ!!」

 

 素早さも回復し、胸を反らして右手を振り被ったルカリオ。その拳には冷たい冷気が宿っていた!

 

「ボーマンダ、そのまま上空に掬い投げろ!」

 

 ボーマンダはその首をグルンと回すようにしながら、下から掬い上げるような軌道で以て、ルカリオのれいとうパンチを躱しつつ、ルカリオをさらに上へと放り出した。

 

「こっちこそトドメだ! いけ、ボーマンダ! かえんほうしゃ!」

「ルカリオ!! れいとうパンチよ!! 頑張って!!」

 

 グルグルと回転しながら上空へと上がるルカリオに対してかえんほうしゃが迫りくる。

 

「ファ! ファオオオオオ!!」

 

 ルカリオはグルグルと回る視界の中であろうと、それでもかえんほうしゃに迎え撃とうという気構えを見せてくれていた。しかし、その冷気を纏った拳を振りかざそうとしたところで無情にも炎の波に呑まれる。私には最後のその、女の子なのに最後まで諦めることのないその雄叫びが耳に残った。

 

 

 * * * * * * * *

 

 

 ルカリオを背に乗せたボーマンダがフィールドに降り立つ。ジャッジの人がそのボーマンダに走り寄った。ボーマンダは静かにじっとルカリオを見つめていた。

 

「ルカリオ、戦闘不能!」

 

 ジャッジの判定を受けてボーマンダは一声鳴くと、ユウト君の方に向き直る。彼が頷くとそのままそろそろとボーマンダは私に近づいてきた。

 

「ホォ」

 

 そして、優しげな声で一声鳴いて背に乗せたルカリオを下した。

 

「ファオ」

「マンダ」

 

 やや身体を起こして弱々しい声でルカリオが鳴くとボーマンダも鳴き返す。それにルカリオは口元が緩んでまるで笑ったかのような様子を見せながら身体を横たえた。

 

「ありがとう。ボーマンダ」

 

 ボーマンダは気にするなとでも言うかのように首を横に振るとそのままフィールドの中央に戻っていった。

 

「ルカリオ」

「ファァ」

 

 負けちゃってごめんなさいとでも言っているのが手に取るようにわかる。だけど、私はそんなことはどうでもよかった。

 

「いいのよ。あなたは本当によくやってくれたわ」

 

 私のためにここまで頑張り抜いてみせた彼女に、私は途方もない昂揚感と嬉しさを感じていた。

 

「今はゆっくり休んでちょうだい」

 

 私はルカリオのモンスターボールをかざして彼女をボールに戻した。

 ボールを腰のボールホルダーに戻すと、目を閉じて一度大きく長く、横隔膜を意識して動かすようにして息を吸い、そして同じようにしてまた大きく長く息を吐いた。

 頭の中はさらにクリアになった。

 

「さあ、彼女の頑張りに報いるためにも奮励していきましょう!! 勝負はここからよ!!」

 

 




ルカリオ「かめはめ波!」
シロナ「いいえ、操気弾よ!」
ボーマンダ「いや、ただのはどうだんだぞ」


シロナ
×ルカリオ(カムラの実)、×ガブリアス(ラムの実)、ロズレイド(くろいヘドロ)、ミロカロス(????)、他2体

ユウト
カポエラー(????)、×モンジャラ(しんかのきせき)、ギャラドス(????)、ボーマンダ(????)、他2体

※試合の流れを大まかにあらすじっぽく書こうとしてみましたが、挫折してしまいました。

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