ポケモン世界に来て適当に(ry   作:kuro

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挿話6 テンガン山へ シロナ ヒカリ

 私はユウト君から連絡を受けてリーグに説明・動員を掛けると同時に、カンナギの長老を務めるおばあちゃんに現状を説明した。小さな町とは、いえそこは他の町の首長と立場は同じ。なので、この際各町でギンガ団の一斉摘発を行ってもらうつもりだ。実際、おばあちゃんはそれを快く承諾してくれてシンオウ各地の都市長に連絡を取り、要請を行ってくれている。

 

「いきなりな話なのにずいぶんと話が早く進むわね」

「なに。もともとシロナちゃんから、ギンガ団のことは聞いとったでな。そういった話は以前からあったのじゃ。むしろ、ポケモンリーグからの要請もあるのであれば、渡りに船といったところじゃな。さ、シロナちゃんもグズグズしてないで行っといで」

 

 ということで送り出された私は、トゲキッスの背に乗って、エイチ湖へ飛んでいる。ふと、左手首のライブキャスターが鳴りだした。

 

【シロナさん】

「ゴヨウ!」

【シロナさんの要請を受け、全部署が動き出しています。ポケモンリーグ本部には僕が残り、リーグの総指揮を取ります。三つの湖には、それぞれ近くのジムリーダー数名で向かうよう通達を出しました。他の四天王のお三方にはテンガン山に向かってもらっています。またシンオウの各首長との連携は調整中です】

「そう。何かあったら連絡を。私は今エイチ湖に向かっているから」

 

 私はエイチ湖への道程を急いだ。

 

 

 * * * * * * * *

 

 

 いつ来ても真っ白な雪に覆われているシンオウ地方北部に存在する湖、エイチ湖。湖面はただ風の通り過ぎる道と化している以外、何もなく、私は何か痕跡がないかと岸辺周辺を捜索していた。

 

「ん? 洞窟でもないのにあんなにたくさんのゴルバット?」

 

 それらを見かけ、そちらに歩を進める。するといくつかの人影が見えてきた。あの特徴的な格好は忘れようにも忘れられない。ギュッとブーツが踏みしめる僅かな音に他とは違う、一人の女性が振り返った。

 

「あなたたち、ギンガ団ね」

「そういう貴女はもしや、シンオウのチャンピオンマスターさまでしょうか。ふぅ、この方だけでしたら大したことはなかったのですけど、これは聊か厄介ですわね」

 

 確認を込めた問いかけにため息交じりに答えてきた。それと同時に他の団員たちが私に注目し始めるが、私はマーズが言った『この方』の存在が気にかかった。

 

「……ちっくしょうめ、ギンガ団!」

 

 すると、あの女の向こう側に、地面に膝をついてうなだれている一人の男の子がいた。あの金髪に左右が跳ねた髪形は、たしかヒカリちゃんの知り合いの、何だか慌ただしい子だったかしら。

 ここら一帯がなにやら、人のものはもとより、明らかに人の靴跡ではない足跡で踏み荒らされたり、雪がなくなっていたりしている部分があるので、彼はギンガ団を止めるためにポケモンバトルをしたのだろう。だが、結果については彼の様子を見れば見当はついてしまった。

 

「マーズ様、撤収準備完了いたしました」

「わかりました。そういうことですから、チャンピオンさま、この場は失礼致しますね?」

「待ちなさい。ユクシーはどうしたの?」

「ユクシーですか? それはコチラのことでしょうか?」

 

 マーズとやらの視線の先には、

 

「くっ! 今すぐ、ユクシーを解き放ちなさい!」

 

透明なケースに入れられてもがき苦しむユクシーの姿。

 私はスッと腰の辺りに手が伸びた。

 

「全員出てきなさい!」

 

 ごく自然に手持ちの六体、ガブリアス、ミロカロス、ルカリオ、トゲキッス、ミカルゲ、ロズレイドを出していた。

 

「ホントは手荒なことはしたくないんだけど、この際は仕方がないわ。ユクシーをここに置いて、すぐさま警察に自首しなさい。既にシンオウ各地の警察や、ポケモンリーグ本部がギンガ団壊滅に動いている。もうあなたたちに逃げ場はないわ」

「果たしてそうでしょうか? うふふふ。出てきなさい、フーディン、ブーバーン、ゴルバット!」

 

 出てきたのは三体のポケモン。ギンガ団員のゴルバットも合わせると数の上ではあちらが多いが、ってゴルバットたちを戻した?

 いったい……まさか!?

 

「ブーバーン、えんまく! ゴルバット、くろいきり!」

 

 しまった!

 彼らはこっちの視界を塞ぎ、脱出するつもりなのだ! 彼らはユクシーさえ手に入れれば、もうここには用はない。

 

「くっ、マズい! 全員でくろいきりとえんまくを吹き飛ばしなさい!」

「フーディン、テレポートですわ!」

 

 黒く視界を覆う煙の中で、そんな声が聞こえた。

 そして、それらを吹き飛ばした後に残ったものは白い雪上に多数残る様々な足跡だけだった。

 

 

 * * * * * * * *

 

 

 その後、スズナ、そしてなんとメリッサさんが来て(キッサキシティのコンテストに出場しているときにスズナに連れ出されたらしい)粗方の事情を説明しているとライブキャスターが鳴りだした。

 

「ハイ、こちらシロナ」

【あたしです、ヒカリです! シロナさんは今はどこに!?】

「エイチ湖よ。ユウト君からはある程度聞いたわ。ヒカリちゃん、今はシンジ湖よね? エムリットは?」

【スミマセン、連れ去られてしまいました】

「そう。こちらもよ。とにかく、今は情報を摺り合わせましょう。ユウト君はどうしたのかしら?」

【そのことなんですが、実は大変なことが起きたんです!】

 

 そこから私はユウト君のリッシ湖での顛末を聞いた。

 正直信じられないようなことだったのだが、話の途中、ボロボロのギンガ団幹部をくわえ、ユウト君のバックを持って現れたボーマンダとゲンガーを見て、ヒカリちゃんの話が本当のことであると認識した。

 

「そんな……! あのユウト君が……!?」

「オゥ、とても残念ネェ……」

「マジかよ……」

 

 他の三人もライブキャスターからのヒカリちゃんの話にショックを受けていて私の様子にはあまり気づいていなかったと思うが、

 

「本当に……本当に……残念ね……」

 

私は思わず、ポロリと零していた。

 正直、彼にはかなり好印象だったので、年下だけど狙ってみてもいいかな、と考えたりもしていた。

 

【それで、シロナさん! これからテンガン山のカンナギ側に来てください!】

「何かあるの?」

【ハイ! ギンガ団の目的であるディアルガとパルキアを出現させる場所がテンガン山にある、やりのはしらという神の祭壇なんだそうです。やりのはしらに行くには、テンガン山のカンナギ側から行くのが一番近いんだそうです】

「わかったわ」

 

 ふぅー、と一息つく。何だか心がモヤモヤとしていて晴れ渡らない。

 

【あの、シロナさん】

「なに?」

 

 私は暗い気持ちを抱きつつ、何気なく、ヒカリちゃんに先を促した。

 

【あたしたちもパルキアに用が出来たんです】

「パルキアに?」

【ハイ】

 

 その先のヒカリちゃんの話は、聞いているうちに自分の眼が次第に大きく見開かれていくことになった。

 

 ユウト君は異空間にアグノムと共に取り込まれたという。

 シンオウ地方の伝説のポケモン、ディアルガ・パルキア。

 ディアルガは時間の神。そしてパルキアは『空間』の神。ついでに言えば、湖の三体、アグノム・ユクシー・エムリットは互いに影響し合う三体である。そのうちアグノムがユウト君と一緒に異空間に取り込まれ、ユクシー・エムリットがギンガ団と共に居り、その二体がパルキアに関係するやりのはしらにも向かう。

 ということは、ひょっとすると——

 

「ヒカリちゃん」

【はい?】

「ありがとう」

【いえ、あたしも似たような気持ちですから】

 

 うん? 似たような気持ち?

 

 ……

 

 …………あー、今はいいや。後で考えよう。

 

 ジムリーダー二人をエイチ湖に残して私はユウト君のポケモンたちと共にテンガン山に向かった。

 

 

 

 *†*†*†*†*†*†*†*†

 

 

 

 シロナさんたちと合流したあたしやラルトスたち。ちなみに、リッシ湖にいたというユウトさんのポケモン二体も合流し、ユウトさんのポケモンは六体すべて揃っていた。

 

「さて、世界の危機とやらを止めにいきますか!」

「あなた、相変わらず軽いわね」

 

 この赤いアフロの愉快な人は四天王の一角をなすオーバさんだ。たしかにシロナさんの言うように若干軽いかもしれないが、下手をすれば重くなりガチな現状を考えると、こういう場面でこのような人は貴重だと思う。

 なお他の四天王の人たちやジムリーダーも来ていますが、他の出口から入り、空以外の脱出路を遮断しているそうです。ちなみにハンサムさんも其方に参加しています。あたしたちはアカギやパルキアたちに用があるため、やりのはしらに向かうのですが、ハンサムさんが自分のポケモンでは足手まといになるんだとか。

 

【こちらゴヨウです。捜索隊の一隊がギンガ団のものと思われる大型ヘリの一団、といっても三機ほどですが、発見し、捕獲しました。見張りについていた団員についても同じです】

「そう。引き続き頼むわ」

【しかし、彼女も連れて行くというのは……】

「大丈夫よ、心配ないわ。私やオーバがキチンと面倒見るし、いざとなれば頼りになるボディーガードもいることだし。だいたいヒカリちゃん自身、相当なモノなのよ? あなたもウカウカしてられないほどね」

【なるほど、そういうことなら。とにかくお気をつけて。オーバさんもキチンとレディをエスコートしてくださいね】

「おうよ! 任しとき!」

 

 シロナさんはこちらを向いて笑顔でウインクした。あたしは腰を深々と折り、お辞儀をした。

 

「さあ行きましょう。ヒカリちゃん、道わかる?」

「ラルトスが知っているみたいです。ラルトス、お願いできる?」

「(ある程度まで出来るわ)」

「じゃあ、お願い」

 

 シロナさんの質問に対して、あたしはラルトスに聞くと、頭の中にそうラルトスの声が響き渡った。

 

「コイツは……テレパシーってヤツなのか?」

「そうね、初めて感じたわ」

 

 初めてのそれに二人はさっきのあたしみたいにビックリしている。尤もそれは今は後にしたい。

 そしてラルトスがサイコキネシスで浮き上がると、あたしたちの前をあたしたちが走る程度の速さで飛び始めた。あたしたちも辺りを霧が立ちこみ始める中、ラルトスを追いかけ始めた。

 

 

 * * * * * * * *

 

 

「(ヘラクロス、かいりきからのかわらわりであの大岩を粉砕しなさい)」

「ヘラクロッ!」

 

 あたしが思ったこと。それはユウトさんのポケモンのレベルについてだ。どのポケモンも凄まじいまでの強さを秘めている。先ほどはギャラドスのアイアンテールで塞がれていた入り口を邪魔な大岩ごと粉砕。崖を越えるためにラルトスやゲンガーがサイコキネシスを器用にコントロールして崖上まで浮遊させる(狭い場所だったので、飛行タイプのポケモンでそらをとぶことも難しかったため)。そして今だってあたしの身長の二倍くらいの大きさはある頑丈そうな大岩をヘラクロスがかわらわりで粉々と言っても差し支えがないくらいに粉砕させた。この中であたしが持っているポケモンはギャラドスだけだけど、あたしのギャラドスにアレはまだムリだろう。

 

「つえぇなぁ、このポケモンたちは」

「まったくね」

「くぅ〜、こりゃあリーグでの対戦が待ち遠しいぜ!」

 

 その強さはチャンピオンや四天王すらも認めている。改めて、ユウトさんがすごい人なんだと実感した。

 

「おっと、ここから先は行き止まりだ」

 

 大岩が砕け、先に進もうとすると何やらそんな声が聞こえた。煙が晴れてくるとあたしたちが知らないギンガ団幹部と思われる人物がいた。

 

「あなたは?」

「オレか? オレの名は」

「そっ、じゃあね」

「ってうぉい、待ちやがれ! まだオレの紹介が済んでねぇ!」

 

 何やら若干コントじみたやり取りで、彼が塞ぐ道を抜けようとするシロナさん。どうでもいいけど、シロナさんってやっぱり天然?

 

「オレの名は」

「ジバコイル、優しく10万ボルト!」

 

 あたしもシロナさんに乗っかってみようと思い、ジバコイルに10万ボルトをするよう指示。ちなみにこのジバコイルは、レアコイルがテンガン山内という特殊な環境で戦わせていると進化するとユウトさんに習っていたので、それを実践しました。さらに言えば、そのときオーバさんが「すげー珍しいな!」みたいなこと言っていたのですが、このことってあまり知られていないのかな。シロナさんは研究以外の時間はだいたいあたしたちと一緒にいて、ユウトさんのポケモン講座を聞いてるから知ってるだろうし。

 

「て、テメェら……!」

 

 うわ、10万ボルト食らっても平然としてる!

 

「もう許さねぇ! 行け、ドータクン!」

 

 出てきたドータクンは浮遊していた。ということは特性は『ふゆう』か?

 

「ここを通りたかったら、このオレ様を倒してからにしな!」

 

 そう名も知らない彼が言い放ったのだが、

 

「(うざったい)」

 

そんなラルトスの声が響いてきた。

 そして光に包まれたと思ったら、あたしたちは彼の後方に移動していた。これはひょっとしてテレポート?

 

「好都合ね、このまま走り抜けましょう!」

「ハイ!」

 

 そうしてあたしたちは先に見える明かりに向かって走り始める。おそらくあそこがこの洞窟の出口で、かつ、ギンガ団の幹部らしき人がいるということは、アカギがこの先にいるのだろう。

 

「そうはいくかよ!」

「おっと! そこまでだ。こっから先は通行禁止だよん」

 

 彼の足はオーバさんが止めてくれるらしい。

 

「頼んだわよ、オーバ!」

「わかってます。すぐに追いついてみせますよ」

 

 やっぱり彼は頼もしい。

 

「オーバさん、頑張ってください!」

「OK! こんなかわい子チャンに頼まれたら張り切るしかないなぁ!」

 

 そうしてあたしたちはあの出口に向かい、この洞窟を駆け抜けた。


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