ポケモン世界に来て適当に(ry   作:kuro

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挿話5 シンオウの危機 ヒカリ

 ヨスガジムでレリックバッジをゲットしたあたしたちは主だった町としてノモセ→ナギサ→トバリ→キッサキ→ミオと回り、順調にさらに三つのバッジを手に入れることが出来た。数が合わないのには理由がある。

 実はノモセシティではジムリーダーが不在、ナギサシティに至っては入ることもできなかったので、ジム戦が出来なかったのだ。だからこの二か所は後回しということにした。

 それから、もちろんジム戦だけを目指してきたわけではなく、むしろ、(ユウトさんが率先する形で)ズイタウンや他の町、名所などへの寄り道は元より、なんと街道から外れたところや明らかに人跡未踏っぽいところなどにもズンズン踏み入っていったりもした。

 ユウトさん的には図鑑を完成させるためということみたいだが、そのお零れみたいな形として、あたしのポケモンたちも増えてきたので。

 ということで、今のあたしの手持ちのポケモンの紹介。

 まずは言わずもがな、ポッチャマ。

あたしの一番の相棒でエースの一人。最近はユウトさんのラルトスみたいにボールから出していることがほとんどだったりする。

 次にリザードン。一番のエースといっても過言ではないほどで、ジム戦で困ったときは一番お世話になっていたりする子。

 三番目にムクホーク。もはや特攻隊長とでもいうべき存在で、その強力な技で苦手な鋼タイプにも果敢に立ち向かっていく。

 四番目はレアコイル。元はタタラ製鉄所溶鉱炉近辺に一体だけいた個体のコイル。溶鉱炉の近くにいたせいか、弱点のはずの炎タイプに耐性がある子で、ユウトさんに『リアルチート』の称号を貰っている。ただでさえ鋼は耐性が優秀なのにそれが更に一つ有効打が消えるというのだから、それも納得の評価だ。

 続いて、ニューフェイスの紹介。

 まず、エルレイド。この子についてはユウトさんからラルトスのタマゴを貰い、孵したのだ。♂で本人はエルレイドになりたがっているようだったので、頑張ってめざめ石を探して進化させた。あのラルトスの子供というのは伊達ではないらしく、素晴らしく頼りになるエースの一人だ。

 ラストにして、ニューフェイス二人目はムウマ。ハクタイの森でゲットしていた子で、トバリジム戦では大活躍してくれた。

 今の手持ちは以上だけど、他にベトベターやギャラドス、ウソハチ、ゴンベ、珍しどころではロトムなんかもいる。この子たちはユウトさんとオーキド博士という人の厚意で博士の研究所に預かってもらっている。尤も、みんなあたしに会いたがってくれているらしく、頻繁に交換して旅をしている現状だ。

 また、この旅の中でギンガ団とのトラブルもかなり進行した。あたしたちの前にはギンガ団下っ端はもちろん、ギンガ団幹部、果ては、シロナさんの故郷カンナギタウンで、ギンガ団トップのアカギも現れた。マーズやジュピターら幹部のポケモンたちとはなんとか渡り合うことは出来たが、アカギのポケモンは今のあたしには強すぎた。経験というかパワーが違いすぎたのだ。ユウトさんが追い返してくれたのだが、そのときあたしは、もっとポケモンと自分自身を鍛えなければならないと痛感した。

 

 それ以外にもいろいろとあったが、とにかく、そんなこんなでミオシティで六つ目のバッチをゲットした後、ミオ図書館にて、

 

「あら?」

「ん? おお、キミたちか。調子はどうだね?」

「ハンサムさん。お久しぶりです」

 

ハンサムさんと出くわした。

 彼は単独でギンガ団を追っている国際警察の人で、ユウトさんとのつながりから知り合った形だ。

 

「あれから、何か分かりましたか?」

「まあ、そこそこはね」

 

 以前マーズから聞いていた目的についてはほぼ裏は取れたらしい。ただ、シンオウの伝説のポケモンを支配するとして、それをどう行うのかが見当がつかず、アカギが調べていたという神話を自分でも調べていたみたい。

 

「ハンサムさん、オレ少し気になることがありまして」

「ふむ、聞かせてくれ」

「以前マーズから聞き出した目的とシンオウの神話の内容はどうしても合致するものではないと思うんです」

 

 そうだったっけと思ったあたしは、都合のいいことに、シンオウの神話が書かれているハンサムが閲覧していた資料に目を通した。

 そこには【始まりの話】というタイトルが付けられていて、

 

 ――初めにあったのは

 ――混沌のうねりだけだった

 ――全てが混ざり合い

 ――中心に卵が現れた

 ――零れ落ちた卵より

 ――最初のものが生まれ出た

 ――最初のものは

 ――二つの分身を創った

 ――時間が回り始めた

 ――空間が広がり始めた

 ――さらに自分の体から

 ――三つの命を生み出した

 ――二つの分身が祈ると

 ――「物」と言うものが生まれ

 ――三つの命が祈ると

 ――「心」と言うものが生まれた

 ――世界が創り出されたので

 ――最初のものは眠りについた

 

という内容だった。

 たしかにここからは“支配”という文言は浮かんでこない。いや、むしろ支配というよりは“誕生”という言葉の方がしっくりくるような?

 

「もし、神話をキチンと調べていたのなら、シンオウ地方の支配ではなく、シンオウ神話の再現にあるのではないかと思うんです」

「というと?」

「神話の再現、つまりは――」

 

 

 そのとき、体の中心に向かって突き上げてくるような強い揺れが辺りを襲った。

 

「ちょっ、地震!?」

「結構デカイぞ!」

「みんな気をつけろ! 本棚からはなれるんだ!」

 

 周りの人たちは閲覧席の下に潜り込んだり、ハンサムさんの指示に従う形で、危険物から避難する。

 

「……まさか……」

 

 揺れの最中、ユウトさんの口からそんな声が聞こえたような気がした。

 そうして揺れが収まってすぐ後、図書館のテレビを付けた人がいたのか、今の地震についての情報を報じていた。

 

『今の地震の震源地はリッシ湖周辺と思われます。なお、――』

 

と報じられたときだった。

 

「ヒカリちゃん! ハンサムさんも!」

 

 あたしの手を握り走り出すユウトさん。いつのまにかラルトスはユウトさんの頭の後ろに移動していた。いつものどこか余裕のある様は完全になりを潜め、焦燥感が全身からにじみ出ていた。

 

「どうしたんだね、ユウトくん!?」

 

 ユウトさんのその様子に、たまらずあたしたちの後を走るハンサムさんが問いかける。

 

「世界崩壊の始まりです!」

「世界崩壊!?」

「ラル!?」

「いったいどういうことだい!?」

 

 階段を駆け下りるあたしたちを見て、図書館利用者が『一体なんだ?』と目を丸くし、図書館職員の人の「あぶないですから走らないでください!」という声が後ろから追い抜いて行った。

 

「もし、オレの仮説が正しければ、ヤツらは新たな世界を創り上げようとしている! なら、今まであった世界はどうなる!?」

「どうなると言うのかね!?」

「古い世界の上に新しい世界が出現する! それはつまり新しい世界が古い世界を押し潰すってことだ!」

 

 古い世界、つまり今の世界が新しい世界によって、消滅させられる!? だから、世界崩壊ってこと!? なんて恐ろしいことを!?

 

「だから、ヒカリちゃん、ハンサムさん! 頼みがあるんだ!」

「い、いったいなんだね!?」

「二人は今すぐシンジ湖に飛んで、シンジ湖にいる伝説のポケモン、エムリットの無事を確認してくれ! その際、ギンガ団がいたら全力でぶっ潰してくれ! 頼んだぞ!」

「わかった!」

「ユウトさんは!? どうするんですか!?」

「オレは一度ポケモンセンターに寄ってポケモンを入れ替えてから、リッシ湖に行く! 行ってアグノムの無事を確かめる!」

「そうか! 気をつけるんだぞ! では、我々も行こう!」

「はい!」

 

 そのままなし崩しにあたしたち二人はシンジ湖へ飛び立ち、ユウトさんはラルトスのテレポートでミオシティのポケモンセンターへ向かった。

 

 

 * * * * * * * *

 

 

 シンジ湖上空に到達したあたしたち。湖面にはエムリットがいた。まだ無事なようであった。そのまま湖岸に視線を移すと、

 

「あれは、ギンガ団か!?」

「コウキも!? なんで!?」

 

ギンガ団の幹部とその下っ端数人、そしてナナカマド研究所で助手をしているというコウキが見えた。あたしたちはそのまま湖岸に飛び降りた。

 

「ありがとう、リザードン」

「戻れ、ドンカラス!」

 

 ハンサムさんは乗ってきたドンカラスをボールに戻したようだった。

 

「コウキ!」

「ヒカリか!」

 

 コウキは地面に膝をついてうなだれていた。

 

「あぁら、いつもながらジャマしてくれるガキンチョの一人じゃなぁい。もう一人の坊やはどうしたのかしらぁ? そ・れ・にぃ、お仕事ご苦労様でぇす、国際警察のお・か・た」

 

 ギンガ団幹部の一人、ジュピターが相も変わらずなイヤミったらしい口調で立ちはだかった。

 

「少年、ここでいったい何が起きたんだ?」

 

 見たところ、周辺が荒れている。とするとコウキとジュピターたちがポケモンバトルでもしていたのだろうか?

 

「なっさけないわね~。そんな無様にやられちゃってぇ。弱いって罪よぉ?」

「くっ! 卑怯だぞ! 一対多数なんて!」

「卑怯ぉ? な~んて素敵な言葉なのかしらぁ。わたしその言葉だぁいスキ。だってぇ、勝ちゃあ何でもいいわけなのよぉ。勝てば官軍って言うでしょぉ?」

 

 なるほど。おおよそ見当がついた。

 ジュピターとコウキがポケモンバトルで戦う中、ジュピターの後ろに控えるギンガ団員たちが横やりを入れて、たとえこちらが六体出したとしても対処しきれない数でバトルになり、負けてしまったのだろう。コウキだってシンオウのバッジを集めてるって言ってたから、強者の部類に入る。

 

「ちくしょう。このままじゃエムリットが……!」

 

 見るとさっきまではいなかった夥しいほどのゴルバットの群れがエムリットを取り囲んでいる。相性有利とはいえ、あれだけのゴルバットの群れでは、多勢に無勢、数で圧されてしまう。

 

「いきなさぁい、ドータクゥン!」

 

 マズッ! エスパー技がほとんど効かないドータクンまで! あれじゃ、本当にエムリットだけじゃ、手に負えない!

 

「リザードン、ムクホーク! いくのよ!」

 

 二人に湖のエムリットの援護に向かうよう言った。

 

「ドンカラス、お前も行ってくれ!」

 

 ハンサムさんもドンカラスをエムリットの援護に向かわせた。

 しかし、

 

「ゴルバッ!」

「ゴルバッ!」

「ゴルバッ!」

「ゴルバッ!」

 

たくさんのゴルバットに行く手を阻まれる。

 

「素直に行かせるわたし達だと思うぅ?」

 

 この何とも耳につくイヤミったらしい言い方は、前からもそうだが、あたしのイライラに拍車がかかる。

 

「全員、出てきなさい」

 

 すると残りの四つのボールからポッチャマ・レアコイル・エルレイド・ムウマが出てきた。

 

「みんな、あのバカ女には頭きてるでしょう?」

 

 全員一斉に力強く頷いてくれる。どっかの年増がブチ切れているみたいだけど、ムシムシ。

 

「みんな、あたしたちはユウトさんたちと厳しい特訓を繰り返してきたわ! それを思えば高々数で劣るなんて屁でもないと思わない!?」

 

 これに同じくみんな力強く頷いてくれる。正直数の差は圧倒的なのでかなり厳しいが、ここはみんなを鼓舞して士気を上げるのが吉だろう。

 

「なら、あの年増のボケ女のポケモンを筆頭に、全員ぶっ飛ばしてあげなさい!」

 

『だぁれが年増ですってぇぇぇ!?』という金切り声をBGMにして全員が一斉に飛び出した。


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