私と13   作:遠い空

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あらすじ

私は黄色の13と決着をつけた。結局は負けてしまったが私はそのほうが良かったのだ。私の撃った銃弾が黄色の13の肩に命中し、怪我をしてしまったのでエルジアへと戻っていった。その日の夜にサンサルバシオンが解放された。私は黄色の13とメビウス1の勝負を見届けるため、エルジアへと向かうことを決意した。


第7章 確信

 私はエルジアへ向かうため、サンサルバシオンを出る準備をしていた。

「何をしてるの?」

 酒場の娘が尋ねてきた。

 私は全てを話した。

 そしたら酒場の娘もエルジアに行くと言い出した。

 彼女はエルジアのことを相当憎んでいたはずだが…。

 やはり片思いの黄色の13にでも会いたいのだろうか…。

 

 

 私と酒場の娘は酒場一家に私の親戚がいるロスカナスに行くと嘘をついて酒場を後にした。

 サンサルバシオン郊外へと進む中、墜落した戦闘機の残骸を見つけた。

 よく見るとそれは黄色の塗装が施された戦闘機だった。

 あの日は黄色の13はすでにサンサルバシオンを出ていたはずだから、きっと黄色中隊のルーキーの機体だろう。

 さらに進むと黄色中隊の野戦滑走路についた。

 

 

 かつては黄色中隊が甲高いエンジン音を立てながらとびたっていたのだが…。

 

 

 今や誰もいないもぬけの殻となっていた…。

 

 

 戦闘機がないと高速道路と全く変わらなかった。

 長い間野戦滑走路として利用していたため少し違和感があった。

 

 私たちはしばらく西の方角に歩き続けていた。

 すると前方に人影が見えた。

 肩にはエルジア陸軍のワッペンがあったため、撤退中の部隊だということがわかった。彼らの手には武器がなく、途方もなく歩き続けているように見えた。

 私たちは恐る恐る声をかけた。そして黄色の13に会いたいと言った。

「黄色の13ならエルジアの首都ファーバンティにいるよ。子供達だけじゃ大変だ。あと少し進んだところで車両を持っている部隊と合流するから一緒に行こう。」

 エルジア兵は疲労困憊だったがそれでも笑顔で答えてくれた。

 このエルジア兵の情報によると、今撤退中の部隊全てがすでに戦意を喪失しており、逆に反戦意識が高まっていた。

 それに対しファーバンティに陣を置くエルジア軍総司令部とそこに駐留しているエルジア軍はまだISAFに対抗し続けるつもりらしい。

 黄色の13はファーバンティ郊外の空軍基地にいるらしく、新たにルーキーを編入して黄色中隊を編成したらしい。歩き続けたのち、エルジア軍の車両と合流し黄色の13がいるところへとむかった。

 

 

 

 

 数日後、黄色の13のところへとたどり着いた。

 私たちの姿を見て彼は驚いていた。

 やってきた理由を全て話して黄色の13を納得させた。

 彼自身もどうやら私たちに会いたかったらしい。

 しかし話せる時間は少なかった。新しく編入したルーキー達の訓練をしなければならなかったからだ。

 そうなるのも無理はなかった。

 エルジア軍総司令部はサンサルバシオンの再奪還を計画していたからだ。

 ルーキー達はサンサルバシオン再奪還に関してはやる気に満ちていた。

 特にルーキー達のリーダー格の男【ジャン・ルイ】はエルジアにかなりの愛国心をもっていた。ISAFを潰すためなら手段を選ばないような男だった。

 やはり黄色の13とルーキー達の関係は良くなく、特にジャン・ルイとは考え方が合わないため仲が悪かった。

 

 

 

 

 次の日、ISAFはエルジアに対し停戦条約を結ぶことを表明したが、エルジアは拒否。再びISAFに攻撃を開始した。

 サンサルバシオンへ侵攻したエルジア軍だが、戦力差は歴然でありメビウス1の攻撃によって全て全滅したらしい。

 逆にエルジアの暴挙を止めるべくISAFはエルジア領国内に侵攻を開始した。

 これに対しエルジアは、切り札である黄色中隊の戦力をさらに強化すべく最新鋭の戦闘機を譲渡した。

「この機体は【X-02 Wyvern】という最新鋭のステルス艦載機です!我々が長い研究を重ねて完成させたエルジア航空技術の結晶です!Su-37よりも高い機動性を誇り、これを使えばリボン付きの死神を木っ端微塵にできます‼︎大切なことなのでもう一度言います‼︎これを使えばリボン付きの死神を木っ端微塵にできます‼︎」

 男性の割りにはかなり高い声をしているエルジア軍航空開発部門のいかにもお偉いさんっぽい、タカタという男が自信をもってアピールしていた。

 この猛烈なアピールに押されてしまったのか、黄色の13は渋々承諾した。

 黄色中隊は早速最新鋭機に乗ってテストフライトをした。

 地上の無線からルーキー達が喜んでいる声がした。

 しかし、黄色の13は無口だった。

 テストフライトを終えて基地に帰ってきた。ルーキー達はこの機体を喜んでもらうと言った。

「この機体はすげーや!これで黄色中隊に敵なしだ!リボン付きなんかあっという間にぶっ殺せるぜ!ヒィーハァー‼︎」

 ジャン・ルイが心の底から喜んでいたのに対し、黄色の13はまさに正反対の気持ちだった。

「確かにこの機体は強い。賞賛するに値する機体だ。だがこんな機体を使ってしまえばメビウス1との勝負が非常につまらなくなる。俺には必要ない。俺には長年一緒にしてきた愛機がいる。」

「隊長、リボン付きと勝負を楽しむのはやめてください。あんなヤツは我々の敵なんですよ。さっさと殺してしまえばエルジアはISAFの野郎どもに手こずらなくて済んだのに!あなたのやっていることはおかしいですよ!そもそも【メビウス1】っていう呼び方やめてください!」

 ジャン・ルイが反発する。

 ルーキー達が言うにはいつもメビウス1のことで口論になるらしい。

「お前は何もわかっていないな。メビウス1はエルジア軍が恐れるエースパイロットだ。ということは俺を倒せる可能性が高い。俺は俺を超える強者と勝負を楽しみたいのだ。なぜ勝負を楽しまない。逆に俺はそのことが理解できん。お前達がX-02に乗るか乗らないかは自由だが、俺は絶対に乗らない。何が何でもだ。」

「あなたは国のことがどうでもいいのですか!ISAFに乗っ取られても平気なのですか!」

「俺には関係ないことだ。」

 そう言って黄色の13は立ち去った。

「なんなんだ!あのクソ隊長は!国のことなんてどうでもいいのかよ!」

 ジャン・ルイはゴミ箱を蹴飛ばして部屋へ戻っていった。

 

 

 

 

 結局、黄色の13以外は最新鋭機に乗り換え、新たな黄色中隊が完成した。

 この事実を知ったエルジア軍総司令部は黄色の13を総司令部に召喚させた。

 黄色の13には謹慎処分がくだされ、全ての階級、地位を剥奪された。黄色の13は総司令部がある限り、戦闘機に乗ることも、戦うことも許されなかった…。

 だが黄色の13は残念そうに見えなかった。

「ヤツなら、メビウス1なら総司令部を派手にぶち壊してくれるだろう。その時がヤツと勝負する時だ。」

 彼は総司令部陥落を確信している様子だった。

 確かに総司令部が陥落すれば黄色の13に降りかかった謹慎処分は無効になる。黄色の13はその日がやってくることを狙っていたのだ。

 私と酒場の娘は彼を見守ることしかできなかった。

 

 




今回も読んでいただきありがとうございます。楽しみにしていた方々へ、投稿がいつもより遅れしまい申し訳ありませんでした。これから色々と忙しくなると思うので投稿が遅れることが多くなると思いますが、どうか自分の小説を嫌いにならないでください‼︎(古臭くてすみません…。)

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