私と13   作:遠い空

11 / 13
第11章 誇り

 私が経験した戦争はのちに【大陸戦争】と呼ばれた。

 2005年9月19日は大陸戦争終戦記念日と定められた。

 ISAFはユージア諸国を復興させるため、オーシアやユークトバニアと手を組んで復興作業に取り掛かった。

 エルジアに関しては、途中で【自由エルジア】によるクーデターが起きたが、メビウス1の活躍で1週間もかからず鎮圧した。

 その後、エルジアは平和活動を目的としてISAFに加入。

 ユージア大陸は平和への道へと進んでいった。

 

 

 

 

 私は戦争の後、身内をすべて戦争で失ったため、しばらくは酒場一家と共にしていた。

 私の通っていた学校も再開し、再び学校生活が始まった。

 学校を卒業したのち、私は戦争で家族を失った人々が集まって反戦活動をしている組織【美しき平和の会】に入った。

 理由は、人間として強くなり、弱い人間を助けたかった。ただそれだけだった。

 私は酒場一家と離れ、その組織があるファーバンティへと向かった。

 ファーバンティは終戦となった場所なのでいろんな意味で縁がある場所だ。

 この頃、【環太平洋戦争】が起きており、私たちの組織はインターネットに反戦活動をアピールする動画を作って流し続けていた。

 実際には予算の問題上、大きな行動をしてはいないが、動画で儲けているため、あと1、2年で本格的な活動ができるだろう。

 

 

 

 

 2015年、私は20歳となった。

 8月30日、アネア大陸で戦争が起きた。

 この世界は相変わらず戦争が絶えない。

 アネア大陸の戦争で苦しんでいる人々がいる。

 私たちは動画やアルバイトなどで貯めたお金を出し合い、アネア大陸へ向かうことにした。目的は、反戦活動を含め、辛い思いをした人々に少しでも勇気を与えるためである。

 出発日は10月4日に決めた。アネア大陸の戦争で劣勢なエメリアのケセド島に向かい、活動することになった。

 それまでまだ時間はある。

 終戦記念日前日の今日、美しき平和の会の活動は5日間なく、みんな亡くなった家族の墓参りに向かった。

 早朝、私は家族の墓参りに行く前に、黄色の4、黄色の13の墓参りに行った。

 学校を卒業してから毎年、墓参りに行っていた。

 10年前に作った小さな墓は今も存在していた。

 

 

 肉体はなくとも、二人の想いのつもったハンカチは、ここに眠っている…。

 

 

 私は手を合わせ目をつぶった…。

 

 

 木々がうなり、小鳥のさえずりが聞こえる。

 

 

 そんな中、隣に誰がいる気配がした。

 目を開けると、ひとりの女性が手を合わせ目をつぶっていた。

 どこかで見たような女性だった。

「久しぶりね。元気にしてた?」

 声を聞いて思い出した。

 この女性は酒場の娘だった。

 彼女と会ったのは何年ぶりだろうか。彼女も墓参りにやって来たのだ。

 酒場の仕事は忙しく、墓参りに行く機会がなかったが、今日酒場が休みらしく、ひとりファーバンティへとやって来たのだ。

 墓参りが終わった後、酒場の娘がサンサルバシオンに行こうと言った。私も墓参りが終わったらサンサルバシオンに行く予定だったので行くことにした。

 酒場の娘は前日に自動車で来ていた。私も自動車で行くつもりだったので酒場の娘のあとについていくことにした。

 

 

 

 

 長い時間をかけ、サンサルバシオンの入口に着いた。

 サンサルバシオンの入口は高速道路のトンネルだ。トンネルを抜ければサンサルバシオンだ。

 オレンジのライトが光るトンネルを走り、トンネルから出ると湖が見えた。

 太陽が西に傾き、オレンジ色になり始めている。

 かつて私の家があった湖だ。

 そして今私が走っている高速道路は黄色中隊の野戦滑走路だ。

 そうなると、今出てきたトンネルは、戦闘機を格納していた格納庫となる。

 

 

 懐かしい記憶が蘇る…。

 

 

 しかし、今は運転に集中しなければならない。懐かしい記憶は後でじっくり思い出すことにした。

 定休日の酒場に着いた。昔とちっとも変わっていなかった。酒場の娘と酒場の中に入る。

 

 

 あの時のままだ…。なにひとつ変わっていない。

 

 

 ギターの音色が脳内で再生される…。

 

 

 銀髪の男と黒髪の黒人女性がいるように見えた。

 

 

 しかし、実体はなく、私の脳裏にしか存在しない。

 

 

 触れようと思っても、触れることができない。

 

 

 私は酒場にいることが辛くなった。

 私は酒場の娘に明日また来ると言って、酒場を後にした。

 私は近くの安いホテルに泊まった。今日は体をゆっくり休めることにした。

 翌日、ホテルを出て家族の墓参りに行った。

 私の大切な人が、家族を亡き者にしたことは、今考えても複雑な気持ちになる…。

 このような経験をした人はきっと少ないだろう…。

 私は墓を後にして、酒場に向かった。

 ついでにそこで昼食をとることにした。

 酒場に着くと、外のテラスの椅子に座って、昼食を頼んだ。酒場の娘がやって来て、注文を聞いた後、私は後で話があると言った。

 話とは手紙のことである。

 私はある人物に手紙を送ることにした。

 黄色の13がその人物にとってどのような存在かを知りたかった。

 その人物とはメビウス1である。彼は黄色の13にとって、最大の好敵手だったからだ。

 終戦記念日の戦いで、どのような気持ちで戦っていたのか、純粋にそれを知りたかった。

 おいしそうな料理がきて、味わって食べたのち、私は手紙を書いた。

 手紙を書いている中、ふと10年前を思い出していた…。

 

 

 

 

 

 

 回想が終わったころ、酒場の娘はひと段落着いていた。

 酒場の娘に手紙のことを詳しく話し、聞きたいことはあるか聞いて、二人の想いをのせた手紙を書き終える。宛先はISAF宛にして、二人でポストに入れた。

 

 

 今日は実にいい天気だ。

 

 

 広大な青空が広がる今日、黄色の13と黄色の4の魂は青空の彼方で何をしているのだろうか?

 

 

 それはわからない。

 

 

 だが、ひとつ言えることはある。

 

 

 あなたと出会えたことを、私は一生の誇りにしていると…。

 

 

 




これでこの小説は最後になります。始めて書いた暇つぶしの小説でしたがどうでしたでしょうか?また別の小説を書くことになると思いますが、こらからもよろしくお願いします。まだ用語集が完成していないので、更新していきたいと思います。今まで読んでいただき、ありがとうございました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。