Muv-Luv Alternative Preliminary Ideal 作:しゅーがく
帰宅して即効書き始めたのですが、一週間ほどかかってしまいました。すみません。
前回、前々回、前々前回に多数のコメントをいただき、修正に修正を繰り返し、やっとのことで修正が終わりました!
今回は......まぁ、いろいろあるんですよ。
目標の毎回10000字近くという目標を掲げてしまった今、それめがけて書いていますが、結構難しいですね(笑)
めげずにがんばろうと思います!
合同演習が終わった次の日、総合デブリーフィングが行われる。合同演習が終わってから、すぐに連絡があって2月5日の朝8時40分からブリーフィング室でするということだ。みちるから終わった後の召集で言われた。
武は、今回の急な合同演習を不思議に思っていた。行われた意図がわからなかったからだ。多分、今回もこの演習を仕込んだのは夕呼だということは簡単に想像できたが、その意図が全く掴めなかったのだ。
最初に武の頭に浮かんだのは、『オリジナルハイヴ攻撃部隊で、全員生還した部隊の実力をまた違う取引の材料に利用しようとしている。その下地作業。』ということだ。『前のこの世界』でもXM3をダシに甲21号作戦を展開している。多分、『この世界』でも同じことをして、帝国軍から戦力を割いて貰っているだろうと考えた。だが、XM3はOSでA-01は部隊。どこにその取引材料になるような点があるのかと考えた。
考えていても拉致があかないこの合同演習の行われた意図は、総合デブリーフィング後にでも誰かに聞くことにした。
「富士教導団A-10合同演習、総合デブリーフィングを始める。」
集合時間に集まったA-01はデブリーフィングをはじめた。合同演習が終わった直後に小隊でのデブリーフィングもやったが、今回は中隊全員でのデブリーフィングだ。
「今回の合同演習では、得点的には勝ってはいたが、性能的に劣っている古鷹にここまで点数を詰められたのは、まだ貴様たちが未熟だということだ。だが古鷹は不知火との併用を目的に作られている。だから、今回の演習は不知火対不知火の演習といっても過言ではないだろう。しかもXM3搭載機だ。苦戦しても仕方ないとは思うが、貴様らの方がXM3搭載機での搭乗時間は長いだろう。実戦も経験している。そんな中、やはり点数で追い詰められていたのは、A-01としてあってはならない。以降、さらに鍛錬に精進せよ。小隊長と白銀は残れ、解散!」
総合デブリーフィングは武が想像していたよりもかなり早くに終わった。多分、小隊別デブリーフィングの後に。小隊長だけで集まった反省会みたいなものがあったのだろう。小隊別デブリーフィングでどこの小隊もほぼ同じ反省点が出てきたからこんなに早く終わったのだ。
「集合!まず、ここにいるものだけに伝えろと香月博士が仰ったので伝えるが、今いる白銀は特殊任務の帰還後に一部の記憶を無くしたらしく、偶に混乱するだろうからフォローしろということらしい。速瀬、宗像、頼んだ。」
みちるは集まっていた武と水月、美冴にそう言った。
「なにぃ?特殊任務後に転んで頭打ったとか?」
水月が面白がって武に突っかかってきた。
「まぁ、そんなところです。」
武はそう返す、以外だったのか水月は不思議そうな顔をした。
「具体的にはどの記憶が欠落してるのよ。」
水月は真剣な顔で武に質問した。
「ここ4ヶ月分で、しかもところどころ覚えてはいるのですが、何があってどうなったといったように詳細なことは覚えてないんですよ。一瞬、若年性アルツハイマーになったのか!?とか言って医療班に見て貰ったくらいですからね。」
武は『前のこの世界』と記憶が噛み合ってないことを遠まわしに言った。
「確かに若年性アルツハイマーみたいだな。では、速瀬中尉とのあーんなことやこ
ーんなことがあったのも忘れてしまったのか。速瀬中尉が無念だ。」
「なっ!どういう意味だ!宗像っ!!」
「ちょ!宗像中尉、意味分かりませんよ?!」
美冴がまた水月をからかい始めた。このやり取りは『この世界』でも変わらないみたいだった。
「貴様らいい加減にしろ。それにまだ伝えてない事もあるのだ。」
みちるは話を脱線されて少しイラっとしたのか、強引に話に戻そうとした。
「白銀の代で国連軍横浜基地衛士訓練部隊の訓練兵教育が停止していたが、再び訓
練兵を募集するそうだ。削られすぎたA-01の補充兵を育成を目的にするらしい。それに伴い、A-01は再編されて新規部隊になる。」
武たちは耳を疑った。訓練部隊の訓練兵受け入れが中止していたのは知っていたが、連隊規模だったA-01が中隊規模になり、A-01の運用の建前が無くなった今、何をしようとしているのか理解できなかった。
オルタネイティヴⅣの完遂する為にあらゆる作戦をこなすA-01の存在価値は、『ただの強い駒』に成り下がっている現在に、夕呼は何をさせようとしているのか。
「元々オルタネイテイヴⅣの特務部隊のA-01が今度は何の部隊ですか?」
武は恐る恐るみちるに聞いた。その返答が武には怖かった。
「オルタネイティヴ計画第1戦術戦闘攻撃部隊別名『第9中隊(伊隅戦乙女中隊)』は
明後日2002年2月7日を以って『オルタネイティヴ第六計画戦術機甲特別攻撃部隊第1大隊第1中隊』に転属する。」
みちるの言っている意味をその場にいた全員が理解出来なかった。全員が転属だということは分かった。だが、『オルタネイティヴ第六計画』という言葉の意味は理解出来なかった。『オルタネイティヴ計画』の延長線上に存在することは理解できたが、オルタネイティヴⅣが完遂された今、オルタネイティヴⅤが取り潰され、これ以上に人類は何をBETAにしてやれるのか全く想像がつかなかった。
「伊隅大尉、『オルタネイティヴ第六計画』って何ですか?名称から察するにオルタネイティヴⅣの延長線上にあることは理解できますが......。」
「オルタネイティヴⅥとは、先日国連総会で決定された地球上と月面に存在するハイヴを量産型XG-70で攻略する計画だ。誘致国はⅣと同じ日本帝国だった為、直属部隊の新規編成する際にオルタネイティヴⅣ直属部隊だった私たちにお声がかかったということだ。」
みちるは事細かに説明をした。武たちは口をポカンと開けて聞いていたが、徐々に理解していった。
オルタネイティヴⅥの発動は当たり前だった。オルタネイティヴⅣの成果である『00ユニット』によるオリジナルハイヴでのリーディングデータや凄乃皇四型の実戦運用での高評価、地球侵略の拠点の崩壊でハイヴでの兵器情報の流出が停止できたことで、現行兵器を運用したままで地球上のハイヴは全て殲滅できる。そんな事を言った。
「それは本当ですか!?」
武はこれまで聞いたことが信じられずに聞いてしまった。『前のこの世界』での記憶には、『オルタネイティヴⅥ』などといった計画は聞いた限りではなかったのだ。
それに、地球上のハイヴを一掃するということは、これまでの人類の領土を取り返すということだ。
「本当だ。香月副指令の研究と、私たちやA-01の英霊のお陰だ。オルタネイティヴ第六計画はすでに発動している。地球上のハイヴが片付き次第、月を取り返す。」
武は口が閉まらなかった。先ほどから何度も思い返したが、『オルタネイティヴⅥ』という単語は『前のこの世界』にはなかった。というか、『オルタネイティヴⅣ』を完遂しなければ『オルタネイティヴⅤ』によってラグランジュ点にて建造中の移民船団が選ばれた10万人程を乗せて旅立ち、地球上のハイヴにG弾が投下される。そして、残った人類は戦う。そういうことしか知らなかった。というか、知らされてなかったのだろう。先の先を見る夕呼なので、そのようなことを考えていてもおかしくはないのだ。
「......っと、取りあえず、転属の連絡ですね。聞くからに転属される部隊はハイヴ攻略を頻繁に行うようですね。その作戦の実働部隊に選ばれたのも、桜花作戦で
全機帰還したからでしょうか?」
武は処理し切れてない『オルタネイティヴⅥ』については考えることを止めて、転属のことを聞いた。後で夕呼にオルタネイティヴⅥについて聞けばいいと思ったのだ。
「その通りだ。フェイズ6のハイヴを陥落させた唯一の部隊だからだ。それに、この第六計画を立案・指揮するのは香月副指令だ。そういったこともある為だと思う。」
みちるの言葉を聴いて驚いた。夕呼が計画立案と指揮を行うことについてだ。だが何故、夕呼だったのか。疑問に思ってすぐに、その疑問は解消された。夕呼の手元には『XG-70系統種の開発・改良データ』があるからだ。ハイヴ攻略に凄乃皇を使うとみちるが言っていたのと、夕呼が立案したという情報から導き出せれる答えはそれしか無かった。
「そうなんですか。了解しました。」
武はいったん、考えるのを止めた。
「白銀は理解できたようだが、二人は思考が止まっているのか?」
みちるは水月と美冴の目の前で手を振った。
「えっ......あっ,,,,,,はい。大丈夫です。」
「話をはじめてから表情を変えませんでしたけど?あぁ、速瀬中尉は理解できずに頭がショートしてたようですが。」
美冴は不敵な笑みを見せていった。
「ちょ......宗像ぁ~?」
「と、白銀が言ってました。」
「言ってません!」
3人でトリオ芸でもやっているのかと疑う位の決まったツッコミとボケを繰り出していた。
「貴様ら......それ飽きないんだな。」
みちるはそういい残すと、解散といって退室した。
「失礼します。」
武はぶりーフィング室がら出てからそのまま夕呼の執務室まで足を運んだ。聞きたいことがあるのだ。勿論、『オルタネイティヴⅥ』についてだ。
奥ではボケーっとパソコンのデスクを見つめる夕呼がいた。
「あら、白銀じゃない。」
夕呼は席を立ち、いつも座って話しをする場所に向かった。
「ちょっと聞きたいことがあって。忙しかったのならまた後日にしますが。」
武もいつものところに向かった。
「ちょーっと暇してたのよ。丁度良かったわ。で、聞きたいことって『オルタネイティヴⅥ』のことでしょ?」
夕呼はニヤニヤしながら言った。まぁ、あんな連絡入れるのは夕呼くらいしかいないということは誰でも分かるだろう。
「はい、具体的な内容を知りたいんです。それに、戦術機については資料室で解決しました。」
武は無駄なことを話さないように努力した。できるだけ夕呼の負担にはなりたくなかったのだ。
「それより白銀、あんた不思議に思わないわけ?」
夕呼は一変して険しい顔つきになった。『前のこの世界』で最初に来た時にオルタネイティヴⅣが切羽詰まってることを伝え、12月25日にオルタネイティヴⅤに移行することを伝えたときの顔だった。
「そういえば、確かに不思議です。先生なら用済みの駒は躊躇無く捨てますからね。」
武は冷静に返したが、内心はとても混乱していた。言われてみればとても不思議だった。確かに夕呼はいらなくなった駒はすぐに処分していた。だが、その情報提供者である『白銀武』でもなく00ユニットの調律のできる『白銀武』でもないのだ。その役目は既に『この世界』に居た『白銀武』が済ませたのだ。なら何故、夕呼は使えなくなった『白銀武』という駒をまだ使うA-01の中に戻したのか不思議に思えた。
「あら、分かってるじゃない。でも、アンタをA-01に戻した理由は分からないでしょ?」
「はい。」
夕呼は険しい目つきからまたもや一変した。今度は喜んでいるようだった。
「それはね、伊隅から聞いたとは思うけど、オルタネイティヴⅥには凄乃皇がいる
のよ。それは分かるわね?」
「はい。地球上のハイヴを片っ端から攻略するんでしたよね?」
「オルタネイティヴⅥではXG-70d凄乃皇四型を使うのよ。ここまで言えば分かるわね?アンタなんか、こんな利用価値が無ければここに置かないわよ。でもね、置くのにはまだ理由はあるわ。でもまだ知らなくていい。」
夕呼はフフっと笑い、脚を組んだ。
「凄乃皇四型!?桜花作戦で大破せずに持って帰れたんですか!?」
「勿論よ。アンタのいた『前のこの世界』じゃないからね。アンタの経験してきた辛い事や悲しい事、要するに『重い因果』はここには無いわ。それに前も言った気がするけど、流出源が無ければ重い因果は流れ込まないわ。だから心配していると思うけど、まりもやA-01の連中は因果によって死ぬことは無いわ。まぁその様子だと心配してなかったようだけど。」
夕呼はまたフフっと笑って言った。確かに夕呼の言う通りだった。桜花作戦後までに誰も死んでなかったことを聞いて、安心してそのまで考えられてなかったのだ。
「まぁ、凄乃皇が健在していて、アンタの利用価値っていったら簡単に想像できるんじゃなくて?」
武はハッと思い出した。武の幼馴染の『鑑純夏』の存在を。『前のこの世界』で00
ユニットとして、非炭素系生物として擬似生体でODLによってBETAの反応路無しに生きていけない体にされた純夏のことだ。
「凄乃皇が健在なのは00ユニットも健在ですね。というか、こっちに戻ってきたっていう言い方はあれですけど、その時にも先生は仰ってましたね。」
「そうよ。というか言った事は今言われて思い出したわ。」
武は腰から崩れるようにガクっとなった。
「今のアンタの利用価値は00ユニットの調律よ。帰る前までの『特殊任務』という名目でやってきたこととなんら変わらないわ。それに前回よりかはその仕事もかなり楽になっている。社のリーディングで00ユニットであった時のアンタとの記憶は欠けること無く残っているそうだから。」
そう言って夕呼は『前のこの世界』でも持っていたセキュリティーパスを武に渡した。
「これは『この世界の白銀武』が使ってたものだけど、ほぼ同一人物だから気にしないわね。」
そう言って渡されたIDのIDコードは『前のこの世界』で受け取っていたIDコードと同じ番号が振られていた。
「IDコードまで一緒なんですね。『この世界』と『前のこの世界』の相違点を早く見つけ出さないと、後で困りそうですね。」
「別に私は困らないわ。とりあえず、明日にでも自閉モードを強制解除するからその時またきて頂戴。それにオルタネイティヴⅥについては後日改めて説明するわ。説明が長くなりそうだから。」
「はい。」
武は夕呼に見送られて執務室を後にした。
「おはようございます。白銀さん。」
やはり霞が起こしにくるのは日課だったようだ。これは『前のこの世界』と『この世界』の同一点だ。
「おはよう。霞。」
そう言って起き上がった武はいつも通りなのかは定かではないが、制服に着替えてPXに向かった。
いつも通りと言っていいのか、PXはおばちゃんや知った顔が何人もいる。それが普通なのだろう。だが、武にとっては懐かしく思えて仕方が無かった。主観時間で約1年も離れていたのだからだ。『この世界』の時間的には1ヶ月ぐらいだと夕呼は言っていたが、本当にその通りに思えた。夏休み明けの始業式に教室に入ったかのような懐かしさだった。
「あっ、タケルだ。おーい、タケルー!」
お盆を持って席を探していると、見慣れた顔が武を呼んだ。
「おはよう、美琴。」
「おはよう、タケル。」
武は美琴の正面に座った。既に美琴の周りには207Bだった連中が集まっていた。
「みんな、おはよう。」
それぞれは好きなタイミングや好きな言い方でおはようを言い合った。
「今日は大隊規模での作戦行動の訓練だってさ。参っちゃうよね。ヴァルキリーズ
って中隊規模なのになんでだろう?」
美琴はいつも通りのマイペースさで話を勝手に進めていた。
「たぶん、そういうのにも慣れろってことだろ。いつも中隊だけで動くって訳じゃないんじゃないか?」
武は昨日聞いたことを表に出さずにいった。あの後、みちるに釘を刺されていたからだ。横浜基地襲撃や桜花作戦で疲弊していて、1ヶ月になってもまだ回復しきっていないといっていた。言ってる本人だってその作戦はどっちも参加してただろうにと武は心で思ってはいたが、それを見せないのが上官というものなのだろうと勝手に解釈した。
「えぇ!?じゃあどっかの作戦で大隊で動くみたいなことでもあるのかな?っていうことは2個中隊を吸収して大隊になるのかな?」
美琴はまだ変わらずに話しを勝手に進めていた。
「タケルは今日の訓練はどう思う?」
冥夜は静かに朝食を摂っていたが、話に入ってきた。
「さっきも言ったけど、いつも中隊で動くということは無いんじゃないか?これま
でには1個中隊で動いてきたけど、今後大隊で動くような作戦でもあるのか?よく分からんなぁ。取り敢えず、他部隊との連携を取れるようになれって事じゃないか?」
「タケルはそう思うのか。すまぬ。」
冥夜は礼を言うと食事に戻ってしまった。
確かに、いきなり他部隊との連携訓練なんて、今までなかったはずだから不思議に思ってもおかしくはない話だ。
だが、その他部隊は他の部隊から引っ張るのか。それとも、まだ基地内に富士教導団でも残っているのか。武はそう考えさせられた。だが後者は無い。何故なら、既にこの基地から帝国軍カラーの不知火や古鷹は1機たりとも見当たらないのだ。古鷹などとは、国連軍に貸与されてすらいないのだ。なので前者だと武は考えた。
となると、どこの部隊と連携訓練を行うのか。それが気になった。
「冥夜。さっきはああは言ったが、ちょっと俺も疑問に思えるところが多々ある。どこと連携訓練を行うのか。どこでもいいのだろうが、確か去年のBETA襲撃で殆どの部隊が全滅したんじゃなかったか?」
「そうだな。なら何処の部隊と訓練を行うのだろうな。敵はJIVESか訓練用シュミレーターでよいだろうが、肝心の2個中隊分の戦力が無い。どうするのだろうな、伊隅大尉は。」
冥夜はそう言ってまた箸を進めた。時間的には2時間程訓練までに時間が空いているので、朝から掻きこまずに済むのだ。だから、ゆっくり食べているのだろうと武は思った。訓練兵は時間に厳しく、点呼までに起きて準備をしていないと教官から罰せられるが、任官すれば時間内ならいいというルールがあるが、基本的には訓練兵時代に点呼に間に合うように起きるのが身から離れず、任官しても訓練兵並みに早く起きるのだ。それが何故かマナーになっていた。だが、任官後の訓練は時間に間に合えばいいので、基本食事の時間は気にしないのだ。
「一番現実的なのはシュミレーターで再現するんじゃないの?」
武が来てからすぐにPXに来た千鶴が言った。
「成る程。それが一番現実的だな。というか細かい説明は後で大尉が聞かせてくれるんじゃないか?」
「それもそうね。」
武たちは会話を切り上げると食事に戻った。
「今日の訓練の説明を始める。」
集合時間にブリーフィング室に向かって、少ししたら今日の訓練の予定をみちるが話し始めた。
「今日行う大隊単位でのハイヴ攻略訓練では、基地内で連携のとれるだけの戦力の
残った部隊が居ないが、以前訓練を行った部隊のデータが残っている。そのデータを利用し部隊に加える。シュミレーション室に0930に強化装備で集合。解散。」
いつも通りに手短に説明したみちるは早々に解散の号令をかけた。現時間は8時49分を指していた。強化装備に着替えるのはすぐに終わるが、シュミレーション室に行くのに時間がかかる。なので、号令の後すぐに全員は走って更衣室に走った。
「今からシュミレーターに搭乗して、訓練を行う。CP将校は涼宮中尉。コールネー
ムは『ヴァルキリーマム』いつも通りだな。では、搭乗!」
最近、約2ヶ月は使われてないシュミレーターは埃を被っていたが、搭乗する前に払えとの指示だったので、武たちは手で大まかに払うとすぐさま搭乗した。
「ヴァルキリーズ・データを使用する。ハイヴはオリジナルハイヴ、フェイズ6、
訓練の目標は大隊単位で前回実戦にて突入した際よりも迅速に反応炉をS-11で破壊することだ。2個中隊分の戦力だが、残っていたデータはヴォールク・データだった為、全てコンピューター制御とする。指示や警戒、進行、連携などは全て人間が操作しているような動きを見せる。だがコンピューターだということを忘れるな。涼宮中尉、始めるぞ。」
「了解。シュミレーター全機起動。作戦を開始して下さい。」
ヘッドセットの網膜投影機能によってコクピット内だった風景は一気にハイヴの横坑内に切り替わった。
「全部隊点呼っ!ヴァルキリーズ全機固定位置。」
「第2中隊。ヴァルキーズ右後方、約50mにて全機固定。」
「第3中隊。ヴアルキーズ左後方、約40mにて全機固定。」
オープン回線にて、全部隊の長が確認を取っていた。
「アックス1よりヴァルキリーズ、第3中隊。宜しく頼んだ。」
顔までは表示されないが、誰かが喋っているような声がちゃんと耳に届いていた。これもシュミレーションなのだろう。
「コブラ1よりヴァルキリーズ、第2中隊。よろしく。」
オープン回線で挨拶が淡々と流れた。
動きは無いが、今はハイヴの横坑の中なのだ。動かなければ、すぐにBETAに囲まれてしまう。迅速に反応炉を目指すのが、もっとも効率的と言えるだろう。
「大隊全機、移動を開始して下さい。」
遙から移動の命令が出た。一斉に36機もの戦術機が同じ方向に向けて主脚を前に一歩ずつ踏み出す様は、今までに中隊行動しかしたことの無かった武にとって圧巻だった。
ヴァルキリーズ以外の戦術機も国連軍所属の特有のUNカラーが施されているところを示唆するに、全隊国連軍所属なのだろう。こう考えていても後で当たり前だということに気がつくのも当たり前なのだろう。だが他の部隊はF-15EやF-4E、F-16Aで編成されている部隊だ。連携を取ろうとすれば出力違いで機動格闘戦闘での連携は取れないだろうと武は判断した。だが、事前通告されていたが、この訓練で使用しているデータの戦術機にもXM3搭載機での訓練のデータを使っていると夕呼は言っていた。ある程度は機動格闘戦闘の連携が取れるだろう考えた。
「横坑前方2000よりBETA出現、連隊規模です。波紋照合......全BETAの総数の4割が小型種、残りは突撃級や要撃級です。」
遙から作戦開始の号令の出てすぐの連絡は大体、こういった危険を知らせる通信ば
かりだ。それも当たり前なのだろう。戦術機でも探知出来る震動は震動センサーのフィルターを通って表示されるが、何級が接近しているとかいったところまで細かい解析は出来ないのだ。こういう時にこそ、深度が深くなるに連れて設置していく震動感知センサーによってCPが解析したデータがCP将校を通じて現場に行くのだ。
「ヴァルキリー1よりヴァルキリー各機。第2中隊、第3中隊の支援砲撃後、経路を開く。支援砲撃後以降兵器使用自由。アックス1、コブラ1っ!」
「了解、支援砲撃開始っ!」
BETAの先頭集団、主に突撃級が走る度に撒き散らす砂煙が見え始めた頃、すぐ後ろでは支援突撃砲の発射音がいろんな場所から聞こえた。先頭集団は少し削れたようだが、経路を開くには十分だ。ハイヴの横坑内には光線属種が存在しない場合が多い、高度を取ってある程度撃破した方が弾を節約出来るし、一時的であっても経路が開けばそこを部隊が通過出来る。
「正面が削れた。B小隊、出るわよ!」
水月は支援砲撃の砲声と着弾音が止むとB小隊に突撃の命令を出した。武は反論すらせず、命令通りにBETAの先頭集団に向かって一直線に全力噴射で突っ込んだ。
次回もかなり遅れる可能性があります。年越して新人が入ってくる季節になった為、大忙しです。特に私!!そう私がっ!!!
今回、部隊名、というかコールネームをかなり迷いました。アックスとかコブラとかいうあれです。いろいろ候補はありました。現在、米軍が使っているコールネーム表を使おうか迷ったくらいです。
いいコールネームがありましたら、是非教えて下さい!!