Muv-Luv Alternative Preliminary Ideal 作:しゅーがく
お盆に突入してましたので、暇だったんですね(笑)。
前回よりそこまで期間が開いていないので言うことは無いです。では。
武は部屋を飛び出て、駆け足で人が行き交う廊下を走り抜けた。行き先はブリーフィング室。
「失礼しますっ!」
武はブリーフィング室の扉を走った勢いで強く開けてしまったが、その場で息を整えて奥に進んだ。全員のいるところへ。
ブリーフィング室にはすでに殆どが集まっていて、居ないのは茜だけだった。どうやら遅れているらしく、いつも使っていた廊下が現在、修復中の為立ち入り禁止になっているようだった。
「涼宮は少し遅れている様だな。」
「涼宮、遅れましたっ!」
みちるが周りを見渡して欠員が茜だけだとわかった瞬間、扉が開きそこには茜が立っていた。どうにか間に合ったようだった。
「涼宮は少し息を整えろ。では、今回のBETA侵攻について説明する。」
そうみちるが言い出すと、部屋の前面モニターに陸と日本海が映り、現在の部隊の位置、BETAの進路予想図、出撃予定の部隊の所属している基地がマーカーで示されている。
横浜基地にもマーカーが打たれているということは、横浜基地からも迎撃部隊が選出されるということだろう。
「鉄原ハイヴからハイヴで抱え切れなくなったBETAが日本海海底に存在する横坑から石川、富山、新潟に出てくるという予想だ。艦砲射撃による飽和攻撃は望めない。帝国の所有する自走砲によって飽和攻撃を行う算段だが、本当のところどうなるかわ全く検討もつかない状況だ。我々、A-01は石川の能登半島にて迎撃を行う。」
その後みちるから更に詳しい状況が説明された。今まで更新されなかった鉄原ハイヴの規模の移行などの情報や、現在展開中の部隊の詳細、今後展開される予定の部隊の詳細、戦闘可能時間、補給基地の配置、HQの位置、敵の編成、自分らの部隊の配置などなど......。
「現在、BETA群は海底を移動中であり、帝国海軍と国連機動艦隊の爆雷投下によって横坑の破壊が行われているが効果は薄い。それに、海岸線に上陸し数十分後には爆撃機による絨毯爆撃も行われる予定だ。」
そうみちるが言うと前面モニターに艦艇による爆雷投下が行われた地点にマーカーが打たれ、爆撃機部隊の進路図と絨毯爆撃予定地域に矢印と斜線が敷かれた。石川、富山、新潟の上陸予想地点の海岸線から内陸に向けて20kmを予定しているようだった。地図を見てわかるが相当の広範囲に爆撃を行う予定らしい。
「20分後に我々は石川に急遽設置された補給基地に向かう。準備に掛かかるよう、解散。」
みちるの号令を合図にそれぞれは散り散りになって準備の為、ブリーフィング室を出て行った。
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「白銀さん。」
武が仮設14番格納庫に向かっている途中に霞に会ったが、霞はとても不安そうな表情をしていた。
「なんだ、霞。」
「なんだか、とても嫌な予感がします。気をつけてください。」
霞も同じことを思っていたようだった。武は早朝に目を覚まし、覚えた感覚。嫌な予感......。
「俺も今朝起きてそれを思っていたんだ。BETAの侵攻以上に恐ろしいことが起ころうとしているんじゃないかって。」
「私もです。取りあえず、急いでください。」
霞に見取られながら、武は格納庫に向かって走った。
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「命令が下るまで機内待機だ。」
ステータスと機体状況の確認、残弾確認、装備確認、着座調整などを行いやることが無くなった武は物思いに更けていた。
(まりもちゃんがA-01部隊に今の訓練兵も加わるということを夕呼先生が言わなかったのには何か訳がある筈だ。)
武は思い当たる節で仮説を立てては肯定・否定を出すのを繰り返していた。頭の中はそれで一杯だった。
「待機解除。A-01と仮設5番格納庫A中隊、仮設26番格納庫C中隊、仮設19番格納庫D中隊は岐阜・旧飛騨仮設基地に向かって下さい。」
遙の声で号令があり、格納庫内の12機の不知火が起動した。
仮設14番格納庫の周辺にも熱源反応が探知されたという事は、他の格納庫の部隊も起動したという事だ。
「副司令の香月よ。これよりA-01のCP将校の涼宮遙中尉が横浜基地のから出撃する全部隊のCPの役割を持つことになるわ。それと、A-01の伊隅みちる大尉が臨時編成の横浜基地隊の部隊長とします。」
「CP将校の涼宮です。よろしくお願いします。」
「A-01の伊隅だ。よろしく。」
オープン回線でみちるたちが挨拶を済ませると、旧飛騨仮設基地までの道中の説明が入った。長野・霧ヶ峰にて推進剤の補給を行い、そこから旧飛騨仮設基地に向かうとの事だった。
3つの防衛線では海岸で食い止めているという事。味方部隊の損耗率は3割程度という事。光線級・重光線級が未だ現れていない事。それが現在分かっている状況だった。
「全機出撃!ついて来い!」
そう言って肩に01と書かれた不知火は穴だらけで修理の手が伸びてない第2滑走路から飛び上がった。
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武の乗る不知火は視界に数機の不知火が見える状態で、匍匐飛行で山岳地帯を飛んでいた。辺りの人工物は破壊されていて、瓦礫しか残っていなかった。所々に色褪せた看板と武にとって一昔前のおもちゃなどが転がっていた。
除染もあまり行われておらず、瓦礫にチラホラと赤銅色に変色しているところも多々あった。
(ここまで進軍されてたのか・・・・・・)
武は首を左右に振ってあたりを見回した。そんな光景が永遠と続いていて、進路上にまた町、川、町と見えている。
「ここら辺ひっどいわねぇ。」
「そうですね。BETAが支配していた地域なんか見たこと無かったですよ。」
中隊内でのオープン回線ではそんな事ばかり言っていた。
「白銀はこの光景を見るのは初めて?」
不意に水月が話しかけてきた。
「はい。」
武は辺りの光景を見るのに集中していたので、素っ気無い返事しかできなかったが、心の中ではかなり衝撃を受けていた。訓練兵時代でも、BETAの蹂躙していた場所については口頭で説明を受けただけだったからだ。
これまで人類は後退を続けてきた為、BETAから土地を奪還した例はほとんど無い。横浜奪還作戦の際も、そこまでBETAに蹂躙されてから時間が経ってなかったので、ここまで酷い有様だったとは思えなかった。現に、横浜基地の坂を下りたところには倒壊していない建物の方が多いからだ。
「速瀬中尉、ここって昔はなんと呼ばれていたんですか?」
武は不意にそう考えてしまった。戦域データリンクでも地形しか分からないし、速度は変則的に変わっているのでおおよその位置は把握出来ているが、その範囲が半径15kmだったので選択肢を絞るのは難しかった。
「旧埼玉県・嵐山付近だろう。霞ヶ峰はもう少しだろうな。」
武はまだそこまで考える事が出来なかった。未だに眼下に広がる光景を見るのに集中していた。
「白銀、どうしたんだ?」
「いえ。嵐山の風景に見入られていました。」
武は操縦桿を強く握り締めて言った。
「西日本はどこもこんな有様だ。BETAが居ない可能性が高いとはいえ、未だに危険地帯だ。」
みちるはそう言って入った。
「旧飛騨仮設基地がある飛騨も以前は人で賑わっていた。そう言えば、白銀の出身を聞いていなかったなぁ。まぁ、横浜基地の訓練学校に居たという事は、横浜出身なのだろう。」
「はい。横浜出身です。」
武は少し焦りながらも答えた。
「タケル、そなたは確か、10月の下旬に突然私たちの訓練小隊に入ったな?どういう理由だったか。」
「兵役免除だよ。」
冥夜に聞かれ、とっさに出たのが夕呼にそうしておけと言われていた理由だった。『前のこの世界』に来た時、訓練小隊に入隊する際に夕呼に言われた事だった。
「はぁ?白銀、兵役免除出てたの?ボンボンだった訳ぇ?」
水月がニヤニヤしながら言った。
「そんな。普通の一般家庭ですよ。」
武はまた焦りながら答えた。
「しっかし、兵役免除蹴ってまで来るとは大した物ねぇ。」
水月は変わらずニヤニヤしながら言った。武には何を考えてここまで問うのかが理解できなかった。
「いえ。」
武はそれだけしか答えれなかった。もう、逃げ様が無かったのだ。どう答えるか言葉を探しているとみちるが割って入った。
「白銀も困っているようだからその辺にして置いてやれ。」
武はみちるの一言で救われた。この後、また何か聞かれたら答えれなかったからだ。
「は~い。」
そう言って水月は中隊内のオープン回線を終了した。
「あまり気にするな。誰しも聞かれたくない事、ひとつやふたつある。」
そう言ってみちるもオープン回線を終了した。
武は自分のも終了したのを確認すると、嵐山は遥か遠くにあり、瓦礫が大量に転がっている旧前橋と思われる地域に入った。あと2kmと行ったところに推進剤運搬車と仮設ハンガーが設置されている。
武は順にハンガーに入っていく戦術機に付いていって、指定されていた場所に入った。霞ヶ峰に着いたのだ。
episode10は少し雑談みたいな雰囲気になってしまいました。まぁ、いいでしょう(笑)。
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