リリカルビルドファイターズ   作:凍結する人

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漢二人、めぐりあい

 はやてが紹介してくれた模型店というのは、駅前のしかも人通りの多いところにあってそこそこに大きく、賑わっている場所だった。はやての紹介なのだから、場末の寂れた通好みの所でも紹介されてしまうのかと危惧していたが、全くの杞憂だったようだ。

 店内に入ったクロノがとりあえず向かったのは、店の約半分を占めるガンプラスペース、その正面にある大きなガラスケースだ。そこには、何々の大会で準優勝したとか、そういう肩書きとともにガンプラの完成品が所狭しと飾られていた。こういうものを見れば、自分のガンプラに何が足りないか少しは分かるかもしれない。そう思っての行動だった。しかし、精巧な塗装、整ったプロポーションをいくら見ていても、答えは出ない。クロノも流石に、物言わぬ他人のガンプラを見て何かを掴み取れる程の領域にはまだ至っていないということだ。

 

(徒労だったかな……?)

 

 などと早速後悔し始めながら、クロノの足は店内から出ることはなく。逆に、プラモデルの箱が山積みに並ぶ店内の、奥へ奥へと入っていった。ジャンルやスケールを問わず、ガンプラと名の付くものの箱を片っ端から取って、しげしげと見入る。

 そうしている内心で、馬鹿なことをやっているなという自覚がクロノにはあった。量産型νと一緒に強大な敵を倒そうと決意したのはつい二日前の筈なのに、どうして他のガンプラに気を移しているのだろうか。はやて辺りが見れば浮気やぁ、などとからかわれるのが目に見えている。

 だが、止まらない。何かを紛らわすように、クロノはずんずんと陳列棚の間を突き進み、所々で立ち止まっては特に気になるガンプラを手に取る。しかも、その中から二つか三つほど選んで、左手にひっかけている買い物カゴへ放り込んだりもしていた。

 理屈なんて無い、ただ直感による行動。クロノの浮ついて定まらない気持ちはそれを止めることが出来ず、決戦前の貴重な時間をただただ浪費していくばかり。

 

 そうしてついに辿り着いたのが、店舗の中でも奥の奥にある、静まりかえった場所。買ったプラモデルをその場で作れる制作スペースだった。

 

(……空いてるな)

 

 すぐ側のバトルスペースはそれなりに盛り上がっていたが、そこで壊れたガンプラをすぐに直そうという人は案外少ないらしい。机ごとに板で遮られていてよく見えないが、スペースで作業をしているのは一番奥の一人だけだった。

 その隣の机へ、クロノも座る。別に精算前のガンプラをどうこうしようという訳ではないが、あの静けさの中なら落ち着いて考えをまとめることが出来ると思っての行動だった。

 

「……」

 

 机の上にバッグを置いて、その中にある自分のガンプラ、量産型νガンダムと向き合う。持っていくつもりはなかったが、いつの間にやらバッグの中へ入り込んでいた。無意識の内の行動であるのは分かりきっていたが、どうにも居心地が悪い気持ちだ。

 

(……お前は)

 

 物言わぬツインアイは、シールではなく塗料によって色付けされている。その双眸は歪むこともないし潤むこともないが、何かを訴えるようにクロノを見つめていた。

 

(……お前はどうなりたいんだ。このままじゃ足りないのなら、僕はお前に、何をしてやればいいんだ……?)

 

 そんな愛機に、何をしてやることも出来ない。いや、出来ないわけではないか、何をしてやればいいのか思いつかない。それがなんだか悔しく思えて、無言のまま、手の中に収まる小さい躯体を握り続けていたクロノだったが。

 

「ねえ、そこの君」

 

 隣から呼びかけられたのに反応して、さっと注意を拡散し、それから隣の席へ視線を写した。

 

「ちょっといいかな」

 

 席から立ってそう告げたのは、クロノよりずっと背の高い青年男性。爽やかな顔つきは、豪奢な金髪を嫌味にさせず、むしろ清涼さすら感じさせる。長身に青い瞳は間違いなく日本人のそれではない。しかし、クロノの聴きとった言語は英語でなく、日本語だった。

 

「……」

 

 突然の応答に、クロノは面食らって何も答えられなかったが、彼はお構いなしにクロノのガンプラを見やって、

 

「へえ、よく出来てるじゃないか」

 

 と評価した。

 いきなり話しかけてきて、勝手に人のガンプラを見る。その不躾さにムッと来たクロノは、丁寧だけれど少し捻くれた感覚でもって言葉を紡いだ。

 

「いえ、こいつはまだ未完成品です」

「そうなのかい? 本当に良く、手をかけて作られてる。特にこのインコムなんて、プラモ付属のリード線じゃなくて」

 

 青年はクロノの持つガンプラ本体だけでなく、バッグの中にあったオプションパーツまで視界に入れていた。

 

「針金を使っている。そっちの方がインコムらしく表現できるからだ」

「……友人からの入れ知恵ですよ」

「それでも凄いじゃないか。よく原作の、MSV-Rの量産型νガンダムを再現している。どんな用途で作っているのかは知らないけど、これならきっと、ガンプラバトルでもいい戦いが……」

「駄目なんです」

 

 青年の言葉を遮って、クロノは言い張った。駄目なのだ。いい動きが、いい戦いが出来るなんて、それだけでは。

 あのホワイトデビルに敵わないし――何よりそれだけで、満足できるかどうか分からない。

 

「それだけじゃ、足りないんです。僕とこの量産型νにはまだ、足りない物がある」

 

 憤りと悔しさを内包している言葉。それを聞いた青年は、落ち着き払って、クロノに向かってこう指摘した。

 

「だったら、君と君のガンプラには、一体何が足りないのかな?」

「……それは……」

 

 何が足りない。その問をクロノはまだ見出しておらず、だから当然答えられない。らしく無く小声になって口ごもるクロノを見て、青年は不思議そうな視線で見やり――何かに気づいたようで、いそいそと自分のバッグから、シューズボックスのような箱を取り出してきた。

 

「君のガンプラ、勝手に見てごめん。お詫びと言ってはなんだけど、僕のガンプラも、一つ見せてあげるよ」

 

 更にその蓋を開き、青年が取り出してきたのは、クロノの量産型νよりかなり小さく、コンパクトなガンプラ。

 上半身の一部が赤く塗装されている、ガンダムF91だった。

 

「これは……!」

「ガンダムF91イマジン。僕が長い間使ってきたガンプラさ」

 

 その姿を見ただけで、クロノは圧倒された。そこにあったのは、塗装こそ違えども、原作の映画で活躍していたF91をそのまま抜き出してきたと錯覚するくらい、完成度が高かった。あのνと同じだ。というのがクロノの第一印象だった。余計なカスタムをせず、ひたすらに完成度を高めてガンプラの性能自体を底上げしている。

 そして、クロノが今目指しているガンプラの理想も、同じ方向にあった。究極の完成度に対抗するには、同じく極限までの作り込みしかない。そう考えているクロノに取って、このF91は正に辿り着くべき理想の体現である、ように見えた。

 

「……手に取って、いいですか?」

「構わないよ」

 

 遠慮がちに聞いたクロノへ、青年はあっさり許可を出して自分の機体を手渡す。恐る恐るあちこちに手を触れてみると、触れば触るほど実に深い作り込みが見えてくる。

 まず、肩部のフィン。本来差し替えで再現され、ガンプラバトルでもそれで十分なはずの部分だが、F91イマジンは小さいスケールだというのに完全変形を再現している。他にも各部の展開機構は全て差し替えなしで変形できるようになっていた。

 差し替えでもシステムの方で解釈してくれるなら、こういう細やかな改造など一見無駄なように見える。しかし、正にこういう拘りこそが、ガンプラバトルでは有効に判定されて機体の性能を上げる大きな要素になるのだ。

 

「なんて完成度だ……僕のなんか、とても敵わない」

「そんなことはないさ。ほら、かなり古くて、色々とくたびれてるだろう?」

 

 青年の言うとおり、確かにそのガンプラのポリキャップは摩耗しており、他の部分にも補修で隠し切れないほどの疲労が積み重なっている。しかし、そんなものを歯牙にもかけないほど、機体そのもののクオリティが違いすぎるのだ。

 当たり前だろう。いくら熱中しているとはいえ、クロノのガンプラは所詮俄仕込み。対して青年のガンプラは、ざっと見て三年、いや四年ほど昔のものだろう。つまりそれだけ練達していて、年季が入っていることになる。

 

「いえ。やっぱり僕の量産型νは、貴方のF91には敵いませんよ……」

 

 首を振ってそう答えたクロノの心の中には、敗北感があった。

 今まで八神家で取り組んできた二日間が、無駄だったという話ではないが。それにしても、自分が目指す原作再現というコンセプトで、ここまで圧倒的なガンプラを出されてしまった。それは、悔しさすら湧いてこないほどの敗北ではないか。

 きっと、『ホワイトデビル』もこのF91と同じなんだろう。クロノよりもずっと長くガンダムを愛し、ガンプラを愛し。そんな人間の心を表すようなガンプラに勝つには、経験も思いも、何もかもが薄っぺらい――

 そう考えたクロノが俯いて落ち込んでいると、青年は困ったような笑いを浮かべてやんわりと、クロノのネガティブさをたしなめた。

 

「……君は、僕のF91をちょっと勘違いしてるみたいだね」

「勘違い、ですか?」

「あぁ。本当は初めて会う相手には見せないと決めているんだが……特別だよ。ほら」

 

 青年は、クロノの手にあるF91の頭部だけを取り外し。その顔から、マスクのようになっているフェイスガードを動かして、両頬に収納した。

 フェイスオープン。機体温度の上昇を考慮し、緊急用の冷却システムとして頭部に装備されたエアダクトを露出する仕掛けだ。これを使うときのF91は、極限まで機体を酷使させている最大稼働モードになり、装甲剥離現象によって質量を持った残像すら生み出す。

 しかし、F91イマジンの頭部には、更にもう一枚、隠された『顔』があった。

 

「よく見てくれ……この頭部は、実は冷却システムなんかじゃあなくて」

「……これは、まさか!」

「そう。接近戦用の小型ビーム砲になってるのさ」

 

 青年が解説した通り、冷却システム、いや、冷却システムを模した構造体の一枚下には、小さいビーム砲が備え付けられていた。小型MS、さらにその頭部にあるのだから、その火力こそ低いだろう。しかし、接近戦のさなかに敵の意表を突き、その急所を貫くという点において、この武器ほど適切なものもない。

 恐らくは隠し兵装。それも強敵中の強敵にしか見せない、とっておきの切り札だ。

 

「そんな……でも」

 

 クロノが戸惑っているのは、その戦法の是非を問うているからではなかった。

 ただ、一見完全に原作を再現しているように見えたF91が、実はその戒めを大きく破っていることに驚いていた。

 

「ずるいだろう? 姿形はどこも変わらないただのF91なのに、突然こんなものを撃たれたら分かっていても避けられない。僕だって内心、酷い武器を備えてるものだなと思ってるけど……」

 

 青年は自分のその言葉によって、何か昔のことを思い出したようだ。喜びだけではない思い出を噛み締めるように、一旦口端を止めて目を閉じたが、やがてその硬直を解いてさらに語った。

 

「でも、それを含めて、僕のF91イマジンさ。他の誰にも文句は言わせない。僕自身が作った、僕だけのガンプラなんだ」

「……僕だけ、の……」

 

 その言葉に背中を打たれたように、クロノは改めて自分の量産型νガンダムを見た。それは確かに安定して、丁寧に綺麗に仕上げられているが、ただそれだけのことだ。そう考えてみれば、こいつには何かが足りない、どころの話ではなかった。何もかもが足りていない。このガンプラを今のまま鍛えていくら完成度を磨いた所で、それは単なる付け焼き刃に過ぎないのだ。

 

 だったら、どうして戦うか。経験も力量も何もかも足りていないなら、どうすればいい?

 

 クロノの脳裏に、ある一つのアイデアが浮かんだ。それはまだ靄のように不確かだが、それでも

確かに、頭の中で膨らみ、彼の思考を占有していく。

 そんなクロノを知ってか知らずか、青年は更にある人物の話をし始めた。

 

「君は、三代目メイジン・カワグチを知ってるかい?」

「見たことはありませんが、聞いたことはあります。当代最強のガンプラファイターでしたっけ」

 

 メイジンの名前を、クロノは勿論フェイトやはやてから聞いて知っていた。しかし代々高い実力を持つガンプラビルダー・ファイターに襲名される高名な名前であること以外は知らなかったし、そのバトルも見たことがなかった。

 

「ちょっと違うね。彼は当代最強であり、そして、当代最高のガンプラファイターさ」

 

 青年はメイジン・カワグチを、まるで自分のことのように自慢する。

 

「彼のバトルスタイルは、その前の二代目メイジンとは違う。相手の手の内を全て出し切らせ、その上で正当な実力によって上回る。敵手への敬意を忘れず、しかし自分の実力を疑わない」

「それじゃあ、まるで決闘じゃないですか」

「そうかもしれない。勝つことを至上に置く戦いではないし、無論戦争でもないからね。でも、それらも否定せずに、全てを内包して……なおかつそれを楽しみ、全力で遊ぶ。メイジンのガンプラバトルはそんな、最高のエンターテイメントなのさ」

 

 外した頭部を取り付けて、クロノの手からF91を自分の手に戻した青年は、再び懐かしい思い出を語るような顔に変わった。しかし今度は陰り無く、喜びと楽しさだけを思い出しているようだ。

 

「僕も、かつてメイジンと戦ったことがある」

「そうだったんですか……」

「結果は敗北さ。でも、不思議と悔しくはなかった。全力を尽くして戦い、実力を全て出しきったってこともあるだろうけど」

「……?」

「それ以上に、嬉しかった。僕のガンプラを、その全てを認めてくれたみたいに思えた」

 

 クロノは思った。この人の顔は今、なんて晴れ晴れとしているんだろう。

 まるで分厚い暗雲の中から一筋の切れ目を見つけ、そこから見える太陽へ飛んでいこうとしているような、そんな希望に満ちた顔だ。

 

「実を言うとね、僕はその時ガンプラバトルを止めようとしていた」

「そうだったんですか……!?」

「それどころか、もう止めかけていた。メイジンと戦うのが最後の一回だとも考えていた。でも僕は今、ここにいる」

 

 青年はそう言って、F91イマジンを箱に閉まった。

 

「メイジンが今年の世界大会の開会宣言で、何を言ったか知ってる?」

「いえ……」

「彼はね、全世界のガンプラビルダー、ガンプラファイターが見守る中、堂々とこう言った……『ガンプラは自由だ』」

 

 その言葉を聞いた途端、クロノはひとつの天啓を得て、目を見開いた。

 クロノの脳内で靄のようにぼんやりと浮かんでいたアイデアが、まるで溶融して熱く煮えたぎった樹脂が、プレスされた金型に流し込まれるみたいに、形を得て急速にまとまり始める。

 

「ガンプラは、自由……」

「よくよく考えてみれば、ごく当たり前のことだけど。でも、当たり前だからこそ、一番大事なことでもある。勝つためでも、楽しむためでもいい。誰もが自由な発想で、自由な意思で作り、戦う。それがガンプラの、ガンプラバトルの楽しさなんだ」

 

 そう、自由だ。

 僕の手の中にある量産型νは、僕だけのもの。他の誰が描いたものでも、作ったものでもない。

 たしかに僕は、アニメで活躍できていないこの機体を、かっこ良く動かすためにガンプラバトルを始めた。そういう視点からすれば、機体のバランスや武装には何も手を加えないほうがいいのかもしれないが。

 それだけじゃ足りない、満足できない。ただの量産型νではなく、自分だけの量産型νを動かしたい。

 そして、あの『ホワイトデビル』に勝ってやるんだ。νガンダムを倒し、僕の量産型νの方がかっこ良くて、そして強いことを、誰の目にも明らかにしてやる。

 

――それが、僕のガンプラバトル。そして、僕のガンプラ創成(ビルド)

 

「ん、どうしたんだい?」

「すいません。僕、もう行かなきゃ」

 

 そうと決まれば、クロノにこんな所で立ち止まっている暇はない。決戦まで後1日と半分。それまでに何としても形にしなければならないアイデアと発想はゴマンとある。

 

「そうかい。じゃあ、行ってくるといい。君自身の戦場に」

 

 青年もなんとなくそれを察したようで、立ち上がって出ていこうとするクロノを止めることはしなかった。しかし、気づかれてくれたお礼を一言言いたくて、クロノはちょっと進んだ所で立ち止まり、振り返って頭を下げた。

 

「どなたか存じませんが、どうもありがとうございます。お陰で迷いが晴れました」

「それは……嬉しいな……僕なんかの言葉で、君が何かを掴みとってくれたのか……なら、こんなに嬉しいことはないよ」

 

 クロノの言葉と同じく、青年の言葉も、僅かだが喜びに震えているようだった。

 

「そうだ、最後に君の名前を聞いておこうか」

「僕は……クロノ。クロノ・ハラオウンです」

「クロノ。良い名前じゃないか。僕は……」

 

 青年が、自分の名前を告げるその前に。

 

 クロノは、既に遠くまで走り去っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やれやれ、自分の名前だけ言って出て行くなんて、せっかちな子だなぁ」

 

 一人青年だけが残された制作スペース。さっきまで話していた少年の気ぜわしさに肩をすくめ、しかしその活発さに胸を打たれてもいた。

 あの頃の自分は、あれくらいガンプラに夢中になれていただろうか。

 彼の背丈はまだ子供のそれだったが、その目は似つかわしくないほど大人びている。四捨五入すれば中学生――そのころの自分は、ガンプラに対して――

 

(いや、今更考えても、詮無いことだ)

 

 未だ色濃く残り、自分を引っ張る闇を、青年は笑って振り払う。

 過去は過去、今は今。辛い思い出を引っ張って、三年もの間ガンプラから離れてきたけれど。あの日から一年、今の自分はガンプラとガンプラバトルをとことん楽しんできた。そしてこれからもそうするだろう。

 少なくとも、あの後輩がメイジン・カワグチである限り。いや、そうでなくたって、今の自分はガンプラを好きでいられる。楽しめる。

 ふと、携帯のバイブが響いた。青年はポケットからそれを取り出し、知人からの着信と確認してから応答し始める。

 

「もしもし……えぇ、近くまで着きました。ちょっと良さ気な店を見つけたんで、立ち寄っていたんです……はい。夕食には間に合うように向かいますから、そこで落ちあいましょう」

 

 礼儀正しく応答した青年の名前が、携帯のスピーカーから聞こえる。

 

 ジュリアン・マッケンジー。

 

 かつて二代目メイジン・カワグチが主宰し、ガンプラエリートを養成していたガンプラ塾第一期生にして、一年前の世界大会ではベスト4として、準決勝でメイジンと戦った男であった。

 

 しかしてその姿からは、凄腕のファイターであるという雰囲気は感じられず。

 

 だから彼は、あくまでただ単純にガンプラという『遊び』を楽しんでいる、一人の青年だった。

 

「……え? その店はどうだったか? ふふ、やっぱり気になっちゃいます?」

 

 話し相手の突拍子もない問いに、ジュリアンは笑って、店全体を見回した後に答えた。

 

「そうですね。品揃えは普通ですし、行われているバトルの質もそこまで高くはない……ですけど、来て良かったと思います」

 

 

 強い子に、会えましたから。

 

 

 その明るい表情と声色を聞き、携帯の向こうにいる誰かも、楽しげに笑った。

 




次回、『ホワイトデビル』との再戦です!
クロノと量産型νの戦い、そしてクロノのガンプラビルド、ついにクライマックス。

漢の決戦模様、お見逃しなく。

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