黒バスの世界に転生したみたいだけど何かがおかしい 作:バイタリティ・FX
リハビリにと書いてみました。
「はっ、はっ、はっ……」
浅く短い呼吸を繰り返しながら、朝日が昇りはじめた河川敷沿いを一定のペースで走る。
時刻は六時半を少し回った辺り。
四月の早朝というのはなかなかに寒く、暖められた吐息が世界を白く彩り、すぐに消えていく。
ふっ、俺ったらロマンチストさん。
なんて考えていると家の近所のコンビニに到着。車のいない駐車スペースにて酸素を寄越せと抗議の早鐘を鳴らす心臓に、お望み通りの朝の澄んだ空気をプレゼントしてやる。
……ふぅ。ども、藍流 英理です。現在朝の日課であるランニングをやってました。
なぜランニングをしてるのかって? 別にオリ主にありがちな体を鍛えなきゃ的な理由じゃないんだな、これが。
親父が健康のためと始めたランニングに付き合わされた結果っす。ちなみに当の親父はユニークスキル『三日坊主』を発動中です。
まぁ、親父と同じタイミングで辞めてもよかったんだがツナちゃんに俺まで三日坊主のユニークスキルを所持しているとは思われたくないじゃん。それに何気に朝のランニングって気持ち良いし。小学5年生から始めてからの毎日の日課ですわ。今じゃ、徐々に距離も伸ばして毎朝5キロ走っとります。
さーて、呼吸も整ったことだしコンビニに入ろっと。
まずは用を足すためにトイレへと向かう。その際に18禁雑誌コーナーに並んでいるエロい格好したお姉さんたちを網膜に焼き付ける。ガン見じゃなくて視界に捉えるのがポイントだ。あっ、ロシアの妖精特集ですって。色白な肌にグラマラスなボディが刺激的だわ。
だが用を足すためにトイレに向かっているのでそれを視界に焼き付ける時間はごくわずか。だがトイレから出て同じルートを通って買い物を開始すればいいだけの話。
二回見れば完璧にインプット可能なのだよ。
いや中学生だからね。世間はこの年頃にエロは害だと思っているからしゃーない。しかし俺は精神年齢は大人。エロいのが気になっちゃうのも仕方がない。だが「精神年齢的には大人なんで」と言いながらエロ本をレジに通しても待っている返事は「親呼ぶぞ (威圧) ?」なのだ。
まぁ、童心に帰ると言いますか。このエロに執着する中学生の淡い情熱を懐かしいと感じるわけですよ。
用を足して手を洗う。少し大きな音を鳴らしながら手に温風を浴びせ水分を飛ばす。心なしか足早にトイレを出る。
さぁ、視界に飛び込んでおいでロシアの妖精たち。そのノルディックブロンドの美しい髪を妖しく張り付けた微笑みを、扇情的な下着に包まれた豊満な肢体を我が視界に焼き付かせたまへ……っ!。
ガチャ。ドアを開けてトイレを出る。全神経を視界の拡張に回す。さぁ来いロシアの妖精たち!
そして飛び込んできたのは――――――『熟れた果実〜とびきり甘い果肉に歯を立てて〜』……って熟女モノじゃないですか……!
しかも綺麗な美魔女とかじゃなくてオバサンと表記するようなマニア向けな熟女本。くそっ、幅広いエロ本のバリエーションには称賛を贈るが、俺の妖精たちはいずこに。
すると拡張していた視界に俺の妖精がヒットした。だがその場所は……通勤途中であろうサラリーマンの手中。
しかもあろうことかその上に週刊少年ジャンプを重ねやがった……! 僕ら少年たちの友情・努力・勝利をカモフラージュに使うなんて……。これが大人ってやつか。
きっとあのロシアの妖精たちはあのサラリーマンによって汚されてしまうんだろう。でもまだ朝だぞ。お盛んなんですね。車の中は臭い籠るからオススメしませんよ。帰ってからにしなさい。家に帰って法律という名の怪物に阻まれて買えない俺のためにゆっくり楽しんでください。付属のDVDと一緒に。
さよなら、俺の短い恋心 (欲情)。
さて、念のために注釈しておくが、俺は別にロシア女性が大好物なわけじゃないよ?
ふいに普段とは違うジャンルに挑戦したくなるのが男じゃない。雑誌付録のDVDはモザイクが雑だから好きじゃないし。いや、負け惜しみじゃないから (震え声)
とまぁ、朝の楽しい脳内寸劇は終わりにして、目的の物を買おう。
ドリンクコーナーからスポーツドリンクと昼食用のお茶を取り出す。
目的の物っていうのが、このスポーツドリンクだ。プライベートブランドってわけじゃないけど、この系列のコンビニにしかないんだよね。
微妙な時間帯故に妙に空いているレジに先ほどの物を置く。
「おはようございます!」と爽やかな笑顔と共に店員のお兄さんがバーコードを読み取る。
合計表示された金額をおつりが出ないようにきっちり揃えて払う。あっ、レシートはいらないです。
「ただいまキャンペーン中でこの系列の商品を購入なさるとクジが引けるんですよ」
そう言って差し出されるクジを入れているであろう箱。これから引けばいいんっすね? じゃあ引きますね。せい。
「えーと……まいう棒10本セットですね」
ほう、あの安くて腹持ちが良いまいう棒ですか。学生の味方だよね。
店員さんから受け取ったまいう棒をレジ袋に突っ込んでコンビニを出る。チラッと腕時計に見ると七時少し前。早く帰ってシャワー浴びてご飯食べなきゃだなー。
カシャカシャと音を立てるレジ袋を片手に俺は家へと急いだ。
主人公がエロ本と葛藤するというのがメインな回。
作者は別にロシアっ娘が好きなわけじゃない。ないったらない。