産地なんかにはあまり詳しくはないが、小学生の頃からコーヒーを飲んでいる。インスタントはおいしくはないがすごく手軽なのでよく飲む。でもたまにはコーヒーの香りを楽しみたくなり、豆を挽く。家にあるメーカーは手動なので、挽いている時間を楽しむのも一興である。自分がコーヒー好き(インスタント肯定派なので怪しまれるが)なのを説明したところで、今日はコーヒー豆を買いに来たと言っておく。そこでアイツと遭遇した。
「やあ、少年。いや少年ではないな、小僧でいいか。」
「小僧ってわけでもないんだが、リボーンと呼べ。」
「はいよ、リボーン。ところで、こんなとこにどうしたんだ。」
「エスプレッソを飲みたいんだが財布を忘れてな、ツケで頼んだんだが聞き入れられなくてな。」
「仕方ねえな。代わりに払っといてやるよ。」
「そうか、助かる。」
例の赤ん坊、名前はリボーンと言うらしい。赤ん坊がコーヒーを飲むのかとかいう突っ込みはいいだろう。エスプレッソを楽しんでいるこの姿を見れば、コーヒーが好き気なのだろうということが容易にわかる。
「おまえもコーヒーが好きなのか。」
「まあな。それなりに飲んではいるな。」
「その割にはコーヒーの香りがしないぞ。」
「コーヒーの質より量でね。ほとんどインスタントなんだ。」
「でもこういう店にくるんだな。」
「たまには挽き豆を楽しむ心ぐらいの心はあるさ。」
リボーンがエスプレッソを好きなのはわかったが、出自なんかも気になる。その体で何をしてきたんだろうか。その風貌から推察しながらコーヒーをある程度楽しんだところで口を開く。
「リボーンがエスプレッソを好きなのはイタリア出身だからとか。」
「正解だぞ。」
「イタリアかつその格好、雰囲気からマフィアね。そのサイズなのに。出来すぎてない。」
「そんなことはないぞ。俺は本物のマフィアで、世界一のヒットマンだからな。」
世界一のヒットマンだという。嘘をついているとは思わないが何故こんなところにいるのだろう。暇人か。
「どうして世界最高の殺し屋が沢田についているんだ。」
「今世界で一番大きなマフィアはボンゴレ・ファミリーだ。そのボンゴレに俺は所属していんだぞ。そのなかでツナを次期ボンゴレとして教育しろと今代の九代目に依頼されたんだ。」
最近よく遭遇する沢田ツナ。女性としても小柄で顔つきもかわいい。ふんわりとした茶髪の普通の女の子。彼女をどう教育したらマフィアという黒い組織のトップに出来るのだろうか。いや、出来ない。
「あの沢田が次期マフィアのボスね。彼女には荷が勝つんじゃないか。性格はすごく温厚そうだし、裏表を使い分けられるようには見えないんだよな。」
「確かに今のダメツナのままじゃマフィアなんてもってのほかだぞ。チンピラにまでなめられちまう。だから俺が家庭教師として来たわけだ。」
「今の家庭教師はいろいろあるんだね。」
「そうだ、おまえもファミリーに入れ。」
いきなりの勧誘。自分に関係ないよなと思ったが、そうでもなさそうだ。沢田にはよく会うし、山本嬢も入っているらしい。最近挨拶するようになった獄寺さんは沢田の右腕を自称しているらしい。今は笹川姉を勧誘しているとか。忍び寄ってくるボンゴレ勢力。しかし。
「えー、いやだよ。一度入ったら抜けられないんだろ。失態があれば金で解決して、出来なければ指を詰めないといけないんだろきっと。」
「指を詰めるのは日本のヤクザの風習だぞ。でも死で詫びるってことはあるな。当然一度所属したのならそれ相応の覚悟は必要だぞ。」
「怖いな。」
「でも大丈夫だ。ツナの成長にもよるが、アイツがボスならそんなに酷いことにはならないと思うぞ。」
「それはリボーンの教育次第ってことだろ。もっとライトなもんがいいよ。」
「わがままなやつだな。黙って入れ。」
「銃を向けて脅しても無駄でーす。」
この間いきなりぶっ放されたからな。避けられたけど。でもこんなところで撃たれても困る。
「ちっ、そうだったな。ボンゴレには門外顧問っていうものがあって、ボンゴレの外にありながらボンゴレを守る機関があるんだぞ。そこはファミリーの異常事態にはボスに次ぐ権力を持っているんだ。」
「若頭がいるフロント企業に就職ってとこか。」
「ちょっと違うが、そんなとこだぞ。」
「前向きに検討します。」
「コレでもだめか。まあいい、おまえがいればツナもやる気がでる。」
「お人好しだから手伝い程度ならしますよ。そうだ、手伝う代わりに自分の家にコーヒー飲みにきたらどうかな。一人で楽しむのには飽きていたからね。エスプレッソは機械がないから出せないけどイタリアンコーヒーならある程度出せるから。」
「わかったぞ。楽しみにしておく。」
お手伝いなら所属ってことはないよな。リボーンは怪しい。でもコーヒー仲間をゲットできたことは喜ぶべきことだ。