この小説は、ハイスクールD×Dとデビルサバイバーを混ぜると面白そうだという妄想をもとに作成されています。
できるだけ原作を知らなくても楽しめるようにはするつもりですが、原作を知っていたほうが楽しめるかもしれません。
あのあと、街中を適当に徘徊してみたが追っ手の類は一切なかった。もしかしたら、俺に気づかれないレベルでの追跡をしているというのなら話は別だが、さっき戦闘した堕天使の実力を考慮すると、この世界における俺の実力はかなりの上位だということは容易に想像できた。
〈ご主人様の考えてるとーりですよー。ワタシの索敵でも、魔力反応は特にありませんねー〉
ニャルさんからも太鼓判を押された。
まぁ、敵が来ないというのなら素直に喜んでおくべきなのだろう。むこうの世界でも殺伐としていたからか、妙に思考が戦闘方面に向かってしまう。とっさの事態にも対応できるといえば聞こえはイイが、結局のところ日常生活向きじゃない。それも、そのうち治るだろうと思うのは楽観的だろうか。
「とりあえず、確認しておきたいんだけどさ――」
無事と表現するのはどうかと思うが、なんとかこの世界に転生を果たしてみたものの、少しばかり不安なことがあった。それをニャルさんに尋ねてみる。
もちろん、周りに人がいないことを確認した上で、だ。ぼそぼそと独り言を言っているこんな状況を誰かに見られでもしたら、一発で怪しい人だからな。
〈なんですー? もしかしてワタシの体がご所望ですかッ!? なら今すぐワタシを呼び出してくださいッ!! 大人モードのワタシが桃色世界へご案内して差し上げまっせー。今ならサービスでハードSMもお付けします。もちろんご主人様がSで、奴隷(ワタシ)がMですが……〉
喜色に富んだ声が頭に響きわたる。こんな声が頭のなかで聞こえてくるのは正直勘弁してほしい。耳の中で、黒板を爪で引っ掻かれている気分だった。
「相変わらずの平常運転で……。俺らの住むところってあんの?」
家。かなり気になるところだった。というより、俺の戸籍ってどうなってるんだ? 警察官に職務質問されて連行されるなんて、冗談でも笑えない。あの八日間でそれなりに野宿には慣れたものの、ちゃんとした屋根のある場所で生活したいというのが正直な願いだった。
〈あ、やっぱり初めてはベッドの上でのノーマルプレイをお望みですねー。さすがご主人様、エロの権化ですー!!〉
なんか精神衛生上よろしくない勘違いをされている気がする。
そんな風に考えている俺をよそに、彼女の言葉は続いた。
〈家ならすでに準備済みですよー。ココからでも見えますし――〉
「はぁ!? この近くなのか?」
〈とりあえず、右のほうを見てくださいな〉
とりあえず、言われた通りに右のほうに首を曲げた。住宅街なのか、一軒家が立ち並んでいる。その家々は、ちょうど俺の視線の中央で一度途切れ、そこから細い道が続いている。そして、その道は住宅街の奥にある小さな山にまで伸びていて、
「まさか……アレじゃないよな?」
いくらなんでもないだろうと思いながらも指差したのは、その山を少し登ったところにある洋館だった。ここからでも見えるということは、かなり大きいだろう。けれども、そんな俺の思いをぶち壊すように、ニャルさんのお気楽な声が響いた。
〈よく解りましたねー。どうです、イイお家(うち)でしょう? 庭付き、一戸建て。部屋数もたっぷりですよー〉
「お前、バカだろッ!?」
思わず声が荒げた。どこの世に洋館に住んでる高校生がいるんだ。いや、いるかもしれないが、家の主では決してないはずだ。
どこのブルジョアだよ、と言わずを得ない。
〈ご主人様のことだから、この世界でもフラグ満載でしょうからねー。これぐらい部屋の余裕がないとダメッすから〉
それに、屋敷の警戒用に何体か悪魔を召喚しておく必要がありますしねー、と付け加えた。
「家の管理は!?」
〈それこそ悪魔の出番でしょーに。家の管理からご主人様の身の回りのお世話まで、さらに不審者の撃退まで何でもこなせるスーパー家政婦、その名は、【妖精】シルキーッ!〉
「そこはニャルさんがやるわけじゃないんだ。まぁ、料理とか無理そうだけどさ」
〈ワタシが料理見たいななにかを作る作業をすると、基本混ぜこぜの混沌としたなにかが出来上がるんです。食べた瞬間にワタシの仲間入りですよー。適材適所と言ってくださいッ!〉
いや、知らないけどね。
「あんな豪邸を手に入れるとか、どんな胡散臭い手段使ったんだ? 恐喝か? それとも……館の主を誑かしての乗っ取りか!? 今すぐ警察に行くことをオススメするけど」
〈いやいやー、いくらなんでも疑いすぎですよー。もともとはココの地主さんの別荘だったらしいんですけどね。管理の問題で手放して空き家になってたんですよー。それをワタシのほうでチョチョイと書類を弄りまして、今はご主人様のご自宅にしてあるですよー〉
「犯罪じゃないか……」
額に手を当てて溜息を一つ吐いた。
〈これでも一応最高クラスの邪神ですよー? どこにでもいて、どこにでもいない。常に誰かの影にいて、背後からこの世に混沌を導くものでごぜーます。そんなワタシが、干渉して操作したんですからまったくバレる要素はなーすぃんぐ。ご主人様が心配するよーなことはなぁんにも起きやしやせんぜ、旦那ァ〉
頭が痛い。どこをどう安心する要素があったんだろうか。けれども、あの屋敷に住む以外の選択肢はないようだ。俺自身、もう野宿は勘弁だしな。
〈それじゃーご主人様が納得したところで、お屋敷に向かってレッツ・ゴーですッ!!〉
諦めるほかない。もう一度溜息をついて、俺は山のなかに見えるを恨めしげに眺めながら、ゆっくりと歩いていくのだった。
それから約五分弱、山のなかを登っていった。
とはいっても、その山道はきちんと整備されていて歩きづらいということはなかった。車がきちんと通れるぐらいの道幅はある。両側はうっそうとした林となっていて、すでに夕暮れから夜へと変わりつつ今となっては深い闇の色をしている。
暗闇で出来たトンネルのような道を、周りに気をつけながら歩いていく。
十分か、二十分か……。
景色に変化がなくただただ、俺の足が土を踏む音だけが辺りに木霊する。
そのまま進んでいた俺の視界の先に、ようやく明かりのようなものが見えてきた。
山道が終わったのだ。両端の林が切り取られたようになくなった。
幕が上がったように木々がなくなり、空が丸く広がっていた。またたく星たち。中央に鎮座する満月が、いつもより大きく見えて仕方がない。
自然と引き込まれる。
そして、その月光を浴びて金に輝く洋館の外観。
それはまさに芸術の世界だった。
「綺麗だ……」
無意識に感嘆の吐息が漏れる。
〈いいところでしょー?〉
自慢げなニャルさんの声。
「あぁ……」
俺には頷くことしか出来ない。
それほどまでに、この景色は美しかった。
それからしばらくの間、俺は幻想的に煌く館を見つめ続けていたのだった。
今回、話はあまり進んでいませんがキリがよかったのでココまでにしました。
少しご都合主義ですが、無理矢理住処を用意しました。拠点がないと、生活感ゼロになっちゃいますから。
そのかわり、拠点はかなりカオスです。
この続きは明日中に更新できたら良いな……。
ちなみに原作で使われる別荘ではありませんww