デジモンアドベンチャー01   作:もそもそ23

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またまた前の更新から二週間。
うーん、次はもっと早く書けるようにがんばろう。





ありがとう、ヒカリ"先生"

物静かになったお台場の市街、それぞれの難を逃れた太一と空は、パートナー達と共に立ち並ぶビルの影に身を隠し、互いの情報を交換していた。

 

「ビックサイトか……其処に、ヴァンデモンが居るんだな?」

 

「え、ええ……ミミちゃんも、太一のご両親も一緒よ」

 

ヒカリをヤマトに預け、単身でヴァンデモンと家族の行方を探していた太一にとって、敵の拠点が知れた事は非常に大きい。

 

「分かった。 空は今すぐこの事をヤマトに知らせてくれ。 あっ、それと、ヒカリに"俺は大丈夫だ"って事もついでに頼む」

 

「……うん……でも太一、さっきの話、本当なの? その……ヒカリちゃんが"八人目の選ばれし子供"だったって…… 」

 

戸惑いを含んだ表情で、空はポツリと太一へと問いかける。

 

「……分からない。 でも、空の言う通りテイルモンがヴァンデモンに捕まってるんなら、あいつは本気で八個目のタグを奪いに行ったからに違いない……ヒカリのために……」

 

実際の所、太一も空の話を聞くまではまだ半信半疑であったが、テイルモンが尋問を受けている今、その思いは確信に変わりつつある。

最も、彼が空に説明したのはあくまで"ヒカリが八人目である事"のみ。テイルモンから説明された"沙綾の疑問点"については、今だ自身の胸に止めてある。

口に出せば、例えそうでなくても、彼女を疑っているような感覚に陥るからだ。

 

「この事、ヤマトは知ってるの?」

 

「ヒカリを預けた時に、大体説明してきた……やっぱり戸惑ってたけど、大丈夫、あいつならちゃんとヒカリを守ってくれるさ!」

 

そう答える太一の顔に迷いはない。

時に衝突する事もあるが、彼はヤマトの事を他の誰よりも信頼している。だからこそ、自分の大切な妹を預けてきたのだから。

 

「……そう……分かったわ。 必ず伝えるから、太一も無理はしないで……ピヨモン、行きましょう!」

 

"ヒカリが八人目なら、辻褄が合わなくなる"

恐らく、空も太一と同じ疑問を抱いてはいるのだろう。

しかし、彼女はそれを聞くことはせず、今は黙って頷き、進化させたパートナーと共に、遥か上空へと飛び上がった。

 

「空……よし、俺達も行くぞ! アグモン!」

 

「うん! 今度こそ、太一のお母さんを助けるから!」

 

「期待してるぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ティラノモン! 上から来るよ!」

 

「任せて、ファイヤーブレス!」

 

文字通りゴーストタウンとなったお台場。

迫り来る大量のバケモンの群れを牽制しながら、ティラノモンは沙綾を乗せ、当てもなく街中を疾走する。

 

(小説通りに進んでるなら、もうそろそろみんなお台場に集合する頃だと思うけど……)

 

時刻は午前9時半、沙綾がバケモン達との"鬼ごっこ"を開始してから早二時間程になるが、今の所、子供達の誰かが彼女を見付けてくれた気配はない。

始めは数匹単位であった追っ手の数も、気が付けばまるで大名行列のようにまで膨れ上がっていた。しかし、

 

『止まれぇぇ! そこの赤いヤツゥゥ!』

 

「はぁ……そんな事言われて止まる人なんていないよ」

 

「だよねー」

 

必死で追いかけるバケモン達をよそに、ティラノモン自身はジョギングのような感覚でその足を動かす。

追い付かれる気など沙綾達は微塵もしないが、逆に誤って彼らを撃破してしまう可能性を考えれば、早く誰かに見つけてもらいたいものである。

 

(せめてみんなの位置さえ分かれば話は早いのに……)

 

『待てぇぇ!』

『逃がさないぞぉぉ! 』

 

「ティラノモン、そこ右に曲がって!」

 

「オッケー! 」

 

ドスンドスンと、今だ全く疲れを見せない軽快な足取りで、ティラノモンは沙綾の指示通りにT字型の大通りを右手へと曲がり、速度を落とさずゴーストタウンを駆け巡る。

 

「ファイヤーブレス!」

 

(うーん……そろそろ誰か見つけてくれないかな……)

 

ティラノモンが威嚇を含めた火炎を後方へと吐く中、沙綾は思う。すると、そんな彼女の願いが通じたのか、しばらくして、

 

「あっ! ねぇマァマ、あれ見て!」

 

走りながら、ふと上空を見上げたティラノモンが、背中の沙綾へと声を掛けた。

彼の指差す方に首をやると、遥か前方の空を横切る赤い巨鳥の姿がちらりと、彼女の狭い視界に映る。

 

「……あれは……バードラモン! てことは、空ちゃん!」

 

まだ距離があるためか、それとも慌てているのか、向こうは恐らくきづいていないのだろう。赤い姿は沙綾達には目もくれず、一直線に飛び去っていく。

 

(よかった。 ヴァンデモンの所から上手く逃げ出せたみたいだね……なら、空ちゃんは今からヤマト君達と合流する筈)

 

当初の予定とは少し違うものの、"子供達と合流出来る"という点に置いては変わらない。

それに加え、発見出来た仲間が空であった事は、彼女にとっては今、最も都合が良かった。

 

何故なら、

 

(……たしか、二人が合流して直ぐに敵が襲撃に来る筈……えっと、ファントモンだったかな……ガルルモンとバードラモンを追い詰めて、ヒカリちゃんをヴァンデモンの所へ連れてっちゃったって、"本"には書いてた……)

 

「どうしようマァマ?」

 

答えなど分かってはいるが、それでも、ティラノモンは沙綾の命令を待つ。

 

(私達は"歴史の過程"だけなら変えてもいい……たぶん、ヒカリちゃんが拐われようが拐われまいが、結果的に"ヴァンデモンは倒される"……なら、する事は一つだよね)

 

あの小さな少女が、抵抗する術なく一人で魔王と向き合うなど、一体どれだけの恐怖だろうか。

先日の謝罪という意味でも、沙綾は出来るならこの"過程"を変えてやりたいのだ。

 

自身がするべき事を頭にまとめ、彼女は疾走するパートナーへと声を上げた。

目標を見つけた今、最早彼女達がこの"鬼ごっこ"を続ける意味はない。

 

「勿論追いかける!ティラノモン、スピードを上げて! バケモン達を一気に振りきるよ!」

 

「ふふ、よーし、とばすよマァマ、 ボクにしっかり掴まってて!」

 

予想通りの指示に、ティラノモンはニッとした表情を浮かべる。その直後、彼の速度が一瞬にして跳ね上がった。

 

『!? は、速い!』

 

そのガルルモンすらも凌駕するスピードに、大量のバケモン達は付いていく事が出来ず、ぐいぐいと距離が離れていく。

障害物のない空を直進するバードラモンは、既に沙綾達からは見えなくなっているが、大方の方向が分かったのならば問題はない。

戦闘音さえ聞こえれば、二人はそれを頼りに場所を特定すればいいのだから。

 

(待っててね、空ちゃん、ヤマト君……ヒカリちゃん)

 

そんな想いを胸に、あっという間に彼女達は敵の追跡を振り切り、空が消えた方角へと高速で足を進めた。

 

 

 

そして、数分が経過した後。

お台場の中心地から少し離れたオフィス街で、その音が響く。

 

「! ティラノモン、聞こえた?」

 

ドゴン、ガラガラ、という何かが建物に衝突したような音を聞き取った沙綾は、即座にそれに反応し、速度を上げていたティラノモンも、一度ピタリと足を止めた。

更に耳を済ませば、静寂の街の中、今の大きな衝突音の他にも、獣が地を蹴る音や、バサバサという羽音も、微かではあるが聞こえてくる。無数に立ち並ぶ建物故に姿は見えないが、それは間違いなく空達とファントモンとの戦闘音だろう。

 

「やっぱりこの辺りみたいだね」

 

「うん、近いよマァマ……たぶんこの先だよ!」

 

「急いで、ぐずぐずしてるとヒカリちゃんが拐われちゃう!」

 

沙綾の声に頷き、ティラノモンは迷う事なく交差点を曲がり、高いビルに囲まれた街を疾走する。

"ヒカリへの謝罪"、そして"選ばれし子供達への手助け"。足を進めるにつれて大きくなる戦闘音と共に、背中の沙綾も、今一度表情を引き締めた。

 

 

そして、

 

 

「! 居たっ!」

 

三つ目の交差点を曲がった所で、遂に遠方にその光景が飛び込んできた。

 

先程から一段階進化しているものの、高層ビルに叩き付けられ沈黙するガルダモン。

傷つきながらも、まだ何とか抵抗の意思を見せ、敵を威嚇するガルルモンと、その後方でヒカリを守るように立つヤマト、空。

そして、そんな彼らを見下すように空中を浮遊するバケモンの進化形態、巨大な鎖鎌を持つ死神、ファントモン。

 

状況はやはり劣勢、しかし

 

(よかった……まだヒカリちゃんは無事、間に合った)

 

まだヒカリが敵の手に落ちた訳ではない。

その上、幸い敵も味方もまだ距離があるためか沙綾達の存在には気付いていない。

 

いわば、奇襲を掛けるには絶好の機会である。

 

「ティラノモン!援護して! 」

 

まだ米粒程のガルルモンがファントモンに飛び掛かり、大鎌の元に一蹴されて地面を転がる中、沙綾は加速するティラノモンに向け、素早く攻撃の指示を出した。

目標は勿論、追撃を掛けようと鎌を構え直すファントモンである。

 

「うん、アイツ、よくもガブモンを……」

 

仲間が追い詰められる様を見たティラノモンの目がかわる。同時に、ブオォと、彼は大きく息を吸い込んだ。

これは牽制ではない。

 

「ファイヤー、ブレス!!」

 

友を助けるため、今、赤い恐竜の全力の炎が、道路にそって遥か遠方へと一直線に伸びる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐあっ!」

 

大鎌による一撃。完全体であるファントモンの鋭い攻撃を受け、ガルルモンが地面を滑るように転がった。

 

「ガルルモン! くっ、空! ヒカリちゃんを連れて下がれ!」

 

「ヤマト、で、でも!」

 

(……どうして……どうしてこんな事するの……?)

 

ヤマトと空が苦悶の表情を見せる中、ヒカリはただ空中をゆらゆらと浮遊するファントモンを見上げて思う。

今しがた、空によって兄と両親の無事を知らされたヒカリだが、同時に、"今ヴァンデモンが今何をしているのか"も知ってしまったことで、彼女は今強い罪悪感に苛まれていた

 

(私が……八人目だから、テイルモンも捕まって……私のために、みんなが傷ついて……)

 

優しい彼女は、自分のために他者が傷付く事を良しとしない。そして、ヴァンデモンがテイルモンのパートナーを炙り出すために町中の人間を襲ったのだとすれば、それは、

 

(……全部……私のせい……)

 

自分さえ名乗りでれば、皆はこれ以上傷付かなくてもいいのではないか。

自分さえ捕まれば、事態は収束するのではないか。

 

幼い少女は、耐えきれず歴史通りの決意を固めた。

 

「止めだっ! その首貰った! ソウルチョッパー!」

 

「ガルルモン! 逃げろ!」

 

「……う……ヤマト……」

 

ファントモンが鎌を構え、地に伏せるガルルモンへと急降下する。ヒカリが名乗り出る以外に、それを止める術は何もない。

 

そう、それが本来の歴史ならば。

 

「待って!私が……!」

 

"八人目"。そう口にしようとしたその時、彼女は回りの気温がチリチリと急激に上昇した事を感じ取る。

 

直後、

 

「なっ!」

 

「えっ!」

 

目の前で起きた出来事に、ヤマトと空が同時に目を丸くした。

当然だ。何せ絶体絶命のこの状況で、突如凄まじい火炎が彼女達の直ぐ前を通過し、ガルルモンを守るかのように、飛来するファントモンを目掛けて正確に打ち込まれたのだから。

 

「ぐふっ!」

 

直撃を受けた敵は体勢を大きく崩し、まるで波に流されるかのようにその炎に飲み込まれる。そして、

 

「チッ!」

 

先程のガルルモン同様、その体が勢いよくアスファルトの上を転がった後、フワッと、ファントモンは周囲に溶けるかのようにして姿を消した。

 

「えっ……な、何……!?」

 

その突然の出来事に、ヒカリもまた目をパチクリさせ、慌てて今の火炎の出所へと首を向ける。

 

すると、そこに見たのは物凄い速度で此方へと迫る、グレイモンに似た赤い恐竜の姿。

 

「!」

 

「おいっ! あれって、もしかして……」

 

「嘘……どうして此処にいるの!? 」

 

一瞬、『新たな敵か!?』と思ったヒカリは身を強ばらせるが、他の二人は純粋に驚いた表情を見せている。

当然だ。彼らはあの恐竜をよく知っている。そしてその恐竜の近くには、いつだって"彼女"が居ることを。

 

「「沙綾!」ちゃん!?」

 

「……えっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(うーん、やけにあっさりだったけど……まあ、逃げてくれたならそれに越した事はないか……)

 

「沙綾ちゃん!」

 

「……間一髪だったね……おとと、三人ともケガはない?」

 

ティラノモンの背中からゆっくりと降り、少しふらつきながら、沙綾は駆け寄って来た空達へとそう問いかけた。ファントモンとの交戦も彼女は覚悟していたが、倒す訳にはいかない以上、直ぐに引いてくれた事は喜ぶべきなのだろう。

倒れ付していたガルルモンや、高層ビルへとその身体を埋めていたガルダモンも、その体を成長期へと戻し、何とか自力で彼女達の元まで集まってくる。

 

「えと、一応"久しぶり"になるのかな……空ちゃん、ヤマト君」

 

「貴女なんでお台場にいるのよ!? いいえ、そんなことより、沙綾ちゃんの方こそ大丈夫なの? 」

 

「う、うん、一応大丈夫……かな? 心配かけてごめんね、空ちゃん」

 

口ではそう言うものの、沙綾の全身を見ればそれが虚勢である事くらい誰にでも分かる。ガチガチに包帯を巻かれた両足は、見ているだけでも痛々しい。

まして空にそんな嘘が通じる筈などなく、彼女はため息と共に呆れ顔を見せた。

 

「はあ、やっぱり、また無理してるんでしょ……もう、沙綾ちゃんはいつもそうなんだから……たまには自分の体の事も考えて」

 

「うっ……ご、ごめん」

 

何時もは"アグモンの母"として行動している沙綾も、空の母性にはやはり敵わない。彼女が心から心配している事を知っているからこそ、沙綾は空に頭が上がらないのだ。

 

「……でも……ありがとう。 沙綾ちゃんが来てくれなかったら、私達、今頃どうなってたか……」

 

「空ちゃん……」

 

「ほら、ヤマトも一歩退いてないで、ちゃんとお礼言わないと」

 

「……お、おう……助かったよ沙綾、ありがとう……」

 

空に促され、ヤマトもまた、沙綾へと感謝の言葉を口にするが、その様子は何処かぎこちない。いや、感謝している気持ち自体は空と同じなのだが、目が泳いでおり、沙綾を直視していないのだ。

 

「あれっ? どうしたのヤマト君、大丈夫?」

(もしかして、どこかケガしてるのかな……小説じゃ特に何も書かれてなかったけど)

 

そんな彼の様子に疑問を抱いた沙綾は、目を反らすヤマトの顔を下から覗き込む。

すると、彼はますます動揺を露にし、その整った顔が赤く染まっていく。

 

「あ、ああ……お、俺は大丈夫だ……大丈夫だけど……お前、その格好……」

 

「えっ!? ……あっ!」

 

ヤマトにそう言われた途端、沙綾は一瞬ピタリと固まり、次に自分の今の姿を思い出して慌てて彼から飛び退いた。

 

空は同性であるため特に気にはしていないようだが、今の沙綾の姿は着崩したシャツと破けたショートパンツによって露出部分が前よりもかなり多い。

沙綾自身忘れかけていたが、着ている本人さえも恥ずかしいのだ。ヤマトが直視しにくいのも無理はないだろう。

 

徐々に自身の顔も赤くなっていく中、沙綾は小さな声で口を開く。

 

「あっ……う、そ……その……ふ、服の事は、あんまり触れないでくれると……嬉しいかな……結構恥ずかしいから……」

 

「そ……そうか……悪い……」

 

二人の間に気まずい空気が流れる。

そんな中、

 

「……あの、沙綾さん……」

 

二人に守られるように後ろに立っていた少女が、小さな声を上げた。

 

「あっ……」

 

その顔を見た途端に、沙綾の中から恥ずかしさの気持ちが消えていく。そうだ、全てはこの少女を救うため、この少女に謝罪するために、今彼女は此処に立っているのだから。

 

「……ヒカリちゃん……あの……」

 

この前の謝罪。精一杯の気持ちを込めて、沙綾は深く頭を下げる。

 

「この前はホントにごめん……ケガはなかった? ちゃんと帰れた? 私、気が動転してて……その、ごめんなさい!」

 

「 えっと……うん、大丈夫だったよ……気にしないで。 この子が心配だったんでしょ」

 

沙綾の後ろに立つティラノモンを見上げながらヒカリは優しげに答えた。パートナーを心配する気持ちは、今の彼女には痛いほどよく分かるのだ。

 

「……うん」

 

「だったら、もう顔を上げて。 沙綾さんは別に、悪い事した訳じゃないんだから」

 

ポンポンと、背中を折る沙綾の肩を叩きながら、ヒカリは諭すように話す。

そしてそれは、遠い未来での、沙綾の記憶にある彼女の叱り方と全く同じ。だからだろうか、つい嬉しくなった沙綾は、頭を下げたまま、誰にも聞こえないような、本当に小さな声で呟いた。

 

(やっぱり、この人は今も未来も変わらない、いつも優しい……私達の先生だ……)

「……うん……ありがとう、ヒカリ"先生"……」

 

「え? 沙綾さん、何か言った?」

 

「ううん、何でもないよ。 ありがとうヒカリ"ちゃん"って、ただそれだけ! 」

 

沙綾の気持ちが軽くなる

顔を上げ、彼女はニコリとヒカリへと微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『キキキキキキ』

 

目下の目的を果たし、沙綾の知る『小説』の範囲内の危機は逃れた。

 

だが、

 

『キキキキキキ!』

 

彼女は考えてはいなかった。なぜ、完全体のファントモンが抵抗する事なく逃げ帰ったのか。彼は同じ完全体

であるガルダモンでさえも追い詰めた強敵。

そんなデジモンが、果たして成熟期の必殺を受けただけであっさりと逃げていくだろうか。

 

『キキキキキキ!』

 

"黒いコウモリ達"が、今、安堵する四人の上空を、バサバサと旋回する。

 

 

 






さて、次回、戦闘、ティラノモンVS……………&……………
あまり隠す意味もありませんが、一応。
さあ、どうなる事やらです。



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