デジモンアドベンチャー01   作:もそもそ23

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あらすじ欄にも書いていますが、6月23日、カオスドラモンの外伝を投稿しました。
ほんの少しのネタバレ要素はありますが、もしよろしければ見てやってください。

あと、今回も一応三人称視点ですが、主となる人物はコロコロ変わります。




「「ギガ……デストロイヤー!」」

満月が照らす深夜の森、その中でも木々が少なく比較的開けた場所で、戦いは再開した。

やはり最初に動いたのはメタルティラノモンである。

 

メタルグレイモンから引き離され、今しがた後退したばかりの彼だが、今度はその位置から、左腕の副砲を前へと突き出す。

 

「オレはお前を……絶体に許さない! ヌークリアレーザー!」

 

直後、一筋の閃光がメタルグレイモンに向けて、いや、正確には彼の後方に控える太一、及び子供達に向けて放たれた。

 

「「うわっ!!」」

 

だが、そこはやはりパートナーが許さない。

 

「くっ!太一達には指一本触れさせない!」

 

それを見たメタルグレイモンは太一の前で体勢を少し落とす。そして飛来するその光線を、進化と共に強化された鉄製の頭で受け止めた。

 

「ぐうぅ!」

 

彼の放つ必殺の衝撃は大きく、それを真正面から受け止めたメタルグレイモンの足元の地面にヒビが入る。

だがそれでも、彼の頭部を破壊するには及ばない。襲い掛かるレーザーは弾かれ、周囲へと霧散していく。

 

「やめろっ!落ちつくんだメタルティラノモン!」

 

その合間に、ワーガルルモンは素早くメタルティラノモンへと接近、拳を構えて飛び上がり、小柄な体格ながら彼の腹部に強烈な一撃を浴びせかける。

 

「がはっ!」

 

その威力に、メタルティラノモンは腹を押さえてよろよろと再び後退し、そこでようやく、彼の副砲による狙撃は中断した。

 

「助かったぜ……サンキューメタルグレイモン」

 

その太一の声に小さく頷いた後、彼は立ち上がり、急いで目の前の灰色の恐竜を押さえるために前進を開始する。

ワーガルルモン一人では攻撃は出来ても、体格の関係上彼を縛り付ける事は難しいのだ。

先程のような奇襲を受けないためにも、メタルグレイモンは相手の両腕に注意を払いながら、前から抱きつくようにしてメタルティラノモンを押さえつけた。

 

「クソッ!離せっ!オレの邪魔をするなァ!」

 

彼は怒りの形相を浮かべてもがくが、力は互角、その上、後ろにまわり込んだワーガルルモンに尻尾を押さえられ、強引に前進することも出来ない。

 

「今だ!行け、光子朗!」

 

「分かりました、お願いします!行きましょうミミさん、丈さん」

 

「うん……怖いけど、沙綾さんのためだもん、私頑張る!」

 

「沙綾君のアグモンの事、頼んだよ!」

 

その絶好の隙を逃さず、ヤマトは光子朗達へと素早く合図を出し、彼らパートナーを成熟期へと進化させた後、二体が押さえるメタルティラノモンの横を通り抜け、その奥に今だ佇むヴァンデモンを目指して走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう……お前達三人が……私の相手か……?」

 

「沙綾さんのアグモンに何をしたんですか!」

 

「ふん……私は特に"何もしていない"……あれはヤツ自身の意思なのだからな……」

 

後方ではメタルグレイモン達が灰色の恐竜を押さえつけ、そのまま自分達から遠ざけるように移動する中、光子朗はカブテリモンを引き連れてヴァンデモンへと問うが、彼はつり上がった笑みを浮かべるのみである。その様子に、イッカクモン、トゲモンを背後にした丈、ミミが声を上げた。

 

「嘘だ!アグモンは理由もなく暴れるようなデジモンじゃない!お前が何か吹き込んだんじゃないのか!」

 

やはり思うところがあるのだろう。丈にしては珍しく怒りのこもった声に更にミミが続く。

 

「そうよ!沙綾さんの事以外でアグモンが怒るところなんて見たことないもの!」

 

それぞれが過去の体験を元に声を荒げる。そして、

 

「……沙綾さんの事…………まさか!」

 

光子朗が何かに気づいたように、はっとした表情でヴァンデモンへと顔を向けた。

丈、ミミも同じくそれに気づいたようである。そしてそれは、ヴァンデモンも同様に。

 

「さあ……どうだろうな……どのみちお前達は全員此処で死ぬ……知った所でどうにもならん」

 

あくまで余裕を崩さない彼に、三人の表情に怒りが見え始める。

 

「そんな事はありません……」

 

そして、遂に光子朗のデジヴァイスが輝き、それに連動するように首に掛けた『知識の紋章』も光を放ち始めた。

先日手に入れたばかりの、その"力"を奮うために。

 

「僕達が貴方を倒してアグモンの誤解を解けばいいんです……いくぞ!カブテリモン!」

 

「待ってましたで光子朗はん! カブテリモン、超進化ァ!」

 

夜の闇の中、カブテリモンの身体が眩しく輝く。

徐々に身体は巨大化し、青い体色は赤く染まり、全身の筋肉がより大きく膨れ、重量感のある姿へと変貌を遂げていく。そして、

 

「アトラー……カブテリモン!」

 

ズシンという大きな着地音と共に、彼は光子朗の前、ヴァンデモンと対峙するように立ち塞がった。

 

「ミミさん!丈さん! 行きますよ!サポートをお願いします!」

 

光子朗が振り替える事なく一歩後ろの二人へと言葉を投げ、両者のパートナーも戦闘姿勢へと入る。

 

「行きまっせ! 」

 

今だマントで身体を覆い、構えすらみせないヴァンデモンへと、アトラーカブテリモンは先制で突撃する。更に、

 

「ハープーンバルカン!」

「チクチクバンバン!」

 

イッカクモン、トゲモンがそれを援護するように己の持つ角とトゲを、彼の背中越しにヴァンデモンへと乱射した。

だが、一斉に迫る攻撃を前に、彼は鼻を鳴らして小さく呟いく。

 

「……さて……そう慌てる事はない……ゆっくりと教えてやろう……私の力というものをな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、ワーガルルモン達は、メタルティラノモンを出来るだけ子供達から遠ざけるため、二体掛かりで彼を取り押さえ、強引に木々をなぎ倒しながら周辺の森の中へと戦いの場所を移していた。

彼らのパートナーである太一、ヤマトは、森の木々の影に隠れるようにしてその戦いを見守る。

 

「━━━━━━━」

 

「何故だ!何故お前がみんなを襲う!」

 

「そうだ、忘れたのか!オレ達は"仲間"だろ!」

 

がむしゃらに身体を捻るメタルティラノモンを必死に取り押さえながら完全体二体は声を上げるが、それが彼の耳に届く事はない。

 

「━━━━━」

 

最早喋る事はせず、咆哮を上げながら彼は身体を右へ左へ大きく振る。そして、

 

「! しまった!」

 

振り回されるメタルグレイモンの拘束が一瞬緩み、二人の間にほんの僅かな"隙間"が生まれた。そこに強引に片足を入れ、メタルティラノモンは彼の身体を、その強靭な足で大きく蹴り飛ばす。

 

「━━━━━━!」

 

彼らの予想を越えるその威力に、メタルグレイモンの身体は低空飛行を維持したまま吹き飛ばされた。

 

「うおあっ!」

 

「メタルグレイモン!」

 

バキ、バキ、と大量の森の木々達をへし折った後、メタルグレイモンの身体は停止するが、前方の彼が離れた事で、既にメタルティラノモンは"両腕"が自由になってしまっている。

 

彼は左腕に光を集めながら、後方で今だ尻尾を掴むワーガルルモンへと振り返った。

 

「くそっ!やめるんだメタルティラノモン!」

 

二体の視線が交錯するが、一方の目には既に光はともってはいない。

 

以前にも似たような状況があった。

その時の彼は、一瞬の静寂の後腕を下ろしたが、今回は違う。

 

自分の身体の一部が巻き込まれようと今の彼には関係ない、メタルティラノモンはその副砲を、ためらいなく"友"に向けて発射した。

 

「オレはヤツを破壊スル!邪魔するならお前も敵だ! ヌークリアレーザー!」

 

やっと口を開いた彼の決別の言葉に、ワーガルルモンは一瞬目を大きく開く。

 

だがその隙が、決定的なものとなってしまったのだ。

 

「!」

 

直撃、

 

防御の姿勢すらとる事も出来ず、一筋の光線は彼の尻尾ごとワーガルルモンの身体を飲み込み、森の大地を抉りながら突き進む。

 

 

やがて、その光が収束すると、抉りとられたレーザーの軌道上に、片膝をつき、消滅こそ免れたものの、退化してしまったガブモンの姿が現れた。

 

「……ぐ……アグモン……」

 

「…………」

 

ボロボロの状態で彼はメタルティラノモンを見上げるが、友は何も答えない。

彼を支えきれなかった後悔が頭を占める中、ガブモンはそのままゆっくりと崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガブモン!」

 

「おい!大丈夫か!」

 

パートナーが倒れた事で、身を隠していたヤマトと太一が、くっきりと削れた森に倒れ伏すガブモンへと急いで走りより、その身体を抱き上げる。その時、

 

「太一ィィィィ!」

 

拘束が完全に解けたメタルティラノモンが、その姿を見つけるなり再び叫び声を上げ、再度太一を喰らうために彼に向かって突進を始めのだ。

 

「う、うわ、こっちに来た!」

 

最早怒りが痛覚を麻痺させているのだろう。

黒く焼け焦げた尻尾がバチバチと放電するが、彼は一切気にしてはいない。

 

「なんで俺なんだよ!」

 

「言ってる場合か!逃げるぞ、太一!」

 

ヤマトはガブモンをかつぎ上げ、太一を急かして急いで元いた方向に走り始めた。先程のレーザーによって木々は消し飛ばされ走り安くはなっているものの、根本的な速度が違う。あっという間に灰色の恐竜は彼らの真後ろへと迫ってきた。

 

「まずい!追い付かれる!」

 

背後につくその巨大な影に、森を駆ける太一とヤマトの表情が強ばる。

だが、

 

「そうはさせるかっ!」

 

ガシャンという音と共に、先程蹴り飛ばされたメタルグレイモンが、間一髪、今度は背中から覆い被さるようにして彼の進撃を食い止める。そして、

 

「うおぉぉぉぉ!」

 

「!!」

 

雄叫びのような咆哮を上げて、後ろから彼の身体を持ち上げ、彼が飛び道具を使うよりも早く身体を捻り、その巨体を後方へと投げ飛ばした。

 

再びバキバキという木が倒れる音が周囲へと響く。

 

「た、助かった……」

 

「はあ……はあ……今のうちに、太一達は早く逃げてっ!」

 

一安心する太一とヤマトに向かい、メタルグレイモンは息を弾ませながら声を上げる。紋章の力を受けて進化を果たしている彼は、持久力において優れてはいないのだ。

 

「あ、ああ!」

 

投げ飛ばされたメタルティラノモンは既に起き上がり、怒りの表情と共に、再度主砲である右腕を再び構え、彼は口を開く。

 

「ギガ……」

 

「くっ、させるかっ!」

 

今の彼に、メタルティラノモンの主砲を耐えきれる保証はない。しかし、先程とは違い、今は二人の間に距離がある。

メタルグレイモンは直ぐ様胸部のハッチを開く。

 

「ギガ……」

 

太一達を守るという意味でも、彼の主砲を受ける訳にはいかない。

なんとしても、あのミサイルだけは撃墜しなければならないのだ。

そして、これもまた、立場は違えど以前にも起きた光景、スカルグレイモンの暴走時の光景と非常に良く似ていた。

 

(あの時ボクを止めてくれたのはお前だった……今度は、ボクが……)

 

二体はほぼ同時に、全く同じ必殺の発射の合図を叫ぶ。

 

「「デストロイヤー!」」

 

先にメタルティラノモンの右腕から、一瞬遅れてメタルグレイモンの胸部から、それぞれ同じミサイルが打ち出される。

片や一発、片や二発、だが、その威力は同じ。

 

互いの最高火力が二体の中心でぶつかり合い、一瞬の閃光の後、暗い森の中に激しい衝撃と爆風が巻き起こった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……くっ……ホーンバスター!」

 

仲間の援護を受け、アトラーカブテリモンの一本角から、強力なエネルギー砲がヴァンデモンに向けて一直線に放たれる。

 

しかし、

 

「……ふっ……ナイトレイド!」

 

その攻撃は、彼が前面に展開する無数のコウモリ達に阻まれ、一切彼には届かない。

勿論、イッカクモン、トゲモンの攻撃も同様に。

 

「これは……」

 

「どうしよう光子朗君!?全然効かないじゃない!」

 

先程からもずっとそうである。光子朗達が数の利を生かし、幾ら集中砲火を加えても、ヴァンデモンをその場から動かす事すら出来ず、そのコウモリ達が彼の盾になるのだ。

 

「どうした、選ばれし子供達よ……まさかこの程度か……?」

 

漆黒のコウモリ達が宙を舞う中、その中心でヴァンデモンがゆっくりと口を開く。

 

「なんでや! なんでワテら全員の攻撃が、あないなコウモリに止められるんや!?」

 

「なら、次はこちらから行くぞ……!」

 

ヴァンデモンは直立姿勢のまま、片腕だけを前へと出し、指をパチンと鳴らす。

すると、

今まで盾となっていた夥しい数のコウモリ達が、一斉にその牙を向け、こちらに向かって突撃してきたのだ。

 

「くっ、光子朗はん!」

 

まるで黒い竜巻のように迫り来るその群れに、それぞれのパートナー達はその身を盾に子供達の前へと立ち塞がる。

そして、

 

「うおぉぉっ!」

 

「アトラーカブテリモン!」

 

一匹一匹の力は其ほど強くはないが、その数があまりにも多い。弾丸のようにぶつかって来るコウモリの群は、防御力に優れたアトラーカブテリモンといえども、確実に体力を奪っていく。完全体である彼ですらこうなのだ。他の成熟期二体がそれに耐えきれる筈はなく、

 

「イッカクモン!」

「トゲモン!」

 

コウモリの群が過ぎ去った直後、イッカクモン、トゲモンは力なくその場へと倒れ、光と共にその身を成長期へと戻した。

丈とミミが慌てて彼らの身体を抱き抱える。

 

大きく体力を削られたアトラーカブテリモンも、両膝を付き、苦しそうな息を吐く。

 

「大丈夫ですか!アトラーカブテリモン!」

 

「なんとか……やけど次は、もうあきまへん……あのヴァンデモンっちゅうデジモン……ワテらの予想以上の強敵や……」

 

「……太一さん達は応援には来れない……僕達が頑張るしか……」

 

額に汗を滲ませ、光子朗は苦悶の表情を浮かべた。その時、

彼らの後方、森の中で、轟音と共に赤々とした炎が再び上がった。

見れば赤く染まる森の中、メタルグレイモンが片膝を付き、そんな彼を、メタルティラノモンが勢い良く蹴り倒す光景が目に写る。

 

「ふん……善戦はしていたようだが……向こうもそろそろ頃合いか……まあ、楽しい時間というのは存外早く過ぎるもの……此方もトドメとするか……」

 

今だ余裕を崩さず、ヴァンデモンは口を開く。

そして、ここに来て、光子朗達は彼が余り積極的に攻撃に移らなかった理由を思い知るのだった。

 

(……くそ……僕達は……遊ばれていた……)

 

そう、戦いの最中においても、ヴァンデモンは光子朗達との戦闘よりも、森の中に微かに写るメタルティラノモン達の方に意識を向けていたのだ。

それはまるで、仲間同士の戦いを見て楽しむかのように。

 

明らかに手を抜かれてこの有り様なのだ。今の彼らに勝ち目などない。

それを悟った光子朗の表情が歪む。

 

「僕達の……負け……」

 

「死ね……選ばれし子供達よ」

 

ヴァンデモンが攻撃の姿勢に入る。再び大量のコウモリが彼らに向かって襲いかかる。

丈とミミはパートナーを抱き締めて目を瞑り、光子朗とアトラーカブテリモンもこの状況に絶望感が沸き上がる。

 

まさに絶対絶命、

 

だが、コウモリ達の牙がその場にいる全員へと届こうとした、その時、

 

「まだだよっ!」

「まだよっ!」

 

そんな声が、彼らの真上から響く。

そして、諦めかけた光子朗の視界に、真っ白な純白の羽と、燃え上がるような真っ赤な羽が、同時にヒラヒラと舞い落ちた。

 

 





この話、少し急ぎぎみに書いたので、もし何処か不自然な所があったらすみません。
最低限皆様にイメージがつくように意識したはいるのですが、どうでしょう。ちゃんと伝わってるかな


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