デジモンアドベンチャー01   作:もそもそ23

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更新が少し遅れてしまいました。

評価、感想を下さった方、ありがとうございます。
飛び上がって喜んでいます。

今さらですが、作者の頭の中では、沙綾の顔のイメージは、けいおんの澪の小学生版に近い感じに思っています。
アグモンの声はギルモンのような幼い感じですかね。



やはり、そう簡単にはいきませんね

クロックモンが古代遺跡の探索を開始した頃、サーバ大陸では、

 

 

(汗が気持ち悪くて我慢できずにシャワー浴びちゃったけど、やっぱり失敗だったかな。)

「ミミちゃん!空ちゃん!みんな早く、追い付かれるよ!」

 

「ちょっと待って」

 

「沙綾さん…なんでそんなに足速いのよ…」

 

 

砂漠にてゲンナイからの通信を受けた子供達はその後、砂の上を航海する巨大な豪華客船に遭遇する事となった。

 

ミミの巧みな交渉により、船員のヌメモンにその船へと乗せてもらった一行は、ここまでの疲れを癒すため、その中で思い思いにくつろぐ。だが、エテモンの配下である船長、コカトリモンの不意打ちにより、太一達はその体を石へと変えられ、手に入れた紋章も奪われてしまうのだった。

 

そんな中、幸いにも入浴中であった空、ミミ、沙綾、パルモン、ピヨモンと、沙綾の指示で襲撃を事前に知っていた彼女のアグモンだけはその難を逃れる事に成功する。

 

今まさに、彼女達はパートナーと共にバスタオル一枚で船内を駆け回っている所なのだ。

 

「マァマ、太一達はどうするの?天日干しにされてるみたいだけど、」

 

走りながらアグモンは彼女に問いかける。前とは違い、今のアグモンは基本ステータスの向上により、沙綾と並走しながら会話をすることも容易に行えるようになっていた。

 

「直ぐに助けるよ。でもその前に、開けた場所でコカトリモンを倒す。ここじゃ狭くて進化できないから。」

 

「オッケー、ボクに任せてよ!」

 

沙綾の返事に、アグモンは走りながらピンクの包帯が巻かれた腕で胸をポンと叩き、『任せろ』のジェスチャーをする。

 

「待つだぎゃあ!」

 

皆の後方で、目から石化の光線を乱射し、コカトリモンが迫る。沙綾達が駆け抜けた場所は、至る所が石に変わっていたが、距離がある上、動き回る的に狙いを合わせにくいのか、当たる気配はない。

 

 

(ごめんね、みんな、もうちょっとだけがまんして…)

 

心の中でそう思いながら、彼女は天井のない甲板を目指す。空達もそれについていこうとバスタオルを強く握りしめて懸命に足を動かし、狭く長い通路をひたすら進んだ末、沙綾達は全員無事に外へと出ることが出来た。コカトリモンがその後に続いて来たことで退路は塞がれるが、進化出来るならば問題はない。

 

「追い詰めただぎゃー!」

 

「アグモン、お願い!」

 

「ピヨモン、進化よ!」

 

一度に二人のデジヴァイスが輝き、それぞれがティラノモン、バードラモンへと姿を変える。これで状況は成熟期の二対一、一転して追い詰められたのはコカトリモンの方となった。このままパルモンも進化させれば状況はさらに有利になる。進化を許したコカトリモンは焦りを見せているが、次の沙綾の言葉は、彼にとって驚くべきものだった。

 

「バードラモン、パルモンを連れて先に太一君達を助けに行ってくれないかな。空ちゃんとミミちゃんは必ず守るから、ほら、私達この格好でしょ。」

 

彼女は体を覆うバスタオルを指さしていう。

空とミミも彼女の発言に一瞬目をパチクリさせるが、直ぐにその『意図』を読み取る。

 

「そうね、今は太一達が心配だわ。お願いバードラモン。」

 

「パルモンもお願いね、ティラノモンがいるなら私達は大丈夫だから。」

 

二体のパートナーもまた、沙綾のしようとする事を理解しているため、反対することなく即座に頷き行動する。

バードラモンが飛び上がり、パルモンはその足に両手のツタを伸ばしてぶらさがった。

 

「絶対にミミを守ってね。」

「空の事、頼むわよ。」

 

言葉と共にバードラモンは大きく飛翔し、船の最上部を目指してパルモンと共に飛び去っていくのだった。

 

 

(まあティラノモンでも十分倒せると思うけど、"こっちの方が"みんな安心するからね。ちょっとだけ早くなっちゃうけど、コカトリモンはここで倒す。そうすれば、この後、この船に追われる事もないし、データも確実にロード出来る。)

 

コカトリモンは本来の歴史においても子供達によって倒される。つまり、沙綾がそれを代わりに行っても、歴史的には問題はない。

彼女が考えを巡らせている時、不意にコカトリモンが笑い出す。

 

 

「わざわざ一匹になるなんて、おみゃー達は馬鹿だぎゃ」

 

彼の必殺は石化の光線、並のデジモンなら当たれば一撃の強力な技である。それを前に戦力を割く事を愚策と取

ったコカトリモンは、沙綾を馬鹿にした後、口を大きくあけ、再び高笑いを上げた。

 

 

そう、彼は知らないのだ。

 

 

 

目の前のデジモンが、タグも紋章もなしにもう一段階進化が可能な事を。

 

「さあ行くよ。ティラノモン!」

 

「うん!」

 

沙綾のデジヴァイスが再度光を放つ。新たに手に入れたその力を奮うため、今、彼は完全体へとその身を昇華させる。

 

「ティラノモン、超進化!」

 

「えっ!?ちょっ!」

 

"進化"という言葉に一瞬驚愕の表情を浮かべた後、ティラノモンから発する眩い光に耐えられず、コカトリモンは羽で目を隠す。

 

 

光の中、ティラノモンの赤い身体が機械化されていく。

 

右手に主砲、左手に副砲、顔には敵を噛み潰す強靭な顎、

 

「メタル…」

 

赤い体色は色褪せていき、楠んだ灰色へと変わる。

身体は一回り大きくなり、溢れる力を解放するよう咆哮を上げる。

 

「ティラノモンッ!」

 

 

 

 

ズシンと、甲板が抜けるのではないかという音を立て、進化を果たしたメタルティラノモンが沙綾達の前へと体を張って立ちふさがり、先程の高笑いから一転、コカトリモンは明らかな動揺を見せた。それもその筈、進化に必要な紋章の入ったタグは、全て自身が握っているのだ。目の前の少女はバスタオル一枚とデジヴァイスしか所持しておらず、本来なら進化出来るはずがない。

 

「そ、そんなの聞いてないだぎゃー!」

 

「まあ、言ってないからね。」

 

 

 

成熟期と完全体、戦闘力の差など誰が見ても明らかである。

 

 

「マァマとみんなに手を出したんだ…覚悟は出来てるんだろうな。」

 

メタルティラノモンは左手の副砲をゆっくりと相手に向ける。流石にこの至近距離、それも船の上であのミサイルを撃つわけにはいかないのだ。威力は多少劣るが、この状況においてはこちらの方が都合はいい。

 

「クソッ、こうなったらやけくそだぎゃー!ペトラファイヤー!」

 

半ば狂乱しているのだろう、コカトリモンは逃走という選択を取らず、そのままメタルティラノモンに向けて己の技を放つ。避けることをせず、石化の炎はそのまま彼の足へと命中するが、スペックに差がありすぎるためか、極一部分が石化したのみに止まった。

 

(始まりの街でまた生まれ変われるから、)

「ゴメンね。悪いけど倒されてもらうよ。メタルティラノモン!」

 

 

「喰らえッ!ヌークリアレーザー!」

 

沙綾の攻撃の合図と共に、つき出された彼の左腕から一本のレーザーがコカトリモンに向かって放たれる。それは容易く彼を飲み込み、次いでその船体に風穴を開けた。

 

「ぐぅえぇ!」

 

(二人はメタルティラノモンの真後ろにいるから、データが流れていくのは見えないはず。)

 

沙綾は素早くデジヴァイスを操作する。断末魔の上がる中、コカトリモンは歴史よりも僅かに早く、その体をデータの粒子へと変え、メタルティラノモンへと吸い込まれていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、風穴の空いた船内で、三人はそれぞれの衣服を見つけ、無事救出された太一達及び、石化の解けたパートナー達と合流を果たす。

 

小説においては、この後生きていたコカトリモンに追われ、砂漠にてミミの紋章が手に入る。沙綾の介入はそれを阻害する事になったのだが、彼女はそこについては、あまり心配はしていない。

 

先程のレーザーによって瓦礫の散乱する船内で沙綾は考える。

 

(タグと紋章はお互いに引かれ会うってゲンナイさんはいってた。これは言い方を変えれば『過程はどうあれ、結果的に紋章は手に入る』ってことになる。なら、これも多分、"歴史の流れ"なんじゃないかな。)

 

結果として紋章が手に入る事が決まっているならば、ゲンナイのいうタグと紋章の不思議な性質も全て説明がつく。

過程をいくら変えようが、子供達がいくら拒否しようが、タグを手に入れたという"原因"があるならば、その"結果"は多少の事では変わらない。

 

「おーい、沙綾!早く行こうぜ。」

 

「マァマ、遅れちゃうよ。」

 

「あっ、ごめんごめん、今行くから。」

 

気づけば皆は外に出る階段を下り始めており、彼女もアグモンと共に小走りでその後へと続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾の予想は見事に当たり、船を降りて間もなく"たまたま"見つけた巨大なサボテンの影にて、一行は小休憩を挟んだ。その際、そこに隠されていたミミの紋章が姿を現し、無事純真の紋章はミミのタグへと収まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(やはり、そう簡単にはいきませんね。)

 

古代遺跡の探索を終えたクロックモンは溜め息混じりにそう考える。

一通り遺跡の中を見て回ったが、何かを閃くことは特になく、彼はケンタルモンと共に再び遺跡の入り口へと戻って来た。

 

(まあ、そんなに直ぐにいい考えが浮かぶとも思ってはいませんが、)

 

「本当に見て回るだけだったのだな。」

 

「はい。何か思い付く事はないかと思いまして。」

 

「ふむ、それで、思い付いたのか?」

 

ケンタルモンの問いかけにクロックモンはしずかに首を横へと振る。

 

「そうか…それは残念だったな。」

 

「いえ、簡単にいくものではありませんから。私はもう行く事にします。助けて頂き、ありがとうございます。」

 

「いや、平和になったとは言え、先程のような事はまだまだ多い。出歩くのならば気をつける事だ。」

 

「ご忠告、感謝致します。」

 

 

ケンタルモンの忠告に頷き、彼は再び歩き出す。

 

(さて、しばらくはファイル島を回って見ることにしますか。)

 

 

決意を新たに、クロックモンは次の場所へと足を進めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




クロックモンパートは、この後5話に一度ぐらいのペースで挟んでいこうと思います。

タグと紋章の理屈、納得して頂けたでしょうか。

ご意見、ご感想等、お待ちしております

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