デジモンアドベンチャー01   作:もそもそ23

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最後の文がおかしかったので、少し修正しました


過去編 第二章
私の好み?


ファイル島を出発してから早3日、晴天の大空の下、ホエーモンの背中の上で、選ばれし子供達と沙綾はサーバ大陸に向かって今現在海を渡っている。

 

 

子供達がファイル島のデジモンと共に作り上げた"舟"は、出向して間もなく現れたホエーモンによって、やはり歴史通りに破壊されたのだ。

 

彼の体内に残っていた黒い歯車を取り除き、そのお礼として、ホエーモンの背中に乗せて貰い、現在に至る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、やることないねー。」

 

ホエーモンの背中の上で、沙綾は顔に似合わない豪快な伸びをした。

 

ファイル島を出発して直ぐ、沙綾達は一度ホエーモンと共に海底洞窟に足を運び、そこでデビモンが隠したタグを入手した。一つ足りない事に皆疑問を持ったようだが、最終的に沙綾が皆に譲る形で合意する、

 

洞窟内ではドリモゲモンとの戦闘もあったが、1対8という圧倒的な戦力差により、彼女の出番は皆無だったと言ってもいい。

 

 

それ以降は特に変わった事もなく、順調にサーバ大陸に向かって進んではいるのだが、

 

 

「暇ー! 暇すぎて死んじゃうー!」

 

ミミが声を上げる。そう、先程の沙綾も言った通り、余りにもすることがないのだ。

最初の一日は、子供達も初めての体験に心踊っていたが、それも続けば飽きるのは当然である。

三日目の現在では、ミミだけでなく子供達全員がこの状況に退屈してるようで、太一達男子は、背中の前方でまだ見えない大陸を首をふって探し、沙綾、ミミ、空の三人は真ん中の方で、川の字になって寝転んでいた。

 

パートナー達はまだ元気に遊んでいるが、彼等が退屈するのも時間の問題だろう。何せ後二日はこの状況が続くのだから。

 

 

 

 

 

 

 

(そういえば、小説でもこの5日間はさらっと流されてたっけ…)

 

ふいに沙綾はそんなことを思い出す。本当に書くことがなかったのだと、体験した彼女も納得するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして、

 

 

「ねぇ空さん、沙綾さん」

 

暇をもて余したミミが、寝そべったまま、同じく隣寝転がる空と沙綾に声をかけた。

 

「なーに?」

 

「どうしたのミミちゃん?」

 

二人は間延びした返事を返す。それに対した彼女の言葉は、女子なら誰もが一度はするであろう"あの"質問であった。

 

 

 

「二人はあの5人の中で誰が好きなの?」

 

 

一瞬の静寂、そして、

 

 

「えっ!」

 

「なっ!」

 

 

ミミの唐突な質問に、沙綾は彼女の方を向いたまま固まってしい、空に至っては、上半身を起こし何故か顔を赤くしている。

 

 

「その、えーと、どう言う意味かな?」

 

「どうしたの突然!?」

 

 

「うーん、寝そべってるのも退屈だから、何かお話しようと思って。二人が好きなタイプはどんな人かなーって」

 

 

慌てる二人とは対照的に、ミミはゆっくりと落ち着いた口調ではなす。どうやら本当にただの暇潰しで、特に意図はないようだ。

 

(びっくりしたー、なんだ好みの話か。)

 

当然ではあるが、沙綾のいた時代では、彼らはもう立派な大人である。その中で、尊敬出来る人ならまだしも、好きな人など彼女は考えた事もなかった。

 

 

「空さんは…大体分かるけど、沙綾さんは?」

 

「えっ、嘘!?」

 

「私の好み?」

 

"大体分かる"と言われた空の顔は先程より赤くなり、恥ずかしいのかそのまま二人とは反対を向いて寝転んでしまう。その一方、ミミは興味ありげな視線を沙綾へと向けた。

 

「やっぱりヤマトさん?」

 

「うーん…」

(確かにヤマト君は仲間思いだし、面倒見もいいし、顔もいいし、理想といえば理想なんだけど…)

 

沙綾は顔を赤くして向こうを向いてしまった空を横目で見る、

 

(未来の空ちゃんの旦那さんなんだよねー、多分空ちゃんが赤くなってるのもそれが原因だと思うし…)

 

彼女がいた未来では、ヤマトと空は結婚し、子供も2人いる。空が恥ずかしがっている理由もそこにあると考えた沙綾は、「ちょっと違うかな」と、首を横にふった。

 

「えー、じゃあ、丈さんは?」

 

「うーん」

(丈さんはまぁ頭もいいし、真面目で誠実な人だけど、)

 

沙綾はタメ息をつく。

 

(壊滅的に空気が読めない。)

 

恐らく彼の一番のネックであるその点が、彼女には引っ掛かったのだ。

またしても首を横にふり、違うと答える。

 

「うー、じゃぁ誰なの?」

 

「太一君かなー」

 

沙綾は、5人の中で無難な人物を即答した。

実際、男子の中では一番太一が話をしやすい。それはやはり、彼の性格が未来で散った彼女の親友とそっくりであることが一番の理由だろう。

タイプと言われると少し違う気はするが、好みではあるのだ。しかし、

 

 

 

 

 

ガタッ

 

と、反対を向いている空が僅かに反応し、ミミが目をキラキラさせて沙綾をみている。

 

「太一さんっ モッテモテねー!」

 

 

「えっ、ちょっと、あくまで好みの話だから、声大きいよ。」

 

テンションが一気に上がったミミは、あわや皆に聞こえるというくらいの声を出し、沙綾はその飛躍した内容に白い肌を赤く染めてうろたえる。

 

「まぁ確かに、太一さんは頼りになるわよね!」

 

「いや、だから、好みの話だってば!助けてぇ空ちゃん!」

 

「………」

 

 

 

沙綾は空に呼び掛け、暴走するミミを止めて貰おうとするが、彼女は反応を示してはくれない。

 

 

理由は分からないが、結局彼女は一人で、暴走が加速していくミミを抑えるはめになってしまうのてあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミミの暴走から数時間が経ち、夕日が沈みかけた頃、全員が集合して簡潔な食事をとる。

 

「そういえば、何でタグが一つ足りなかったんだろうな?」

 

ヤマトが話を切り出す。それは3日前の海底洞窟での事についてであった。

 

「分かりません。もしかしたら紋章といっしょにサーバ大陸にあるのかも。」

 

「どっちにしても、行ってみなきゃ分かんないさ。」

 

「やっぱり僕のタグ、沙綾さんが持っててよ。ポヨモンはまだ戦えないし、」

 

タケルは海底洞窟の時と同じように沙綾に自分のタグを渡そうとするが、彼女はこれを優しい口調で拒む。

 

「前にもいったけど、タケル君達は7人揃ってデジタルワールドに来たでしょ。だから多分その7つのタグは貴方達の分、私の分は、もし見つけたら教えてね。」

 

 

「……うん、分かった。」

 

しぶしぶながらも、沙綾の言葉にタケルは納得したようだ。

 

 

「それにしても、まだ後2日も掛かるのかぁ…」

 

(言っちゃった…)

 

皆あえて口にしなかった事を、丈が言ってしまったことで、回りの空気が一気に沈んでいくのを沙綾は感じとる。

 

「長いよねー…」

 

「長いよなー…」

 

「「「はぁ……」」」

 

 

 

ファイル島で新たな決意をした沙綾の冒険は、まだしばらくは始まらないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、ファイル島、クロックモンの隠れ家。

 

 

 

 

沙綾とアグモンがファイル島を去って3日、彼女達を助ける決意を固めたクロックモンは、一人頭を悩ませていた。

 

「今の私が考え付く方法では、やはり"どちらか"しか助けることは出来なさそうですね。」

 

 

どちらか、即ち、沙綾達もしくは二人の親友

クロックモンは一度頭を整理するため、声に出して考え付いた案を並べることにした。

 

「彼女達だけを助けるのならば、未来のカオスドラモンだけを生かしておけば可能ですが、それでは御友人が助からない。」

 

これでは彼女は何のため過去に来たのか分からない

 

「御友人を助けるためにカオスドラモンを倒せば、今度は彼女が助からない。」

 

むしろこの結末を避けるために彼は動いている。

 

 

「カオスドラモンを殺さず、封印ないし再起不能にしても、御友人の死の結末がある以上は、直接的にしろ間接にしろ『原因である彼が生きている限り』過程が変わるだけで結果はかわらない」

 

歴史の流れは過去に限った話ではない。未来にも当然それはあるのだ。

彼女の親友が死ぬ結果を変えるには、沙綾がやろうとしているように、『彼等が原因であるカオスドラモンと接触する前に、これを消してしまう』方法が一番確実であるが、それではやはり沙綾は助からない。

 

「彼女を未来に送らず、私が消滅すれば…」

 

この方法では、彼女は未来でも時間移動が出来なくなり、結果矛盾が生まれてしまう。

 

「些細な行動で運命が変わることも否定はしきれませんが、考慮に値しない位に可能性が低すぎる。狙って起こすなど尚更出来る訳がない」

 

俗にいう奇跡というものだ。

 

 

(やはり、革新的な何かを見つけない限りは現状の打開は難しい。)

 

 

時計型の乗り物の上、クロックモンは頭を押さえる。

3日間、眠ることなく考え続けた彼の体力は、最早限界を迎えていたのだ。

クロックモンはとりあえずの結論を出した後、ゆっくりと目蓋を閉じる。

 

 

 

彼の戦いもまだ、始まったばかりなのだから。

 

 

 

 

 




次回から、エテモン編へと入ります。

まだまだ回収していない大量の伏線がありますが、物語後半までは、多分放置すると思います。忘れた頃に一気に回収していきますので、忘れている訳でありません。
断じて。

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