デジモンアドベンチャー01   作:もそもそ23

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今のティラノモンの戦闘力は、大体太一のグレイモンと同じぐらいを意識して書いています。

ですが、ティラノモンにはサポートとして沙綾がついていますので、ほぼ独断で動くグレイモンより強く見えるかもしれません。

マンガの太一とゼロみたいな感じですね。


私は、未来から来たの!

デビモンの仕掛けた罠によって、選ばれし子供達は散り散りに引き離され、ファイル島も、その姿を大きく変えた。

 

大地が割れ、ムゲンマウンテンを残して、徐々に海の向こうへと流されていく大陸で、太一達はそれぞれ、仲間と合流するために行動を開始する。

 

 

 

一方、デビモンの襲撃を事前に知っていた沙綾は、アグモンと共にその難を逃れ、ムゲンマウンテンふもとの地下に作られた、クロックモンの隠れ家へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デビモンが大陸を引き離してから丸1日が過ぎようとしていた。

 

その間、唯一流されず、その場に残り続けるムゲンマウンテン、その周囲の僅かに残る森の中に今沙綾はいる。

 

罪悪感に苛まれながらも、彼女は自身の使命を優先し、アグモンと共に、ムゲンマウンテンのふもとにあるクロックモンの隠れ家を探していた。

 

(流石に簡単には見つからないか……デビモンにも見つかってないみたいだし…)

 

 

洋館から脱出した後、森の中で仮眠を取り、日の出と共に捜索を開始した沙綾であるが、日が落ちた現在も、まだそれは見つかってない。

 

 

今のところ、デビモンが沙綾の存在に気付いた節はない。

灯台もと暗しであるが、何時ばれるかも分からない綱渡りであることは確かであった。

 

(早く見つけないと…少なくともみんなが揃う前には…)

 

 

焦る沙綾だが、既に日は落ちているため、明かりがなければこれ以上の捜索は不可能である、何より、朝早くから森を歩き続けた二人の体力は、最早限界を迎えていた。

 

「ボク、もう、歩けない…」

 

「そう…だね。 確かに、今日はもう…無理かも」

 

ペタンとその場に座り込んでしまうアグモンを見て、沙綾もその場に腰を下ろす。

小刻みに震えている足が、二人の疲労を物語っていた。

 

 

「今日はここまでにして、また明日探そう。まだ後1日はあるんだもん。絶対見つかるよ。」

 

「明日も歩くのー?」

 

「元の世界に帰れなくてもいいの?」

 

「う……分かったよ、ボク頑張る。」

 

駄々をこねるアグモンを納得させた後、二人で身を寄せ会うようにして横になる。

 

1日分の疲れが一度に来た彼女達はすぐさま寝息を立て始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、疲労が溜まっていた沙綾は、何時もより遅く目を覚ます。アグモンを起こし、軽い朝食をとる。

 

「またゆで卵なのー」

 

「文句言わないの。あるだけましでしょ。」

 

 

始めてムゲンマウンテンに訪れた際、皆で作ったゆで卵の余りを、彼女はバッグに数個だけ忍ばせていた。

 

 

朝食を終えた二人は再び森の中を歩く。

 

 

「ねぇマァマー、本当にあるのかなー?」

 

「明日、みんながこの島に戻ってくるの。

その時まで見つからなかったら、探すのはいったん中止、最悪全部解決した後で、また来るしかないかな……」

 

「全部って?」

 

「………カオスドラモンを倒した後だよ。

ダークマスターズと戦う時に見つけられたらいいけど、多分あんまり時間がないと思うし……」

 

「カオスドラモン……」

 

カオスドラモン、沙綾達がこの時代に来ることになった全ての元凶、その名前を口にした沙綾も、聞いたアグモンも、表情が険しくなる。

 

あの出来事から沙綾の体感で4日、だがもうずっと昔の事のようにも感じていた。

 

 

 

 

そして一時足を止めていた彼女が歩き出そうとした時、

 

 

 

 

ぶわりと、背中に悪寒を感じた。

 

 

 

 

 

 

 

同時に、今一番見たくない者が表れる。

 

 

それは漆黒の翼を広げ、沙綾の頭上から、不意に言葉を投げかけた。

 

 

 

 

「貴様ら、何故此処にいる?」

 

 

 

 

「えっ!」

 

 

その声に背筋と額に嫌な汗が流れた。本能的な恐怖なのだろうか。彼女はゆっくりと空を見上げ、その声の正体を確認する。

 

 

全身は黒、ボロボロの羽、赤い瞳、間違う筈はない。

 

「デビモン…」

 

「選ばれし子供達は全員、海の向こうへと散り散りにしたはずだが。」

 

 

デビモンは言いながら高度をさげ、沙綾の前へと降り立つ。

 

 

(まずい、まだ昼間だからそうそう出てこないと思ってたけど、どうしよう。 多分今の私達じゃ勝てない。)

 

「まぁいい。 ここで始末してやる。」

 

(ここは森の中、隠れながら逃げるのは難しくない。

少しでも相手の目を誤魔化せば、その隙に)

 

「死ね。」

 

「アグモン進化ァ ティラノモン!」

 

デビモンの長い腕が沙綾を捕らえようとした時、横からティラノモンの火炎放射が襲いかかる。

 

「チッ」

 

デビモンは素早く手を戻し、今度はティラノモンにその凶悪な腕を向ける。

 

デビモンの腕が伸びるように彼に迫り、その巨体を者ともせず吹き飛ばした。

 

「ぐわぁ」

 

近くの木を数本折った後、ティラノモンの身体は停止する。

 

 

片膝を付きながら立ち上がるが、思った以上にデビモンの攻撃は重く、劣勢なのは間違いないだろう。

 

 

 

「ファイヤーブレス!」

 

立ち上がったティラノモンは遠距離から先程の強烈な火炎を放つ。しかしそれはデビモンの身体に当たることはなく、彼は幻のように消えることで、それをかわした。

 

「!」

 

ティラノモンが驚くのも束の間、彼の真横に突如出現したデビモンは、再びその腕を突きだしティラノモンを掴むと、今度はその身体を投げ飛ばす。

 

「うあぁぁ!」

 

ボキボキと、先程よりも多くの木をへし折り、土煙が上がる。しかし、ティラノモンは立ち上がる。まだ倒れるわけにはいかない。

 

 

「ふん。しぶとい奴だ。」

 

「スラッシュネイル!」

 

先程とは違い、突進から鋭い爪を振り上げ、デビモンを一閃するが、やはりそれは、まるで蜃気楼のように消えていく。

 

それを見た沙綾は、すかさずデビモンが次に現れる場所を考え始めた。

 

(デビモンは今の攻撃で決められなかった事に少し腹を立ててる。なら、次は絶対に止めを指しに来るはず、そうすると次に現れる場所は…)

 

彼女はティラノモンの周囲を警戒する。

 

そしてその背後に、徐々に実体化する彼を見つけた。

 

「ティラノモン、アレ!」

 

それは彼女達にしか分からない合図。

ティラノモンは反射で、一切の予備動作を行わず、発達した尻尾の筋肉のみで、強力なテールスイングを放つ。

 

「なっ!」

 

その行動の早さにデビモンは驚愕する。回避が間に合わず、この戦闘が始まってから始めて、彼の身体に攻撃が命中した。

 

「今だ! 逃げるよ!」

 

「オッケィ、マァマ!」

 

 

大きな痛手は与えてはいないが、今回は都合良く相手の頭に直撃する形となったため、三半規管を揺さぶられたデビモンはふらふらと立ち上がり、片手で頭を押さえている。

 

 

 

「おのれぇ、待て!」

 

 

「ファイヤーブレス!」

 

 

空いている片腕を伸ばそうとするデビモンに、目眩ましの意味を込めて、ティラノモンが三度目の火炎を頭に向け放つ。

 

「ぐぅ!」

 

 

炎を受けたデビモンは態勢をくずすが、恐らくそれほど効いてはいないだろう。

デビモンは、成熟期でありながら一部の完全体すら凌駕する力を持つ。 この程度では決して倒れない。

 

「急いで!」

 

「うん!」

 

 

沙綾の指示で、身を隠しやすいようティラノモンはアグモンへと姿を変え、周囲の木が炎に包まれる中、二人は悪魔から逃れるため、ひたすら森を走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マァマ! どうする。左右に別れてるよ!」

 

 

数分走ったところで、沙綾達はムゲンマウンテンの絶壁を前方に確認することになった。10メートルは悠に越えるその壁を昇ることなど彼らには出来ない。

しかし、壁に沿うように左右に獣道ができており、アグモンはどちらに進むべきかを沙綾に問う。

 

 

(右…左…どっちでも一緒だけど……じゃぁ左!)

 

「左に曲が…」

(いや違う…左じゃない……なんだろう……女の勘?)

 

「ごめん! やっぱり右」

 

「うん! ………うわっアイツもう来たよ!」

 

 

アグモンが声を上げる。沙綾が振り替えると、森の木々を縫うようにデビモンが彼女達を目掛けて飛んでいた。。

今はまだ距離があるが、どこか身を隠す場所がなければいずれ追い付かれるだろう。

 

 

 

 

「早く! アグモン!」

 

先程の戦闘での疲れか、アグモンの速度は何時もよりさらに遅い。沙綾はアグモンの手を引き、右の道を直進した。しかし

 

(このままじゃ追い付かれちゃう!)

 

 

デビモンとの距離は縮まる一方だ。このまま逃げ続けても恐らく数分も持たないだろう。

どこか、身を隠せる場所が欲しいと、彼女達は願いながら走る。

 

その時、

 

「こっちです! 早く!」

 

見覚えのあるデジモンが、地面の下から手招きしている。彼女はためらうことなくアグモンの手を引き、森の中、岩と倒木で入口を上手く隠した地下に、身を投げるように転がり込んだ。

沙綾達が入った後。そのデジモンは急いで入口を隠し、三人は息を殺して、その災厄が過ぎ去るのをひたすら待つのだった。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、

 

 

 

「逃げられたか………」

 

 

森の中、標的を見失ったデビモンは一度地面に足を着け

、静かに呟いた。

 

 

「しかし、どのみちヤツはここからは出られん。

暗黒の力は既にこの島中を多い尽くしている。

死ぬのが本の少し先になっただけの話。」

 

 

言い残し、デビモンは沙綾達を深追いすることはせず、再びその漆黒の翼を広げ、自らの本拠地である、ムゲンマウンテンの頂上へと、飛び去る。

 

 

「私に同じ手は通用しない。 次に会うときが、貴様の最後だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、大丈夫でしょう。」

 

 

 

その言葉を合図に、沙綾とアグモンは一度大きく息を吐く。

 

「死ぬかと思ったよ……」

 

「ボクも……」

 

 

 

「あなた方が、今噂になっている、世界を救う、選ばれし子供ですね。」

 

そのデジモンは沙綾を正面から見つめ問いかける。

ある意味でそれは間違いではないが、沙綾はこのデジモンが言う"選ばれし子供"ではない。

 

「私は…違うの、選ばれし子供じゃない。」

 

沙綾は首を横に振り、その言葉を否定する。

 

 

「?…いえ、そんな筈はありません。貴方は人間で、聖なるデヴァイスも持っている。 パートナーもいるではないですか。」

 

彼女が先程の戦闘から握りしめていたデジヴァイスに、そのデジモンは一度目を向け、彼女の言葉をさらに否定した。

 

 

 

「それでも違うの!……私は、未来から来たの!」

 

 

「えっ!?」

 

「この森に居たのは、クロックモン。あなたを探すためだよ!」

 

 

沙綾は見覚えのあるデジモン、クロックモンに向かい、矢継ぎ早に声をあげる。それに対し、彼は、

 

 

 

 

「説明を、お願いします。」

 

 

 

 

と、冷静な口調で、その真偽をを問うべく、沙綾に事態の説明を求めるのであった。

 

 




サクサク話を進めると中身が薄くなりますし、
濃くしすぎると、話は進まないし、伏線が多くなりすぎますし、

作者的には、今回ぐらいのペースがちょうどいいと思うのですが、どうでしょうか?

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