それが日常   作:はなみつき

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初 出 動

##この話は修正されました##


電車とファーストアラートと56話

「おっす、スカさん」

「よく来たね、公輝君」

 

 ウーノさんの転移魔法でいつものスカさんの家に転移する。

 

「で、今日は何作ったんだ」

 

 スカさんは何か新しいものを作ってはおれを呼んで、使ってみてくれと言ってくるのだ。おれの愛用する双眼鏡も数年前にこうやって手渡されたものだ。双眼鏡の様によく使う便利な物も多くあるのだが、まったく使い物にならない意味不明な物が圧倒的に多いのが玉に瑕だ。全自動卵割機(オートエッグオープナー)が最たる物だろう。

 

「うむ、今日は少しゲームを作ってみた」

「ほほう」

 

 ゲームか。このパターンは新しいな。

 

「題して、電車DEゴー!改だ」

 

 電車でGO!……また懐かしいものを。おれも昔よくやったものだ。スカさんのことだからコントローラーが本物の電車さながら……とかかな?

 

「ルールは、プレイヤーが操作する車両を可能な限り早く終点の駅に突っ込ませることだ。途中列車を止めようとする邪魔者がやって来るが、加速と減速をうまく使って邪魔者を振り落とすんだ」

 

 おれの知ってる電車でGO!と違う……ちゃんと駅で停まれよ。それに、邪魔者ってなんだよ。電車の走行を邪魔するとかとんだ命知らずだな。

 

「まあまあ、とりあえずやってみようじゃないか。これがコントローラーだ」

 

 スカさんに渡されたのは電車のスロットルレバーを模したコントローラー。書いてある文字は減速と加速だけと、なんとも極端なコントローラーだ。もう少し刻んでもいいだろ。

 

「では始めよう。私は警備ロボの操作を担当する。敵が内部に侵入してきたときは任せたまえ」

 

 スカさんは64のコントローラーを握りしめながら言う。

 電車に警備ロボってどういうことなの……しかも敵って……

 

「スタートだ」

 

 スカさんがそう言うと画面に映っていた列車が動き始める。

 

「ああ、言い忘れていたが、スピードを出し過ぎた状態でカーブに入ると脱線するから気を付けて運転してくれ」

「そういうギミックを付けるならもっとコントローラー頑張れよ」

 

 

 

 

 

 

 

「あぶねええええええええ」

「うおおお、危ないところだったッス! 今片側浮いてたッスよ!」

 

 ゲームを開始して40分ほど経った。まだスカさんが言う邪魔者というのは出てきていないが、減速と加速だけでできるだけ早く、脱線することなく列車を走らせるというのは中々難しく、意外と面白いものだった。景色がものすごくリアルというのも面白さの要因の一つでもあるだろう。

 

「あ、もうすぐカーブがあるよ」

「任せろ!」

 

 今話しているのはスカさんの娘の一人のセイン。さっき話していた「~ッス」って言葉遣いの子もスカさんの娘の一人でウェンディと言う。おれとスカさんが遊んでいたところを見つけて寄って来たのだ。

 

「次は私に代わるっす!」

「いーや、次は私だよ!」

「そうしてやりたいのはやまやまだが、このステージが終わるまではコントローラーは渡さんぞ!」

 

 と、こんな感じで楽しんでいる。

 

「ん? 公輝君、とうとう来たよ」

 

 レーダーにプレイヤー以外の光点が映る。これが例の邪魔者だろう。

 

「ようやく登場か。おれの列車を止めさせやしないぜ」

「公輝君、コントローラーの側面についているボタンを押してみ給え。それによって加速と減速をさらに急激に行うことが出来る。振り落す時に使えるだろう」

「よっしゃ」

 

 スカさんの言う通りコントローラーの側面には赤いボタンがあり、それを押してから列車の減速と加速が激しくなった。

 

「来た!」

 

 レーダーだけでなく、画面にも邪魔者が映る。その姿は人型だが、黒で塗りつぶされており、推理漫画の犯人の様になっている。

 

「空から侵入しようってか? そうはさせん!」

 

 邪魔者が列車の屋根に着地した瞬間に加速の方にレバーを倒す。邪魔者はそれによってバランスを崩し、最後尾の車両に乗り込もうとした邪魔者の一人は乗り込めずに落ちてしまう。残りの3人は車両に取り付いてしまった。

 

「乗り込まれてしまったか。だが、ここからは私の出番だ! ……あっ」

「おー! ドクター、頑張るッス! ってどうしたッスか?」

 

 スカさんはコントローラーを握り直し、警備ロボとやらの操作を始めようとしたが、何かに気づいたような声を出す。

 

「列車の急加速と急減速の所為で列車に配置してたガジェット同士がぶつかり、ぐちゃぐちゃになってる……」

「えー! それじゃあ敵に対抗できないじゃん!」

 

 ……え? おれの所為?

 

 列車は邪魔者に停車させられ、おれはゲームオーバーになってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 スカさんと別れ、六課の隊舎に帰ると、六課はなんとなく慌ただしかった。話を聞いてみると、どうやらおれが遊んでいた間にアラートがかかっていたらしい。六課の初出動は、暴走する車両に積んであるロストロギア『レリック』の確保だったそうだ。列車の予想外の動きによってエリオくんが崖下に落とされるというアクシデントがあったが、キャロちゃんとフリードの活躍によってエリオくんには傷一つなく、列車の内部はほぼ抵抗が無かったため問題なく任務を完了することが出来たそうだ。出動しているなのはさん達も、もうじき戻って来るらしい。

 

 なんだかどこかで聞いたことのある話のような気がするが、きっと気のせいだろう。

 

 




公輝君はスカさんの研究所を「いつもの」と言っていますが、実際は違う場所の研究所です。公輝君は見分けがついていません。

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