それが日常   作:はなみつき

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##この話は修正されました##


インターホンとホテルと40話

 

 

 

「……これからどうしようか」

「とりあえず、お姫様と協力して大魔王を封印したら帰れるんじゃないかな」

 

 フェイトさんとリインさんと一緒に時を駆けたことが判明してから1時間。努めて慌てず冷静にいようとしていたのだが、おれもそれなりに気が動転しているようだ。

 

「と、冗談はさておき、今するべきことは寝床の確保かな? 次に、どうやったらもとの時代に帰れるかだな」

「あ、そうだね。ここには私達の家はないし……ど、どどどうしよう……」

 

 フェイトさん、時を駆けた衝撃が大きすぎてそこら辺のことを全く考えていなかったな。まあ、仕方ないね。こんな経験したことないだろうしね。おれは転生なんと言うビックリ仰天な出来事を経験しているため、そこまでの衝撃は無かったのだ。とは言え、驚いたことには変わりはないが。

 

(で、この後どうするんだ)

 

 リインさんが聞いてくる。そうだな、まずは寝床を確保することから始めよう。いっそのことはやての家に転がり込んでしまおうか? だが、今の時期だったらこの時間のおれ、つまり、おれくんがいるだろう。ここで問題になるのは未来のおれとおれくんが出会ってしまっていいのか、ということだ。所謂バタフライエフェクトだとか、現在との矛盾だとか、日本一の電気街であり、オタクの聖地秋葉原がただの日本一の電気街になってしまう可能性があるのだ。そんな何が起こるのか分からないことなんておれには……

 

 

 

 

 

 

 

 

「インターホンポチー」

「え!? 公輝!」

(ちょちょちょっ、何をしてるんだ公輝! さっき色々言っていたではないか!)

 

 当てもないおれ達は八神家宅に来ている。結局はやての家に来た理由は今ならヴォルケンズはいないので八神家の部屋が空いているということ。そして、一番の理由ははやての家におれくんがいること。さっきなんだかんだ言ったが、おれくんが未来の自分の姿であるおれを見れば一発で誰だかわかるので、話を聞いて貰える可能性がとても大きいからだ。では、他に寝床を提供してくれる場所がないか考えてみる。おれの知り合いである高町家、月村家、バニングス家に事情を話して、泊まらせてくれと言ったらどうなるか? 信じてもらえないのはもちろん、泊まらせてもらうというのは無理だろう。仮に泊まらせてもらえても変な目で見られることは確実だ。おれが寝床を貸す側なら確実にお断りする。しかし、おれなら? この世界で唯一未来の自分を知っている人物で、転生なんていうびっくりな出来事を経験しているおれくんならタイムスリップについてもある程度信じてもらえると思ったからだ。

 

(ならば、さっきはなんでああいう風に言っていたんだ?)

「お約束だろ」

 

 おれがドヤァって感じで言ったらリインさんにため息をつかれてしまった。

 

「はーい、どちらさんです?」

 

 お、来たな。

 

「坂上公輝くんはいらっしゃいますかー」

 

 ここではあえておれの名前ははやてには伝えない。同居人と同姓同名の人物が同居人を訪ねてくるというのは少し引っかかるだろう。ここでは不安要素はできるだけ排除しておく。とりあえずおれくんと接触できれば良いんだ。

 

「? 坂上公輝くん……ですか? 家にはいませんよ? 家間違えてませんか?」

 

 は?

 

「…………あー! すいません、表札が見えてませんでした。どうやら家を間違えたようです。ご迷惑をおかけしました」

「いえいえ、大丈夫ですよ~」

 

 どういうことだ? はやての家におれがいない? この時期ならもうはやての家に馴染み始めた時期だったと思うが。はやてが嘘をついたのか?そんな風には聞こえなかったが。

 

「公輝? どういうこと?」

「おれが一番聞きたいね」

(とりあえず宿かホテルにでも行くしかないですね)

 

 まあ、そうなるな。幸い飛ばされた時外にいたから財布も持ってるし、二人分の部屋を借りるしかないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「え? 一部屋しか取れない?」

「申し訳ありません。本日は大変込み合っておりまして。ダブルの部屋を一部屋なら本日お泊りになることはできます」

 

 なんてこったい。なんでこんな普通の日にホテルや旅館が混んでいるんだ。おれたちはあの後ホテルや旅館を回ったのだが、どこも満室。ようやっと空いている部屋があるホテルに来たと思ったらこれである。いや、別におれはフェイトさんと同じ部屋に泊まるのは嫌じゃないよ? むしろ大歓迎だよ。しかし、おれたちももう中学生になったわけだしフェイトさんもそこそこ親しいとは言え、赤の他人の男と同じ部屋で泊まるというのは嫌だろう。

 

「よかったね公輝。これで寝るところの心配はしないですみそうだよ」

 

 え?

 

「フェイトさんはいいの? おれと同じ部屋で?」

「うん、私はいいけど? 公輝は嫌?」

「いえいえ、滅相もありません」

 

 おれは全力で否定しておく。フェイトさんと同室が嫌なんておれが風呂に入ってないために体臭がものすごい時くらいだろう。まあ、そんなことになったことはないが。

 

「それじゃあその部屋に泊まります」

「かしこまりました」

 

 そういうわけでおれとフェイトさんは同じ部屋に泊まることになりました。

 

(テスタロッサには色々と教育が必要だな)

 

 だよね。そうだよね。フェイトさんの反応は中学生女子としておかしいですよね? あまりにも平然としているから最近の女子中学生はそんなもんなんだと思ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふ~今日は色々あって疲れたね?」

「そうだな。こんな経験そうそうしないだろうな」

 

 時刻は11時。もう歯も磨き、寝る準備は万端である。え? 何か無かったのかって? 何もなかったよ。ホテルの中のレストランで夜ごはん食べて、フェイトさん、おれの順番で部屋の風呂に入って今に至るよ。

 

「じゃあもう寝ようか」

「明日も調べないといけないことあるしな」

 

 結局何故この時間におれがいなかったのかということはわからなかった。もしかしたらこのあたりに元の時間に戻る手がかりがあるのかもしれない。

 

「公輝、アインス、おやすみなさい」

「おやすみー」

(二人ともお休み)

 

 豆球だけつけておれたちは寝ることにした。

 

 

 

……

 

 

 

「あああああぁぁぁぁぁ!!」

 

 うおっ、びっくりした。フェイトさんがこんな大声あげるなんて初めて見たよ。でも、ここはホテルだからあまり大きな声を出すと隣の人の迷惑になりますよ。

 

(どうしたテスタロッサ。そんな大きな声を出して)

「母さんが……今なら母さんに会える……」

 

 母さん? リンディさんのことか? でもリンディさんにはいつでも会えるだろ。死んでるわけじゃあるまいし。どういうことだ?

 

 この時おれは頭の上に疑問符を浮かべることしかすることがなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 世界は一つだけではない。ここでいう世界とは次元世界のことを指すのではなく、所謂平行世界のことを指す。平行世界とは、ある世界で同じ人が、同じ場所で、同じように過ごしているが、どこか異なる部分が存在する世界のことを言う。例えば、朝ご飯でなくパンを食べた世界。例えば、知り合いの性別が異なる世界。例えば、秋葉がただの電気街の世界。どの行動が世界にどんな影響を与えるかなんてことは誰にもわからない。

 

 では、マジックアイテム『時のオカリナ』を使用したとき、使用者が過去の出来事を都合の良いように変えたとしよう。その使用者が元の時間に戻った時、自分が起こした変化により予想外の更なる不利益が生じてしまうのでは意味がない。ここで一つポイントがある。それは、各平行世界は他の平行世界にも影響を与えることである。そこで時のオカリナの製作者はこのことを利用して、できるだけ自分の世界の現在に悪影響を与えることがないようにした。目的の過去だけを変えるために使用者を使用者の過去に送るのではなく、使用者をあえて他の平行世界の過去に送るのである。それによって自分の世界ではない世界をクッションとして挟むことによって余計な改変をなくすのだ。それによって、時のオカリナの使用者は自分の都合の良いように望みの過去だけを変えるのである。

 

 

 

 

 

 




最後のところの理論は適当。

つまり言いたかったことは、公輝君たちは原作の世界線に跳びました。

追記

最後のフェイトがプレシアさんが死んだように言っていたのを修正しました。

「母さんが……今なら母さんが生きてる……」

「母さんが……今なら母さんに会える……」

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