それが日常   作:はなみつき

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(想像以上に空白期は難しい)

##この話は修正されました##


夏休みとプラモデルと34話

 

 

 

 管理局の入局が決まって早2か月。おれとリインさんによる容赦ない回復術によって、管理局においてどんな怪我だろうが病気だろうが治してしまうめずらしいレアスキル持ち回復魔導師と認識されて早2か月。

 

 パチン

 

 東に原因不明の病気の管理局重役があれば、体に触れて完治させ、

 

 西に疲れ果てた事務員があれば、体に触れ疲労を抜き、

 

 南に死にそうな武装局員があれば、体に触れ回復させ、

 

 北に犬猫の喧嘩があれば、撫でまわしてベロンベロンにさせる。

 

 パチン

 

 そんな鬼のような激務にもようやっと慣れてきて早2か月。地球の暦では8月に入ろうとしている頃である。局員でありながらも小学生であるおれは現在小学校の夏休みである。

 

 パチン

 

「ほら、この扇形の面積から三角形の面積を引くと余ったところの面積が出るの」

「ほうほう、なるほど」

 

 夏休みと言うことは、小学生には宿題が出るのは当然である。そのため、なのはさん、フェイトさん、アリサさん、すずかさんが八神家に来てみんなで宿題をしているところだ。

 

「あ、フェイトちゃん、そこの漢字間違ってるよ」

「え? あ、本当だ」

 

 パチン

 

 夏休みの宿題というのはその人の性格を見るのになかなか適した心理テスト染みたものだとおれは思う。几帳面、真面目、面倒くさがり屋(タイプB)の人間は夏休みに入った直後、また物によっては入る前に終わらせてしまう。コツコツ型、スケジュールを立てられる人は無理なく夏休み全体を使って宿題をする。遊び人、勉強嫌い、面倒くさがり屋(タイプA)は夏休みの後半にまとめてやってしまうというのがおれの考察だ。

 ちなみにおれはこの中で面倒くさがり屋(タイプB)だと思っている。補足として、タイプAは面倒くさいからやらないタイプ。タイプBは面倒くさいが故に先に終わらせるタイプ。

 

 パチン

 

「ところで、ハムテルくんは一人さびしく部屋の隅っこで何やっとるんや?」

「プラモ作ってる。勉強系の宿題はもう終わったんでな」

 

 タイプBのおれは夏休みの宿題は夏休みに入ってすぐの3日間寝ずにやって日記以外は終わらせているため、宿題のことは考えずに夏休みを満喫することができている。有名私立の聖祥大附属小学校の夏休みの宿題とはいえ、まだまだこれくらいなら余裕でできる。そして、おれの能力は本当に便利である。

 パチン。そういう音を鳴らしてニッパーでプラモのパーツを外していく。

 

「そんな暇があるんやったら私たちの宿題手伝って―な」

「んー、良いけどさ。おれがいなくても君達だけでできてるじゃん?」

 

 幸いと言うのかわからないが、今来ている少女たちは勉強が嫌いなタイプでも、タイプAの人でもないのでプラモを作りながら聞こえてくる話から察すると順調に進んでいるように思う。

 

「私はこの算数の問題を片づける! せやから、ハムテルくんはこの7月21日から8月31までの日記を頼む!」

「それはおれもやってほしいんだが……ていうかはやて、夏休みの思い出のねつ造は良くないと思うぞ」

 

 それよかこいつ、今日までの日記も書いてないじゃないか。何やってんだよ。実は面倒くさがりだったのか。

 

「毎日『いいとも見た』でいいなら手伝ってやらんでもない」

「そんなんお断りや」

 

 嘘でもなんでもないことを書くというのに文句が多いな、はやては。

 

「それより、あんた! そう言えば、なんでそんなに勉強できるのよ! まさか期末テストで全科目負けか、同点だとは思わなかったわ! それに宿題も終わらせたですって? どういうことよ!」

「どうといわれてもな……」

 

 まさか『もちろんです、元大学浪人生(プロ)ですから』とは言えない。

 

「ちょっと貯金が多いだけさ」

 

 本当にちょっとだけね。しかし、このままおれが前世の財産に胡坐をかいて高校生になれば、彼女に勉強で勝つことはできないだろうな。本当に末恐ろしい。

 

「? どういうこと? まあ、いいわ! 次のテストでは絶対に負けない!」

「あ、はい」

 

 なんだかライバル視されたようだ。まあ、勉強でもなんでも競い合う相手がいると実力の伸び方は大きく違ってくるからな。せいぜい彼女のライバルであり続けるようにおれも勉強するかね。

 

「あ、そうだ公輝くん。今度みんなで海に行くんだけど、公輝くんも大丈夫だよね?」

 

 なのはさんがおれにそう言ってくるが、そういうことは家長のはやてに御伺いを立てないと何とも言えないからな~

 

「はやてちゃんは大丈夫って言ってたよ」

 

 ああ、もうそこの確認はとってあるのね。ならなんの問題もないな。

 

「おう、もちろんおれも行くぞ。おれの黄金の左足を見せてやる」

「なんや、ハムテルくんは左足だけで泳ぐんかいな」

「違うそうじゃない、ビーチバレーだ」

「ビーチバレーで足の自慢されてもなぁ」

 

 おれのロブシュートを見たことがないからそんなことが言えるんだ。いいだろう、見せてやる。おれの左足の力を! ……まあ、ビーチがある海かどうか知らないんですけどね。

 

「それに、リインさんに色々なもの見せてあげないといけないしな」

「せやな! きれいなモン、楽しいこと、おいしいモン。いっぱい体験させなアカンしな!」

(そ、そんな気を使っていただかなくても……)

 

 いいや、だめだね! 前回の一問一答大会でリインさんを幸せにするってはやてと決めたからな!

 

 絶望しか知らなかったリインさんやヴォルケンズにこの世界にはたくさんの希望があるということをみんなで体験して、知っていってほしい。はやてと二人の時に交わした言葉だ(リインさんは寝てた)。照れくさいからみんなの前では言わないがな。

 

 とりあえず今はこのプラモを完成させることから始めよう。えーと、次はEの12にGの3と4を付けるのか。

 

「ん? あれ?」

 

 おかしい。パーツ版にあるはずのパーツがすでに無くなっている。間違えて違う時に取り外してしまったのだろうか?

 

「マサキ」

 

 そう言っておれを呼んだのはいつの間にか隣に座ってニヤニヤしているヴィータ。そして、おれが今作っているプラモのこれから使うであろうパーツ全てが並べてあった。

 

「全部外してやったぞ、ありがたく思え」

 

 

 

 絶望した。

 

 

 

 そして、よく見たらおれよりうまく処理してパーツを取り外してあってさらにへこんだ。

 

 

 




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最後のハムテルくん代理

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