紘汰とライトが舞の捕まっているフロアに辿り着いた。
彼らは背中合わせになり、戦闘員に囲まれている。舞を返せ、と訴える紘汰と、邪魔をするな、と居丈高に告げるモグラ怪人。
するとライトが言った。
「紘汰、イメージしろ。俺がこれから何をするのかを」
紘汰は戸惑いを見せたが、肯いて瞼を閉じた。――
「――視えたか？」
「ああ。視えた」
「「俺たちの勝利のイメージ！」」
二人の台詞を合図に、針ほど細い桃色のソニックアローが、モグラ怪人に突き刺さった。
『あいだぁ!?』
次いで、ソニックアローは舞を拘束する縄を的確に射抜き、舞を解放した。
その隙に紘汰とライトは、彼らを包囲する戦闘員をあっというまに撃退した。
「舞！」
「紘汰っ！」
互いに駆け寄り、謝り合う二人――ダクトの中、月花は苦笑して頬杖を突いた。
（紘汰くんから借りたピーチのおかげで、二人の会話丸聞こえ……聞いてるこっちがハズいよぅ）
――龍玄とバロンだけで陽動が足りなかった場合の、光実考案の第二の策。
小さな月花だからこそ通れるダクトを通り、舞の囚われた部屋へ行く。そして、紘汰とライトさえもオトリとして、月花が舞を救出する。
この救出作戦は最初から二段構えだったのだ。
（さっすがヘキサのお兄さん。敵には回したくないな～）
ライトがトッキュウ1号に、紘汰が鎧武に変身した。彼らは次々と戦闘員を倒し、モグラ怪人を窓から外に投げ出した。
（これなら助けは要らないよね。ここで通気口破って出てくのもアリだろうけど、この分だと外でやり合うっぽいし。フイウチできるように、ここから戻ろっと）
にじにじ。月花は逆匍匐前進で元来たダクトを戻り始めた。
…………
……
…
結果的に、アーマードライダーとトッキュウジャーの活躍で、地下帝国バダンのモグラ怪人兄弟は討滅された。
別れの時が、来たのだ。
いつのまにかあった「まちはずれ」という駅名の看板と改札の前に、カラフルな烈車が停まっていた。
トッキュウジャーの5人は、乗り込む前に咲たちをふり返った。
「色々とお世話になりました」
トカッチがていねいに頭を下げた。これには光実が「こちらこそ」と礼を返した。
「元気でね」
「舞ちゃんもねっ」
舞の手を取るカグラは今にも泣き出しそうだ。このまま勢いで舞を連れて行かれるのを心配してか、光実がタイミングを図って舞をカグラから引き離した。
「じゃあね、ミオさん。がんばってね」
「咲ちゃんも。お互い頑張ろうね」
ミオは両膝に両手を突き、屈んで咲に笑いかけた。
「きっと待ってるよ、ミオさんたちの街。ミオさんたちが帰ってくるの、さ」
「――ありがとう」
やがてミオが、トカッチとヒカリとカグラが、烈車に乗り込んだ。
最後にライトが、紘汰との握手を終えてから、他の4人が待つ烈車に飛び乗った。
汽笛に合わせてドアが閉じ、烈車は走り出した。
咲たちは五色に輝く列車を、見えなくなるまで見送った。
長い長い1日の終わり。
ふたつの世界が交叉した、少しふしぎな1日の物語。
実は最初から最後まで月花/咲視点なんですよこの話。
冒頭の紘汰＆ライトが第三者視点なのは咲からの視点だったからなのです。
月花はばっちりソニックアローを使いこなしております。1回目のジンバーピーチ、実は伏線だったのです(*^^)v
駆け足で申し訳ありませんが、これにてトッキュウジャー合体SPはおしまいとさせていただきます。
次からは皆様お待ちかね、オーバーロード編です！