少年少女の戦極時代Ⅱ   作:あんだるしあ(活動終了)

63 / 190
第23話 白線の内側と外側

 

 

 ざくざく。草を掻き分け、紘汰とライトはヘルヘイムの森を進んでいた。

 

 ロックビークルで街に戻ることもできたが、それではライトと名乗った彼を置いて行ってしまう。咲のような子供を乗せるならまだしも、サクラハリケーンは二人乗り用のデザインではないのだ。ゆえにこうして足でクラックを探している。

 

「あの時、一緒に来た女の子。あの子も戦ってるの?」

 

 静かになるとしゃべりたくなる質なのか、ライトはよく紘汰に話しかけてきた。

 ライト自身が生まれ故郷の記憶がないこと、「烈車」という乗り物で旅していることも教えてくれた。

 

「ああ。小さいけど、あれでメッチャ! 強くて逞しいんだぜ。俺が2番目に頼りにしてる子」

「へ~、スゴイんだぁ」

 

 ちなみに紘汰が一番頼りにしているのは光実である。彼は利発だし、付き合いも長い。それに紘汰が行き過ぎたならブレーキをかけてくれると信頼しているから、紘汰の中では呉島光実が一番なのだ。

 

 

「――俺さ、世界を変えたいんだ」

「世界?」

 

 紘汰は立ち止まってライトをふり返った。ライトも止まって紘汰を見返す。

 

「上手く言えないんだけど、世界の…理不尽さっていうか、どうしても犠牲になるものがあるとこ、そういうのを変えてやりたいって、最近思うようなことがあって……笑っちまうよな、こんな夢物語。――でもあの子は、がんばろうねって言ってくれたんだ」

 

 その時の咲のコトバは、今も葛葉紘汰の胸の中に。繋いだ手の小ささも、まだこの手が覚えている。

 

「悪い。変な話しちまったな。行こうか」

 

 紘汰はライトに背を向け、改めて森を歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

「なるほどぉ。ヒカリくんとトカッチくんと、ミオさんとカグラちゃんは、その『烈車』ってゆーので旅してるんだね」

「そういうこと。あと、ライトもね」

 

 あれから緑の戦士――ヒカリが、沢芽市の事情を知りたいと言ったので、“ドルーパーズ”に場所を移し、互いの情報を交換し合ったのだ。

 男性陣+咲はトカッチとヒカリとボックス席で協議、女性陣はカウンター席で阪東自慢のパフェに舌鼓を打っている。

 

「咲ちゃん。ミオさんは『さん』付けなのに、何でカグラさんは『ちゃん』付けなの?」

「………………フィーリング?」

 

 何となく。そう、本当に、心底、何となく。カグラは「カグラちゃん」、ミオは「ミオさん」と呼ぶのが彼女たちに合っている気がしたのだ。

 

(『何となく』で決めちゃうあたり、あたしもヘキサのエイキョー受けてきてるかも)

 

 「考える人」のポーズで悩む咲。そんな咲に、光実やトカッチ、ヒカリは首を傾げた。

 

「あ、話ダッセンさせちゃってごめん。続けて続けて」

「ああ。それじゃ――あのバダン、ってのは一体何なんだ?」

「それが……僕らもバダンなんて奴らは初耳で」

 

 光実が咲を向いた。咲も当然、バダンなど相手取ったことがないので、こくこく肯いた。

 

「ねえねえ咲ちゃん! 咲ちゃんも行こうよ、“シャルモン”のケーキ!」

「わひゃ!?」

 

 咲はすっとんきょうな声を上げた。カグラが咲に横から飛びついたのだ。

 訳が分からなくて舞を見上げるが、舞も困惑していた。どうやらこれはカグラ一人のテンションの成せる技らしい。

 

「しょうがない。行こっか」

 

 常識人だと信じていたミオさえそう言うものだから、カグラは舞と咲を両脇に侍らせ、少女とは思えない力で彼女らを店の外に連れ出した。




 タイトルの「内側」は沢芽市、「外側」はヘルヘイムの森をイメージしています。沢芽市にとっての白線というと、やはり現実世界とヘルヘイムの境界線かなと思いまして。
 この頃はまだ光実が一番頼りになるって部分は揺らがなかったんですよね。今も紘汰の中では揺らいでないと思いますが。

 ロックビークルでは相乗りできないというのは本作独自の見解ですので真に受けないでくださいね(^_^;)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。