少年少女の戦極時代Ⅱ   作:あんだるしあ(活動終了)

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第12話 募金をしよう -じっこう-

 学校、リトルスターマインのステージ、ダンススクールでのレッスン、全ての時間の合間を作って作業をして3日目。ようやく募金活動に必要な品の準備が整った。

 

 

「よし、確認しよう。この募金は何のためにするんですか? トモ」

「怪物のカンセンショーで苦しむ患者さんを少しでも治してもらうため」

「集めたお金はどこに行きますか? チューやん」

「……鳳梨病院」

「集めたお金はどうなりますか? ナッツ」

「怪物のカンセンショーの患者さんのチリョーに当てられます。具体的に病院が何をするかは専門知識がなくて分かりませんが、皮ふ表面に発芽した種子? の除去手術がおもになると思います」

「モン太。その辺くわしく書いたプラカートは」

「モチ、完成済み」

 

 モン太がプラカードを掲げた。横でチューやんもスケッチブック3冊に書いた説明書を出した。

 

「うんよし。それじゃリトルスターマイン、しゅっぱーつ!」

『おー!』

 

 こうして6人の少年少女が沢芽の街にくり出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……募金てむつかしい」

「あたしらの格好も大いにモンダイなんだろーねー」

 

 イメージアップ作戦なので咲たちは思い切ってチームユニフォームで募金活動に臨んだ。ビートライダーズが「いいこと」をしているのを見てもらうためだからしようがないのだが。だが、それがいけなかった。

 

 通行人は咲たちがビートライダーズと気づくと、そそくさと去って行った。

 合同ダンスイベントから少しは当たりが優しくなったが、まだまだ市民全てが味方とはいかないらしい。

 

「インベス事件被害者の方のチリョーのためにー!」

「募金お願いしまーす!」

 

 人が来ない。たまに離れた場所からスマートホンで写真か動画か分からないが撮っている若者はいたが。さらし上げになるのかと思うと今から溜息が出た。

 

「ナッツ」

「んあ?」

「人にさけられるって地味にキツイね」

「それを言っちゃあおしまいよ」

 

 しゃべくっていると、一人の男が咲たちの前に来た。

 

「募金、いいかな」

「紘汰くん!」

「葛葉さんだ~」

 

 チーム鎧武の葛葉紘汰だった。チームユニフォームを着ていないから、今日はプライベートの日なのだと察せられた。

 

「どうしたの? バイト探し?」

「あー……まあ、そんなとこ」

 

 嘘だ。咲は瞬時に気づいた。気づいたが、言わなかった。もう彼らには踏み込まないと言ってしまったから。

 

「咲ちゃんたちは? この募金……治療費?」

 

 紘汰がナッツの持ったスケッチブックを覗き込む。ナッツは紘汰が見やすいようにスケッチブックを突き出した。

 

「そっか……インベス事件の。俺ら自分たちの名誉回復ばっかで、そういう人たちのこと考えてなかったなあ――」

 

 目に見えて落ち込んでいく紘汰。うろたえた咲は、どうにか紘汰を慰める言葉を探したが、その前に紘汰が顔を上げた。

 

 紘汰はショルダーバックから茶封筒を取り出した。

 

「これ。前にインベスゲームで勝った時の賞金なんだけど。全額寄付していいかな」

「ぜ、ぜんがく!? え、でも、それってすごい高いんじゃ」

「俺が持ってても使い道ないし。姉ちゃんに社会の役に立つ仕事で稼いでこいって言われちまったから。こういうんなら役に立ってるよな」

 

 紘汰は茶封筒の中身の万札をバサバサと募金箱に入れた。まさに、某ギャルゲの「さらば諭吉」。人が一度はやってみたいことベスト10に入る行いである。

 

「じゃっ。がんばってな」

 

 紘汰は爽やかに笑い、シュタッと手を挙げて去って行った。

 

「――――」

「あんたが入れあげるの何でかちょっと分かった」

「ナッツ! 変な言い方しないでよ。紘汰くんはトモダチなんだから」

「ふーん」

「……信じてないなその言い方」

「ちょっと前から()()()()あやしーじゃん」

「もー!」




 これガールズトークでいいんですかね?
 ふいんき誤変換はわざとです。こんな所に子供らしさが表れてもいいんでないかと思います。(自分の中では)ナッツはチーム1の口達者というポジションなのですが、まあこれくらいなら許容範囲さね。

 原作では晶姉さんが紘汰に返した賞金が使ったか言及されなかったので、ここに持ってきてみました。
 「さらば諭吉は人として一度はやりたい」とは作者の弟の言。

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