少年少女の戦極時代Ⅱ   作:あんだるしあ(活動終了)

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第39分節 悪あがき

 

 

 ヘルヘイムの遺跡にて。石塔に腰かける戒斗は、どこともない空を見上げ、呟いた。

 

「咲いた――か」

 

 

 …………

 

 ……

 

 …

 

 

 浮遊する大樹の房が天へ昇っていく。

 

『くそっ――撃ち落とせ!! 撃てるだけ撃て!!』

 

 斬月は上空に待機させていたダンデライナー部隊に指示を飛ばす。そして自らも、メロンエナジーアームズのソニックアローを何発も放った。

 

 種子は飛び散る。

 しぶとく生き残った人類をインベスへ変えるために。

 あるいは大気圏を超えて、宇宙へ。またどこかの惑星を侵し、己が種の色に染め上げるために。

 

 自分の指示が、行為が、意味を成さないことを、斬月は誰より理解していた。ダンデライナー搭載の火器は弾丸タイプ。これだけの量の種子を射撃し続けることはできない。

 

 静かに、美しく、絶望が降りしきる。

 

 

《ぐああああっ》

《ギャアアアッ》

 

 通信機からの音に悲鳴が混じり始める。

 

 種子は果実と異なり、食べずとも人間を侵す。ヘルヘイムの植物の苗床となる者もあれば、インベスへ変貌する者もある。

 

 グァシャン!!

 

 すぐ近くに乗り手がいなくなったダンデライナーが落ちてきた。代わりに上空には飛び回るインベスが増えていく。あの中のどれだけが、かつて貴虎の部下だった者たちだろう。

 

 種子の飛散は防げない。

 もはや地球人類が尽くインベスとなるのは時間の問題だった。

 

 

 

 

 

 

 ――一方、ザックや光実がいるライダー混成部隊側も、増えゆくインベスに苦しめられていた。

 

《 クルミオーレ 》

 

『だああああっ!!』

 

 ナックルは手近なインベスを2体、左右のストレートパンチで一時(いちどき)に撃破した。

 

『くそ、キリがねえっ』

 

 アーマードライダーを襲おうとするインベスを討った次の瞬間にも、守ったアーマードライダーがインベス化する。そのインベスをまた討つ。

 

 ――まるで無間地獄のような反復運動。

 さすがのザックも正気の針が振り切れそうだった。

 

『ミッチ、生きてるか!?』

『何とかね…!』

 

 どん、と背中に当たる戦友の感覚に一瞬だけ安心した。

 

『生きて帰るんだ……絶対、舞さんのとこへ帰るんだっ』

 

 光実の自己叱咤と、ブドウ龍砲の銃声が混ざる。その声と音が、まだ仲間がいるというコエが、ザックの精神を支えていた。

 

『! ぁ、ああ゛!』

 

 そのコエが苦痛を訴えた。ナックルは龍玄をふり返った。

 

 ――龍玄の右腕から、ヘルヘイムの蔦が生えていた。種子が龍玄の右腕に漂着したのだ。

 

 すると龍玄はブドウ龍砲を左手に持ち替え、迷いなくトリガーを引いた。

 肩から右腕が吹き飛び、地面に落ちて跳ねた。武肩甲だけが龍玄の右肩にぶら下がった。

 

『~~っ、…っあ…ぐ…!!』

 

 龍玄が頽れる。ナックルは慌てて龍玄を支えた。

 

『光実! 無茶しやがって…っ』

『だい、じょうぶ…このくらい…インベスになるのに比べたら…っ!』

 

 再びヘルヘイムの種子が上から集中的に降ってきた。

 ナックルは歯がゆさをぶつけるように、カッティングブレードを3回倒し、クルミ色のソニックブームで種子を吹き飛ばした。

 

 種子が燃え散って数瞬だけ空が晴れた。

 その空に、何かが光った。

 

 ナックルはナックアイを凝らし、それを見上げた。

 オレンジ色を煌かせ、高く高く上がっていく機影――

 

 

『紘汰――?』




 これザックと光実ファンの人に大激怒されないカナァ……ガタブル(((゜д゜;)))
 白いミッチを目標にしてきましたが今回の腕のアレのシーンだけは黒です。舞にまた会うためなら腕の一本や二本、という気概です。

 誰も悪くない。あんなに全力で本気で戦ったライダーたちが悪いわけがない。ただ、相手が悪かった。それだけの話なんです。

 さてラストで紘汰は一体どこへ向かっているのか――? 待て次回。

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