少年少女の戦極時代Ⅱ   作:あんだるしあ(活動終了)

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第37分節 アクシデント

 

 黒影トルーパー隊の指示で、隊列が組まれる。

 

 一列約7人が7列。龍玄が1列目、ナックルが2列目、月花が4列目、鎧武が7列目だ。平均キック力が同値になるよう割り振られたため、同社といえども同じ列には並べなかった。

 

 待機していると、凄まじい爆音と爆風が月花たちに降り注いだ。

 大樹の根元の爆破が終わったのだ。

 

 それからさらに待つと、反対側の月花たちでさえ視認できる巨大なクラックが縦一文字に開かれた。これがチューリップホッパーの最長クラックを1ミリ違わず繋げたものだと誰が信じよう。

 

(さすが呉島さん。ヘキサと光実くんのお兄さんだわ)

 

 1列目のアーマードライダーが溜めの姿勢を取った。指示はライドウェア搭載のインカムから流れるから、そこに指示が入ったのだろう。

 前方から「スパーキング!」のベルト音声が幾重にも聞こえた。

 

 月花はこっそり祈りの手を組んだ。

 

(光実くんに何事もありませんように。ザックくんに何事もありませんように。紘汰くんに、何も、ありませんように)

 

 1列目のアーマードライダーがジャンプした。

 そのまま逆フック型を描くように大樹へと向かい、7人分のライダーキックが惜しみなく大樹の幹に叩き込まれた。

 その威力たるや、先の大樹の根爆破で襲った爆風より強いソニックブームが視えたほどだ。

 

 だがこれだけでは、幹はビクともしない。

 

 すかさず2列目のアーマードライダーが大ジャンプした。ナックルの姿も見えた。

 彼らも1列目のアーマードライダーがしたように、ライダーキックを幹の同じポイントに叩き込んだ。

 

 3列目も大ジャンプしてライダーキックを決めて着地したが、それでも幹に変化はない。

 

《第4列、構え!》

 

 ついに月花のいる4列目に番が回ってきた。

 月花は自身のベルトのカッティングブレードを拳で3回叩き落とす。

 

《 ドラゴンフルーツスパーキング 》

 

 左右からもそれぞれの果物の名で「スパーキング!」と音声が上がった。

 

《てぇー!!》

 

 月花含む4列目のアーマードライダーたちが飛び上がった。

 

(絶対、ぶち倒してやる!!)

 

 7人分の足裏が幹に着弾した。ズドン、と重い音。この列はキック力が平均で約9トン。単純計算で60トンを上回るダメージを大樹の幹に与えられるはずだ。

 

『うおおおおおおお!!』

 

 雄叫びが重なる。月花も腹の底から絞り出すように叫んでいた。

 

 メリメリメリ……

 

 幹から不吉な――月花からすれば小気味よい音が。

 ついに根が地上から浮いた。倒れる前兆だ。

 

『やっ……』

 

 上からも下からも歓声が上がりかけた時だった。

 

 

 ()()()()()

 

 

『――、え?』

 

 それは誰が洩らした呟きか。

 

 アーマードライダーたちが蹴った部分を中心点に、幹に亀裂が入り、幹は爆破した根ごとクラックへ向かって倒れていく。それはいい。想定通りだ。

 

 幹の上の房が、綺麗に取れてしまっていなければ。

 

 本来は房をこそクラックの向こう側に押しやらねばならなかったのに、蹴ったポイントが悪かったのか威力が悪かったのか、ちょうど房と幹の間から幹が折れ、幹だけがクラックの向こう側に倒れてしまった。

 

 その上、折れて取り残された房が――

 

 

『浮い、てる?』

 

 

 月花は知らずの内に零していた。




 最善を尽くして最悪の結果が出る。これがブッチー時空です。
 本気の全力で挑んだライダーたちだったのに、種子のカタパルトである房は健在でした。アクシデントなんてレベルではありません。
 さあ、ここから地獄絵図ですよ。お覚悟を。

 列が前のほうだからといって決して弱いというわけではありませんよ? 特にナックルは拳、龍玄は銃が主武装なのでキック力自体が低いとか、そういう理由での割振りです。

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