少年少女の戦極時代Ⅱ   作:あんだるしあ(活動終了)

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第134話 泣きながら進む

「そういうわけだから、咲ちゃん。ここでお別れだ」

 

 いやだ。いかないで。いっしょにいて。

 

 咲は喉まで出かけた言葉を、涙と一緒に呑み込んだ。

 これで地球は救われる。地球で生きていきたい咲には、救ってくれた紘汰と舞の選択を責める権利はない。

 

「紘汰くんと舞さんは、これから、一から新しいセカイを創るのよね。それって、すごいタイヘンなことなのよね」

「ああ。それでも、俺はそんな未来に往きたい」

「そっか。うん。ならしょうがないね」

 

 咲はびしっ、と二人を指差した。

 

「舞さんのこと泣かせないでよ。それと、ハンパに投げたりしたら、絶対、ゆるしてなんかあげないんだからっ」

 

 紘汰も舞もきょとんとし、それから、とても素敵な笑顔を揃って浮かべた。

 

 

 

 

 ――紘汰と舞が旅立つのを見送ってから、咲はずっと膝枕していた戒斗を見下ろした。

 

「聞いてた? 戒斗くんのユメ、紘汰くんと舞さんがかなえてくれるって」

 

 戒斗は静かに目を開けた。

 

「いつから気づいてた」

「さいしょっからに決まってるじゃん。あそこでシュショーに紘汰くんに負けるとか、アヤしすぎるにもほどがあるし」

「本当に可愛げのないガキだな、お前は。――俺に何をした。さっきの爆弾か?」

「うん。さっきのね、紙吹雪あびた人を強化する効果があるの」

 

 咲はダイズの錠前を取り出して戒斗に見せた。

 

「戒斗くん、オーバーロードになったから、回復力は人一倍あると思うし、さっきのでそこんとこ強化されたんでしょ。ぶっつけ本番だったけど、うまく行ってよかったぁ」

「よりによって世界の運命を決する時に、ぶっつけ本番か。やはりとんでもないガキだな」

「ガキじゃなくて、室井咲って名前があるし。前にも言ったじゃん」

「どうしてくれる。葛葉と舞が全て持っていった中で、俺は一人残された。責任取れるんだろうな」

「あんがいとれるかも、って思ってたり」

 

 咲はヒマワリの錠前を出した。

 

「あたしもジュグロンデョとかゆーのになっちゃったし。オーバーロードの戦士と天使。おにあいだと思わない? あたしたち」

「……死んでも御免だ」

「ひどーい! なんか間があるのがリアルっぽいし!」

 

 戒斗は溜息をついた。そして、咲が喚き終わってから、また口を開いた。

 

「お前は、今の世界のままでも人は変われる、と言ったな。お前自身、過去に、変わったんだと」

「うん。インシツないじめっ子からビートライダーズのリーダーに大変身。ヘキサのおかげでね」

「そうか――」

 

 戒斗は顔を顰めながらも起き上がった。

 

「ちょ、まだキズぜんぶなおってないのにっ」

「いつまで空元気を続けるつもりだ」

「――、え?」

「葛葉の言葉をもう忘れたか?」

「だっ、て」

 

 会えない。紘汰と二度と会えない。この先、紘汰がいない人生を何十年と生きていかねばならない。

 ずっと、いつからか分からないくらいずっと前から堪えていたものが、目から溢れて落ちた。

 

「うっ、ふぇ、えぐ…う、うえええん…! ふええええん…!」

 

 咲は、泣いた。顔を涙と鼻水でぐしゃぐしゃにして泣いた。

 そんな咲の頭を、戒斗は彼の胸に押しつけさせた。

 

「それでいい。お前は泣け。泣きながら、進んで行け」

 

 戒斗は咲に胸を貸してくれた。咲が泣き止むまで、ずっと。




 はいー! まさかの戒斗生存ルートでしたー!!
 賛否両論ありましょうが、作者としてではなく「私」として、こういう結末を思い描き、望み、そして精魂込めて書きました。
 感想はいかようにもお寄せください<(_ _)> 全て受け止めます。
 あんだるしあが選んだ運命ですから。

 次回からはキャラたちの後日談です。

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