少年少女の戦極時代Ⅱ   作:あんだるしあ(活動終了)

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第132話 降り注げ! ダイズアームズ

 

 ヘリコプターから飛び出した月花は、手近なビルの屋上に着地した。

 

 取り出したのは、コアスロットルとピーチエナジーロックシード。紘汰から「戦友の証」としてずっと借りっぱなしだった物だ。

 

 月花はコアスロットルを戦極ドライバーに装着し、ピーチエナジーの錠前を開錠してセットした。

 

《 ヒマワリアームズ  ミックス  ジンバーピーチ  ハハーッ 》

 

 羽根が生えた桃模様の陣羽織が装甲される。すぐさま耳を澄ました。

 

 

 ――……の人間では決して実現できない世界を、俺が創る。

 

 

(見つけた! 戒斗くんの声だ)

 

 

 ――弱者が踏み躙られない世界だ。

 

 

『あ……』

 

 月花は――室井咲は、駆紋戒斗の過去に何があったかを知らない。それでも、今の戒斗の言葉に嘘はない、それこそが戒斗が焦がれ、求めてきたものだったのだと分かった。

 

 

 ――誰かを虐げるための強さを求めない、そんな命でこの星を満たす。舞と一緒に、知恵の実を使って。

 ――今の世界で、それは無理だって言うのか。

 

 

(紘汰くん!)

 

 

 ――それが俺の生きてきた時代だ。誰もが強くなるほど、優しさを忘れていった。

 ――強くて優しい奴だって大勢いた。みんなこの世界を守ろうと必死だった。

 ――そんな奴から先に死んでいった。優しさが仇になって、本当の強さに至れないまま終わった。お前もそうだ、葛葉紘汰。

 ――いいや。俺はお前にだけは負けない。お前を倒して、本当の強さを証明してみせる。

 

 

 続く、ドライバー装着音と、オレンジアームズとバナナアームズの変身音声。そして、武器がぶつかり合う音。

 

(行かなきゃ)

 

 その想いに衝き動かされるまま動いた。

 月花はヒマワリフェザーを広げて空へ飛び立った。

 

 

 

 

 ジンバーピーチの性能で紘汰と戒斗の声を辿りながら空翔け、ついに月花は彼らの戦場へ辿り着いた。

 

 鎧武は極アームズとなり、バロンはロード・バロンとなり、全力を互いにぶつけ合っている。上まで闘気が昇ってくる。まるで火口の真上にいるようだ。

 

(ジュグロンデョは勝利の天使。フェムシンムではそう伝わってた。あたしがヒマワリアームズの羽根、ヘキサが顔で、たまたま同じだったから、王さまたちはそういうふうにあたしたちを見てたけど。それが地球でも同じなら、あたしは)

 

 月花は上空にいるまま、唇を引き結び、戦極凌馬が送りつけて来た最後のロックシードを出した。

 

『あっ』

 

 地上で、ロード・バロンが杖剣で鎧武を袈裟斬りにした。極彩色のエネルギーが鎧武から溢れて飛び散る。

 

 

 ――終わりだ。

 

 

 膝を突いた鎧武に、ロード・バロンが杖剣を大上段に振り上げた。

 

(終わらせる、もんか!)

 

 振り上げた刃を、鎧武は腕で受け止めた。そのまま杖剣を抱え込み、チョップで刀身を折った。鎧武が折れた刀身を、突き出す。

 

 

 ――うああああああああっっ!!!!

 

 

 試した時は性能がピーキーで、ずっと使い所がないまま来た、最後の錠前。月花はそれをついにドライバーにセットした。

 

《 カモン  ダイズアームズ  Bomb na Therapy 》

 

 ダイズを模した鎧が換装されるや、月花は直下にいる二人へと墜ちていく。視界に入るもの全てがスローモーションだった。

 カッティングブレードを3回叩き落とす。鎧武が突き出す杖剣の刃がロード・バロンを貫く前に――!

 

《 ダイズスパーキング 》

『まに、あ、えええええええ!!!!』

 

 出せる限りのダイズアームズの固有武器、アゾト爆弾を、鎧武とロード・バロンに向けて投げ、降り注がせた。




 ブレイアッ様、登場させるのが遅くなって大変申し訳ありません。
 ずっと前に頂いたロックシード案「ダイズアームズ」、ようやくお披露目できました。しかもこのダイズアームズが、戒斗の運命を大きく変えることになりました。
 ブレイアッ様、本当にありがとうございます。
 ちなみに変身音声は「ボナセーラ」をもじった感じです。

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