少年少女の戦極時代Ⅱ   作:あんだるしあ(活動終了)

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第128話 ザックの真意 ①

 

「だから踏み止まれと? そんな安い考えで止まるから、お前は真の強さには至らなかったんだ。室井咲」

 

 戒斗の拒絶は、咲の胸をにぶく抉った。

 

(強くなくたっていい。大好きなみんなと、楽しい思い出をつみかさねていけたらいいって。あたしが望むのはそれだけなのに。戒斗くんにこのキモチはとどかない)

 

 戒斗が再びロード・バロンに変異した。

 

「咲ちゃんは下がって!」

 

 鎧武がカチドキロックシードと極の鍵を同時にバックルにセットし、鍵を回した。

 

《 カチドキアームズ  いざ出陣  エイ・エイ・オーッ 》

《 極アームズ  大・大・大・大・大将軍 》

 

 再び始まる、鎧武とロード・バロンの戦い。訴えて、話して、通じなかった。後は刃を交えるしかないのか。迷いで、ロックシードの開錠ボタンを押す指が、震える。

 

 その時、まるで咲が使い物にならないことに気づいたようなタイミングで、ザックがナックルに変身した。

 ナックルはロード・バロンと鎧武の間に割り込んだ。

 

『加勢するぜ、戒斗っ』

 

 咲は頭を大きく振って、腹に巻いていたドライバーに、ドラゴンフルーツの錠前を再びセット、カットした。

 

「変身っ」

《 ドラゴンフルーツアームズ  Bomb Voyage 》

 

 炎の形をした果実の鎧が咲を装甲し、月花へ変えた。

 

 月花はナックルがしたように、鎧武とナックルの間に割り込み、ナックルを鎧武から引き離した。

 DFバトンを両手に構えた月花は、両手のクルミボンバーを構えたナックルと向き合った。

 

『紘汰くん、戒斗くんに集中して!』

『戒斗、こっちは気にすんな!』

 

 と、啖呵を切ったものの、変身しても縮まらないものがあった。体格差だ。

 何度もくり出されるパンチを、DFバトンを交差させて防ぐが、どんどん後ろへ押しやられていく。パワー押しのナックルと、スピード型の月花では、月花のほうに分が悪かった。

 

 やがてナックルは月花を押し倒して、地面に縫いつけた。月花がばたついても解けない。ナックルは大の男で月花は小学生、当然のことである。

 

 ナックルはフェイスマスクをぎりぎりまで月花に寄せ――

 

『今は紘汰連れて退け』

 

 まるで戒斗の脅威から遠ざけようとしているかのような言葉を、口にした。

 

『何言って…っ』

『頼む』

 

 表情は見えずとも、ナックルが必死なのは伝わった。

 その必死さに、負けた。

 

 月花は威力を弱く設定したDFボムを出し、自分とナックルの間で起爆した。

 

『ぐはっ!?』

『きゃうっ』

 

 月花とナックルが爆発の衝撃で、互いに離れて転がった。

 

 熱かったが、立てないほどではない。だが月花は立てないフリをした。こうすれば鎧武は絶対に見逃せない。

 

(紘汰くんをだます日が来るなんて思わなかった)

 

 

『咲ちゃん!』

 

 鎧武が駆け寄ってきて、月花を抱き起こした。

 鎧武は月花とロード・バロンを見比べ、月花を抱き上げてその場から駆け出した。




 今までの咲なら他でもない紘汰を騙すなどできなかったでしょう。それができるようになったのは、咲の「世界観」が広がった証拠です。ヘキサだけでなく、紘汰も戒斗もザックも視界に入れられるようになったからです。

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