つたない文ですけど、よろしければどうぞ!
亥の刻
とある山道…
そこは盗賊による人斬りや強奪、強姦などの被害が頻繁に起きている場所であった。
亥の刻のため、あたりは暗く月の光だけがその暗闇を照らし出すのだが、月は雲のうしろ、その姿を隠してしまっている。
そんな真っ暗闇の中に一人の剣士が四人の盗賊に対峙している。
「…てめぇ、いったい何もんだ!!」
一人の盗賊の男が剣士に向けて怒声を放つ。その声にはどこか余裕が無く焦りが感じられた。
実際焦っていたのだ、この男は。否、この男だけではなく他の無法者達も同様にである。
剣士の周りには既に五つの骸が転がっていた。盗賊たちの仲間だったものだ。
「……」
剣士は無言でただ盗賊のことを睨む。そして、その盗賊の足下にもいくつかの骸が転がっている。
それらは、この賊たちの被害にあった民の骸であった。
「うっ、うおおぉぉぉぉぉっ!!」
盗賊の一人が剣士へと斬りかかる。
が…、剣士はそれを危なげなく避け、逆にこれを斬り捨てる。
残り三人…
「畜生がぁ!」
「死ね、化け物!」
今度は二人がかりで襲いかかる。
盗賊は剣士に対して左右から攻め、同時に切り伏せようとする。
そこからは、一瞬。
気づいた時には、二人の男はバラバラに斬り裂かれていた。
「ひぃっ!」
最後の一人となってしまった男は目の前の剣士にとてつもない恐怖を感じていた。
恐怖のあまり歯をガチガチな鳴らせ、立ちすくんでいる。
「……」
未だ無言を貫いている剣士は、一歩また一歩と男へと近づいていく。
男は後ずさろうとするが、足がうまく動かず、しまいには尻餅をついてしまう。
その時、今まで暗がりであったせいで見えなかった剣士の顔が月明かりによって照らされた。
整った中性的な顔。
真っ白な髪。
髪同様に白い肌。
明らかに日本人とは違う顔立ちをしている。
そして、その服装も日本のものではなかった。見慣れない着物は全体的に黒いものだった。
男は何か言おうとしても舌が上顎にくっ付いたみたいに声がでない。
ついに目の前まで来た剣士は、まるで無機質のような目で男を見下ろして言った。
「A nonresistant person does not kill. 」
男は蹴飛ばされたように走り出した。相手が何を言っていたかはわからない、とにかく必死に走って逃げた。
剣士は男を追う事はせず、剣を鞘に納めると民の骸の前に膝をつくと整った顔を苦々しく歪める。
その剣士は思っていた、何故弱者はいつも虐げられるのかと。
剣士は刀を鞘から抜き、自分の目線の高さまで持ってくる。
自分は何のために、この刀を振るっているのだろう。
そう、自分の中で自問自答するのだった…
一方、剣士から逃げた男は恐怖の対象であるものからひたすら逃げ続けていた。
そして、恐怖を打ち消すようにこう叫んだ…
「鬼だ…、…鬼(悪魔)だっ!」
「白い鬼だああぁぁぁっ!!」