真剣で私に恋しなさい! MA   作:x.i.o.n

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第7話後での九鬼ビルでの1ページを書いてみました
九鬼のビルで主人公たちは何をしたのか何を思ったのか
あんまり書けてる自信はありませんが…


第8話~九鬼ビルでの一時~

 

弁慶と一緒に部屋に戻った後、私は残った仕事を片付けることにした

 

何というかメリハリがはっきりして俄然やる気が沸いているような気がする

 

学校が終わった後でも私達メイドには仕事がある

 

民を笑顔にするために休んでいる暇なんてなかった

 

世界各地から挙げられる報告を纏め問題があれば指示を出していく

 

報告書を読んで次の手を打つのも仕事の内だ

 

「よー薔薇。学校から帰ったのか?」

 

「ステイシー、その名で呼ぶなと言っているでしょ」

 

「だってお前についたあだ名だろ?」

 

クスクスと笑いながら話す金髪

 

ステイシー・コナー

 

九鬼に入ってきた時期こそ私よりもほんの少し早かったがほとんど同期といっても差し支えない

 

プライベートでは敬語を使うが今は仕事中なので呼び捨て敬語なしになっている

 

因みに薔薇とは私の事だ

 

薔薇の従者…それが私に付いたあだ名

 

私的には全くの不本意だが周りは既にそれで定着してしまったらしい

 

薔薇の異名が付いてしまったのは戦闘に関することではない

 

私は定期的にある人へ薔薇を送っている

 

そのため私は薔薇を持って歩いていることが多い

 

だから付いたあだ名

 

私の後を追いたいのなら薔薇の花びらを辿ればいいなんて常套句まで出来てしまっている

 

もっと他にあったでしょうに

 

何でそこで付いたのだろうか

 

「でもよーお前ほど定期的に薔薇を持参する奴なんていないんだぜ?」

 

「それでも不本意なのは不本意です」

 

「敬語でしゃべってるぞ」

 

「む」

 

駄目だ気が付くと年上の人には敬語でしゃべってしまう

 

もはや病気だよ病気

 

「これから仕事だから私はもう行くよ」

 

「熱心なこって」

 

ステイシーはもっと熱心になってもらわないと困るんだけどね

 

ただでさえステイシーや李は急な序列アップで老人たちからのやっかみも多いんだから

 

「さてと…」

 

私は自分の部屋に戻ると溜まっていた書類を片付けていくことにした

 

書類の中には簡単なものもあれば難しいものもある

 

だがそれでこそやりがいがある

 

「やりますか!」

 

黙々と書類を片付けて行った

 

結局書類仕事が終わったのは夜の9時を回ったころだった

 

「んー! 今日の仕事終わりっ」

 

いつもよりも作業能率が良かったような気がする

 

いや、戻ったというべきかもしれない

 

「ちょっと早いけどお風呂に行こうかな」

 

一日疲れた体を癒しに行く

 

お風呂は身体が洗われて清々しい気分になれる

 

身体を入念に洗い髪を洗いお湯で流して湯船に入る

 

あ゛ぁー極楽極楽

 

「思考がおっさんくさいな」

 

まぁ気持ちいいのには変わりない、か

 

「あら?」

 

「おろ?」

 

浴場に入ってきたのはあずみだった

 

いつもより大分早いような気がするけど

 

「いつもよりも早いじゃねぇか」

 

「そっちこそ。英雄様はいいの?」

 

「あぁ、今は完璧執事が付いてる」

 

ということは勉強を見てもらっているのか

 

「いつもよりも仕事が速くケリついてな暇になったんだ」

 

「で、お風呂に来たと」

 

「あぁ。お前は?」

 

「あずみと大して変わらないよ」

 

「そうか……」

 

あずみも体を洗い髪を洗ってから湯船に浸かった

 

「今日もお疲れ様」

 

「お疲れ」

 

短いやりとりではあるものの私たちの場合はそれでいい

 

長年連れ添った仲だ互いが何を考えているのか良く分かる

 

「にしてもまーたデカくなったんじゃねぇか?」

 

「そんなことないよ。気の所為でしょ」

 

「ったく私は全然ないのに何でこいつにはあるのかねぇ」

 

もにゅんもにゅんと胸を揉みしだいてくるあずみ

 

暫くの間はしたいようにさせた

 

「まぁ、オメェは息子がデカかったからなぁ……その恩恵かもしれん」

 

「ゴホッ! ちょっといきなり何をいって…!」

 

「ま、いいさ」

 

これはあたしのモンだと言ってあずみは私の胸を枕代わりに頭を乗せて身を預けてくる

 

自己主張の激しい相方だこと

 

暫くした後風呂から上がると私の部屋へ直行した

 

そこであずみはカウンター席に座った

 

私の部屋はちょっと改造してありバーのような部屋になっている

 

まだ飲める年齢になっていないので飲むことはできないものの作ることはできるし、酒造りには前から興味があった

 

ということで魚沼さん(九鬼ビルの近くにあるバーのマスター)に教えてもらったりした

 

それをどこから聞きつけたのか師匠がここで作れと言ってお酒を造らされ挙句の果てには帝様も悪乗りして私の部屋を改造し今に至る

 

魚沼バー(九鬼ビル内支店)といった感じだろうか

 

「何呑む?」

 

「黒糖焼酎…ロックで」

 

「はいよー」

 

あずみは黒糖焼酎が好きだ

 

大体最初はこれを頼む

 

「ツマミも一緒に出してくれ」

 

「はいはい」

 

チョコなどといった酒のつまみを出して黒糖焼酎と一緒に出してあげた

 

「あーうめぇ」

 

あずみは忍者としての習性がまだ残っているため多量の飲食物は受け付けないらしい

 

そのため飲める量は限られているらしいもののそれでもお酒はおいしそうに飲んでくれる

 

あー私も早く飲みたいよ

 

「オメェはもうちょっと待て」

 

「ウェーイ」

 

あーサイドカーとか飲みたい

 

いかんいかん酒の事を考えると飲みたくなってしまう

 

ブンブンと頭を振って煩悩を追い出すことにした

 

「ちーかま」

 

「ちーかま」

 

今度は弁慶が私の部屋にやってきた

 

弁慶はこのバーの常連客でもある

 

出せる酒は一滴もないけど

 

「弁慶は川神水だけだよ」

 

「そこ何とか!」

 

「ダメ」

 

「舐めるだけでいいよ!」

 

「ダメ」

 

「今日も駄目だったか」

 

自前で持ってきた川神水を杯に入れて飲み始める

 

ここに来るのは何でも雰囲気がいいから、らしい

 

そんな理由もあってか時々与一もここに来る

 

「前に弁慶が言ってた大吟醸仕入れたけど飲む?」

 

「飲む!」

 

川神水大吟醸は職人の……以下略

 

「大吟醸おいしーね。そしてつまみも…ゴクッゴクッ、もぐもぐ」

 

何というか英雄というよりはただのおっさんにしか見えない

 

それも弁慶の愛嬌みたいなものかもしれない

 

「お、なんだもう飲み始めてんじゃねぇか」

 

「早いですね」

 

次に入ってきたのはステイシーに李だ

 

李静初、私とステイシーと同時期に入ってきた同期

 

最初はツンケンしてたけど今では私の姉のような人だ

 

周りは私に対して甘くなるとのこと

 

「よーし私はテキーラだ。ロックでな」

 

「私は老酒をもらますか」

 

テキーラはアメリカの酒で老酒は中国のお酒の事だ

 

李さんは何を隠そう中国人だ

 

しかも美人

 

カッコいいところもあるけど可愛い一面も持ち合わせているいい人だ

 

「はいおまちどーさま」

 

「じゃあ李、あずにゃん乾杯!」

 

ステイシーが元気よく杯をぶつけ合っていた

 

まるで子供のようなはしゃぎ様だった

 

この底抜けの無い明るさはステイシーさんのいいところでもあるだろう

 

それからしばらく4人は飲み続けた

 

途中で弁慶は義経に連行されて自室に戻っていきステイシーさんは酔いつぶれてしまったためあずみと李さんが部屋まで連れて行ってしまった

 

で、次に来たのは…

 

「おい、ハンターを寄越せ」

 

「はいはい」

 

そんなこと言いながら席についたのはこの部屋を改造するに至った元凶

 

私の師匠だ

 

「では私はサイドカーをいただきましょうか」

 

「分かりました」

 

更に完璧執事のクラウディオさんまで来た

 

完全に私の部屋が皆の憩いの場と化してるよね

 

このバーは他にも様々な人が利用していく、桐山さんに他の若手従者達や時々英雄様や揚羽様もいらっしゃることもある

 

帝様がいる場合は当然ある

 

というかここに立ち寄られると必ずと言っていいほど来る

 

局様を伴って……

 

で、酔った帝様に延々と惚気話を聞かされる

 

局様は恥ずかしそうにするけど止めてくれないし

 

なんというかもうごちそう様です

 

「そういえば今日はお酒のペースが速いですね師匠」

 

「気のせいだろ」

 

既に5杯目ですよ

 

普段はもっと味わって飲んでるけど今日は浴びるように飲んでいる感じがする

 

何かあったんだろうか

 

「きっと嬉しいんですよ。手塩を掛けて育てた弟子が成長しているのが」

 

「おいクラウディオ。余計な事を言うな」

 

「…熱でもあるんですか?」

 

「ふん!」

 

「あぶなっ!」

 

拳が飛んできた……照れ隠しだなあれは

 

長年あの人の基にいたから分かる

 

照れ隠しだ(2回目)

 

「身体の事も考えて飲んでくださいね」

 

「貴様に心配されるほどヤワじゃない」

 

確かにヤワじゃないけどさ……年くらいは考えて飲んでほしい

 

かなりの御高齢なんだし

 

その後も散々飲み続けて帰っていった

 

あれだけ飲んだのに二人とも素面だった

 

どんだけ酒に強いんだ

 

「よお、ヒュームのジジィ達は帰ったか?」

 

「うん、今さっき」

 

「そうか……」

 

「まだ飲む?」

 

「いや今日はもういい」

 

じゃあ、そろそろ店仕舞いしようかね

 

出していた酒などを片付けて食器も洗って…と

 

「で……どうしたの?」

 

「…いや」

 

あれから10年も経ったんだな、あずみはそんなことを言った

 

……九鬼に入ってからもうそんなに経つんだ

 

感慨深いな

 

「でも、どうして…急に?」

 

「お前の顔を見たら分かるさ。懐かしいって顔してやがる」

 

今日のことを見抜かれてしまったらしい

 

あの頃の繋がりをまた一つ作ることが出来た

 

多分その嬉しさが顔に出ていたんだろう

 

「そんなお前の顔見てたらよあれからだいぶ時間がたったんだなって思っちまって」

 

「そう………。ねぇ」

 

「なんだよ」

 

「なんで…ここにいるんだろうね」

 

「さぁな」

 

あの時死んだはずなのに

 

私達は今もこうして生きている

 

あるはずのない2度目の人生

 

最初のころは戸惑ったりもした

 

本当は夢なんじゃないかと

 

目を覚ませば死後の世界であずみたちが待っていてくれるんじゃないか

 

そんなことを思っていた

 

ただ寂しかった

 

自我はあるけど赤子の時は満足に手も足も動かせず言葉を発することもできなかった

 

夢なら醒めてほしい、愛する妻や主たちに会いたい

 

けれど現実は残酷で私はこの世界で独りぼっちだった

 

そうして前の世界とは全く異なる経緯を経た

 

京のいじめ問題や姉さんと早期に邂逅したこと

 

お父さんたちが早期に日本を棄てたこと

 

色々あった……そんなときにあずみは私を迎えに来てくれた

 

最初は信じられなかった

 

目の前の光景が、私の耳が、目が、私に入ってくる情報の全てが

 

そしてあずみが私の知るあずみだと知った時、それは喜びとなった

 

私と世界を共有できる人間が増えたことが、何より会いたかった人が迎えに来てくれたことが

 

「でもな、今はそんなことどうでもいいんだよ」

 

「うん、私達は"今"を生きている」

 

『今が楽しければそれでいい』

 

細かいことを気にしても仕方ない

 

そんなことは誰にもわからないんだから

 

それこそ神のみぞ知る、というやつだろう

 

だからどうでもいい

 

分からないことで悩んだって分からない物は分からない

 

なら今を精一杯楽しんで生きて行けば何の問題もない

 

愛する人と一緒にもう一度歩むことが出来る

 

それは何よりも尊いものなのだから

 

「そろそろ寝ようかな」

 

「あん? 何言ってんだ」

 

「へ?」

 

「今夜は寝かさねぇよ☆」

 

「へ??」

 

何が何だか分からないままガバッと布団に押し倒されてしまった

 

え、これから何が起こるというの?

 

あずみの笑顔が怖いよ

 

ちょ、何する止め…

 

――アッーーーーー!

 

気が付いたら隣であずみが私の胸に埋もれて眠っていた

 

夜に何があったかは私はあまり語りたくない

 

to be continued....





あずみが美哉にしたことは読者の皆様の創造にお任せします
ということで第8話でした
どうでしたでしょうか?
第7話第8話ともに閑話という感じになりますかねぇ
本編書けよって話なんですが…

さて、そろそろマジでスワローを登場させないと…あぁ、でも金曜集会の事も書きたい
とりあえずスワロー娘を登場させてからかなぁ

それでは感想等お待ちしております
ではでは!

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