真剣で私に恋しなさい! MA   作:x.i.o.n

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気が付いたらお気に入りが300件を突破していた件について
あれ、つい最近まで250件あたりをうろうろしていたはずなのにいつの間にか300超えてる!なんてことになってました
自分の作品をお気に入りしてくださってありがとうございます

更新ペースが遅い作者ですがどうかよろしくお願いします
それでは第17話です
どうぞ!


第17話~風間軍対九鬼軍~

 

試合が終了して既に他の軍も次の試合の準備を進めていた

 

試合の順番は完全に抽選制で学長がクジで決めて、それで被ったらもう一度やり直すらしい

 

一応学園の行事だけどそれでいいんだろうか

 

「余計な事を考えても仕方ないか…」

 

はぁっとため息を吐くと私は自室で再び明後日の試合をどうするのか考えることにした

 

九鬼軍は盾・弓・槍など各部隊のバランスも源氏軍に次いでとてもいい

 

それにその部隊の運用方法も他の部隊よりもうまい

 

これは葵冬馬の指示なんだろう

 

恐らく調練の段階から葵の指導が入っているはず

 

九鬼軍は放っておいても人が集まってくるから葵自身はあまり精力的に人材ハントをする必要がなかったからそっちに時間を割けたんだろう

 

対してこちらは練度はそこそこ高い水準ではあるが九鬼軍ほどではない

 

まともにぶつかっても恐らく勝てない

 

松永軍のように私やまゆっちが旗を直接攻めるのもありだけどそれも恐らく対策されているはず

 

ならば………

 

 

――水曜日 試合当日

 

 

試合当日の日、私達の試合は第2試合として行われることになった

 

第1試合は川神軍対松永軍

 

勝敗は川神軍の判定勝ちだった

 

揚羽様がその手腕で以って部隊指揮に専念したために無頼集団である松永軍はその部隊運用の旨さにしてやられていた

 

燕先輩の目の届くところは彼女の命令に素直に従うものの末端の方までその指示が行き渡っていないように感じた

 

そういった細々とした差が今回の戦いの勝敗を分けたんだろう

 

私達の試合の後は教師軍対源氏軍となっている

 

先生たちと戦うと言うことで義経は無駄に戦々恐々としていた

 

そんな義経を見て弁慶がほっこりした顔になっていた

 

そんな主従で大丈夫なの?

 

まぁ何はともあれ今は目の前の事に集中しないと

 

あっちにはあずみに桐山も居る

 

そして一番厄介な葵冬馬も……

 

「そろそろ時間だってよ」

 

「了解」

 

1人集団から離れていた私にキャップが肩を叩きながら時間を告げた

 

本人は九鬼と戦えることにワクワクしているみたいだけど

 

果たしてそんなに単純にいけるかどうか……

 

会場には既に両軍が入場し今か今かと試合開始の合図を待っていた

 

九鬼軍の布陣は旗を中心に円陣が敷かれており、全方向からの攻撃に対応できるようになっていた

 

その前面にはあずみや桐山鯉など腕自慢達が配置されている

 

あずみや鯉は遊撃と迎撃、その後にいる人間でこちらへ攻めてくる布陣だろう

 

対する此方の布陣は旗にはまゆっちが付きその周囲を少数の兵士たちが警護している

 

残りの隊は少数に分けられあちこちに布陣させていた

 

「では試合を始める……試合…開始!」

 

昨日に引き続いてタカ姉が試合開始の合図をすると私はあずみたちの前に躍り出た

 

あずみの卓越した戦術に鯉の戦闘力

 

放っておけばこちらの被害も馬鹿にならない

 

「やっぱこうなったか」

 

「おやおや、連日ハードな試合になりそうです」

 

あずみは頭を掻きながら、鯉は笑顔を崩すことなく私に対峙していた

 

まぁ、どっちも野放しにしてはおけないという立場上、こうなることは必然と言える

 

これは私達に限ったことではなく他の軍でもどうようなことがいえる

 

姉さんの軍で言えば要するに出る杭は打たれる運命、ということだ

 

「まぁ、久々に私に相手をしてよ」

 

「ヒューム卿と互角にやり合える人相手では身体が持ちませんよ」

 

鯉が肩を竦めながら毒を吐いた

 

まるで言外にお前は化け物だと言われたような

 

そもそも私だって本気やるつもりはないよ

 

そこらへん融通の利かないお師匠様と違って寛大だと思うけど

 

「そういう問題じゃないんですけどねぇ」

 

「知らぬは本人ばかりなりってな」

 

何故か呆れられた、納得がいかない

 

「さぁ、無駄口はそこまでにして……」

 

――掛かって来なさい

 

私の内に眠る気を解放させる

 

これで気圧されるようなら私と対峙する資格はありもしないけど

 

「……」

 

「相変わらず無茶苦茶だな」

 

2人は動揺すらしていなかった

 

九鬼の従者だから師匠達の相手も当然何度かしたことある

 

そのお蔭でマスタークラス相手でもそこまで動じなくなったんだろう

 

「ほら来ないんならこっちから行くよ!」

 

素早くあずみたちの前に移動するとそのまま蹴りをお見舞いした

 

2人は何とか避けると転がるようにして受け身を取った

 

ギリギリのところで避けたらしい

 

「蹴りだけならヒューム卿と同等ですか……」

 

「そうじゃなきゃジェノサイドチェーンソーなんて使えねぇよ」

 

「まだ無駄口を叩く、よっぽど余裕があるみたいね!」

 

多分、葵冬馬が裏で色々動いてるんだろう

 

だからこそあんな悠長に話していられる

 

多分、私を此処に引き留めておくのも作戦の内なんだろう

 

――私がそれに何の対策も打ってないとでも思うんだろうか

 

……思ってないんだろうね

 

それらを含めてその余裕、か

 

これはちょっと気合入れて行かないとまずいかもね

 

「(上手くやってよ、二人とも――)」

 

作戦を伝えた二人の従者に願った

 

作戦の成功を、二人が上手くやってくれることを

 

 

――intrude

 

 

「ミッション開始だ、さぁロックな展開の始まりだ」

 

「ステイシー…私たちの任務は……」

 

「わぁーってるよ、戦場の攪乱と可能なら敵の旗をぶっ壊す、だろ?」

 

陽気なステイシーに対して相方である女性は溜息を吐いた

 

李静初…九鬼家従者部隊の中でも若手筆頭候補とまで言われている

 

あずみの後任は彼女しかいないとまで言われているほどの才女で元暗殺者

 

九鬼帝を任務で狙った時、クラウディオによって捕えられ九鬼にスカウトされたという異例の経歴を持つ

 

彼女の相方であるステイシー・コナーと同期であり大体の任務は彼女と2人1組で動くことが多い

 

「私は旗の方へ向かいます、貴女はどうしますか?」

 

「当然、最前線の方へ向かうぜ。何かあったら連絡しろよ、ロックに駆けつけてやるから」

 

ステイシー・コナー…あずみが所属していた傭兵部隊の1人で別名”血塗れステイシー”と呼ばれその筋の人間からは畏れられている

 

粗暴で仕事の粗さが目立つものの、ポテンシャルだけみれば若手の中でも彼女の右に出るものはいない

 

そんな2人が何故この学園行事に参加しているのかと言えば同期で彼女たちにとっては妹のような存在である美哉の要請があったからだ

 

可愛い妹分である彼女の頼みを断る理由もなかった2人は1も2もなく参戦を決意し、今に至る

 

ステイシーはそのまま最前線へと赴くと戦線は膠着状態にあった

 

九鬼軍が風間軍を押しているかと思えば、風間軍も局所的に九鬼軍に痛烈なダメージを与えている

 

互いが膠着状態にあるのは葵冬馬の指示と直江美哉の指示が拮抗しているがためだ

 

互いが互いの策略を読み、それに対処しているからこそ戦線が大きく動くことがなかった

 

ただ違いがあるとするなら九鬼軍は葵冬馬が直接の指揮を執っており、風間軍は直江美哉が直接指揮を執っているわけではないということだろう

 

これらの違いがどういう差を生むのか

 

葵冬馬が直接指示を下すことによって急な展開でも臨機応変に軍を動かすことができるという利点がある

 

対する風間軍は与えられた指示をこなすことはできても不測の事態に対応するのは個々の将たちの手腕によるものであり、葵冬馬のように臨機応変にとはいかない

 

よって、戦線は徐々に九鬼軍の方が有利になりつつあった

 

そこにステイシーは持ち込んだ銃器で斉射を開始する

 

傭兵である彼女は銃の扱いも一級品であり、戦場を離れているとはいえその腕に些かの劣りも見せなかった

 

九鬼軍は横合いから突然銃の受ける形となり、前方へ部隊を展開していた為にこれに対処するのが遅れてしまった

 

そして彼らは僅かでも意識をステイシーの方へ向けてしまっていた

 

この隙を見逃す風間軍ではなく、その隙を直ぐに感じ取ったクリスと源忠勝は部隊を率いて突撃を敢行した

 

当然、意識が彼らから逸れている九鬼軍にそれを対処するには数瞬遅くそのまま彼らに蹂躙されてしまった

 

葵冬馬による指揮によって苦戦していた風間軍にとってはこれは大きな光明となった

 

対する九鬼軍は今まで優位を保っていたところを崩され兵士全体が浮足立っていた

 

しかし、元々カリスマ性の高い九鬼英雄と九鬼紋白によって組織されている軍は彼らのカリスマによって直ぐに落ち着きを取り戻した

 

「流石は英雄様と紋様だ、これくらいのことじゃ動じないってか」

 

美哉からはとにかく戦場を掻きまわしてほしいと頼まれている

 

すぐさま次の行動へステイシーは移ることにした

 

この後、九鬼軍はステイシーの遊撃に晒され続け戦線は滅茶苦茶に掻きまわされることになる

 

ステイシーによる攪乱が九鬼軍を苦しめている最中、李は誰にも気づかれることなく旗へと接近しつつあった

 

本丸を守る兵士は既に最前線へと意識を向いてしまっており、その警備は彼女にとって散漫なものであった

 

元暗殺者たる李にとって集中力の欠けた警備はザル以外の何物でもなくすんなり旗の近くまで接近することができた

 

メイド服に仕込んだ暗器を発射し、見張りの兵を全員制圧する

 

これで後は旗を壊せば風間軍の勝利となるが李は旗を破壊することなくその場から飛び退いた

 

「……まさか貴方がいるとは」

 

「英雄様と紋様の頼みだ、仕方なかろう」

 

僅かな闘気を感じた李が飛び退いた後には猛烈な攻撃が降り注いでいた

 

その攻撃の主を見た李は信じられない物を見るかのような表情をしていた

 

チェ・ドミンゲス

 

従者部隊序列11位である彼は鯉のように優雅というわけではなく、李のように勤勉であるというわけでもない

 

しかし、彼は李達を差し置いて若手の中でも最高位とされる序列11位の座にいた

 

なぜなら、彼は他の若手たちにはない圧倒的なまでの力を有していたためであった

 

戦闘能力だけならば若手たちの中でも頭一つ抜きんでている彼を相手に李は思わず舌打ちする

 

李単体で彼に勝てるほど生易しい相手ではなく、更にここは敵陣のど真ん中

 

いつ援軍の兵が来るか分かったものではなかった

 

「松永軍の時には何故出場しなかったのです?」

 

「お前たちが出場していなかったのと大体は同じ理由だろう」

 

美哉も冬馬も第1戦のときは外部助っ人枠の人間をあまり使用していなかった

 

それは戦力温存のためでもあったが、何より奇襲の時に扱いやすいためでもあった

 

攻める側からすれば戦力が分からなければ対策の立てようもない

 

守る側からすれば守りに置いておけば奇襲にあっても情報が漏れてないがためにある程度は対処しやすい

 

そういう狙いもあってか第1戦には互いに使用しなかった

 

「正直意外です、貴方のような人がこういった催しに参加するとは」

 

「英雄様と紋様に請われれば、如何なる物であっても参加する。それが従者部隊だ」

 

ドミンゲスはそれ以上は語ろうとせず、構えに入った

 

ドミンゲスは元々寡黙な人間であるため必要以上の対話を望まない

 

そんな彼の性格を分かっている李もまたそれ以上の追及はしなかった

 

如何にかしてこの場を切り抜ける方法を探らなければならない

 

そう思いながら李も武器を構えた

 

李が武器を構えた刹那、ドミンゲスの手が彼女の目の前まで接近していた

 

李は慌ててそれを後方へ飛び退くことで回避する

 

彼との距離は凡そ人間の腕が届く距離ではなかったはずだった

 

それをドミンゲスは腕の関節を外すことによって射程距離を伸ばし、李に攻撃を仕掛けることに成功していた

 

しかし、ドミンゲスの恐ろしさは射程範囲の広さだけではなかった

 

彼の握力は人間のそれを遙かに超越しており、純粋な握力のみで人間の頭蓋骨を粉砕することができる

 

つまるところ李は彼に捕まった時点でアウト、ということになる

 

「フッ――」

 

「ふん!」

 

李の持つ暗器を投擲してもドミンゲスの前ではあまりに無力だった

 

強靭な肉体は暗記の刃を通さず、かと言って近づけば掴まれてしまう

 

元々李は暗殺者、戦闘よりも暗殺に分がある

 

故にドミンゲス相手にダメージを与えるのは至難の業であった

 

じわりじわりと追い詰められるのを感じる李は逃げることも視野に入れた

 

周囲を見ても兵の1人もいない

 

「(まるっきり罠があると言っているようなものです)」

 

今の今まで旗の目の前でドンパチしているのにも関わらず兵士の1人も来ていない

 

恐らくそのままドミンゲスに背を向けて逃げ出した瞬間、兵士たちが攻め寄ってくるなり何らかの動きがあるはずだ

 

そう判断した李は逃げると言う選択肢を棄てた

 

残るはどうやって彼に勝つか

 

しかし、如何せん彼我の戦力差を埋める方法を李は思いつくことが出来なかった

 

to be continued...





さて、第2章を書いていて思ったことが1つ
集団戦闘って書くの難しいですね!w

集団戦闘を書いていらっしゃる作者様や原作者様は本当に尊敬します
うん、何が難しいって色々難しいです、参加しているキャラ達にスポット当てなきゃいけないし、見ごたえのある戦闘…とか色々と

多分、何回か戦闘シーンすっ飛ばして結果だけ書くなんてことになると思います
次回は17話の続きと恐らく閑話になると思います
それではまた次回
ではでは!

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