とある科学の因果律   作:oh!お茶

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早く書いてェー、と催促されたので……

………正確には面白いと言われテンション上がったので

まぁまた暫くは書けそうにないので悪しからず。



32話「減り込み男」

(さてさて、こうしてゴーレムの中に埋まってしまったわけですが……………どうしよ)

 

絶賛生き埋まり中の鵠沼恭弥。能力を用いて脱出すればいいのにもかかわらず、呼吸不可能など些細な問題であると言わんばかりに、彼はノンビリと思考していた、

 

(なんか能力使っても破壊できないしな、このままだと本格的にヤバいかもなぁ)

 

と見せかけて、実はあまり余裕ではなかったりする。

 

(…痛っ!ちょちょちょ!またコンクリの角が肋骨にゴリゴリ当たってるぅぅううう痛ェエエエ!!)

 

それどころか、かなり切羽詰まっていた。

先程からゴーレムがかなり激しく動いているらしく、色々な物の鋭利な箇所が地味に恭弥のHPを削っていたのだった。そのため、集中が続かず、位置エネルギーなどを応用した座標変換、つまりは擬似テレポートという通常以上に大規模な演算を必要とする脱出が困難な状況にあった。故に比較的演算が楽な、エネルギーを放出しての破壊や、エネルギーの流れを変えたゴーレムの内部崩壊などを試みたのだが、やはり満足に能力が使えず、魔術が対象というのも相まって大きな効果が見込めていなかった。

 

生き埋めになってから既に3分ほど経過しており、外の状況がどのように変化しているか全く分からない。

現在進行形で鉄骨が右頬に減り込んでいるという事はゴーレムが動いているということであり、そこからインデックスがまだ生きて逃げ回っているであろう事は予測できた。

だが、それも時間の問題だろうと結論付け、恭弥は賭けに出る。

 

(アダダダダッ!…このままじゃ埒が明かん!演算なんざ知るか!テキトーに能力発動してやるわァァアアア!!!)

 

最初の一手、それはゴーレムが動き、新たな物理的エネルギーが発生したのを感知してそれを鉛直上向き方向への運動エネルギーへと変換すること。だが、ゴーレムの質量が莫大過ぎ、かつ魔術が関与しているだけに、3cmほど地面から浮かんだ程度である。

しかし、彼は八位といえどLEVEL5、決して(あなど)る事(なか)れ。

ゴーレムが地に着いた瞬間、再び同様の事を行い、ゴーレムを上昇させる。再びゴーレムが地に着く。再び上昇させる。再び地に着く。再び上昇させる。再び………………

 

高度な演算を用いて、エネルギーAを別のエネルギーBへ、といった変換を行うのではない。最初こそ、この演算を用いたが、二度目以降はもっと単純、もっと簡素な演算を用いた、四則演算レベルの演算による能力の行使。

彼がノリで名付けたその技の名は、

 

ーーー自動回帰演算。

それは数秒前に行った演算を強く意識することで記憶し、ほぼ無意識で自動的に同じ演算行うものである。

分かりやすい例を挙げれば『2+8=10』という式を延々と頭の中で繰り返す、と言ったところだろう。初めて足し算に触れた時は、答えを弾き出すのに思考し時間がかかるが、記憶してしまえば一瞬で答えを出せる。

記憶する内容はこんな単純なものではないが、本質的にはこれと同様の事をしているのだ。

そう、自動回帰演算などと大層な名が付けられているが、言うなればゲームのボタン連打、布団叩き、皿洗い、etc…ただの単調作業に近い。だが、それ故、まともに演算できない現在最も頼れる手段でもあったのだ。

 

ゴーレムが衝撃で壊れるのが先か、自分の息が切れるのが先か。死の接近を感じ、恭弥は今までにないほど真剣(シリアス)だった。それが裏目に出る(シリアルになる)とはつゆ知らず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わぁ!!」

 

頼れないLEVEL5(学園都市の頂点の一人)がゴーレムの中へ消え、結局逃げ回っていたインデックスだったが、遂に足がもつれて転んでしまった。

 

「いたた……へ?」

 

振り向けば、すぐそこにゴーレムが。間違いなく彼女をただの肉塊にできる距離。

死を覚悟する余裕などない。頭が真っ白になり、何も考えられなかった。僅かな時間に違いないであろうが、ゴーレムが拳を振り上げるのがやけにゆっくりに見える。ただ、事実を事実としてしか認識できない。

そしてゴーレムが目一杯に振り上げた鉄槌を振り下ろし、ソレの右拳が迫り直撃するーーーー

 

 

 

ダダダダダダダダダダダダッッ!!

 

「な、何!?急にゴーレムが跳ね飛び始めたんだよ!?」

 

ーーー直前で、いきなりホッピングを始めた。

死んだわ、コレ…と思いきや、ゴーレムの突然の行動に我に返るインデックス。思考能力が戻り、先程の瞬間を思い出して冷や汗が背中を伝っていく。目の前に意識を戻し、突如始まったゴーレムの奇行に恐怖し、背中を伝う汗の量が倍に増えた。ツギハギの歩く教会(布切れ)の重量が、濡れて倍以上に増えた。

 

あそこに巻き込まれたら死ぬだろう、といった感想を抱かせるホッピング。先程まで自分を殺そうとしていたとは思えない奇行。

いろんな意味で怖かった。

 

とにかく、ゴーレムが跳ね回る以外の動きを止めたので、ーーー正確にはインデックスを潰そうとしているのだが、振動で的外れな方向を殴りまくっているーーー余裕ができたインデックスは原因を考え始める。

 

(急にどうしたのかな?さっきまで完全に私を殺すための効率的な動きをしてた………

しかも術師の手を離れた自動制御だったから術師に何かあったとは考え難い………

まさか他の魔術師による介入!?)

※違います

 

(…でも、魔術の痕跡は一見ないように見える………恭弥はアテにならないから無関係だとして……)

※ワーオ

 

(!!…何か科学的要因が働いたのかも!それなら魔術の痕跡がないのも納得できるんだよ!)

※当たってはいる

 

かなり惜しい線まで推測出来ているインデックスだが、苦し紛れのゴーレムの拳が飛んで来たので、思考を止めて回避する。

 

しかし、

 

「ッッ!瓦礫が…!」

 

ゴーレムが殴ったことで地面が割れ、その破片でインデックスは足を取られてしまった。

体勢を崩して再び転んでしまい、そこにゴーレムの顔が迫る。

今度こそインデックスは、死因はモアイ風ディープキスか…と死を覚悟し目を閉じた。

が、

 

ドゴォオオオッッ!!

 

「……?」

 

爆音が響いたにもかかわらず、いつまで経っても来るはずの衝撃が襲って来ない。戸惑いつつ目を開けると、

 

「わぁぁああああ〜〜〜!」

 

恐らく顔を蹴り上げられたのであろう、仰向けになってもなおホッピングを続けるゴーレム。そしてその上で、蹴り上げたであろう張本人、風斬氷華がトランポリンの様に跳ね回っていた。

 

「痛たたたたた!!」

 

そんな奇妙な光景に伴って聞こえて来るのは彼女の悲鳴。

彼女はゴーレムと一体となっているわけではなく、ゴーレムに弾かれ跳ね飛ばされている状態であり、本当に痛そうである。

 

「氷華何やってんの!?そんな化け物と一緒に跳ねちゃだめだよ!人間なら耐えられない勢いで跳ねてるんだよ!!」

 

早く降りて来るように精一杯声を張り上げるインデックス。というのも、先程よりもはるかにゴーレムが高く跳ね上がり、上下運動のスピードが上がっているからだ。

そう、先程風斬氷華がゴーレムを蹴り飛ばした事により、エネルギーが増加したのだ。故に、ホッピングの域を超えて、もはや地面に高速で叩き付けられているという表現の方が適切な状態となっていた。

ゴーレムの上から落下してきた看板が、跳ね飛ばされて隣のビルの屋上へ突き刺さる程である。

それでもなお『痛たたたたた!!』で済ませる風斬の人外的な頑丈さにインデックスは戦慄するも、早く降ろさないと氷華がビルに突き刺さる!、と慌ててなんとかしようとする。

だが、そんな彼女に寂しげな微笑みを向けて風斬氷華は、

 

「……大丈夫、私も人間じゃないかr痛っ!」

 

衝撃のカミングアウトをしようとして失敗した。

ついでに足が砕けた。

 

「へ?」

 

そしてインデックスは目の前で友人の足が砕けたことに愕然とするが、その足が再生するという更なる現象に一層驚愕させられる。

唖然とするインデックス。砕けては再生する風斬氷華。絶体絶命…………というわけでもない状況。

 

タタタッ!

 

そこへ、力強い足音が。

 

「風斬ぃいいいい!!!」

 

一人の、無能力者(LEVEL0)の、ヒーローの咆哮が。

 

「「!!」」

 

待ちに待った(?)ヒーローの登場に、インデックスは笑みを浮かべ、風斬はハッとして顔を上げ。

 

「言ったろ、お前の住んでる世界には、まだまだ救いがあるって事を見せてやるってな!!」

 

岩の巨人が跳ね上がった瞬間、ありとあらゆる幻想を、異能を、そして神様の奇跡さえも打ち消す右手がそれに突き刺さった。

 

キィンッ……

 

ナニカを打ち消す音がした。

刹那、巨人は数多の瓦礫と泥へと分解し、崩れ落ちた。

舞い上がった砂埃が風により払われ、次に訪れる静寂。

そして、一つの歓声がその静寂を打ち破り、木霊(こだま)した。

 

「当麻!!」

 

精密機器で計測しなければ分からないほど些細な現象しか起こせず、唯一振るえる武器はありとあらゆる幻想を喰い殺す破壊の右手のみ。そんな無能力者(LEVEL0)は。この日、一人の少女を孤独という暗闇の底から引きずり上げた(救済した)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上条当麻がゴーレムを破壊したタイミングは、ゴーレムが地面から跳ね上がった直後であった。また、幻想殺し(イマジンブレーカー)とはあくまで働いている異能を破壊するモノであり、異能が働いた結果起きた現象を破壊するモノではない。彼の右手は異能による炎を消す事はできるが、その炎で燃えた物を元に戻すことはできない。第1位の反射膜を無効にすることはできるが、能力により打ち出された飛来する鉄骨を止める事はできない。

つまり、彼が右手で触れたのが、ゴーレムが“跳ね上がった瞬間”である限り、ゴーレムの速度を0にする事は不可能であったのだ。

 

さて、ここで少し考えてみてもらいたい。

ゴーレムが瓦礫へと変貌した瞬間、中に人がいた場合、その人はどうなるのか。

 

答えは推して知るべし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ごく普通の、特にこれと言った特徴のないビルに、人が突き刺さっていた。頭から。

制服から、男という事は判断できる。

だが、顔が見えないため、正確には判断できない。

というのも、彼はビルに突き刺さっているためだ。頭から。

暫く経った後意識が戻ったのか、彼は動き出し頭を引っこ抜いて30mほどの高さから危なげなく着地する。そして、頭をぽりぽり掻いて呟いた。

 

「首の骨折れて気絶してた……」

 

凄まじい生命力の持ち主である。というか、鵠沼恭弥だった。

キョロキョロと辺りを見回し、不思議そうに首をかしげる。

 

(………息を止めて自動回帰演算をして粘って……なんか身体が軽くなったと思ったらここにいて首の骨折れてたとは……コレいかに?)

 

暫く考えていたが、答えは出なかったのか、まぁいいか、と呟いて帰路についたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たっだいまぁ〜」

 

「あ、超おかえりです。3日も何処ほっつき歩いてたんですか?」

 

「?……3日?」

 

「?3日ですが、……超どうかしましたか?」

 

「恭弥ァァアアア!!テメェ任務サボって3日も何処行ってやがったァ!!」

 

「ウワホォッッ!!ちょ!ビーム止めろ!止めて!止めて下さい死んでしまいます!」

 

「あ、恭弥おかえりって訳よ。これアンタじゃない?暇つぶしにネット見てたら見つけたんだけど、この『減り込み男』ってヤツ」

 

「ほうほう、『二日前に突如現れたビルに減り込んだ男。彼を中心にヒビが入っている事から、彼がビルから生えてきたのではなく、ビルに突き刺さっている事が伺える』

……………なんで超立派に都市伝説化してるんですか…」

 

「写真に写ってたソイツ服が恭弥が音信不通になる前に来てた物と一致してたって訳よ。ってか今着てる服だけど」

 

「あちゃー、3日も経ってたか。気絶してたから気づかんかったわ。通りで服が少し臭うと思ったわ」

 

「テメェ暗部だろォが!!何目立つマネしてんだぁああああ!!」

 

「うぉおおおお!?スンマセン!!情報操作して潰しときます!!」

 

「大丈夫、そんな都市伝説化した恭弥を私は応援してる」

 

「そうだよね。3日も気絶してたんだから応援でなくとも心配ぐらいはして欲しいよね」

 

「反省してんのか!!」

 

恭弥君はこのあと星になりました。




恭弥君が空気過ぎる………



それはともかく、ラストオーダー編が1話で終わったのに風斬編がダラダラ続いててアンバランスッッ!!って思ったのでゴリ押しで風斬編終了させましたワ。


三月くらいにまた書き始めます。

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