とある科学の因果律   作:oh!お茶

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お久しぶりです。
あー忙しい(棒)
更新ペースが上がることは暫くありませんが、悪しからずm(_ _)m


31話「連携攻撃!」

 

不気味なほど口を大きく引き裂き、ぐにゃりとした笑みをその顔に浮かべて奇声を上げる男がそこにはいた。

 

「wwwwウェーイwwwwwwww」

 

「ど、どうしよう!恭弥が壊れちゃったんだよ!?」

 

「あ、すみません。ちょっと巫山戯ただけなんで。そんなマジで泣きそうな顔を向けないでください。心が痛いです」

 

というか鵠沼恭弥だった。

 

なんとか血を止めて持ち直したものの、打開策が見つからない。どんなに破壊しても再生して元に戻ってしまうのでは手の打ちようがないのだ。

 

元来、恭弥の能力の本領は対象を分析し、対象内部で複雑に絡まり合うエネルギーの一部を変換して内部崩壊を起こさせる事にある。それは破壊でも創造でもなく、言うなれば侵食の能力。故にゴーレムの再生は彼とは相性が悪いと言えるものだったのだ。

 

だが、だからと言って手詰まりという訳ではない。まぁ普通に壊し続ければいいか、と結局はそのように方針を固めた恭弥。

そんなわけで取り敢えず景気づけに笑っとこうとしたのが裏目に出ただけだった。

 

演算の方式を通常のものへと切り替えてゴーレムに対峙する。

 

「GOOOOOOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」

 

振り下ろされる鉄槌。だが遅い。予備動作からゴーレムの動きを把握。

 

「ーーーーーー」

 

インデックスが何かを呟いた。だが、それが恭弥の耳に入る事はない。いや、仮に届いていたとしても何を言っているのか彼には理解できなかっただろう。

 

恭弥はゴーレムの拳が描くであろう軌道を予測し、左へ身を躱しつつ前に飛び出す。

 

さて、ここで先ほどインデックスが何を呟いたのかが問題となってくる。独り言ならばそれでよし。電波をキャッチしてしまったのなら残念な子へと昇格するが、それでも構わない。だが、それはそんなチャチなものでは無かったのだ。

 

TTTR(右方へ歪曲せよ)

 

それは強制詠唱(スペルインターセプト)。「ノタリコン」という暗号を用いて術式を操る敵の頭に割り込みを掛け、暴走や発動のキャンセルなどの誤作動を促す魔力を必要としない魔術であり、インデックスでも使用可能なものである。

少しでも恭弥の力になろうと、彼女は敵の動きの阻害を試みたのだ。

 

しかし、注目すべき点はそこではなく他にある。

 

正面から向かい来るゴーレムの拳を恭弥は左へ身を躱す事で避けようとした。そう、“恭弥にとって”左だ。

そして、インデックスは右方へ敵の攻撃を曲げようとした。そう、“術者にとって”右だ。

 

つまり、ーーー

 

「うぉおおお!?なんで!?」

 

「ちょっ!?恭弥!なんでそっちに避けたの!?」

 

ーーーゴーレムの拳が恭弥にぶち込まれた。

うっそん予備動作なかったですやん、と愕然とするも冷静に演算を行い、衝撃を全て無効化する。魔術が使われているのはあくまでゴーレムの形成においてであり、それによる攻撃はただの物理的なものでしかない故、このような際の能力の使用は可能であった。

 

だが、恭弥は警戒して距離をとり、内心焦る。というのも、ゴーレムの動きが全く読めなかったからだ。完全に動きを捉えていたつもりだった。だが、蓋を開けてみれば綺麗なクリーンヒット。不自然極まりない動きだったが、それでも脅威であることに変わりはない。故に恭弥は訝しんでゴーレムを観察する。

そして、そんな彼にインデックスが一言。

 

「なんであっち側に避けたの!?私が敵の攻撃を逸らしてあげたのに!」

 

「テメェの仕業かオラァ!!」

 

急転直下原因を突き止めた。

 

「何余計な事してくれてんじゃあ!!」

 

「余計な事って流石に酷いかも!私は恭弥を助けてあげようとしたのにそんな言い方はないんじゃないかな!」

 

「事実じゃボケェ!こちとらゴキブリみたいに潰れるところだったんだぞ!?」

 

「あっちに避けた恭弥が悪いんだよ!」

 

「お前の方が酷くね!?」

 

ヒートアップし、口論を始めるお二方。ゴーレムなど二の次だと言わんばかりにお互い一歩も譲らず口を開く。

だがそんな暇を相手が待つわけがない。体勢を立て直したゴーレムから繰り出されるのは地面スレスレの横殴りの拳。視界の端でそれを捉えた恭弥は、クソ、と内心毒づきつつ会話を打ち切って上方に飛ぶことでこれを回避ーーーー

 

 

CFA(上方へ変更)……って、」

 

 

ーーーできなかった。

 

「「嘘ぉおおおおお!?」」

 

なんという悲惨な連携。

 

果たしてゴーレムの拳が恭弥を捉えるが、再びその際の衝撃を無効化。

このままでは埒が明かないと、恭弥はゴーレムの懐に一瞬で潜り込み、全力の拳を叩きつけた。

 

直後、ボゴンッ!!と爆散し、飛散する瓦礫。

それらの軌道を計算し、そのうちのインデックスに当たりそうなもののみを能力を用いて止めた後、安堵の息を吐いた。

一段落ついたと気を緩める。

 

だが、それを嘲笑うかのように散らばった瓦礫が再び一点へと集結する。面倒だと言わんばかりに顔を顰めて再び構える恭弥。

 

せめてあと一人いれば拠点に帰れるのに、と考え始めたコイツは潰れた方がいいと思う。

完全に投げ出す気満々である。

 

と、この時、この願いが神に届いたのか、とある反応を彼は捉えた。

 

魔術師が相手というのもあり、恭弥は能力をもって自分の半径150mほどにレーダーのようなものを広げていた。

それにとある人物の反応があったのだ。不自然にポカリと空いたレーダーの穴が動く。それはまるで恭弥の能力を『反射』しているかのよう。

こんな事ができるのは230万人が住まう学園都市でただ一人。

そう、

 

(レベル0に負けた超能力者、一方通行(アクセラレータ)のおでましだぁ!!)

 

悪意満載な気がするが、気にしたら負けだろう。

 

よっしゃ!コッチに呼んで丸投げしよう!と、先ほどのアレイスターとのやりとりをガン無視した決断を下ろそうとした時、一つ、頭に引っかかった。

そう、何か些細な、一つ見落としているもの。

そして、それを理解するのはそう難しい事ではなかった。

それに関して思考し、決断を変えるのにかかった時間は一瞬である。

 

(いや待てっ!!

 

この登場頻度………このままだとアイツがヒロイン候補枠に入って来ちまう!ここで助けを求めちゃダメっぶぐぅ!?)

 

しょうもな。

 

だが、その一瞬の思考が命取りとなる。

 

その一瞬の間、彼はレーダーを一切気にかけていなかった。つまりはレーダーを張っていない状態と同等。

したがって、後方から飛来したコンクリートの塊に反応できなかったのだ。

能力のお陰で衝撃は皆無であるが、魔術的な引力が働いているためか、それの運動までは止めることができなかった。身体の中心にコンクリートが減り込み、彼を地面から引き離す。そして、ーーー

 

「うぇえええいっっ!?やべぇ!やべぇ!!ゴーレムに組み込まれちゃう!」

 

「恭弥何してんの!?」

 

ーーー彼を巻き込んで、すぐさまコンクリートはゴーレムの一部となった。

息を付く間も無く、他の瓦礫により隙間が埋れてしまう。

ゴーレムが完全に再生し終え、咆哮した時、彼の姿はどこにも見られなかった。

 

「恭弥ーーーっ!!なんかギャグ漫画みたいな結末なんだよぉーーーっ!?」

 

『お前案外余裕あるな!?』

 

返答はゴーレムの中から聞こえた。

 




昨日新刊買いました。

感想:オティヌスprpr
以上。

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