とある科学の因果律   作:oh!お茶

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言ったハズだ。
更新ペースはガタ落ちするだろうと。

いや、マジ済みません。余裕ないんです。

そして結構ダラけた文。


30話「この街も捨てたもんじゃない」

 

 

An Involuntary Movement 拡散力場、ーーー通称、AIM拡散力場。

能力者が無自覚に発してしまう微弱な力のフィールド全般を指す言葉であり、化物クラスである超能力者(レベル5)から一般人レベルである無能力者(レベル0)まで、学園都市に住まう生徒ならば誰もが発しているものである。

電撃使い(エレクトロマスター)の微弱電磁波などがいい例であり、念動力(テレキネシス)は圧力としてそれが現れたり、発火能力(パイロキネシス)は熱量として現れたりするのだ。現れる現象が能力によって異なり、また、能力者の現実への無意識の干渉であるとみなされるため、これを調査すれば『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』が解析に繋がるとして研究が進められている分野である。

 

そんな事情があるAIM拡散力場であるが、それは非常に微弱であり、精密機器を使用しなければ人間には観測できないレベルの力場。学生達や教師達の日常生活には何の影響もなく、何の支障もきたさない。

だが、いくら微弱といえど、学園都市にいる学生の人数は230万。条件さえ整えば何か現象が起こるであろう事は明らかである。果たして、それほどの人数分の力場が相互干渉を起こし、一人の “人間” を形成した。

 

それが風斬氷華という存在であった。

 

 

 

****

 

 

恭弥の誰ソレ発言に思考が吹き飛んだ上条だったが、ともかく身元特定がすぐに済んだため状況を一から丁寧に説明した。そんな彼に、恭弥は一言返す。

 

「……うん、知ってた」

 

「………え?」

 

説明の必要性を完全に否定した一言。あまりにも酷である。

 

そんな簡潔な返答に上条はポカンとしてしまうが、恭弥の返答は至極当たり前のものであったと言えよう。

 

彼はエネルギーを司る超能力者(レベル5)。能力の都合上、エネルギーに関しては誰よりも敏感である。

故に風斬を一目見たその時から恭弥には、彼女から感じ取れるエネルギーが彼女自身から発せられている物でないという事が分かっていたのだ。最初は疑問に思った彼だったが、風斬氷華がどのような存在か把握するのに大して時間はかからなかった。

 

その旨をザックリと上条に伝えると、

 

「そうか……なら詳しい説明はいらないんだな!

風斬はここから降りてインデックスを守りに行ったんだ!このままじゃ二人とも危ない!」

 

急いで行くぞ、と上条は喝を入れた。

そんな彼に恭弥はふと疑問に思ったことを尋ねる。

 

「お前は……俺が風斬(あの女)の正体を黙っていた事を気にしてないのか?」

 

決して悪気があった訳ではない。ただ単に、まぁ魔術があるくらいだしこんな事もあるよね、と思って特に気にしていなかっただけだった。故に、自分しか知りえないだろうという事もあり、彼は彼女について何も言わなかったのだ。

 

だが、結果的に上条は知ってしまった。数刻前まで楽しく一緒に遊んでいた友達が人間ではなかった、と。その時の動揺は想像に難くない。

普通ならば、声が出なかっただろう。一歩も動けなかっただろう。呼吸も止まっただろう。それは上条も例外ではないはず。

しかし、彼は既に気持ちを持ち直し、整理し終えている。だからこそ恭弥は尋ねた。

 

そんな彼の問いに返ってきた答えは至極当然のものであった。

 

「憤りが全く無いか、と問われれば嘘になる」

 

しかし上条はここで終わらない。

だけどな、と彼は続ける。

 

風斬(あいつ)は人間じゃなくても俺達の友達であることに変わりはねぇんだ!なら正体なんて関係ないだろ!困ってる友達を助けるのは当然の事じゃねぇか!」

 

ほう…と感嘆の吐息を洩らし、恭弥は目を細める。

何を思っているのか、それは彼にしか分からない。

 

 

 

 

 

「ところでさ、風斬って学園都市の生徒達のAIM拡散力場、つまりは無意識に放つ能力が生み出した人物像じゃん?」

 

「……そうだけど、それがどうかしたか?」

 

「ってことはさ、彼女はいわば、生徒達の深層心理の具現化と言えないか?」

 

「………!!そこから先は言っちゃダメだ!!」

 

「ハハハ、妄想の塊が引っ込み思案で爆乳の眼鏡っ娘とか、この街もまだまだ捨てた物じゃないな」

 

「だから言うなって!台無しだよ!!」

 

 

 

****

 

 

あの後上条を穴の中に放り入れ、恭弥は地上に出てインデックスを探し始めた。

 

 

 

『お前は地下から行け。俺は地上から探すわ(楽な方取ったりぃ!)』

 

『分かった!頼んだぞ!』

 

 

 

上条と別れる直前の会話である。

心の綺麗さの差異が如実に表れた瞬間であった。

 

それはさて置き、地上へ出た恭弥はおもむろにポケットから携帯を取り出した。番号を打ち込み、相手を呼び出しつつフラフラと歩き出す。

魔術師、シェリー・クロムウェルの生み出す戦闘用ゴーレムはあれほどの巨体である。フラフラと歩いていても、それらしい騒ぎのする場所へ行けば見つけることができるだろう。

 

「あっ!もしもしー?」

 

未だ十歩も歩かぬ内に相手が電話に出た事に驚きつつも、恭弥は異常な震動を感じ取り、その源へと歩を進める。そう、ゴーレムを見つけ出すことなど容易い。

 

『どうも。超どうしたんですか?恭弥さん』

 

電話の相手は絹旗であった。

恭弥は彼女が出た事に吐息をついて安堵しつつ、徘徊を中断して近くのベンチに腰を下ろした。

 

そして一言。

 

「学園都市内に変な岩の化物がいるから絹ちゃん行ってきて退治してくんね?」

 

丸投げしやがった。

震源はおよそ300m先だろう、と見当まで付いている恭弥。

流石、ゲスい。

 

が、返ってきたのは内臓を直接くすぐられるような気味の悪い声だった。

 

『勝手な事をしてもらっては困るな、因果律(アーセナル)

 

それは男のようにも女のようにも聞こえ、大人のようにも子供のようにも聞こえ、聖人のようにも囚人のようにも聞こえる声。

学園都市統括理事長、アレイスター・クロウリー。

 

『これは魔術サイドの案件。そうやすやすと科学サイドの人間を巻き込まないでもらいたい』

 

彼の介入は当然の事と言えよう。

 

魔術サイドと科学サイド。この二つの領域は互いに交わらないよう線引きすることで極力互いに無干渉を貫いている。対立し、相反する両サイドはそうすることで世界を二分する戦争を起こしてしまう事を避けているのだ。

しかし今回、一人の魔術師によりこの線は踏み越えられ、戦争の引き金が引かれかかっている。もし科学サイドの人間がその魔術師を退けてしまえば完全に戦争の火蓋が切って落とされるだろう。

 

だが、運良く学園都市には魔術サイドである禁書目録(インデックス)と、ある一件で魔術サイドに彼女の保護者として認められた上条当麻、鵠沼恭弥がいた。つまり、彼等がその魔術師を退ける分にはなんの問題も無く、事が収まるのだ。

 

しかし、ここで他の能力者を関わらせてしまうとどうなるだろうか?

答えは火を見るより明らかである。

その場合、例え上条当麻や鵠沼恭弥が関わっていたとしても関係無い。待っているのは戦争だ。

 

故にアレイスターは恭弥と絹旗の会話に介入したのだ。

 

そんな彼の考えを知ってか知らずか、ーーーいや、間違いなく知っているだろうが、ーーー続いた恭弥の言葉は、

 

「……校長先生やー!!」

 

一切反省の色がない叫び声だった。

 

『……私の話を聞いーーー』ピッ

 

「クッソ……俺がやるしかないのか……」

 

頭を抱える第八位。泣きそうになりながらも彼は重い腰を上げて戦場へ向かった。

 

心に思うは一つ。

 

(何故だ。解せぬ)

 

 

 

****

 

 

(ゴーレムなんて上から見下ろせばすぐ見つかるんやないのー?)

 

そう考えた恭弥は建物の屋上に飛び上がって街を見下ろした。すると、すぐに蠢く岩の塊を発見できたためそこへ急行、からの戦闘態勢。

 

「ゴーレムやー!!」

 

「うぇえ!?恭弥!?」

 

そう叫んで飛び蹴りを食らわせる恭弥。そして華麗に着地し、近くの鉄骨を掴んで刀のように持って構えた。

 

対して、10mほどぶっ飛んだゴーレムに驚愕しつつもインデックスは安堵していた。なんせ非常に心強い人物が守りに来てくれたのだから。あまり深くは理解していないが、彼が学園都市で八番目に強い人物だという認識はしている。故に、たとえ魔術が相手でもどうにかしてくれるのではないか、と彼女は希望を抱いていた。

 

そんなインデックスを背に鵠沼恭弥は演算を開始する。

目の前の敵は未知の法則を扱う。油断など出来ないーーーと思ったところで一つの考えが彼の脳裏を(よぎ)った。

 

頭の隅に引っかかったのは、『未知の法則』、という言葉。

 

(未知の法則…………未知の法則……!!…あの時の未元物質(ダークマター)の法則を使えば………!!)

 

思いついたら即実行。

すぐさま頭を切り替えて能力を発動する。

 

鉄骨など邪魔なものは脇へ投げ捨てて。

 

何故手にしたのか(はなは)だ疑問である。

 

根拠はない。だが、これで目の前の魔術(ゴーレム)を打ち砕けるはず、という突如湧き出た巨大な自信が彼を勇猛果敢な猛者へと仕立て上げた。

恐怖などない。ただ、目の前の敵を確実に破壊せんと恭弥は高速でゴーレムへ突っ込んだ。

 

が、

 

「GYOAAAAAAAAAAAA!!」

バキィイイイッッ!!

「ごべっふぅ!!?」

 

ゴーレムの巨大な拳が彼を的確に捉え、撃ち抜いた。

物凄い勢いで宙を舞い、恭弥はコンクリートの壁に衝突する。そしてそこには小規模なクレーターが形成された。それを見たインデックスは悲鳴を上げた。

 

「恭弥!大丈夫!?」

 

「クッ……心配すんな!予想通りだ!」

 

全身がバラバラになるような感覚を堪えつつもそう返答する。

そう、根拠などないのだから当たり前の結果だったのだ。

 

なら何故やった、というツッコミはいつものように受け付けない。

 

まぁここまでダメージを受けるとも思っていなかった事も事実だろうが。

 

できる限り回復にエネルギーを回して恭弥は一考する。

 

盛大に頭を回転させて。一つ、頭に浮かべる。

 

 

(………痛い)

 

待て。それは一考とは言わない。

 

 

 

****

 

 

「あれ?超突然切れましたね……」

 

「絹旗どうしたのー?」

 

「あ、麦野。恭弥さんから超電話かかってきたんですけど超突然切れたんですよ」

 

「ああ、…………見つけたらコロス」

 

「……寝顔くらいよくないですか?」

 

「よくない!怒ってないの絹旗と滝壺だけよ!」

 

「超綺麗に二分しましたね」

 

「まぁ絹旗は恭弥にゾッコンみたいだからいいかもしれないけどね〜」

 

「なわっ!?な、なななな何を言ってるんですか!超違いますよ!」

 

「ヒューヒュー!乙女だねぇ、絹ちゃん♡」

 

「だから超違いますって!」

 

ブーブー

 

「ん?メール?」「……私も来ましたね」

 

『from:恭弥

そこで僕をコロスとか言っている皆さん。安心して聞いて下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貴女達の下着姿は今でも鮮明に』バキッッ!!

 

「「……コロス!!」」

 




要望通りアイテム(半分)を登場させたぞ。
これでどうだ(`・ω・´)

………いや、マジ済みません。絡ませたら戦争起きちゃうな、と思ったんでアイテム勢は今回出番無いですね。
次回あたりに考えよう。

さて、次の更新はいつになるのやら。

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