学園都市最強の能力者、
「おら!死ね!」
「これでオラが最強だ!!」
「ミーがぶっ飛ばしてやるよ!!」
(おかしい………なンで絡ンで来るクソ野郎共が爆発的に増えたンだ?)
「ぐぁああああ!!」
「ぁあああ!!…っ…だ、誰だよぉ……最弱になったとか言った奴はよぉ……」
「アウチッ!」
現在、彼は数多の
何故こんな事になっているのかというと、事の発端は『
その日、八月二十一日に、一方通行は一人の
単価十八万円という儚い命のために立ち上がった無能力者に。
一万体以上のクローンを殺した最強の前に立ちはだかった最弱に。
それ故、一方通行は『無能力者《レベル0》でも倒せる第一位』のレッテルを貼られ、最強を名乗りたがる
ここまではいい。まだ理解のできる範囲である。
だがここ数日、おかしな事に襲われる回数が以前の三倍ほどに激増した。
徐々に増えていくのならまだ理解できるのだが、突然のそんな爆発的な増加が偶然起こる確率など高が知れている。
故に彼は戸惑っていた。
そんな彼がコンビニで買った缶コーヒーを飲みつつ歩いていると、どこかで聞いたような声が聞こえてきた。
声の方角からして恐らくこの道を真っ直ぐ行けば音源に辿り着くだろう。
「ーーー!ーーーしたよー!」
(何叫ンでンだアイツ?……チッ……迂回して行くかァ……)
即座にその人物を特定するが、今は会いたい気分ではなく、会ってもバカにされる未来しか見えないため、一方通行は迂回して寮へ戻ることに決めた。
だが、幸か不幸か、一方通行がちょうど選んだ道の先に彼はいた。
当然の如く耳に入ってくる恭弥の言葉。
そしてその言葉を正確に理解した瞬間、一方通行の頬が引き攣る。
そう、
元凶を、見つけたのだ。
「レベル0の皆さーん!!
第一位の一方通行がレベル0に負けちゃいましたよー!!
あのレベル5の第一位が!!レベル0に負けちゃいましたよーー!!
さぁ!
そこではメガホン片手にビラをばら撒いている
何をしている第八位。
「あっ、どうぞ」
と道行く人々に、おずおずビラを渡していくその姿はティッシュ配りの達人を連想させ、
「どうだァ!いっちょ闇討ちしてみないかァ!?」
と豪快な喧伝を繰り返すその姿は一流の商人を彷彿させる。
そんな彼の様子を唖然と見ていた一方通行だったが、ハッと我に返り殺気を撒き散らして恭弥に詰め寄った。
「何してンだオマエ」
「あ、やべ、バレた」
途端、ピューっと逃げ出す第八位。
行き交う
だが、一方通行が指を咥えて黙ってそれを見ている訳がない。
足下のベクトルを操作し、爆発的な加速をもって彼は恭弥に追随する。
「待ちやがれェ!!最近ハエがうっとォしィと思ってたンだよォ!!
全部オマエのせいじゃねェかァアアア!!」
「ワタシ、ニホンゴ、サパーリヨー」
「ふざっけンなァアアア!!」
「ちょっ!?ビル投げんな!!」
第八位の明日はどっちだ!?
****
「はぁ………はぁ…………ふぅ…逃げ切れたか」
四時間後、鵠沼恭弥は息を切らしてベンチに腰掛けていた。
一方通行からの一方的な暴力(一方通行なだけに)を全て躱し、最後にコンビニのトイレの中に隠れることでなんとかやり過ごしたのだ。
やれやれと肩を竦めて飲料を購入し、夜の闇に包まれて始めた学園都市を眺めながら少しずつ飲んでいく。
すると、いくつもそびえ立つビルの一つの屋上に何やらロープがビンビン張ってある事に気づいた。
かなり興味をそそられるのだが、なんだかんだ言って疲れていたため、彼には珍しく空になった缶を投げつけるだけにとどめた。
****
「インデックスーーー!!!」
上条当麻は階段を駆け上がり、屋上の扉を開け放った。
見れば白い修道服を来た少女、インデックスが縛り付けられているではないか。
彼女を解放するためにロープにより張られた結界を己の右手、
異能の力を全てぶち殺すその右ストレートにより、
ピキュンッッ……
と音が鳴り響き、結界が一瞬で崩れ去る。
そして上条はインデックスに駆け寄り、紐を解いてやってから事の発端である、梓弓を腕に装備した男に向き直った。
と、次の瞬間ーーー
ズドッッッゴォオオオオオオンッッッッッッ!!!
ーーー高速で飛来したアルミ缶が屋上を
ロープは余波で吹き飛び、上条の開始した説教は爆音にかき消され、男の魔道書に関する知識はショックで吹っ飛んだ。
「「「「…………………」」」」
信じていた人が来てくれた事に歓喜していた少女。
探し続けて漸く誘拐された同居人を見つけ出した少年。
一人の女性を救うために魔道書に手を出した満身創痍の男。
流れでここまで来てしまった猫。
その場にいた全員が言葉を失った。
心に思うは一つ。
(…ナニアレ………?)
****
缶が上手く命中したことを確認すると、イヨッシャ!と恭弥は腰を上げた。
このままここにいても何もする事はないため、拠点に戻ろうとしたのだ。
だが、現実はそんな甘くない。
「なっ…!?」
演算を開始。能力を全力で発動。
気配を消し去って電柱の影に隠れる。
(チッ………まさかここで遭遇する事になるとは……)
そんな彼の目の前を走るは二足歩行するモヤシーーー否、レベル5の第一位、一方通行であった。
あと数分で酒池肉林の己のマイホームに帰れるというタイミングでまさか核兵器顔負けの危険物を目の前に落とされるとは、どこぞの校長先生でも予期できないだろう。
俺のプランに支障が…などと呟きつつも恭弥は隠れて一方通行を観察していると、何故か切羽詰まっているのが伺えた。
そのことを怪訝に思い、彼は能力を解除して一方通行の前に姿を表す。
「よっ!そんな腹壊したみたいな顔してどうした?」
「!?……死ねェ!!」
「ぶっば!!」
殴られた。
****
日が落ち、光源が街灯と月のみとなった学園都市の道を二人の少年が走る。
「なるほど……詰まる所、『
「ニュアンスが気になるがそォ言うこった」
一通りの説明を聞き、相変わらず気の抜けた口調で確認をとる恭弥に一方通行は呆れてぞんざいに答えた。
そんな一方通行を後ろから一瞥し、恭弥は思う。
(……変わったな。
無能力者に負けたことで何か得たのか………『
ま、らしくないけどプラスの方向には転がっていったんだな)
まるで我が子が成長し、旅立つかのようにしみじみとした視線を送る。
「あぼっ!?」
直後、恭弥の目の前の地面が爆発し、銃弾以上の速度で石つぶてが飛んで来た。
そして一方通行が前を向いたまま口を開く。
「気持ち悪ィ眼差しで見てンじゃねェよ。吐き気が酷くて内臓吐いちまうだろォが」
返答はない。
石つぶては恭弥の顔面にぶち当たったのだから。
****
第七学区の
前を見れば
「あれか?」
「あァ。間違いねェ」
口角を上げてニヤリと獰猛な笑みを浮かべる一方通行。
ピロリン♪
そんな彼の顔を写メる恭弥。
ゴシャッ
「ァアアアアア!!!」
即座に携帯は破壊された。
プラスチックと金属の残骸を手に恭弥が嘆いていると、前方の車からおっさんの悲鳴が聞こえてきた。
「ヒッ……クソォオオオ!!」
そう、写メった際の音により、天井が彼等に気付き、アクセルを踏み込んで二人を
交通規制により学園都市からの脱出は不可。当初の計画は崩壊し、失敗が許されない現状。
天井亜雄はこの時かなり追い詰められていたのだ。
窮鼠猫を噛むとはこの事だろうか。
天井の最後の悪足掻き。普通の人間ならこれで排除できるはずなのだ。
「甘ェよ」
が、相手が悪かった。
相対するは学園都市230万人の頂点、ベクトルを操る
普通という括りに入れていい人間ではない。正真正銘の化物である。
車が彼に触れた瞬間、何かに押し潰されたかのように、
窮鼠は噛み付く前に、容易く叩き落とされたのだ。
ドアを叩きつける事で天井を気絶させ、助手席に回る一方通行。
電話をして
対して、天井にニヤニヤと嗤いゲスい表情で近づく恭弥。
あまりの悪寒に天井は瞬時に意識を取り戻し、ヒッと悲鳴を上げて飛び上がった。
そんな彼をガムテープで縛り上げて恭弥は話しかける。
「おっと動くなよ?
貴様が動いた瞬間…………」
恭弥は中途半端なところで言葉を切り、ニタァ、と気味の悪い笑みを満面に浮かべた。
「………なんだよ……?
……何すんだよ…?……途中で言うの止めないでくれよ!!最後まで言えよ!!」
「…………………」
「なんか言ってくれぇ!!」
「うっせェぞ中年!!」
黙りこくった恭弥に恐怖を感じた天井はそれを紛らわすために叫ぶが、それが一方通行の癪に障ったようだ。
ドバンッ
と音が響き、直後には全裸で電柱から吊り下がる中年の姿しか残らなかった。
さりげに鬼畜な第一位。
目を細めてそれを見つつ、恭弥はポツリと呟く。
「うわー…ないわー。
オモチャ無くなったし俺暇やん。
完全暇人やん。うわー。マジ暇人やん」
野次馬魂丸出しでここまで来た第八位である。
何も起きなければ暇人となることは必須であった。
一方通行を見れば、幼女の顔をガン見しつつ額に手を当てており、趣味の時間を満喫しているのが伺える。
恭弥は、他人の趣味を邪魔するような無粋な真似をするつもりはサラサラないので、暖かい視線を送りつつ、拳銃を拾って車内で弄り始めた。
そして、それは起きた。
ドンッッ!!
腹に響く轟音。
聞く者の心臓を鷲掴みにし、恐怖を与えるその音。
「うわっ!……弾出ちゃった…」
ーーー要は発砲音である。
何をしている第八位。
弾出ちゃった…じゃねぇーよ。
事はそれだけにとどまらない。
チュインッ!チュインッ!
と車内で跳弾し、それは一方通行の眉間に吸い込まれーーー
「痛っ!?ふざけんなテメェ!
ぶっ殺されてェのか!!後コンマ一秒早かったら俺の脳が抉れてたじゃねェか!!」
ーーー薄皮一枚食い込んだところで反射された。
弾が直撃する直前に、
鉄壁の防御を誇る己の能力に感謝しつつ、恭弥を睨む一方通行。
ライオンすら睨み殺しそうなその視線に恭弥は、
「サッスェンシタ」
ただ謝ることしか出来なかった。
「幼女鑑賞の時間を邪魔してしまい」
ブチィッ
刹那、恭弥は後部座席ごと研究所の壁にのめり込んだ。
Q、なんで恭弥くんに一方通行の攻撃が効いたんですか?
A、ギャグパート舐めんな
そろそろ更新ペースがガタ落ちして来ると思われます