とある科学の因果律   作:oh!お茶

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24話「食蜂のターン」

 

第三学区にある個室サロン。

そこはカラオケボックスを豪華にしたようなものであり、時間毎に部屋を借りた客がその中で自由に遊べるという所だ。学園都市の人口の八割にあたる学生達は大半が管理された学生寮で暮らしているため、常に大人の目というものに曝され続けることとなり、ストレスの元になる。そんなこの街で、誰の目からも逃れる事が可能な個室サロンというのは、いわば『金で買える秘密基地』と言ったところだろう。一歩間違えば性犯罪の温床になる可能性もあり、そう簡単に褒められたものではないが、秘密のやり取りをするには絶好の場所なのだ。

 

そこの一室で鵠沼恭弥と食蜂操祈は向かい合っていた。

 

「さて、………そうだな。二つ、言っておく」

 

「何かしらぁ?」

 

「こっから先の事は他言無用だ。

外に漏らした瞬間俺はお前を殺す」

 

「……ええ、分かったわぁ。情報の価値力は誰よりも分かってるつもりよぉ。その事なら心配しないでいいわぁ」

 

「そか。じゃ、もう一つ。

かなり上に限られるだろうが、上層部なら誰でも知ってるだろうこの話を俺は部外者にそう安々と話すつもりはない。

それなら何故お前に話すのか」

 

簡単なことだ、と続けて、

 

「お前のその便利な能力の恩恵を受けたいと思った、ってだけの話だ。足下に転がって来たチャンスは見逃さない主義なんでね。

だから今後俺と組め。

いつも一緒に行動しよう、って訳じゃない。

単に、お互いを利用するってだけの関係だ」

 

黙ってこの提案を考える食蜂を尻目に恭弥は烏龍茶を一口飲む。

 

「加えるとすれば、裏切りは無し、ってところか。

ま、それなりにお前にも益になると思うぜ?

少なくとも、目の前のお宝欲しさに裏切りするより、長い目で見たときの利益から手を組んでいようと思わせる位には。

それに加えて俺の情報も入る。一石二鳥だと思うけど。

俺の手伝いなんてそこら辺の人間を操れば大抵は済むんだからな。

で?どうよ?俺の頭の中は見えないと思うけど、やっぱ怖いから断る?」

 

『考えていることが分からない』

これは人の頭の中を見れる事が当たり前である彼女にとってかなり大きな不安要素だった。故にそう簡単には決断できず、黙り込んで考える。

 

対して、爪を噛んで思考する食蜂に時間を与えるために恭弥はゲームを始めた。

タイトルは『ファンタスティック・パニック』。

簡単に言えば巨大化した蜘蛛と人間の闘うゲームである。

もちろんプレイヤーが操作するのは蜘蛛だ。

 

そして五分ほど経った頃、食蜂が口を開いた。

 

「………わかっ「ギャァアアア!!腹ぶち破って蜘蛛の赤ちゃん出てきやがった!!死んだし!」……何やってんのよ…」

 

親蜘蛛が子蜘蛛に食われている背景に、血の文字で『HAPPY END』とデカデカと表示されているのだが、このゲーム作製者は一体何がしたかったのだろうか。

どちらかと言えばBAD ENDだろう。

 

閑話休題。

 

コントローラを投げ出し、ハイハイハイと食蜂に向き合う恭弥。

 

「で?了承してくれた?」

 

「ええ。いいわよ。但し、あまり私の事情には踏み込んで来ないでちょうだい」

 

「いいよ。つかあんま興味ない。

じゃ、俺の事を話そうか」

 

食蜂からの条件の提案を軽く了承して恭弥はゲームを放り投げた。

さてと、とダラけた体勢から切り替えて恭弥は再び食蜂操祈と向かい合う。

 

「うーん、……よし、『ジェネレーション』から話そうか」

 

 

 

****

 

 

鵠沼恭弥は話を終えてコーヒーを口に運んだ。

彼の喉からゴクリと大きな音が出る。それほど室内は緊張感に支配され、気味が悪いほど静かだった

 

(………難しいな…)

 

というのもあるが、彼が普通に能力を使用して音を大きくしていたのだ。

 

(ま、需要なさそうだし上手くなくてもいいか)

 

が、特に意味は無かった。

 

そんな恭弥に対峙するは、僅かに震えている食蜂操祈。

何か思いあたる事でもあるのか、彼女の目はどこにも焦点が合っていない。

 

「……そんな……ことが…」

 

そんな彼女の口から自然と出た言葉に恭弥は欠伸を噛み殺してダラリと気の抜けた言葉を返す。

 

「ま、そんな感じ〜。

別に学園都市だから珍しい事でもなんでもないね。

もう面倒だからこの話終わりー。

この話終わりー」

 

「………最後に一つ、いいかしらぁ?」

 

「この話終わりー」

 

「……一つだけなんだけどぉ…」

 

「この話終わりー」

 

「ああもう!分かったわよ !!」

 

恭弥の投げやりなゴリ押しに頬を膨らませつつも折れる食蜂。

暫く思案して溜息を吐き、諦めたように同じく投げやりな口調で恭弥に尋ねた。

 

「それじゃぁ……なんであそこまで被害を出したのか聞かせて貰おうかしらぁ?

貴方の力ならわざわざスーパーセルを起こさなくてもアイツを止められたでしょぉ?」

 

当然の疑問。

現に恭弥はスーパーセルを呼び込む前にあの少年を圧倒していたのだ。故に、持ち前の情報収集力でそれを知っていた食蜂はそう尋ねる。

対して恭弥はポカンとしてから、あの大々的な破壊活動が大した事ではなかったとでも言うようにカラリと答えた。

 

「んあ?………ああ、あの時か。

なに、単純な事だ。

摩訶不思議な法則を組み込んでの演算ではスーパーセルが一番安定したんだよ。穏便に殺そうかと思ったんだけど無駄に頑丈で回復力もあったから消し飛ばすしかなかったのね。

だから面倒なあれをわざわざ引き起こした。

学舎の園ぶっ壊しちゃったぜwww」

 

「………はぁ……本当に勘弁してほしいわぁ。

なんとか三分の二は修復できたのだけれど私の部屋は吹き飛んだままなのよぉ?」

 

「ワロタwww」

 

「………レディの部屋を破壊しておいて、随分対応が杜撰じゃない?」

 

「ぶははははははははははははははははははははwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww(゚∀゚)」

 

ブン殴ってやろうかと食蜂は思うも、恭弥との身体能力の差を考慮して思い直す。

そんな彼女の心境を知ってか知らずか………いや、間違いなく知っているのだろうが、構わず恭弥は嗤い続ける。

というのも、

 

 

ーーー早く家帰って2○ゃん見たい

 

 

これが今の彼の心境であった。

それなら段々と応答が適当になってきたのも頷ける。

そんな恭弥に食蜂は呆れ、今日何度目になるか分からない溜息を吐いた。

もうこれ以上は時間の無駄だと悟り、彼女は腰を上げる。

 

「まだいくつか聞きたい事はあったけどぉ……まぁいいわぁ」

 

「うっすwww

じゃ、お疲れサーンwww」

 




次から原作入りましょうか
なんも思いつかない今日この頃

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