とある科学の因果律   作:oh!お茶

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連投じゃおりゃあ!!


16話「絹旗とデート②」

 

薄暗い研究室に電話の音が鳴り響く。

だが、それに反応する人影はなく、電話はただ鳴り続ける。

 

そして三分ほど経っただろうか。

部屋の一隅で、一つの影がもぞりと動いた。

 

電話が鳴り響く中、もぞもぞと動き続け、ついにゆらりと立ち上がる人影。

それは背中の中ほどまで髪を伸ばし、青白い肌をした白衣姿の女性。

彼女は電話を無視し、眠そうに目を擦りながら五分かけてコーヒーを淹れ、一口飲んだ後に漸く電話に出た。

 

「はーい。こちら木原方針でーす。

えー?なになにー?

…………アハハ、君達バカだね。

いいかい?アレは君達が想像しているような物とはかけ離れた存在だよ」

 

全く電話に出なかった事を謝る様子もなく、マイペースに応答する方針。

 

終いには相手を馬鹿にして鼻で笑って『バーカ( ^ω^ )バーカ( ^ω^ )』というメールを送り付け始めた。

 

結果、当然の事ではあるが、電話をかけてきた人物はキレた。が、相変わらず馬鹿にしたような口調で続ける彼女。

 

「おっと、そんなに怒らないでくれたまえ。

…………いや、言っとくけど、参考にならないよ?アホなの?だってアレはそっちがベースなんだから。

…………アハハ、ダメダメ。無駄になると分かってるのに貴重なデータを渡すバカがどこにいるんだい?

じゃあね」

 

相手のバカバカしい要求に呆れて方針は電話を切り、ついでに電話線を引き抜いた。

そして欠伸を噛み殺しながらコーヒーを飲み干しポツリと呟く。

 

「レベル6ね……まぁ多分無理っしょ。

幻想殺し(イマジンブレイカー)が関わってきちゃったらしいし。

ヒーローは強いっ!ってね」

 

あーダメダメ、と絶対能力進化(レベル6シフト)計画が潰れる事を嘲笑していると次第に全てがどうでも良くなってくる彼女。

はぁ、と溜息を吐いて機器を起動させて明るく映し出された画面を見ていると、研究意欲が湧くどころか愚痴しか湧いてこない。

 

「あーあ…彼が一番成功したんだけどなぁ………まぁ、あのままやっててもレベル5止まりって樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)で出てたから別にいいけど…………あーあ……

ま、いずれにせよ彼じゃ二位と七位には絶対勝てないし」

 

と、そこまで言ってから何かに気付いたように少し考える方針。

 

「ん?………うーむ…………刺激を与えてみるかね…

よしっ!そうと決まれば寝よっ!」

 

うははー、と笑い再びパタリと横になる。

だが、彼女の右手は手際良く動いてコードを打ち込むなどの必要な操作を行っていき、全てを終えてからパタリと止まった。

 

これは三日ほど前の事である。

 

 

 

****

 

 

「ど、どうですか?」

 

「おk!そっちでいこう!テラ可愛い!」

 

カーテンが再び開き、白いビキニを着た絹旗が視界に映る。

このとき恭弥の頭の中は、

 

(露出最高!)

 

この一点に集約されていた。

 

可愛らしさ?何それ食えるの?

見えそうで見えない、露出度高めで、よりエロく!を地で行く彼にマトモな評価ができる訳がない。

 

絹旗の抱きつきたくなるような地肌を目の当たりにした彼のテンションは天元突破。

 

まぁ、絹旗に大分似合っていた水着だったので結果オーライといったところだろう。

 

また、恭弥にかなり高いテンションでそう言われた絹旗は、一気に顔を赤くし、超恥ずかしがりながら、

 

「ち、超有難うございます!で、ではもう超着替えますね!」

 

とカーテンを閉めようとするが、

 

「おk!もっちと見せて!」

 

恭弥はカーテンを抑えてそれを阻止し、矛盾する言葉を放つ。

欲望に忠実、これが売りの第八位です。

空いている手で、ガッシリと絹旗の小さく可愛いらしい肩を掴み、超ガン見。

 

たまたま、その姿を目にした第三位は、(うわっ、アイツやっぱ頭おかしいのかな?)とドン引きした。

 

「えっ!?あ、あ、あわわわわっ!!??」

 

そして、遂に絹旗のキャパが原子崩れ(メルトダウン)した!

結果、カチリと固まってしまう絹旗最愛!

 

一方、恭弥は絹旗の肉体に心理掌握(メンタルアウト)されてそんな彼女に気付かない!

ゴーヤワサビ汁という未元物質(ダークマター)を飲み干して空き缶をコインサイズにまで握り潰し、適当に脇へ弾く!

そのままゴミ箱へ吸い込まれた超電磁砲(レールガン)

 

 

カキンッ………!!

 

 

その際の音が絹旗の硬直を念動砲弾(アタッククラッシュ)

瞬時に展開された窒素装甲(オフェンスアーマー)

目を回してテンパりながらも恭弥の顔面を的確にドカン!

まさに、こっから先は一方通行(アクセラレータ)

これこそギャグパートによる能力無効という因果律(アーセナル)

 

「ふっ…………我が人生に……一片の悔い……」

 

口から血を吐き、ガクリと跪く恭弥。

残る体力を振り絞ってなんとか言葉を紡ぎながら徐々に前に倒れ込んでいき、

 

「…あるわ」

 

そう言ってスクリと何事も無かったかのように立ち上がり再び絹旗をガン見。

最早ただの変態である。

気持ちは分かるが。

 

顔を真っ赤にして相変わらずあわあわとした絹旗は恭弥を蹴飛ばし、今度こそカーテンを閉めて着替えるのだった。

 

 

 

****

 

 

「えっと………その…今日は超有難うございました」

 

「おう、いいって事よ」

 

結局、後者の水着を購入した後、滝壺より値段が安かった事もあり、恭弥の奢りで一緒に昼飯を食べて帰路についたのだった。

 

絹旗は感謝の言葉にそう返され、嬉しそうに頬を緩めた。

そんな彼女を視界の端に収めつつアイスを舐めていると、ふと気付いた。

 

僅かに目を細め、顔の向きは固定したまま眼球のみを動かし、ジロリと周囲を舐め尽くすように観察する。

 

誰にも悟られないように。

極力ぎこちなさが表に出ないように。

感覚を研ぎ澄まして五感を総動員。

 

得られる情報はいつもと変わらない平穏な日常の街並み。

だからこそ際立つ違和感。

表の人間は気付く筈がない。だが、裏の人間でも気付く方がおかしいと思えるその違和感。

必死に隠蔽しているようには感じられない。だが、気付くか、と問われると大半の者が、否と答えるであろう異質。現に、あの絹旗ですら気付いていない。

 

ソレは、近い。

ソレは、離れていく。

ソレは、何故か彼を惹き付ける。

 

興味でも、恐怖でも、期待でもなく、本能で鵠沼恭弥はソレに惹かれた。

 

「絹旗ちゃん、俺ちょっと用事があるからさ、ここでお別れだ」

 

「そうですか。では、超また後で」

 

「ん」

 

絹旗と別れ、姿見えぬソレを追う。

 




麦のんも好きだけど特に絹旗大好きです。
次回から真面目ルートへ移行しますかね。
まぁサックリ終わらせてギャグルートに戻るけど。

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