とある科学の因果律   作:oh!お茶

14 / 33
14話「投げ出し」

 

恭弥が人形を繋ぎ合わせてブンブン振り回していると、御坂の目と耳が回復した。

目の前の怪しい行動をとる少年に唖然とするも、すぐに気を引き締めて恭弥を睨みつける。

 

「………アンタ……さっきはよくも…!」

 

振り回していた人形を放り投げ、激昂する御坂に向き合う恭弥。

 

「おっと。まぁ、落ち着け。

取り敢えず話をしようじゃないか。

時間がないから気を使ってもらえると助かr」ドガァアアアンッッ!!

 

「」

 

「」

 

落ちた衝撃で爆発が起きた。

起きてしまった。

とことん締まらない第八位。

 

が、もうこの際はスルーだ。

仕切り直しにパン、と手を叩いてから口を開いた。

 

「ま、俺自身としてはお前に危害を加えるつもりはないよ。

実際にさっきまでお前にトドメを刺さなかっただろ?」

 

「………確かにそうだけど…」

 

そういう恭弥の言い分はもっともである。

しかし、御坂としてもそう易々と信じる訳にはいかない故、警戒は解かないまま、視線で話を促した。

 

「ま、聞いてくれるだけでも有難い。

まず、俺等は『絶対能力進化(レベル6シフト)計画』には一切関与してない」

 

「じゃあ何で…………ああ、金で動く傭兵集団みたいなものなのね?」

 

「ご名答。だから俺等にブチギレられても困るし、拷問されても何も話せる事はない。まず、ここは理解しておいてくれ」

 

「………で?なんでアンタは私に危害を加える気がないのかしら?

仕事しないと金は入ってこないんでしょ?」

 

「ま、俺は金に困ってないからそこはどうでもいいんだ。

俺はなんかお前が不憫でな………

………ゴメン、ちょっとトイレ行ってくるわ」

 

突如腹を抑えてそういう恭弥。

 

「………は?」

 

御坂は唖然とする他ない。

学園都市の暗部。油断すれば即、死に繋がるであろうことは彼女でも理解できる。

なのに目の前の男は一体どういうつもりなのだろうか。

だが、有害なエネルギーをすべて無害なエネルギーへと変換できる恭弥にとっては学園都市の暗部などなんのその。

普通に御坂に背を向けてぺちぺちフレンダの顔面を往復ビンタし始めた。

 

「おーい、フレンダちゃん起きろー」

 

「ぶっ!?あばっ!ぼべっ!ぶはっ!ぢょっ!あだっ!おべっ!」

 

いや、訂正しよう。

ベチンベチンと大きな音が鳴り響くほどの往復ビンタを始めた。

流石、ゲスい。

気絶しているいたいけな少女に容赦ない。

敵であるとはいえ、流石に御坂もこれには同情した。

戻った意識が再び飛び、再び戻り、飛び、戻り、……を五回ほど繰り返したところで恭弥はビンタをやめた。

 

「……ふぁへ?あれ?」

 

「おい、よく聞けサバ女。

俺はシーザーサラダが当たったから便所に行く。

お前は適当にみっちゃんとバトってろ」

 

「え?え?……あ!侵入者!!」

 

「じゃあな」

 

「え!?ちょ!よく状況が分かんない訳よ!」

 

呆然としていたフレンダに彼は伝える事だけ伝えると、扉をこじ開け何処かへ行ってしまった。

最早、御坂相手に悪足掻きできるほどの道具がないフレンダは涙目である。

 

 

 

****

 

 

恭弥はスッキリした顔でトイレの扉を開けた。

すると、

 

「…………どこだココ?」

 

ーーー瓦礫の山が目の前に広がっていた。

 

おかしい。

先ほどまで自分は研究所というかなりしっかりした建物の中にいた筈だ。

 

おかしい。

先ほどまで自分は腹を壊していた筈だ。

いや、それは関係ない。

 

では、何故今現在、自分は空襲跡地のような場所にいるのか?

 

答えはすぐに出た。

 

「チッ!……まぁストレス発散にはなったか。

……クソッ!第三位が……逃げやがって」

 

明らかにイラついている様子の麦野沈利が近くの鉄塊を『粒機波形高速砲』、つまりは能力で吹き飛ばしていた。

ここで恭弥は一考する。

考察。思考。思案。勘考。熟考。

 

ハッ!と顔を上げ、

 

ーーー沈リーナ☆に聞けばいいじゃないか!!

 

本当に第八位なのか疑わしい脳味噌である。

 

そして彼女に近付いて尋ねた。

 

「ふむ…………………トイレから出てみれば研究所全壊でお仕事終了、ってどういう事ッスか?

懇切丁寧な説明要求しまッス!麦姐さん!!」

 

「あ?…………いや、お前さっきまでどこに行ってたんだよ。

私の方が説明してもらいたいわ」

 

「………いや、マジすんません。

だからビームの照準をコッチに合わせないでください。

………シーザーサラダで腹壊してトイレに篭ってました」

 

「………死ね」

 

「うぉおおお!ちょ!うわっ!ストップ!

とりあえず頭の怪我治してやるからやめて!」

 

 

 

****

 

 

その後、『アイテム』のメンバーと合流し、実験の内容を知った麦野は爆笑しながらそれを恭弥に話した。

 

「ふーん…………で、第一位サマはスライム二万体相手に経験値上げ、ってことね」

 

「ええ、どうやらそうみたい。

ハハッ!滑稽たらありゃしないわ!」

 

「うん。俺それ知ってた」

 

テヘッ、と舌を出してコミカルに悪びれる恭弥。

この行為が第四位の導火線に火をつけた。

 

「……ハァ!?テメッ…何で教えなかったんだよ!!」

 

「あー、……別に任務にゃ関係なくね?バカみてーに迎撃すりゃいいだろ、と思って」

 

「いや、まぁ、そりゃそうだけど……教えろよ!」

 

「ハハハ、教えて俺になんの得があるんだボケナス。

そんなに知りたきゃハッキングして見ろやアホウ」

 

カラカラ嗤い、火に油を注ぎ続け、

 

「ぬがぁああああ!!」

 

ついに爆発させた。

 

「おっおう。……ってスマン!今度から教えるからビーム放つな!ヒイッ!……ったく危なっかしい」

 

結局、それに加えて高級ブーツを買いに行くという事で許してもらえた恭弥だった。

 




教えて!沈リーナ☆

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。