第五話 「執事VSメイド」
ハイスクールD×D
~堕ちた聖女の剣~
第五話
「執事VSメイド」
アーシアが駒王学園に入学してから数日が経ち、最近ようやく学園に慣れ始めた。
最初こそ異国美少女という事で連日アーシアの席に大勢の男子生徒が押し寄せていたものの、イッセーや他の女子生徒によって落ち着きを取り戻し、アーシア自身にも仲の良い女子の友人が増え始めている。
いつもアーシアの後ろでそれを眺めているアーチャーも年頃の少女らしい笑顔を浮かべながら友人の話に花を咲かせる主の姿に、頬を綻ばせていた。
『マスター、最近良い笑顔をするようになったな』
「(そうでしょうか……?)」
『ああ、やはりマスターほどの年頃の少女はそうやって友人に囲まれているときが一番美しい笑顔をするものだ』
青春とはそういうものだ。
『ところでマスター』
「(はい?)」
『友人と話に花を咲かせるのも良いが、そろそろ部室に行かなくて良いのか?』
「あ!」
時計を見れば放課後になり30分も経っている。
慌ててアーシアは友人達に頭を下げながら教室を出ると、少し小走りになりながら部室へ向かったのだが、途中でアーシアを待っていたのであろうイッセーや祐斗、小猫と合流した。
「遅かったねアーシアさん、友達とお喋り?」
「ごめんなさい、木場さん、イッセーさん、小猫ちゃん、ついお話が長くなってしまって」
「構わねぇって。アーシアに友達が増えて俺達だって嬉しいんだからさ」
「行きましょう……」
お喋りしながら4人(+1人)で部室に向かう。
そして、旧校舎に入って部室の前まで来たときだった。祐斗と小猫、アーチャーの3人が異変に気付いたのは。
すぐさまアーチャーが実体化してアーシアの前に立ち、祐斗と小猫と並びながら部室の扉をジッと睨む。
「アーチャーさんも気付いたんだね」
「ああ、部室の中からリアス・グレモリーと姫島朱乃以外の強大な魔の気配を感じた……はぐれ悪魔が進入してきた可能性も捨て切れん」
アーチャーの感覚では悪魔という存在は多少なりとも魔の気配を纏っている。一誠や祐斗、小猫からも魔の気配を感じる事が出来るのだ。
だが、部室の中からは今までに覚えの無い気配を感じる。リアスや朱乃の気配も感じるが、それ以外にも強大な気配を。
場合によっては強力なはぐれ悪魔が進入してきた可能性すらあり得る。
「迂闊だったよ、此処に来るまで気付かなかったなんて」
「仕方あるまい、この旧校舎に張られている結界が多少なりとも気配察知を鈍らせたのだろう」
「結界が、仇になりました……」
この旧校舎には一般生徒がなるべく足を踏み入れないように結界を張っている。
簡単な認識阻害の結界の他に魔の気配を緩和・隠蔽する結界や侵入者察知の結界まで張られており、今回は気配緩和・隠蔽の結界が仇となった。
「木場祐斗、剣を出しておけ……兵藤一誠は
そう言いながらアーチャーも両手に白と黒の剣……干将・莫耶を投影して構えた。
それを見て一誠も慌てて自身の
「アーチャーさん……」
「マスターは私達の後ろへ、危険があるかもしれないから、用心しておく事だ」
「はい……」
扉の前で左右に分かれたアーチャーと祐斗は互いに頷きあうと扉を蹴破り、一気に中へと飛び込み、それぞれ剣を構えた。
中に入ってみれば、そこには変わらず優雅に紅茶を飲むリアスと傍に控えている朱乃、それから見覚えの無い銀髪のメイドが朱乃の反対側に控えている光景があった。
「あら遅かったわね。どうしたの? そんな武装して」
「……あの、部長? そちらの女性は……」
一誠が代表して尋ねると、リアスが口を開く前に銀髪のメイドが前に出てきてアーチャーたちに向かって頭を下げた。
「お初にお目に掛かります。私、リアスお嬢様の実家にてメイド長を務めております、グレイフィア・ルキフグスと申します。以後、お見知りおきを」
「あ、えっと! リアス部長の
「
「
「存じております、お嬢様の眷属の方々についてはお嬢様よりお聞きしておりますわ。それと、そちらのシスターが……」
グレイフィアが目を向けた先にはアーシアが立っていた。
アーシアも慌てて頭を下げると自己紹介を始める。
「アーシア・アルジェントです。リアスさんの眷属ではありませんが、オカルト研究部に在籍してます」
「事情は聞き及んでおります。堕天使に騙されたというお話でしたね、監視とは言え、お嬢様の良きご友人であらせられるご様子で、安心しました」
「い、いえ! 私こそ、皆さんにはとても良くして頂いてますから」
「そうですか……それで、そこに立つ赤い騎士が」
「アーシアのサーヴァント、アーチャーだ」
既に武装解除した一誠や祐斗とは違い、アーチャーだけは未だ干将・莫耶を手に持ったまま警戒を怠っていなかった。
当然だろう。別にリアスとは和解した訳ではない上に、その身内とも呼ぶべき人物が相手となれば、アーシアを守る上で警戒しない訳にいかないのだから。
「サーヴァントという存在について、お嬢様からは何も教えられなかったと聞き及んでいますが……真でしょうか?」
「事実だ。私はまだリアス・グレモリーを信用した訳ではない。いつアーシアに害を成すか、強引な眷属化をしてくるかもわからん以上、こちらの情報を与えるつもりは無い」
「ちょっと! 私は別にアーシアを強引に眷属にしようとはしないわよ!」
リアスが何か言っているが無視する。
「なるほど、ある意味あなたはアーシア様の眷属みたいな存在なのですね」
「マスターを守るという意味では同じなのだろうが……使い魔みたいなものだと納得してもらえばそれで良い」
「なるほど……アーチャーという名も、真の名ではありませんね?」
「役職みたいなものだ。真名を教えるつもりは無い」
一触即発、そんな空気が流れる中、何故か朱乃がアーチャーの前に紅茶をトレーに乗せて持ってくる。
「アーチャーさん、どうぞお茶ですわ」
「ふむ、この香り……今日は君が淹れたわけでは無いようだな」
「ええ、グレイフィアさんが」
「ほう」
剣を消して紅茶を一口、すると細くしていた目が突然大きく見開かれた。
「これは……!」
「如何でしょう? 我がメイドスキルは」
「なるほど、確かに美味だが……君は日本に来ることがそんなに無いようだから教えておこう……水道水を使う時は勢いよく出した水を強火で沸騰させてから使いたまえ」
「っ!?」
「確かに日本の水は軟水だ、だからこそ水道水でも十分に美味しい紅茶が淹れられるが……空気を含ませるには勢い良く出すのがポイントだ」
何故か紅茶議論が始まった。
そしてアーチャーは少し待っていろと言うと、人数分の紅茶を用意し始める。言葉通り勢い良く出した水道水を汲み、強火で沸騰させると、そのお湯でティーポットを洗い流し、人数分の茶葉をポットに入れ、高い位置からお湯を注ぐ。
最後に確り蒸らしたらティーカップに最後の一滴まで注ぎ準備完了だ。
「これが、日本式の紅茶だ」
飲んで見れば全員が驚愕する。公爵家であるグレモリー家のメイド長を務める言わばプロと言って差し支え無いグレイフィアが淹れた紅茶よりも完成度も味も上の最高に美味しい紅茶が、そこにはあったのだから。
「くっ! ……これは、私の負けです、ね」
「執事スキルEXを舐めないでもらおうか」
「(アーチャーさん、執事スキルなんてステータスありませ……って、何であるんですか!?)」
アーシアは自分だけに見えるアーチャーのステータスを見て執事などというスキルが無いことに内心ツッコミを入れようとしたのだが、いつの間にかアーチャーの保有スキルの中に執事:EXと書き加えられている事に驚愕する。
自分のサーヴァントが、本当に
アーチャーのステータス、載せます。
クラス:アーチャー
真名:エミヤ
身長・体重:187cm・78kg
属性:中立・中庸
筋力:D
魔力:B
耐久:D
幸運:E
敏捷:D
宝具:??
クラススキル
対魔力:D
単独行動:B
マスターから魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。
保有スキル
千里眼:C
視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上
魔術:C-
オーソドックスな魔術を習得
心眼(真):B
修行、鍛錬によって培った洞察力。窮地において、その場で残された活路を導き出す戦闘倫理
執事:EX
炊事洗濯、紅茶の淹れ方から主の立て方まで全てを心得たスキル。EXは最高級の執事の証であり、王侯貴族の執事長すら余裕で勤められるレベルであり、その執事を巡って国同士が争いあうレベル。
宝具
固有結界“
種別:??
レンジ:??
最大捕捉:??