因みに作者のお気に入りはアーシア、セラフォルー、イリナ、憐耶、桃、マリオンだったり。
あ、それからタグ追加しておきました。
ハイスクールD×D
~堕ちた聖女の剣~
第三十五話
「羞恥の公開授業、魔王少女☆爆誕!」
駒王学園公開授業当日の朝、アーシアは憂鬱そうな表情で朝食を食べていた。
理由は単純、今まさに目の前で購入したばかりという新品のカメラを磨いている偉丈夫の存在である。
「ん? どうしたマスター、食べないのか?」
「いえ、その……」
正直に、言わせて貰うのなら、今のアーチャーに実体化したまま学校に来られるのは絶対に嫌だった。
何故なら、黒いスーツをビシッと決めて、赤いワイシャツに黒いネクタイを結んだ姿は何処のホストなのかと言わんばかりに似合いすぎていて、今磨いているカメラだけではなく、アーチャーの後ろにある様々な撮影機材が嫌な予感を掻き立てるから。
「あの、せめて持っていくカメラは今磨いているのだけにしませんか?」
「何を言う、サーヴァントとして、マスターが勉学に励む姿を記録に残しておくのは当然の義務。ましてやそれが愛らしいマスターの姿ともなれば尚更だ」
「はうぅ」
このまま時間が止まってしまえば良いのに、と思ってしまうアーシアだが、残念ながら彼女に
今日この時ほど、アーシアはギャスパーの
駒王学園二年生の、アーシア、一誠、ゼノヴィア、イリナの教室では、その4人が微妙な空気を醸し出していた。
それも仕方がない事だろうか、見たくはないが、後ろを振り返ればホスト風な白髪の偉丈夫が大小様々な撮影機材をスタンバイさせており、自身もカメラを構えて今か今かと授業開始を待っていたのだから。
「そ、その……アーシア? 大丈夫か?」
「はぅぅ……っ」
アーシアの隣の席に座るゼノヴィアが羞恥心で既に涙目になっているアーシアに尋ねると、彼女は机に突っ伏してしまった。
「アーチャーさん、過保護だとは思ってたけどよ……あれは流石にやり過ぎだろ」
「あははは……アーシアさんに同情しちゃうよ」
因みに、アーチャーはアーシア達のクラスメートにはアーシアの保護責任者である藤村切嗣と名乗っていた。
一誠達はそれが本名なのかと思ったが、こっそりとアーシアから偽名だと教えて貰い、アーチャーの口の回り様に呆れていたのは内緒だ。
そして、授業が始まってからが更なるアーシアにとっての羞恥地獄の始まりだった。授業内容は英語であるのにも関わらず、何故か粘土細工をするという意味不明な内容だったが、とにかく何か作ろうとアーシアは粘土の前で悩んでいた。
しかし、イマイチ集中出来ないのは、先ほどから後ろで連続シャッターを切る音が何度も響き渡っているのが理由である。
「はふぅ……グス」
一誠が見事なリアスの像を作り上げている後ろで、アーシアが深い溜息を零しながら涙目になりつつ、粘土でラッセーを作る。
その横に座るゼノヴィアは何と声を掛けるべきか迷い、結局何も言えず、ただ心中でエールを送るに留まった。
今もまた、涙目のアーシアの姿が、カメラに収まったのが、シャッター音で判ってしまうのが憎いゼノヴィア、その矛先を粘土に向けて、デュランダルを作り上げるのだった。
アーシアにとっての羞恥の
授業が終わって、教師が教室を出た直後、誰よりも早く(強化の魔術をこっそり使って)アーチャーの下へ歩み寄ったアーシアは、涙目で己が従者を見上げる。
「どうした? アーシア」
「アー……切嗣さん、ちょ~っとこちらへ」
何故だろう、傍らで眺めていた一誠、ゼノヴィア、イリナは笑顔になったアーシアの額に太っとい青筋が浮いている様に見えた。
いや、気のせいだろう。そう思いたい。心優しい聖母の如き性格のアーシアが、あんな目の笑ってない笑顔を浮かべて青筋を額に、なんて……。
「さあ、こちらです♪」
「ちょ、まてアーシア!? な、どこにこんな力が……って、強化しているだと!?」
「うふふふ~」
大の大人を片腕で引き摺る小柄な少女という絵図はなんともシュールだった。
アーチャーを引き摺ってアーシアが教室の外に出ると、ピシャッと扉を閉めてしまったので、何が行われているのか教室内の人間には分からない。
しかし、悪魔である一誠とゼノヴィア、イリナは人間より聴覚が強いためか、教室の外の声や音が聞こえている。
『アーチャーさん、カメラを渡してください♪』
『な、何をするマスター!?』
『えい♪』
『ぬわああああああ!?』
ガッシャーン! という何かが壊れる音が聞こえた。それと同時にアーチャーの悲鳴らしき声、自業自得だと合唱する一誠達だったが、今後アーシアを怒らせるのは絶対に止めようと心に誓うのだった。
授業の後、一誠達は何故かゲッソリしているアーチャーを連れたアーシアと合流してリアスと朱乃の所へ向かった。
二人とは体育館へ繋がる通路脇で会う事になっているので、そこへ向かうと既に来ていた二人と合流する。
リアス達は一誠が作ったリアスの像を見て、そのあまりにも見事な出来栄えを褒め称えているのだが、先ほどからずっとゲッソリしているアーチャーには誰も触れない。
ただ、リアスがアーシアと目線を合わせてお互いに深い溜息を零していた事に、一誠達は同情を禁じえなかった。
「魔女っ子の撮影会だとぉ~!?」
「これは元写真部として! レンズを通して余すとこ無く、撮影せねば~!!」
何やら騒がしい。目を向けてみれば大勢の男子生徒が体育館へ走っていくのが見えた。いったい何事なのかと考えていたアーチャーだったが……。
「まさかっ!」
「あらあら、うふふふ」
どうやら思い当たる節があるらしいリアスと朱乃。とりあえず全員で体育館へ向かってみれば、男子生徒達がカメラ片手にパシャパシャと、誰かを撮影しているではないか。
その男子生徒達の中心に居るのは、今子供達や大きなお兄さん達に人気の魔法少女アニメ、ミルキースパイラル7オルタナティヴのコスプレをした黒髪ツインテールの少女だった。
因みに、この解説をしたのは一誠だ。
「イッセーさん、お詳しいですね?」
「あるお得意様の所で、アニメ全話鑑賞したからな」
「ほう……魔女っ子か」
「アーチャー?」
「いや、なんでもない」
後日、リアスの疑問が解消される事になった。彼女達オカルト研究部は、カラオケに行った際にアーチャーにマイクを握らせるのは不味いと、学ぶ事になる。
「こらぁ! 学校で何やってんだ!!」
すると、生徒会の匙が来て撮影会を中止させ、集まった男子生徒を体育館から追い出していた。
流石に公開授業の日に学校の体育館でコスプレ撮影会なんて非常識な事をしていれば、当然だが生徒会が出てくるのだろう。
「あの……ウチの学校の生徒のご家族でしょうか?」
「うん☆」
「でしたら、そんな格好されてると困るんですが」
「ええ~?」
そういえば、先ほどから気になっていたが、この少女……随分と膨大な魔力を持っている上、気配が人間ではなく、悪魔のソレだ。
リアスの家族は兄と父、それからグレイフィアが来ると聞いているので、恐らくソーナの家族なのだろう。
しかし、何より驚きなのは、見た目は普通の少女なのに、秘めた魔力が魔王であるサーゼクス並みだという事。
「お久しぶりです、セラフォルー様」
「お元気そうで何よりですわ」
「あら~? リアスちゃんに朱乃ちゃん! うんうん! 二人も元気そうだね☆」
リアスと朱乃が敬語を使って接する相手、という事は、間違いなくこの少女は二人より……それも上級悪魔であるリアスよりも立場が上の存在ということなのだろう。
「イッセー、ゼノヴィア、イリナ、アーシア、アーチャー、紹介するわ。この方は……」
リアスが一誠達にセラフォルーと呼ばれた少女の紹介をしようとしたその時だった。
体育館の扉が勢いよく開かれ、駒王学園生徒会長のソーナが入ってきたのだ。
「匙! 何事ですか?」
「か、会長! 実は……」
「ソーナちゃんみ~つけた☆」
「うっ……!?」
ソーナの表情が思いっきり引き攣る。間違いなくセラフォルーという少女はソーナの身内なのだろう。
「ソーナちゃん!」
セラフォルーが先ほどまで立っていたステージから飛び降りると駆け足でソーナの下へ笑顔で走り寄る。
対するソーナは、口元を引き攣らせて、今にも逃げ出しそうになっているのは、気の所為ではあるまい。
「ソーナちゃんどうしたの? お顔が真っ赤ですよ~? せっかくお姉様との再会なんだから、もぉっと喜んでも良いと思うの☆」
お姉様……それはつまり、セラフォルーはソーナの姉という事であり、同時に意味するのは。
「あのお方はソーナの実の姉で、現在の四大魔王のお一人、セラフォルー・レヴィアタン様よ」
旧約聖書の海の怪物、リヴァイアサンを基にする嫉妬を司りし魔王、セラフォルー・レヴィアタンが、まさかこんなコスプレ少女だなどと、誰が信じられるのか。
いや、確かに内に秘めた魔力は同じ魔王であるサーゼクスと同等クラスなのだから、それを見れば魔王だと言われても納得出来る。
だが、しかし……。
「軽い姉とお堅い妹か……姉妹でこうも違うものなのだな」
それを言ってしまってはソーナがあまりにも哀れだろうと思うが、どうしても口に出さなければならないという思いに駆られてしまう。
「あ! そうだリアスちゃん! ごめんね? 自己紹介の続きだよね☆」
「ええ、それはそうとセラフォルー様、本日はソーナの授業を見学にいらっしゃったのですか?」
「うん☆そうなの! でもねでもね! ソーナちゃんったらヒドイんだよ!? 今日の事、お姉ちゃんに黙ってるんだもん! もうお姉ちゃん悲しくて悲しくて……思わず天界に攻め込もうとしちゃったんだから☆」
そんな理由で悪魔と天使の戦争が再開されてしまってはいい迷惑だろう。
「それでセラフォルー様、ご紹介致しますわ。私の新しい眷属の兵藤一誠、ゼノヴィア、紫藤イリナ、それから眷属ではありませんが、中立という立場で駒王学園に席を置くアーシア・アルジェントと、そのサーヴァントのアーチャーです」
「ひ、兵藤一誠と申します! リアス・グレモリー様の
「ゼノヴィアと申す。リアス・グレモリーの
「紫藤イリナです! リアス・グレモリーさんの
「アーシア・アルジェントです!」
「アーチャーだ、よろしく頼む」
「はじめまして☆魔王のセラフォルー・レヴィアタンです! レヴィアたんって呼んでね☆」
萌えキャラの出来損ないみたいな呼び方を強要してくる魔王、なんともシュールというか、締まらないというか……。
「姫島朱乃……セラフォルー・レヴィアタンは、いつもあんな感じなのか?」
「ええ……その、セラフォルー様に限らず、現四大魔王の方々は皆、プライベートのノリが軽いのですわ」
「……大丈夫なのか、冥界は?」
思わず悪魔の社会を心配してしまった。
先代魔王が亡くなって数百年が経ち、現四大魔王で悪魔の政府が機能しているという事は問題は無いのだろうが、こうもノリの軽い様子を見ていると、悪魔の将来は本当に大丈夫なのかと、悪魔でなくとも心配したくなる。
「アーチャーさん、私……教会では魔王さん達は悪しき存在の権化、その象徴だって教わっていたんですが」
「ああ、皆まで言うなマスター……言いたい事は解かる」
あんな悪が居てたまるか。
それが、嘗て正義の味方を目指していた男の、正直な感想だった。
アーチャー「魔法少女か……これは、私の出番だな」(魔女っ子諏訪部モード、発動)