偽物吸血鬼のお嬢様   作:温いうどん

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前半の作風がおかしいですがこれは偽物吸血鬼のお嬢様であってます。


巫女、足蹴する。

side???(人形)

 

これは夢だ。

僕はついさっきまでレミリアになってて、みんなで楽しく過ごしていて――だから目の前の光景は夢だ。

けど、目の前で泣いている少女は僕。

まだ人の生死もわからなさそうな年齢だけどがそれは僕だ。

だってこの光景は見たことがある気がする。

 

両親が死んでしまった日の記憶だ。

 

見た瞬間に思い出した。思い出してしまった、思い出したくはなかった。

 

場面が切り替わる。

 

また、子供が一人泣いている。影法師のような二人が泣きわめく幼い子供を見向きもしないで『邪魔だ』『お前との子供はいらない』とその子のことなど考えずに罵り合っている。

この場面にも見覚えがある。

 

両親が離婚した日の記憶。

 

場面が切り替わる。

 

今度は暴力を振るってくる影法師の両親が影法師の警官に連れていかれている。

 

場面が切り替わる。

 

碌に話も出来ない赤ん坊の僕がそのまま捨てられる。

 

場面が切り替わる。

 

影法師の親戚をたらい回しにされた僕がボロボロの大きな建物に連れていかれる。

 

場面が切り替わる。

 

一緒に暮らしていたしわくちゃのお婆ちゃんが眠るように死んだ。行き場のない僕が影法師の人に連れて行かれる。

 

何で…?なぜすべてが僕の記憶の中にある?

「うさうさ」

うさうさ…うさうさ?

「にしし、さっすがお師匠様。誰も部屋にいないうさ。ふっふーん、多少フレームが歪んでいようがどっかが傷ついていようが運良く支障はきたしませんでしたとさ…うさ。」

うさうさ…ああ、てゐが僕の近くにいるのか…。

「ふんふーん、久々のフルパワーうさ、今なら金銀財宝ダイヤに石油、何でも掘れば出てくる幸運うさよ。ここ掘れうさうさうさ。」

てゐがそういった瞬間僕の中で何かがカチリと音を立ててはまった気がした。

周りの景色が明るくなってくる…もうすぐ起きるのかな…?

 

場面が切り替わる。これが最後だろう。

 

『目』

 

異常に明るい場所で振り返るようにして影法師が僕を見ている。

怖くはない、けど――何であなたはそんなに悲しそうなの?

「それに見たことがある…?」

夢なんだから記憶から引き出された映像なんだろうけど…。

最近なのか昔なのか、それすらもわからない。そうこうしている内に周りが明るくなっていく―――

 

 

side人形

 

――うん?此処は何処だ…?

ゆっくりと目を開けると薄い膜、それにずいぶんと感触のいいベット。

左右を見渡すと端っこに――って違う、そうじゃない!

「お嬢様…っ。」

「わわっ!?」

起きたことに気が付いた咲夜が抱き付いてくる…かたい。

「…お嬢様、今、何を、考えましたか?」

ごめんなさい。何でわかったんですか?

「全く、今回は私もやられちゃったし、お姉さまもボコボコにされちゃうわで散々ね。」

そう言ってくまのぬいぐるみを抱いたまま隣でだれているのはフラン。

「どこか痛かったり違和感のある場所はございませんか?」

取りあえず僕の体調を気遣って来てくれたのは美鈴(めいりん)

「おー、そういえば紅魔館の主は会ったことなかったなー。」

そして隣で僕のほっぺたをプニプニと突いてくるのは…誰?

「はぁ…、せめて突っつくのは自己紹介してからにしなさい。」

おかしい…このキャラクター知らない。

「どーも、ルーミアよ。紅魔館の面々はあなた以外は顔見知り程度の付き合いがあるわ。」

「…ルーミア…って、『そーなのか』のルーミア?」

「そーなのかって、確かに封印状態の私だったら言いそうな言葉ではあるけど…。」

やれやれといった風に溜息を吐いて肩をすくめるルーミア、そしてその胸は確実に揺れている…揉んでいい?

「姫様もこれで結構心配していたのよ。一応まだ体の色々な所がくっつき切ってないから安静にね。」

「そうね、一応完治させたとはいえ傷口に響くかもしれないから無茶はさせてはだめよ。」

二人で、傷を治してくれたのか。さすがは魔法使いと薬師。

「とりあえず無事で良かったわ。さすがは永琳ね。」

「ふふっ、ありがとうございます。それでは、目も覚ましましたので引き続き射命丸様たちの治療を続けに行きますね。」

そのままどこかに行ってしまう。

「って言うかぶっちゃけ紫なんてどうでもいいから私としては夕餉を食べたいんだけど…。」

あ、巫女だ。

「腋巫女だ!」

ゲシッ

今現在、ベットの上なのにおなかを踏まれています。

「もう一度言うけど本当に一応はケガしていたんだから程々にしておいて。」

パチェリー、助けて…あ、目が合った…。

「不用意な発言をするからよ。もうその体制のままでいいから今後の話し合いでもしましょう。ちょうどよく冥界と天界以外の各勢力の代表ないしそれに近いものがそろっているし。」

そのままでいいって!?…各勢力のトップ?

「えっと…命蓮寺とか地底は、放っておいていいの…かしら?」

「地底は分かるけれど“メイレンジ”は分からないわ。地底なんてよく知っていたわね。あそこに関してはそもそも出入り口は厳重な封印が施されていて地上に出てこれない吹き溜まりだったりする謂わば治外法権のような場所よ。付け加えると冥界と天界があるけど、冥界は生者の事柄にはあまりかかわろうとしない。天界は基本不干渉よ。」

「えっ…?」

命蓮寺がない?

「もう、そんなことどうでもいいでしょ。問題はいかに私が紫を探し出してぶっ飛ばすか、よ。」

「えっと…霊夢?」

踏みつけられているので霊夢はこちらを覗き込んできた。

「何よ。っていうかあんたって何?取りあえず面倒臭いからレミリアでいいわね。」

「えっ!?ええ、いいわ。」

まさか…そういうことか!

「はじめましてね。私はレミリア・スカーレット、この館の主よ。」

極力偉そうにして言ってみる。

そう、僕は気が付いてしまった。

この巫女は僕とは初対面、つまり異変は魔理沙が解決した!…どちらにせよ初対面っぽいから相応のレミリアっぽい…レミリアと霊夢ってどういう出会い方だっけ?

「えーっと『こんなにも月も紅いから本気で殺すわよ…?』」

あっ、これ決闘するやつだ。

「「「「「「………。」」」」」」

「へぇ、私に喧嘩を挑んでくるやつなんて本ッ当に久しぶりね。よーし、それじゃ庭にでも出てヤルわよ。」

「…霊夢、気持ちは残念なぐらいよくわかるけど流石にやめてね。」

「仕方ないわねぇ。とりあえず今回はゲンコツで許してあげる。」

「ところで誰も今、月は紅くないとか突っ込まないんですかね?」

「いやー、さすがはレミリアね。私でも巫女に喧嘩は売れないもの。この前も『死なないなら手加減とかいらないからヤリやすいわね』とか言われてぐちゃぐちゃにされちゃったし…。」

かぐや姫相手にそれとは…っていうか何この巫女、金閣寺を攻略したの?そんな腋巫女がニコニコと笑っている…怖い。

「えーっと……てへ?――キャン!」

殴られました。

 

side腋巫女

 

目の前の人形が起きると周りが騒ぎ立てる。全く、たかだか人形相手に何をやってるんだか…。

所詮は永遠に幼き紅い月(レミリア)の代用品だろうに…。

「腋巫女!」

うん、ないわ。初対面なのに、あって一言目がそれな訳?

とりあえず踏んでおく…随分柔らかいわね。

この人形はあのBBA、八雲紫が正常でない今は役立たずの意味のないもの。正直どうでもいいわね。

「何よ。っていうかあんたって何?取りあえず面倒臭いからレミリアでいいわね。」

本当にどうでもいいし、どうせ異変は私が動いて解決する。この人形がレミリアを名乗る訳も理由もないけど興味がない。

「はじめましてね。私はレミリア・スカーレット、この館の主よ。」

ふうん、そういうスタンス(・・・・)って訳?何があろうとレミリアの人形であり、最後までそれをやめない…と。

「えーっと『こんなにも月も紅いから本気で殺すわよ…?』」

あ、これ違うわ。ただの馬鹿だ。

「へぇ、私に喧嘩を挑んでくるやつなんて本ッ当に久しぶりね。よーし、それじゃ庭にでも出てヤリあいましょ。」

止められるだろうからからかいの意味での言葉だけれど面白いぐらいに反応する、今までにない子だ。…確かにレミリアにその本質が似ているわね。

「…霊夢、気持ちは残念なぐらいよくわかるけど流石にやめてね。」

仕方がない…この子を脅して遊ぶのはここまでにしておくか、とりあえずげんこつで済ませてあげよう。

 

そうこうして始めた話し合いは面倒くさいことに難航に難航を極めた。

「だから私が紫を探してボコれば正気に戻るんじゃないの?」

深く考えなくていいと思うんだけれど?

「そんなに短絡的に捉えてもダメよ。そもそもボコるというのなら既にやってはいるわ。それでも戻らなかったということは、ほかの方法を探してから動いたほうが得策よ。」

動かない大図書館が考えてから動いたほうが…って、もしかして何かのギャグかしら。

「ボコり方が足りなかったんじゃないの?私なら今までの恨みでもっとボコれる自信があるわ。」

「…話し合いで“ボコる”って単語が何度もでるって…。」

「そう?普通じゃない。」

「そ、そうだな。いや、話し合いが久々で忘れていた。それで私は誰をボコるんだ?」

「レミリア、貴女話を聞いてないのに適当な発言をしないでくれる?」

それは本物のレミリアもじゃない?

「けろけろ、そうだねぇ。そっちの巫女の言う通りに一回ボコって気絶でもさせてから解決方法を模索するのもひとつの手ではあるし手っ取り早いとは思うけどねー。」

「でしょ!捕まえとけば案外簡単に行くかもしんないし決定でいいわね!」

「でも、相手は仮にも賢者から体を乗っ取った者、十分に対策をしてから…。」

「私の能力には聞かないわよ。それじゃあ行ってき――」

「そこまでよ!」

「ちょっと待ってくれるかしら?」

カエルの援護もあり決まりそうな中で邪魔が入った。

「姫海棠はたて、ただいまお呼ばれして参上!」

ふふん、と胸を張っているのはたしか射命丸の友人だっけ?に永琳が付き添っている。

「能力の念写で写真を撮ったら紅魔館で炎が迫ってきている写真を撮ってね。ちょうど射命丸が紅魔館に行ったことは知ってたから様子を見に来てあげたってわけよ!」

「そうね。窓から飛び込んで来て『射命丸をどうした』って肩で息をしながら迫られたことは言わないほうがいいんだっけ?」

ふーん、友人思いね。あ、赤くなった。

「ちょっと、なんで言うのよ!秘密って言ったじゃない!」

「あらー、ごめんなさい。年を取るとどうしても忘れやすくなっちゃうのよね。仕方ないわ。」

(((((わざとだ。)))))

「そういえば永琳は最年長って設って…じゃなかった、一番年寄りか?」

ちょっと、人形!?あんた死ぬ気なの?

「と、年寄り…?」

あの八意永琳が固まって…。

「ん?そうだろう年長者で年をとってるだろう。」

さも当然のように言って…私でさえ分かる地雷を全力で踏み抜いてくるわね。

「…ああ言葉が悪かったな、年配者といえばいいか?」

「え、永琳?大丈夫、まだ精々おばさんレベルよ。」

ちょっと、主がとどめを刺してどうするの!?それフォローになってな――

「ふふ…そうね。そう言われても仕方ないわね。それじゃあ本題に行きましょうか」

あれ?冷静?

「ちなみに先ほどの話とは全く関係ありませんが、レミリアちゃんには体がしっかりと治るまで二週間はこの世の苦さを濃縮させたような味のする八意印の飲み薬を処方するので必ず飲むように、姫様には少しO・HA・NA・SHIが必要なようですね。」

「「……え?」」

残念、冷静というよりも冷徹ね。

「コントはいいからその本題とやらを進めてくれないかしら?」

「ま、制裁は加えたから先に進めるわ。この娘の能力は先に出た通り『念写をとる程度の能力』、つまり今回の首謀者の偽紫の写真を撮ったってわけ。これがその写真よ。」

そういって数枚の写真が回される…普通に紫ね、あえて言うなら目が死んでる感じ?

「ほら、あんたも見る?」

足蹴(あしげ)にしているレミリアの目の前で写真をひらひらとさせる。

 

「―――えっ!?ま、待って!」

 

写真を見た瞬間、足元でレミリアがひったくるように写真を私から奪う。

「僕、この人のこと知ってる!」

そんな爆弾発言をしやがって…。

 




補足:ゆっくりと目を開けると薄い膜、それにずいぶんと感触のいいベット。
左右を見渡すと端っこに=一話参照
   「そこまでよ!」=AA参照、ただし本家でこのセリフを言ったのはこの作品と同じく()たてです
   姫海棠はたて=ギャル、
   カエルの援護=ちなみに作者の切り札は『死の合唱(デスコーラス)』です。今の環境だと通用しないよう(泣)
   永琳は最年長=永遠の○○才です!
   八意印の飲み薬=>>>福寿草紅茶>カカオ99%チョコレート>ブラックコーヒー
   「「「「「「………。」」」」」」=かっこの数は適当です。
   永遠に幼き紅い月=永遠に赤き幼き月=レミリア
   ただの馬鹿だ=巫女さん正解

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