あ、特に『成長する』にこだわりはありません。なぜか被ってしまう
「うーん…まさか人造人間だったとは…。」
「協力してくれないかしら?」
にとりは唯一呼んだものの中で本物の吸血鬼だと思っていた。
「もちろん。私が盟友といったのはこの娘であって吸血鬼だからいったというわけじゃないからね。」
「さて、恐らくだけど以前八雲のに頼まれていた河童印の強化人工臓器はこの子に使ったってところかな?」
「ええ、いい出来だったわ。」
ちなみに実際の組立は私とマーガトロイドと八雲紫で行った。
八雲紫は機械に疎い私たちの間で機械でできた臓器(人工臓器というらしいが)を扱っていた。
「それだったらスペアがあるから大丈夫だよ。」
「それじゃあ始めましょう。アリスは壊れている関節と皮膚を、私が内部構造を治すわ。永琳は人工臓器の部分をお願い。」
「了解よ」
「七色の人形遣いとして全力を出すわ。」
本当にあの娘は、カリスマやらではないけれどいい友達を持ったものね。
―――少女手術中
そうして始めた処置自体はものの数時間で済んだ。けれど――
「それぞれのパーツがきちんと動くかはわからないわね。」
そう、これでいつ目覚めてもおかしくはないが目覚めなくてもおかしくはない。
目に見えない箇所が傷ついているかもしれない、受けた攻撃によってパーツが歪んでいるかもしれない、魂が変化してしまっているかもしれない、そんな可能性を考えるだけで不安に駆られる。
そんなことを考えていると永琳が肩に手を置いてきた。
「ほら、大丈夫よ。ここまでいろんな人が力を貸したのよ?あの子がその期待を裏切るはずないじゃない。」
励ましながらハンカチを差し出してくる…いつの間にか不安から泣いていたようだ…。
「………魔女の涙…あの薬品の原料になりそうね…」
これは洗って返そう、絶対だ。
side十六夜咲夜
「おなかいっぱい!ねー遊びにいっていーいー?」
お嬢様を害するものたちがいなくなったことで未だに居場所こそわからないものの少し気を緩めてしまった上に
「今は立て込んでるから行ってもいいけれど何も構ってあげられないわよ?」
「いいのだー。あそこは嫌な感じなのがいないからお昼寝ができるのだ!」
まあ、あの屋敷で殺気だの敵意だのを出す輩はいないだろうけど…。
「はぁ…、お嬢様を探さなきゃいけないのだけれど…っ!?」
急激にルーミアの魔力が膨れ上がる。
「どーしたかー?……っ…あれ?」
本人も違和感を感じたようだ。確か今の幼い姿のルーミアは本来の凶暴性の高い成人女性を封印した姿であったはず…。
「うー…ん」
と、まるでカーテンのように魔力の幕を張る。
「…ルーミア…?聞こえる?」
姿の見えないルーミアに警戒しながら声を掛ける。…お嬢様も大切だが流石にこの状況で逃げ出すわけにも行かない。
私が警戒している中で、そんなことを全く気にせずルーミアでない者のシルエットがこちらに歩み寄ってきた。
「全く、リボンの術式の一部が解けてるじゃない。――ねえ…咲夜ー、あなた何か知らない?」
そこに現れたのは私の知るルーミアを少しだけ成長させた姿。
「っ…。貴女の封印が解けると成人の体に成るんじゃなかったかしら?」
「んー?解けてないからね。あのスキマ妖怪の作った術式の一部分が壊れたいよ。」
スキマ妖怪の術式…もしかして3人がかりでヤっちゃった?
「ま、その一部分以外は正常だからスキマがサボったんじゃない?」
「そう…スキマが死んでないなら別に問題ないわね。それで貴女はどうするの?」
「んー?言った通り昼寝したいわ。」
そう言って伸びをするルーミア、…身長的には普段が1桁後半として今は10の前半ぐらい?
胸は……私の2周り、いえほんの少し、そう、本当に少し、精々が2カップ違う程度か…。
「…何に対して殺気立ってるのかは知らないけれどどうかした?」
「いえ、何でもないわ。ただこの世の理不尽さと不条理、努力では破れない壁(文字通り)を嘆いてみただけよ。」
何かに気が付いたのか、私の視線の先の自分の胸をみて溜息を一つ吐く…いい度胸だな。
「こんなもの、ただ重いだけよ?」
「ふ…ふふ…、持たざる者の気持ちはわかるまい。」
「いや、ついさっきまで持たざるものだったんだけど?」
それは年齢が若いだけなのでノーカンです。
「貴女の敗因はただ一つ貴女は私を怒らせた…!」
「え…!?戦う流れなの?っていうか私の方が突っ込み?」
そのままナイフ…ではなく拳を構える。
「今なら背後から何か出せる気がするわ…!」
いえ、本当に。
「あー、確かにそうみたいね。今は後ろにスキマがいるわよ?」
「へっ?」
本当に不意打ちだったが、もともと構えてはいたおかげで対処にはそれほど困らない。
「ふふ…、主人公組発見…♪死んで頂戴な♪」
次の瞬間、 私の目の前には数えるのすら馬鹿らしいほどの量の光弾が撃ち込まれる。――けれど、
「この程度を避けられないのでは紅魔館のメイドにはなれないわ。」
時を止めてしまえば何の問題もない。ついでに私の近くにいたルーミアも回収しておく…やっぱり若いだけあって大きいのに弾力もしっかりしてる…。
「ッチ。『時を操る程度の能力』か、厄介な。それに…」
私の知っている八雲紫の口調ではない…?
目の前の八雲紫は私よりもむしろ、ルーミアを警戒している。
「ここにきて新キャラ…ね。確か、儚月抄までのキャラは全員網羅していたと思っていたんだけれど、現実はままならないということかしら?」
「ボウゲツショウ?」
「こちらの話よ。さすがに今の状態で能力もわからない者まで相手にしたら負けるかもしれないわね。今日は引いてあげる。でも――」
“次は殺す”ってところかしら?やはりこいつ、八雲紫ではない。一体何時から?…大丈夫、お嬢様をスキマ送りにした時の八雲紫は本物っぽかった。
「よくわからないけど紅魔館はまた異変を起こしたの?」
成長したルーミアは私が一人思考に耽る中で八雲紫を警戒してくれていた。正直、こんなよくわからないであろう状況の中で幻想郷の管理人を相手に私たちの味方をしてくれる者は中々いないだろうに、ありがたい。
「後で説明するけど今回は八雲の方が異変よ。悪いけど手伝ってくれないかしら?」
「いいけど、今から捕縛はさすがに無理ね。」
「私もそんな無茶は言わないわ。それよりも賢者もどき様は貴女の事を知らないみたいだから攻撃も名前も出さないで居てくれればそれで一先ずはいいわ。」
「了解」
流石に幼女の形態よりも頭が良い、こちらの狙いもわかっているようね。
「それでは御機嫌よう。」
『引いてあげる』と言っておきながら消えるまでの時間が長いのはこちらに攻撃をさせてルーミアの情報を引き出そうとしてた――といったところか?
「…いなくなったようね。」
「うーん、まともに正面から挑みたくはない相手ね。」
「ともかく、私も一度紅魔館に戻った方がよさそうね。あんなのが出てきているってことは少なくとも紅魔館での戦闘は終わったとみていいだろうし…。」
そう、本物の八雲紫があれの存在を許すはずがない。仮に紅魔館でのパチュリー様達との戦闘に勝てたとしても紅魔館でのうのうと残ってはいないだろう。
この時の私は知らなかった。お嬢様が腹部に穴をあけて紅魔館で眠っていることも、お嬢様の変わり果てた姿を見て幼女から少女へと変わったはずのルーミアをさっきで泣かせてしまうことも。
残念、ルーミアでした。…まぁ、成分の半分程度はオリキャラと言っても差支えがなさそうな気がしますが。
補足:河童印の強化人工臓器=八雲紫によって現代医学の最先端技術が河童に提供された結果生まれた悪ふざけにも程がありそうな臓器の数々、肝臓ならばアルコールの分解速度を異常なものに、胃は金をも溶かし、肺ならばクジラのように息が長く続く…人形にも肝臓などには使っていますがそもそも酒なんぞ飲まないので意味がない
魔女の涙=多分MPは回復しそう
あの屋敷で殺気だの敵意だのを出す輩はいない=フラン「いないよ?」(^^)/
少しだけ成長=うどん的には中学1年生程度を想像
精々2カップ=咲夜さんはAとして…ルーミアはCぐらいかと
こんなもの、ただ重いだけ=常套句
年齢が若いだけ=ロリ巨乳?都市伝説です。…ところで最初の変換で虚乳を出たのですがこれは…!
何か出せる気がする=あえてのノーコメント
『その雨の影響で』
妖怪の山の麓
side河城にとり
その日も何時も通りきゅうりを囓りながら機械をいじっているとおかしな雨が降ってきた。
「天気雨、ブルーシートを…って、酒!?」
いったい誰がこんなもったいない悪戯を――ん?
「酒の雨……最近誰かから聞いた気が…。」
―――――数日前、椛と将棋中
「聞いてください!文さんと甘味4つで哨戒を引き受けたのにその甘味を食べさせてくれる時に『待て』とか『お手』とか言ってくるんですよ!」
「うーん、そんなに言うなら言うこと聞かなきゃいいのに……王手」
「いや…、それはその…ほら、私って気高き白狼天狗の一兵として命令口調で言われるとつい聞いてしまうといますか……ええっと、こっち」
「ついでに言うとその気高き白狼天狗サマは『よし』って言われて頭を撫でられると尻尾を振っちゃうんだっけ?はい、王手」
……これじゃなくて…もう少し後の…
「というか文さんの私に対する扱いが狼のそれでなく犬だと思うんですが!」
「んー、いまさら?そもそも狼と犬に格別すべき違いなんてあるのかねぇ。王手」
「私たちはフリスビーで遊んだり餌をもらって尻尾を振る犬や山彦とは違うんです!もっと誇りと強さを持つですね。」
「私から見ると過程はどうあれ結局尻尾は降ってるんだけど、それに狼だって尻尾は降るよ?」
違いますよ!あの人は目の前に餌をぶら下げて強制的に尻尾を振らせて来るんですよ!?…負けました。」
…餌で釣られるのは強制的に尻尾を振ることになるのか…っと、もう少し後の会話か…?
「それでですね。その時に取ったスクープっていうのが大図書館が酒を降らす術を開発したっていう記事なんですが…。」
「それは私に言っていいの?たしかまだ新聞になってないネタだよね。…はい、と金」
「どうせいつものように温めておいたネタを姫海棠さんにすっぱ抜かれるのがパターンなのでいいんです!…パスで」
「パスって何!?」
―――――
椛、将棋弱っ!
…違った。紅魔館がこの酒を降らせてるのか――まてよ?
見渡せば雨は自分の周りと紅魔館に最も近い道に直線にしか降っていない。
「紅魔館に来てくれってことかな?」
あそこには噂と違い心優しい人間以外で初めての盟友がいる。
「行く理由はないけど行かない理由もないし、行ってみるか。」