side人形
結果的に言うと完売した、してしまった。何せ縁日の出店者の約半数が河童なのだ、他の物はごくごく普通の屋台を営む中で一店のみが胡瓜を売っている。さて、店番で疲れた河童たちのとる行動は?
「つ、疲れ…た…。」
爆発的に増える客、飛ぶように売れる胡瓜…もうしばらく河童と胡瓜は見たくない。
「いやー、ありがとうね、吸血鬼!おかげさまですごく楽だったよ!」
むー、嬉しそうにお礼言われたら反論なんてできない…。
「これ、ほかの店のやつからかっぱらって来た出し物だよ。」
あっ!八目鰻もある…うまうま。
「河童の盟友は人間だけど河城にとりの盟友の中にレミリアの名前を入れとくよ…じゃあね!」
そう言って去っていくにとりはすんごい男前だった。
「それにしても例え手伝ってくれたとは言え河童のにとりが吸血鬼で在らせられるお嬢様のことを盟友と呼んだのは驚きですね。普段は人間にしかそう呼んだことがないので…。」
おー、それは僕が吸血鬼初の盟友ってことか…でも。
「…“レミリア”のか…。」
隣で荷造りをしている咲夜さんにも聞こえないつぶやきは自分以外に聞こえるはずもなかった。
気を取り直して帰る道中、神社の階段を降りながらにとりに貰った八目鰻を食べる。このタレといい焼き加減といい余りうなぎの類を食べたことのない僕でも分かる極上品だ。
「…お嬢様、もう夕刻ですのであまり食べ過ぎないようにしてくださいね。」
「うん!」
うまうま。
階段を降りたところで八目鰻を食べ終わり妹紅の売っていた焼き鳥を食べる。…そういえば終始ミスチーが妹紅の方に煙を飛ばしてたっけ。
「…お嬢様、些か食べ過ぎでは?」
「大丈夫だ。」
うまうま。
人里に着いた。紅魔館まではもう一息…今度は焼きそば。
「夕食が食べられないなんて言ったら正座させて怒りますからね?」
「私を誰だと思っている。」
うまうま。
ようやく紅魔館まで…
「けぷっ。」
「「……。」」
sideパチュリー
カラスどもを集めるために外で魔術を使用したのだが
「『動かない大図書館』パチュリー・ノーレッジ殿、なぜ外出を?」「ぜひ今行っている魔術についてのコメントをお願い致します。」「最近、幻想郷の主要勢力が集まったとの噂がございますが?」
予想以上の食いつきだ…私が外に出るのはそこまでか?
でも――
「あややや、私にもコメントお願いしまーす。」
目標は食いついた。
「これは紅魔館に使っている雨を降らす魔法の応用で広範囲かつ局地的に雨を降らせることのできる魔法よ。」
説明と実践、これで確かに二時間以上は粘れるはず!
「なので私が出てきたのはこの広域魔法を試すためであり、既に八雲との話し合いも付いています。」
本当は先ほど決まったばかりの実験なので話し合いが出来ているわけもないが八雲紫ならばすぐに意図を理解してくれるだろう。
「直線も曲線も思いのまま…更に範囲は幻想郷の全てを覆うことができるわ!」
時間稼ぎとは言え、せっかくの機会なのだからこの最新の魔法を試したのだ。可動効率はもちろん範囲を広げても消費魔力は大きくなく、効果範囲を絞るという画期的な…。
「ええっと、それだけですか?」
「………へ?」
「あの…要するに好きな形に雨を降らすだけ…ですよね?」
「…そうね。だけど…、「じゃ、俺適当に脚色して書くからこれで」「あー…私も帰って『今日の天魔ちゃん』のコーナーの編集(盗撮)しないと。」「こうなりゃ、使ってた魔法を幻想郷を滅ぼす効果ってことにして…。」…グスッ…」
なぜわからない?今までの魔法とは一線を画す画期的な魔法なのに!
「あややや、それでは私もせっかくここまで来たのでレミリアにでも会いに行きますかね。」
、あ…待って…。これじゃああの子に顔向けできない…なにか方法は…!
「あ、パチュリー様!お待たせいたしました。頼まれていた実験材りょ…ええ!?どうして涙目に…あー、天狗たちが続々と…そういうことですか。」
ぐすっぐすっ
「なんだかんだでやっぱりレミリア様の親友ですね…。パチュリー様、ええっと一体何の術を…?」
「…最新の…降雨術…。」
「あー…、パチュリー様、出来れば古くてもなんでもいいので派手で出来れば烏が好きそうな術をお願いします。」
「…あ…。」
そういえば相手は魔法に対しての興味関心知識のすべてが欠けたブン屋どもだったっけ。
「そういうことなら…そこの射命丸!」
「はい、何でしょう?」
「こんな魔法なら興味あるかしら…ハッ!」
本当につまらない程度の魔法を行使する。土と水、火を使った変換と変化、恐らくは教えればあの白黒の泥棒でさえもひと月でそれなりの成果を見せるであろう。
「創酒・降雨の術」
要するに酒の雨を降らせる。欠点は酒が若いことぐらいなことと一応降雨と酒精の二重魔法であるために割に合わないほどの消費魔力。
けれどとにかく派手で酒好きの烏にはちょうどいい、現に
「あややや、これは…!パチュリーさん是非にお話をいいですか!?」
ほら、釣れた。
―――
――
―
「ほうほう、ではこの素晴らしい魔法は次の宴会の時に大々的に使うと…?」
「そうね。若干味が若いのは咲夜の能力を使えば何とでもなるわ。」
「あややや…、次の異変が起きた時に速報を飾れますね。つきましては…。」
「わかってるわ。他では話さないわ。」
「ありがとうございます!それでは。」
ようやく終わった。なにせ銘柄やら範囲、量、持続時間を事細かに聞いてくるのだ、私としてはこんな初歩的な魔術に対して胸を張って説明することなど何もありはしないというのに…。
「あはは…、お疲れ様です。」
美鈴としても魔法の説明などはできないのでただ空笑いする他ない。
「まぁ、当初の目的であった射命丸をとどめておくという目的は完遂したし…ありがとね。美鈴。」
これは後でお礼をしなくちゃいけないわね…アレでいいかしら?
紅魔館前
紅魔館まで帰ってくると…門前で人形が正座して咲夜に叱られていた。
「はぁ、今度は何をやらかしたの?」
「うー、屋台の出し物って、つい不思議な魅力が有って…。」
「お帰りなさいませ、パチュリー様。今現在、お嬢様にお仕置き中です。」
ああ、なんだかすごくいい笑顔だ…S?
「ただいま戻りまし…なんで正座してるんですかお嬢様?」
「みれーい!!」
あ、美鈴に飛びついて逃げたな。
「お嬢様…まだ反省は…。」
「まあまあ、もう十分反省しましたよね?」
「うん。反省した。」
…何故だろう。子供と叱りつける教育ママと甘やかせるパパにしか見えない。それともう少しレミリアっぽく…はなっているけど、対外用のレミリアっぽく振る舞いなさいよ…。
「反省が終わったのなら丁度いいわ。少しレミリアに話が…」
「うむ、行こうかパチュリー。」
そういって今度は私に抱きついてくる…というか押してくる。
「あ…!まだ話は…。」
「さあ。行くぞパチュリー。」
大図書館
「それで、話とは何だパチュリー?」
「全く、大したことじゃないから移動なんてしなくてよかったのに…。」
「…それで、話とは何だパチュリー?」
「戻ろうなんていわないから涙目にならなくても大丈夫よ。それで話はいたって簡単なことよ。
「ん?
「…実は、あの子の国での呼び方はメイリンと呼ぶらしいわ。今度機会があったら呼んであげて。多分泣いて喜ぶわよ。」
「泣いて喜ぶって大げさな…でもメーリンね覚えておく。」
そう言えば『中国』とか言うあだ名もあったな。
「それと、もう一度、ちゃんと咲夜に謝っておくこと。」
「…うー。」
「謝ること…。」
「し、仕方あるまい。」
少しだけ睨むようにして言い聞かすとすぐに折れた、そのままトコトコと出て行く。
…妹様が姉という訳の分からない立場で美鈴が父親、咲夜が母親…私は従姉妹ぐらいか?
side人形
うー、咲夜さんに会うのが怖い。
いや、でも謝らないと…ん?そもそも僕って今、この館の主だよね?主って一番上の立場の人だよね?
「あら、パチェリー様とのお話は済んだのですか?お嬢様。」
「咲夜、ごめんなさい。」
咲夜さんの姿を見ただけで謝ってしまった。恐らくパチュリーに言われたとか関係なく。
「…くっ、…分かって下されば私からはこれ以上言うことはありませんよ。」(涙目上目遣い!どこでこんな高等技術を)
そう言って右手で私をなでてくれるのはいいんだけれどなぜ左手で鼻を抑えてるの?なんだか朝の着替えと同じ空気が漂っているし…。
「ともかく、食べれなくても今日の夕食には顔を出してくださいね。妹様…もとい姉様も今日は一緒に食べるとおっしゃっているので。」
「分かった。」
夕食まではまだ少し余裕がある…みれ…メーリンにこの呼び方をしてびっくりさせようかな…。
「レ~ミ~リ~ア~!」
「わっ!」
急に後ろから抱きつかれる。この貧にゅ…成長途中な感触は、
「フランお姉さま?」
「えへへ、ちゃんと今日一日の約束は覚えてたみたいねレミリア。」
後ろを向くと天使のような眩しい笑顔(どちらの表現も吸血鬼には合わないが)を浮かべるフランがいた。
「夕食まで遊ぶわよ、レミリア。」
「あ、だったらちょっとだけ門に寄らせて?メーリンにメーリンって呼んでみたいから。」
「え?え!?んー、よくわかんないけどいいよ。どうせ門なんて近いし。」
ふっふっふっ、恐らくフランは知らないな…メーリンと呼ぶと泣いて喜ぶことを!
二人して手をつないで他愛ない雑談をして門までを歩く。流石に最初こそフランの事を怖がっていたけれどこうして話してみるときちんとしたいい子なのだと思う。多分狂気に触れていない時はこうなのだろう。っと玄関扉にまで着いた。
「そしたらにとりがね――」
話しながらドアノブに手を伸ばしかけ
「お姉さま!!」
顔前数センチのところを爪を伸ばしたフランの手が塞ぐ…というか髪の毛何本か爪で千切た。
「フ、フラン?」
狂気に塗れちゃった!?いや、でも顔はかなり真剣な表情だけど?
「お姉さま、咲夜たちのところに戻って!」
「ど、どうしたの?フラン。」
フランは玄関扉をというよりもその先を警戒したまま言う。
「この先から血の匂いと殺気が幾つもする!」
なんとか5月を生き残ることができた…。本当に死ぬかと思いました。休みが二日って…
補足:屋台、完売する=投稿直前まで完売させるべきか一本も売れずに終えるかで悩みました
けぷっ=…ケッシテジッタイケンジャナイヨ。ホントウダヨ?というか可愛らしいゲップ音が思いつかない
今日の天魔ちゃん=変態ストーカー女性烏天狗の扱う天魔の盗撮コーナー(過去粛清回数ダントツナンバーワンのコーナー)
魔法=かなり適当に書きました
S=この作品の咲夜さんは好きな子をいじめて楽しむ小学校男子程度の軽いSです
抱きついてくる=この時は感触と匂いを楽しむ人形さん
メイリンと呼ぶらしい=もちろん嘘です。人形に美鈴と自然に呼ばせるための嘘です。
妹様が姉、美鈴が父親、咲夜が母親、パチュリーが従姉妹=小悪魔?…ペット
次回、だいぶ暇になったので早めに更新します。