side人形
「お待たせ致しました。準備が出来ましたので河城にとりの所まで参りましょう。」
フラン…もといフランお姉様と入れ違いで咲夜が部屋に入ってきた。
「ええ、行きましょう…ああ、後…。」
「わかっています。今日は妹様ではなく姉様ですね。」
流石は咲夜…もしかして盗み見てたとか?…そんなわけない…よね?
道中は例のごとく抱っこ、いや考えてほしい、常におんぶに抱っこ、着替えまで一人でさせてもらえないとなると段々と羞恥心がなくなるというか…結果的に言うとにとりの前まで抱っこで行って、にとりはと言うと此方を二度見した後、黙って爆笑するという高等技術を見せてくれた…くっ。
「いや~、悪かったって吸血鬼、あー電子レンジの修理でしょ?もう済んでるよ。ほい」
そう言って説明をしながら小型の電子レンジを咲夜へと手渡す。そういえば人間は盟友なんだっけか。
「新しく付けた機能は時間停止対応機能と自動充電バッテリー、自爆装置、温度調整機能……。」
「いやまて、色々突っ込みたいが明らかにおかしいものが…。」
「ちなみに自爆装置は半径10kmを無に帰す。」
「ピッ!?」
「にとり…その機能は外してちょうだい。」
「えー…、でも吸血鬼の部屋に付いてるエアコンにもおんなじのが付いてるよ?」
「外しなさい!」
どこをいじったら作動しちゃうの!?気がついたら大爆発ってシャレにならない…。
「ううぅ、男のロマンが…。」
「にとりは女でしょうが…。」
そう言いつつも電子レンジの爆弾はに解体された。
「それで、わざわざ紅魔館の主自ら赴いてくるなんて一体全体なんのようです?」
「用事というほどのものでもない。どちらかというと暇つぶしに近いな。」
ええ、原作キャラに会ってみたかっただけです。
「暇つぶしねぇ…。じゃあ今日やる縁日の手伝いでもしてみる?もしくは吸血鬼の部屋のエアコンの操作ボタンの赤い部分を2秒間押したあとロックボタンを解除してもう一回赤いボタンを押してみて?」
「縁日!?やりたい!!」
またまた子供っぽくなってしまった…どうにも咄嗟に事があると対応に素が出てしまう。
「ボタンの方は無視かい…。それにしても本当に暇なんだね、縁日で河童の手伝いを喜んで引き受けるなんて…。」
「ふん、楽しめそうなことならば積極的に関わる腹積もりでな…。」
祭りだよ!?そんな楽しそうなもの、参加しない理由がない!それに…
「縁日ということは会場は…。」
「うん?何時も通りの博麗神社。」
「よし、それでは行こう!今すぐ行こう!」
ようやく…ようやく主人公に合う時が来た!
「うおう、予想以上の食いつきだね。それじゃあ荷物を運ぶのも手伝ってね…。」
「え?」
ふ…ふふふっ、手伝うと言いつつも僕(レミリアボディ)は無力だ、笑えばいいさ。電子レンジ一つも運べない…。
おかげでまたもや咲夜さん苦労をかけてしまった。うーむ、吸血鬼は鬼と同様の力ではないのか?
ともかく、咲夜さんには後でなにかお礼をしよう。さて、
「くっくっくっ、待たせたな博麗神社よ!!」
荷物(胡瓜5ダース)を持って階段を全速の駆け足であがる…隣を咲夜さんが荷物(重そうな機械)を持ちながら何往復もしてるけど。
「着いた!れいむ~!」
ようやく付いた神社は、その…ボロ…じゃなくて、風格があるというか風情があるというかきっと夏は涼しく冬も涼しであろう素敵な神社だ。
…なんだか悲しくなってきた…レミリアが霊夢を構うのも納得だ。ほうっておくと野垂れ死にしてそうで怖いもん。
「れいむ~!れいむ~?」
いない…。
「あの~。博麗霊夢をお探しで?」
こちらにおずおずと話しかけて来たのは雀のような羽を持った妖怪。
「うむ、霊夢がどこにいるのか知っているのか?」
「ええっと…残念ながら博麗の巫女はどこかへ出かけているらしいですよ?」
「そ…んな…。」
ばな…馬鹿な…、ようやく会えると思ったのに…。
「ふ、いいさ。こうなったら縁日の屋台を楽しんでくれるわ!」
そう、霊夢に会うのはあくまでもついでであり本命は縁日である。
「礼を言うぞ、鳥…くん?」
「は、はぁ。どういたしまして。ちなみに夜雀です。」
本当は鳥さんとでも呼びたかったがレミリアはそう呼ばないんだろうなぁ…。ん?
「夜雀?」
「は、はい!普段は八目鰻の屋台を営んでおります。夜雀のミスティア・ローレライと申します。」
なんと!全く気が付かなかったが原作キャラ。
「そうか。私は…レミリア・スカーレット、紅魔館の主を勤めている。」
やっぱりというか何というか…名前が名乗りづらいな。
「よ、よろしくお願いします。」
新しく知り合いができたところで荷運びに戻ったところ、全て咲夜さんが運び終わっていました…。
「ま、まだだ!屋台でうまいこと販売できれば汚名挽回を…!」
(お嬢様…やはり寺子屋に通わせておいたほうが…?)
「あ、ちなみに商品は冷やし胡瓜と発明品ね。」
「「!?」」
「あの…発明品は…電子レンジとかそういうものだよね?」
声が震えているのは気のせいではないだろう。電子レンジならばまだ可能性もある…バザー的な?
「ん?尻子玉取り機とか胡瓜育成キットとかかなぁ。」
終わった――。
「それだけ…?」
「あとは飲み物として――」
飲み物ぐらいは――
「胡瓜味の炭酸水!」
……ペ〇シにそんな味あったね。
「ふっふっふ、これで屋台で売りまくって儲けるぞ~。」
ああ、これって売れるわけが…。
「大丈夫!何せ世にも珍しい吸血鬼が世界最高の食物、きゅうりを売るんだよ?きっと次回タイトルが『屋台、完売する』になるぐらい売れるよ!」
もうわけがわからないよ。
さあ、もうすぐ縁日開始だ、張り切っていこー!
「咲夜…売れると思う?」
「……。私からは言うのが憚れます。」
そうですか…。
おまけ
バカルテットの推理
「だから!本当だって!すっごい威厳とかあって思わず敬語使っちゃったもん!」
ミスティはいつもの遊び仲間たちにレミリアに会った時の事を力説していた。
「えー、あれってそんなにすごい人か?この前、誘われて門番の人と遊んでたときは急な夕立に動けなくなって救助されてたけど。」
「うーん…。でも、すごかったんだよ!『私は…レミリア・スカーレット、紅魔館の主を勤めている。』とか言って、溜めて一拍置くあたりがすごく迫力あると思わなない?」
「ふふん、あたいは分かったわ。きっと偽物なのよ!」
「偽物なのか?」
「きっとリグルが見たほうが偽物ね。あんな家に住んでる人が雨で動けなくなるっておかしいもん。」
―――
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―
(あ…危な!ニアミスだな…。うわ…なにこれ?紫様に報告を?いや、そんなことしたら橙の遊び仲間が色々とまずいし…。ああっもう!なんて推理を噛ましてくれるんだ君たちは…!人形ってバレるのはまずいのに!!)
たまたま近くを通りかかった八雲藍は一日悩んで結局支障はないと判断、報告するのをやめたという。
という訳でにとり登場、完全な余談ですが作者の使ってる本棚とバイク用の工具入れはニトリ製です。そして、にとりを出したことで今回の異変に必要な人(?)たちは出揃いました。遊びで幽谷響子なんかは出したかったですが…。ともかく、後はもうひとりの主人公を出すだけ…。
補足:ミスティア・ローレライ=夜雀、他人を歌で惑わせ鳥目にする。
汚名挽回=名誉返上
尻子玉=かっぱの好物、人についている。取られると死ぬ。
胡瓜味の炭酸水=個人的には今出ているグ〇ーンシャワーという草の味がする炭酸水といい勝負
次回タイトル=決めあぐねています
バカルテット=リグル・ナイトバグ、ミスティア・ローレライ、ルーミア、チルノの四人組