偽物吸血鬼のお嬢様   作:温いうどん

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仕事終わりに急いで執筆!
花筏さまアンケートへの回答ありがとございます。
ご意見を参考にさせていただきます。
兎も角、現状維持で逝かせていただきます。


神様、覚悟する

side諏訪子

 

「けろけろけろ、随分と面白いことになっているみたいだね神奈子?」

「ああ、恐らくは誤った選択をすれば私たちがどのようになるかのかという牽制行為…と見るのが妥当か…。」

偶然にもなぜか私たちのところだけに紅魔館の主が人形と挿げ替えられているという情報が舞い込んできた。まだ、現れるという異変ぐらいしか起こしていないが不審な動きをしている私たち。

そんな私たちに自分がどのような行動をとるものなのかを見せつける…なるほど、確かに早苗という弱点足りうる者がいる時点ではこの方法は有効だ。

「ともなれば…例えば、この歪なお人形さんが本来の筋書きから外れてしまう。もしくは何か行動する前に朽ちてしまったりしたら面白くない?」

「直接的で短絡的な思考だな、けどできる手段が無いんじゃそのぐらいしか動く手がないか…。」

「流石にまだ八咫烏の適任者も見つかりそうにないしね。ま、一首の意趣返しだよ。けろけろけろ。」

まずは早苗と接触させる。ふふふ、面白くなってきたスキマ妖怪との化かし合い…なかなかにそそる。

 

少女待機中…

 

けろ!?やっと来たか!暇つぶし…もとい今回の要!早苗に抱っこされたお人形は…寝てるし…。

あーうー、いいなぁ最近だと私がごねてもしてくれないんだよね…抱っこ。あ!しかもその左手、完全に早苗の胸鷲掴みしてるでしょ!もう!私だって鷲掴みは数える程しかないのに!

…けろけろ、どうせ壊すのだし少し意地悪してやる。

 

 

紅魔館のメイドを含めた談笑(神奈子は情報収集だと張り切っていたが)を一人抜け出し、人形の眠る早苗の部屋に入る。ふん、改めて見ると本当に歪な魂だね、見ているだけで哀れに思えてくるよ。

これもあのスキマ妖怪の仕業だとするとこの人形は―――。

まさしく悪魔の所業で悪魔に仕立て上げたといったところ…。

「…んっ…。」

人形がゆっくりと目を覚ます。

「やあ、お人形さん、目を覚ました?全く幸せ者だね。早苗の柔らかい胸の中で昼寝をかますなんて…。私だって数えるぐらいしかやってもらったことがないんだからね!」

取り敢えず意地悪と言いたいことを両方難癖つける。少し訝しむ様にして言葉を返してくる。

「私の事を人形と呼ぶのは皮肉故か?それとも賞賛ゆえか?如何によって私も対応を変えねばなるまい。」

今現在の己の状況と先ほどの言葉、これを踏まえた上で返してきたことを考えれば賞賛に値する。

何せ、神様を相手に常のレミリアとしてならば売られた喧嘩は買うだろうし、戦闘能力のない人形の面を色濃く出すならばそのまま甘んじて皮肉としか取れない言葉を受け入れるだろう。

――ひよって、ただのつまらない人形ならば即座にバラして遊ぶつもりだったんだけどな…。

人形としての答えでありながらひるまずに食ってかかってくるとは想定外。

…人形ではなくレミリアのふりをするその魂には興味が出てきたよ、けろけろけろ。

「けろけろけろ、そう目くじら立てることはないよ?寧ろ、尊敬するね。損な役割(レミリアのふり)を引き受けさせられて鳥かごの中(幻想郷)で右往左往する。なかなかに滑稽じゃないか、私にはとても出来ないね。」

これにはどう答える、お人形さん?今度はあからさまな挑発、使い捨ての人形の中に魂を入れられてなお、道化の如く動くお前には耐え難い言葉のはず…。

「他人からどのように滑稽だとしても私にとってはその滑稽だと言われるような生き方も意味のある大切なものだ。そうでなければ私は宙に浮く風船のように無意味な時を過ごす塊だっただろう、咲夜に会い美鈴(みれい)に会いパチュリーに会い、今日は早苗やお前と出会えた…これもお前の言う『そんな役割』に着いたおかげだ。」

…こいつ…、ただ魂だけの存在で十王の裁判を待つよりも色々な人たちと出会う今の方が楽しいから損な役割でも受け入れると?

それにこんな嫌味を言ってくる私との出会いも大事なこと?

「く…はっはっはっ、わかったよ。私の負け、全面的に謝罪するよ。君は踊らされる操り人形なんかじゃない、立派な一つの存在、私の友人だ。仲良くしよう。」

なんて気分にさせるんだ!よりによって祟り神に対していう言葉じゃないだろうに。

良いだろう、君はもう私の友人でありひとつの生命体だ。

これからは友として見守ろう…。そうして私は一人の友人と握手を交わした。

 

 

一緒に馬鹿な話をして一緒に怒られ、そのあともゲームやら夕食を共にした後、友とその保護者兼メイドは夕方には帰った。

「それで…、良かったのか?」

神奈子が聞いてくる。なにを…、というのは野暮だろう。

「ああ、いいのさ。いざとなったら…覚悟を決めるさ。」

そう、あの友は八雲の作った使い捨ての人形体――八雲はさぞや有効活用しようと画作しているだろう。

その時は覚悟する。

 

 

side神奈子

 

「いざとなったら覚悟を決める…ねぇ。」

一人、月見酒をしながら夕方の諏訪子の言葉を思い出す。

あいつに友達なんて出来た試しはないからなぁ。

さぞや大事にしようとするだろう…。

「その『覚悟』がやばい方の『覚悟』でなければいいんだがな…。」

本来、祟り神のあいつに友ができたことを喜ばなければいけないはずなのに…その先に待つことを考えると酒が苦い。

「ふん、神とは言え、ままならぬものだな…。」

初めての友…できることなら幸あらんことを…。




ちなみに神奈子は文字数稼ぎ!

補足:歪な魂=おそらく後、6~9話進むとわかります
   バラして遊ぶ=主人公の地味な危機
   十王の裁判=地獄裁判、鬼灯の冷徹面白いです
   初めての友=ケロちゃんは性格的には友達多そうだけど性質的にできないかな…と思ったので

次回更新日時は…頑張ります。

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