まさかガンダム転生でジーンになると思わなんだ 作:ワッタ~軍曹
ほんの少し長めです。
おい、コイツ今なんて言いやがった???
『我々はこれを脅威とし、連邦の基地を叩く』
だとぉぉぉぉぉぉお!!!?
ふざけるな!
今までの!!
俺の努力は!!!
一体!!!!
何だったんだよぉ!!!!!
『聞こえているのか、ジーン伍長』
「……はい、聞こえています」
『デニム曹長も大丈夫か?』
「はい、大丈夫です」
『スレンダー軍曹は?』
「聞こえています」
どうしよう、上官命令じゃ断る訳にはいかない。ランバ・ラルみたいに上官の命令を突っぱねる度胸は無い。しかし、せっかく回避した死亡フラグをマザコン野郎に修正されては困る。修正するのは8年後のニュータイプ少年にお願いします。
『ジーン伍長とデニム曹長はそのまま敵基地を破壊。スレンダー軍曹は退路の確保、及びできる限りの撮影を頼む』
「はっ」「了解」
時間が無い。どうすれば死亡フラグをへし折る事が出来るのか、どうやれば戦闘せずに済むのか……
『ジーン伍長、聞こえているのか!』
「……」
「おいジーン、返事をしろ!」
待てよ、へし折るのが無理なら……
「少佐、一つ提案があるのですが……」
『なんだ?言ってみろ』
生か死か。一か八かの博打に出る
「少佐、連邦のMSを奪いませんか?」
一瞬、場の空気が凍る。
MSのパーツが盗めたら御の字だが、逆に言えばそれが関の山である。ましてやMSごと盗むのはいくら無能な連邦軍とはいえ許してはくれないだろう。でも電撃戦ならもしやすると……
「じ、ジーン!ふざけた事を言うんじゃ━━」
『ほう、どうやって盗むというのかね?』
「しょ、少佐?」
ここで一気に攻勢に出る
「少佐もこちらに来て連邦の基地を叩くのですよ。その間に我々がMSを運搬します」
「正気かジーン!そんな作戦少佐が許す訳が」
『話を続けてくれ、やるかどうかは後で決める』
「少佐ぁ……」
情けない声を出す曹長を無視して話を続ける
「少佐がこちらへ来るまで我々は基地を叩きます。少佐が来たら赤い彗星として存分に暴れまわってる間に我々がMSの強奪をして撤退します。ファルメルにもベイブリッジ付近を攻撃して撹乱して貰えるとありがたいです」
『この私をオトリとして使うとはな……』
「じ、ジーン、貴様……」
曹長は怒りというより焦っている。少佐の作戦に伍長が喰って掛かってるんだからそりゃそうだ。
『…………』
少しの間沈黙が続く。私は最後の一押しをする。
「少佐、先ほど言ったじゃないですか。『連邦のMSの一機でも持ち帰ったらジオン十字勲章ものなのは確実だ。二階級特進も夢ではないぞ?』と」
『あれは景気づけで……』
「それに少佐、連邦のMSに乗ってみませんか?鹵獲すればソロモンに着くまで存分に楽しめますよ?」
『……まさか君がここまでのたらし屋だとは思わなかった。負けたよ。実は君たちが帰還したら私もそちらへ偵察に行く所だったから、その手間が省けたと思えばいい。』
「提案の採用、ありがとうございます!」
「……」
曹長とスレンダーの返事がない。まるでしかばねのようだ……生きているのか?
『よし、善は急げだ。ドレン、ここからMSで全速力でサイド7まで行ったら何分掛かる?』
『少佐のMSなら三十分あれば』
『よし、各員時間合わせ』
時計を見る。時刻は午前8時43分だ。
『時刻は0843で合っているか?』
「「「合ってます」」」
『グリニッジ標準時間0850にて敵基地襲撃、及び敵MSの鹵獲作戦を開始する。襲撃は先の通り、ジーンとデニムにやって貰う。スレンダーも侵入口の確保を頼む。私が来たら、二人はMSの鹵獲を頼む。この作戦はもしかすると、歴史の1ページに刻まれる戦いになるかもしれん。作戦の成功を祈る。ジークジオン。』
「「「ジークジオン!」」」
さて、ここで一人会議。
まず、あの鬼畜天パでお馴染みのアムロ君の所在だけど、フラウと一緒にエレカーに乗って避難していたからあの家には居ない。細かな違いはあれど、基本的にはアニメ版基準で進んでいるから多分、ガンダムの研究データとか沢山あるはずだけど基地から居住区まで意外と距離があるので、
「あーやっべーきょじゅうくにまちがえてきちゃったーてへ♥️」なんて事は出来ない。
次に盗むMSだが、これはもう"アレ"しかない。モチのロン、ガンダムだ。しかし結局ガンダムの二号機は盗まれる運命なのね……
しかし本当にどうしよう。俺達が暴れまわったらアムロ含むコロニーの住民達がホワイトベースに向けて走り出すけど、そいつらを見境なくザクマシンガンをぶっぱなすってのは心苦しい。だって、記憶が正しいのなら前世は普通の会社員だったはず。戦闘経験は勿論、"人殺し"なぞやった事なんて無い。論理的に、進んで非人道的行為はしたくない。でも基地襲撃も沢山の連邦兵士を殺す事になるはずなので結局変わりはないのだが……
うん、こういう時は深く考えない。もうどうしようも無い所まで来ちゃったのだから。かの超A級スナイパーも「人を殺すと考えるのでは無く、事を済ませると考えろ」って感じの事を言っていたはず。俺はもう、明日へ向かって生きるしかないのだ。悲しいけどコレ、戦争なのよね……
「ジーン聞こえるか?」
「はい、何でしょう?」
「これから作戦の役割を決める」
「はい」
「ジーンはMSがある倉庫を攻撃してくれ。私はベイブリッジ付近を攻撃して撹乱させる。そして少佐のMSが来たらめぼしいMSを二人で奪取してスレンダーの元まで行き、我々は撤退する。いいな?」
「はい曹長」
よし、これならガンダムの元へ楽に行けそうだ。
「弾はあるか?」
「はい、1パレット分キッチリあります」
「MSの状態は?」
「オールグリーンであります」
「よしあと一分だ、気を引き締めろ」
「了解!」
作戦時間まで1分を切る
二人に緊張がはしる
50…………40…………30………
安全装置を解除し、攻撃準備をする
15…………10…………
MSを連邦の基地へ照準を向ける
3……2……1……
バシュン!
ドカーン! バーン! チュドーン!
ガンキャノンの上半身が横たわる。ガンタンクの上半身が勢い良く転げ落ちる。爆発と共に燃え上がる。♪燃えあがれーなんだこれ?結構……
じゃないか。よっしゃ、ぶっ壊し回ろう。
「おぉ、近いぞ」「隕石じゃないの?」
シェルターに避難していた人達がどよめく。そこに一人の少年が居た。その少年は勘づく。
「こ、この振動の伝わり方は、爆発だ」
「じ、ジオンだ。ジオンの攻撃だ」
ここは危ない。このままではそのうち爆発に巻き込まれて自分たちは死ぬ。ふと自分の父親が軍人なのを思いだし、もしかしたらと考えて立ち上がる。
「き、君。勝手にここを出ては皆の迷惑に……」
「父が軍属です。こんな待避カプセルじゃ持ちませんから今日入港した戦艦に乗せてもらうように、頼んで来ます」
中年の男はやめるよう言ったが、その少年は扉を閉めてくれと言い残し待避カプセルを後にした。
作戦開始から10分経過
シャア少佐到着まであと20分
作戦開始から10分が経過した。え?10分?まだ10分しか経ってないの!?結構ボコボコにしたよ?有線誘導ミサイルさえ当たらなければ、守備隊の装甲車なんてへのへのカッパだから存分に暴れまわったけど、まだそんなもんなのか。
「よし、そろそろベイブリッジに行く。何かあったら直ぐ連絡をしろ」
「了解であります」
曹長のザクがベイブリッジ付近まで飛んでいった。よし、俺も基地破壊に精を出しますか。しかし避難カプセルってどこにあるんだろうか?機動戦士ガンダム一年戦争をもう少しプレイしておくべきだったな。
少年が待避カプセルを出ると、すぐ左にザクが居た。ジオンのMSだ、と騒ぎだす避難民たち。
「こ、これがジオンのザクか……」
テレビでは観たことがあったけど、まさか生で見るとは思わなかった。思ったよりも大きくて少しビックリした。いや、そうじゃない。親父を探さないと。乗ってきたエレカーで探しに行く。出発して直ぐに軍のエレカーとすれ違ったので乗っていた軍人に親父の居場所を聞き出す。
「貴様、民間人は待避カプセルに入ってろ!」
「技術士官のテム・レイを探しているんです。どこに居るんですか?」
「船じゃないのか?」
そうか船か、そう言う軍人の言うとおり戦艦に行こうとしたが、その矢先に有線ミサイルが飛んで来る。咄嗟に地面に突っ伏し顔を伏せる。物凄い爆発音と熱風が伝わってきた。そしてそれがおさまり、ゆっくりと軍人が居た場所に目を向けると、そこは廃墟と化していた。し、死んでる……さっき質問に答えてくれた軍人の姿はそこには居なかった。まずい、早く親父の居る戦艦に行かないと。立ち上がり、逃げようとした時にふと、足元に落ちていた本に気づいた。それを手に取り読んでみる。これは……ガンダムの極秘資料だ。間違いない、親父の部屋で見たものとほぼ同じだ。やっぱり親父は連邦のMSを作っていたんだ。少年はしばらく父親を探すのを忘れてその場で極秘資料を読み漁っていた。
作戦開始から20分経過
シャア少佐到着まであと10分
いやぁ、かなりボコボコにしましたよ?チョロチョロ出てくる守備隊を殲滅しながらタンクやキャノンをこれでもか、ってダメージ喰らわせましたけど、一体ガンダムのパーツが入ってる倉庫ってどこなんだ?とにかく、しらみ潰しに倉庫をぶっ壊しているけど、何か感触がイマイチなんだよなぁ。ガンダム二号機は無傷で持って帰るので何もしていないけど、早く少佐が来ないとあの鬼畜天パが乗り込んでしまう。その可能性だってまだ大いにある。早く来てくれないかなぁ。そんな事を思いながら有線ミサイルを撃ってくる装甲車に鉛弾をお返しする。釣りは要らない、取っときな。
「早く武器を!ホワイトベース、コアファイター発進出来ませんか!」
「出来る訳無いだろ!サイド側の壁はザクの攻撃でこれ以上開かないんだ!民間人が通るので精一杯だ!」
ホワイトベースの艦長、パオロ・カシアスは内心焦っていたが、それを表立っては出さずに淡々と現状確認をする。
「戦闘員は全員出たのか?」
「はっ!パイロットもガンダム収用に下ろさせました」
「……サイドの中から攻撃とはな」
ジオンの船に付けられていたのは分かっていたが、まさかコロニー内で戦闘を行うとは。頭を痛める老兵だが、休んでる暇は無い。ここで指示を出して腰を据えなければ、艦長失格だ。今はパイロットやガンダムが無事なのを祈るしかない。
作戦開始から30分
シャア少佐到着予定時刻
『よし、もう少しで着く。スレンダー、準備をしてくれ』
「了解」
『デニムとジーンも警戒を怠るなよ』
「了解です」「大丈夫です」
やっと来てくれた。思わず安堵の息をつく。ガンダムが無傷でてに入る。ジオン十字勲章は確定。あのガルマ・ザビでさえ、大部隊を率いても手に入れられなかったあの、ガンダムが、ついに、我々の手に入るのだ!曹長もベイブリッジの攻撃を終えてこちらに合流した。
「よし、少佐はもうすぐでこっちに来る。それまで気を抜くんじゃないぞ」
「分かってますって。でも守備隊はもう殲滅したといっても━━」
ズガガガガガガガガ
へあっ?!まだ守備隊が居たのか!?にしても攻撃が装甲車のマシンガンとは少し違う。あの方角はガンダムしか居ないはず……
ガンダムしか……
ガンダム……
ガンダム……しか……
♪~(第1話アイチャッチの音)
ジーン(転生)はフラグから逃げた!
しかし、ガンダムに道をふさがれた!