まさかガンダム転生でジーンになると思わなんだ   作:ワッタ~軍曹

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大変お待たせしました。
週一投稿が遥か遠くの昔話みたいに感じます…アノコロハワカカッタナ。


第38話 帰郷

10月8日 AM7:32 太平洋上空

 

 おはようございます。あの後は特にスクランブルも無く、よく眠れました。ジーン(転生)です。当ザンジバルは日付変更線を越えた所を航行中でございます。

 聞いた噂によると、この前の嵐でザンジバルの機器が不調になったらしく、一旦整備も兼ねて近場の基地に降りるとの事。ハワイは遠すぎるし北京辺りになるのかな?あれ?北京って連邦に奪還されたんだっけ?確かまだだったような気がするけど残るとしたら…ワンチャン日本も有り得る?なにはともあれ、情報が欲しいのでブリッジへ行くことにした。

 ブリッジへ行くとお目当てにしていたシャアは居なかった。どうやら朝ごはんを自室で食べているらしい。オペレーターが教えてくれた。ついでにこの人に件の噂を聞いてみた。

 

「あぁ、それでしたら本当ですよ。」

「で、どこに泊まるん?」

「消極法でニホンに行く予定です。アジアはどこもかしも戦線が不安定で泥沼化してるらしいですし、比較的安定しているのがここみたいなので。あとは一番近い基地がここなので」

 

 

 なるほど、ニホンか。……日本に行くのか。懐かしい響きだ。

 

 

 前世での名前を思い出せない俺でも、日本の事だけはハッキリと覚えている。俺の住んでいた所は田舎だったから水も空気も飯も旨かった。梅雨がちょっと嫌だけど基本的に暮らしやすい気候だった。いやはや、今世でも生まれ故郷に行けるとは…徳は積むものですな。(何処で積んだんだ)

 

数時間後、ザンジバルが基地の滑走路一杯に着陸する。下船許可も出たので基地内をうろちょろすることにした。ドアの前で待ち、タラップの接続がなされると機密ドアが開いた。開いた直後、ふわっ、と香る醤油の匂いに思わず

 

「あゝ、日本に帰ってきたんたな…」

 

と思わず呟いてしまった。醤油の匂いという事は関東だな。信じられないかもしれないが、関東はホントに醤油の匂いがするのだ。

 その後、俺の後に降りてくる人を何となく数えてみたが、一日居る訳でもないので船からあまり人は降りなかった。2〜30人といったところか。それにここの基地は補給が行き届いていないので、ロクな装備がないらしい。ザンジバルの発着が出来るだけマシ、という訳だ。

 しかしここは何処の基地なんだ?関東の航空基地なら入間らへんか?にしては遠くにある団地のような建物は何となくアメリカンな感じがするし…

 

答えは直ぐに判った。何故ならボロボロの廃屋に掛けられた看板が教えてくれたからだ。

 

 

「アメリカ軍 横田基地」

 

 

( ゚д゚)ハッ!「横田やんけ!!」

 

 私は今、東京都福生市にある旧米軍基地に居る。

宇宙世紀における米軍基地は役目を果たし、日本にある米軍基地は全て日本に返還されていた。入間にあるジョンソンタウンみたく、住宅地にする計画が何回かあったらしいが全部頓挫したという。噂によると計画が頓挫したのは地下に"核爆弾"が眠っているからだとか…

 といった噂はさておき、廃基地と化していたが、ジオン軍が地球侵攻したときに占領したのがこの基地。整備されてないから楽に手に入ったが、連邦軍の急襲や補給不足によりこのようなボロボロの状態が続いているらしい。

 

 基地内をぶらぶらしてみたが、キチンと整備されているのが通信指令室とMSハンガー位だった。兵宿舎等の施設はボロいまんまだった。足場が組まれているから、改修する気はあるみたいだが。やや遠くの方に黒くて平べったい建物が見えた。多分だが、ホームセンターのジ○イフル本田じゃなかろうか?宇宙世紀に入っても営業していたのかな…

 

 

 

 ぶらぶらと歩いていたらいつの間にか出入り口付近まで来ていた。ボロボロの守衛所に一人の老婆が守衛に話しかけていた。

 

「おやあんた、あの船から降りてきたのかい?」

 

 見るからに昭和のお婆ちゃんみたいなルックスの御婦人が声を掛けてきた。こう見えても令和産まれなのかなぁ〜と思いつつ、

 

「いやぁ、職務上ヒミツなんで…」

「んなはは!こんな辺鄙な所にジオンの船がやって来たんさ。オメェは言わねぇだろが、オバちゃん、お見通しだかんね!」

「ご、ご想像にお任せします…」

 

どうやら宇宙世紀になってもオバちゃんパワーは健在のようだ。

 

「どうだい、何か買ってかねか?」

「何があるん?」

 

 俺が声を掛けると「待ってました!」と言わんばかりに顔をニヤつかせるお婆ちゃん。何だろう、一瞬だけセキヤさんの顔が浮かんだ。俺たちと守衛以外周りに居ないのに、凄く警戒するように周りをキョロキョロしながら俺の耳元で、

 

「とっておきの"上物"手に入ったんだよぉ、買わねが?」

 

 何の上物だろうか?お酒?エロ本?気になるので更に聞くと、オバはたった三文字で返してきた。

 

 

 

「 ふ な わ 」

 

 

 

 

…ふなわ?フナワ?ふなわ、フナワ、舟和…あっ舟和*1か!

 

 

 

「もしかして…"イモ"?」

 

こう聞いたらお婆ちゃんは縦に3回程頷いた。

 

「で、いくらなの?」

「日本円なら嬉しいけど、ドル払いもOKよ」

「じゃあ、ドルで」

「それなら600ドルだね」

「なるほど600ドル…って高っか!!」

 

1ドル100円の脳死計算なら6万円だぞ!ボッタクリにも程があるだろ!

 

「日本円なら2万円だけどね。為替の手数料が高いからドル払いは3倍よ」

 

 日本円は持っていないが、幸いにも我らジオン兵の給料はドル払いである。理由は単純、ジオンが沢山ドルを持ってるからだ。理由について話すとちょっくら話が長くなるが、勘弁してくれ。

 

 話は宇宙世紀初頭に遡る。ジオン公国の面影がまだない頃、重工業コロニーとして役目を与えられたサイド3は、地球に機械類を卸して外貨を得ていた。その外貨がドルだと言うわけだ。最初期に「やべぇ、鉱物資源取れなくて外貨獲得出来んわ」ってなって一時期通貨危機に陥ったらしいけど、その後何とか資源小惑星を見つけられて事なきを得た。その教訓からか重工業コロニーとして積極的に地球と取引を行い、少しでも地球との格差を経済の力で補おうとしていた。

 ジオン公国として独立を宣言した際、色々と制裁として地球資源(水、空気、食料等)の値上げ、卸している機械類の関税の増税等経済的な制裁を与えられた。その中にはMSの動力源である熱核融合炉に必要なヘリウム3が含まれた為、半官半民企業の木星旅団が誕生した。資源を獲得でき、更には連邦に渡す金が少なくて済むので重宝したみたいだ。

 そもそもジオン公国を制裁するならドルでの取引を止めたりすれば良いんじゃないか、と思うがそうは問屋が卸さない。一度廻り始めた経済という名の歯車を止めるとなるとジオンだけではなく、地球連邦にもダメージが行く。更に言うと宇宙世紀でもドルは地球でのメイン通貨とされていて、制裁をすると今度は地球連邦が、というか地球全体が通貨危機に陥る事になる。実を言うと政府は通貨を統一する事も視野に入れていたが、通貨の方はあまり手を加えてなかった。理由は上記のソレだからだ。なので今でも日本の「円」やEU圏の「ユーロ」もサブ通貨として(住んでる国ではメインとして)流通している。

 

…とまぁ、上記の複雑な経済事情から兵士への給料はドル払いになってる。予想外の地球侵攻もドルのお陰で兵士の食料から何まで、占領地政策もドルのお陰で上手く立ち回れていた。

 

「分かったよ、600ドルで買うよ」

「あいよ」

 

 渋々と給料の一部を渡し、高っっかい芋羊羹を手に入れた。これは、アレだな。食いたいのも山々だけど、"もしも"の時の保険として取っておこう。山吹色のお菓子って訳だ。日本人の血が入ってるあの人なら多分好きだろう。

 そろそろ帰ろうとUターンした直後、けたたましい音でサイレンがなった。スクランブル警報、すなわち敵襲である。

 畜生め、ザンジバルが来たのを感づかれたか?ともかく急いでザンジバルへ戻る。そうしたら丁度良く見回り中のジープと出会い乗せてってくれた。

 

「こりゃアレだな、例の奴だな」

 

ジープの運転手が呟く。

 

「例の奴って何スカ?」

「この基地に何かしら来ると嗅ぎつけてるく連邦軍さ。多分いつもの北東方面から来る航空部隊だろうよ。今日も今日とて強行偵察か」

 

こっから北東方面か…多分だけど、入間航空基地からか?あそこは連邦の基地なんだな。てか、メッチャ近くないか?そんな離れてないだろうよ、入間と横田。多分10キロぐらいの距離だぜ?

 色々と考えている内にザンジバルの横に着いた。降りようとしたらツナギを着た整備兵に引き止められた。

 

「あんた確かザンジバルに乗ってきたMSパイロットだろ?すまないがウチのザクに乗ってくれないか。アイツまた腹下しやがって…」

「何だって!あのヘボ!またこんな時に…!」

 

 どうやらここのMSパイロットは常にポンポンがペインらしい。緊急事態なので承諾し、ポンポンペイン野郎のザクに機乗した。搭乗したは良いがまさか武器がマゼラトップ砲とはな…

 

「ザクマシンガンは無いのか?対空性能ならそっちが上だろ?」

「マシンガンは補給が入らなくて無い」

「…ザクバズーカも?」

「当たり前だ、じゃなきゃあんなもん使う訳ねぇよ。幸い4発とも弾は残ってるから、外れても良いから景気良くぶっ放してくれ」

 

極東の補給事情を垣間見た。何だか泣きそう。一般兵転生ならA−12部隊は大当たり…なのかな?

 

「了解、落としても構わないのだろう?」

「はは、落とせるならね」

 

 準備が整いザクを動かした。MSハンガーから外に出て分かった事がある。

 

「重っっっも!」

 

 前に乗ってた魔改造ザクより動きが重い。マゼラトップ砲は取り回しがし辛い上に弾数が4発しか無い。武器としては正直(威力以外は)ザクバズーカ以下だ。でもこういった補給がままならない部隊にとっては貴重な戦力だという。泣けるぜ。

 俺は敵が来るであろう方角に砲を向け、射角を取る。20度が限界らしい。設定を変えて45度ぐらいまで上げたかったが、連ジDXのマゼラトップ砲は撃った後の反動があった事を思い出したのでヤメた。でも絶対角度足りないだろ、コレ。

 あれこれ考えてる内に航空機を捉えた。TINコッド3機と…ディッシュ1機か。正にTHE強行偵察って感じだな。俺はすぐさま、ザクのコンピューターに攻撃が当たるタイミングを計算させた。エンターを押すと、すぐに[ERROR]の文字が出た。どう足掻いても当たらないらしい。デスヨネー。まぁとにかくぶっ放す!

 景気良くぶっ放したマゼラトップ砲は全弾、こちらに向かって来る航空部隊の遥か真下を通過した。「景気良くぶっ放してくれ」と言われたが、補給がロクに来ない基地の貴重な弾薬を使って良かったのだろうか?ザンジバルも機銃で応戦したが、サーッと旧横田基地を横断して去っていってしまった。はー終わった終わった、帰ろ。

 

 

 

 強行偵察の事もあり、早急に修理を終わらせて横田基地から旅立った。幸いにも不調は軽かった。昨日は快適な空の旅だったので今回のスクランブルはちょっとした準備運動にはなったかな?良い感じのお土産も買えたし、久しぶりの日本で気分は上々だ。筋トレして一汗掻いてから昼寝でもしようかな。

 

 思いもよらぬ日本への帰郷で気分も調子も上向きになったジーン(転生)であった。

 

 

 

 

 

なお上向きになった気分と調子は、日本を抜けるまでちょっかいを出してきた連邦軍航空部隊の皆さんのお陰で地の底まで落ちた。

*1
舟和とは、東京都浅草に構える創業1902年の和菓子屋。




某オークションサイトにて、HobbyJAPANのガンダムRPGを手に入れました。データは若干古いけど、資料としてめちゃくちゃ役に立つね。ついでにキャラメイクしてみたんだけど

運動10反応6体力7知性8精神7成長9(数字が低い方が良い)

になって「攻撃はあんまり当たらないけど逃げ足だけは異様に早い」タイプになって「まんまジーン(転生)やんw」って一人で笑ってました。

ガルマの暗殺を

  • 阻止すべき(生存IFルート)
  • 見逃すべき(死亡原作ルート)

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