まさかガンダム転生でジーンになると思わなんだ   作:ワッタ~軍曹

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例のワクチンの接種がやっと決まって一安心した作者です。強い副作用出なきゃいいけど……

ガルマ暗殺の一日後の話です。どうぞ。


第35話 キャリフォルニアベースの内情

「こてんぱんにやられましたねぇ」

「す、スミマセン…」

 

MS格納庫でジーン(転生)とセキヤ技術少佐が話していた。ここはキャリフォルニアベースの本拠地「サンフランシスコ基地」。このサンフランシスコ基地は北米ジオンの本拠地で、その周りをいくつもの中小基地で囲んである地帯の総称が「キャリフォルニアベース」である。

 

「直せますかね?」

「直せますよ。直せますけど……」

 

濁った言い方に気になったが、とりあえず聞いてみる。

 

「一週間ぐらい後になりますかねぇ……」

「そんなに時間が掛かるんですか!?」

「あ、いえ、修理自体は一日あれば、なんですけど……少しだけ話が長くなっても?」

 

俺は無言で頷く。

 

「まず、ジーンさんのMSは試作機なのはご存知ですよね?」

 

確かにあのザクは"Y"MSだから試作機だ。

 

「この試作機MSはビームライフルの運用を実戦でデータを取って評価をする。ここまではいいですね?」

 

コクコク

 

「その評価の対象に"中破以上の損害が出たら戦闘データを作成し、評価をする事"がドズル中将から指示されているのです」

 

 

 

……いや、そんなの聞いてないんだけど。

 

「あぁ!いやいや!これは搭乗者には言わないようにしていましたので……もし、この事を知っていたらジーンさん、貴方ならどうしますか?」

「多分、慎重に戦うと思います」

「それだと思うような実戦データが取れませんよね?」

 

コクコ…?

 

「?でも、そんなにこのMSの運用データが必要なんですか?」

「…オフレコでお願いいたしますよ?」

 

あっ、はい。

 

「私はジーンさんが持って帰ったビームライフルを撃ちたくて、必死に解析して、何とかファルメルからエネルギー供給を行って試射を行いました。その時、近くを漂ったいたサラミス級を的にして、試射をしたのですが…その威力に度肝を抜かれまして!『これは我が軍に必要な物だ!!!』と、鼻血を大量に吹き出しながら思いまして!」

 

へぇ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

へ?もしや過労でベッドに寝てた横でアヘアヘ言いながら鼻血を出していたの、セキヤさんだったの!?

 

 

 

 

 

「何とか無理やり、言い訳に近い理由をドズル中将に並べて試作機への改造を許可してもらったのですが……」

「その条件に例のアレが含まれた。って事ですか?」

「その通りです」

 

あのMSにそんな経緯があったのか……

でも次に乗るMSどうするんだ?基本的にパイロット一人につき、一機支給が原則だし。

 

「あ、でも安心してください。次に乗るMSの手配は済んでいますから……」

 

フッフッフ…と怪しい笑い声と共にメガネが光った。なんだろう、ニュータイプでも無いのに悪寒が……

 

「それはそうとジーンさん、ガルマ大佐のお見舞いには行きましたか?何やら大佐がジーンさんに会いたがっているそうですけど」

 

グハァ!?

そ、そんな事いきなり言わないでくれ!本当に豆鉄砲を食らったかのような衝撃に襲われた。喉か痛い。

 

「あららスミマセン。でも行かないとガルマ大佐の面子を潰すことに成りかねませんから…ここは我慢してでも行った方が身のため、ですよ?」

 

はぁ……昨日の事を思い出しただけで胃が痛くなる。あれは、キャリフォルニアベースに向かうガウでの事……

 

 

 

 

 

 

 

10月4日23時45分 ガウ攻撃空母機内

 

ホワイトベースの追撃はガルマの負傷で中止になった。追いかけれるガウがあるから行かせてくれ、と懇願した兵が多かったが

 

「ガウ一機分の戦力だけで、ホワイトベースは落とせん…キャリフォルニアベースに戻って態勢を、整えてから…くそっ、痛い……」

 

という訳で引き返したのだが…

 

 

 

ガウの機内にて

 

「おうおうおう!ジーン曹長殿ォ!テメェ、どの面提げてここにいるんじゃ!!!」

「貴様ぁ~!ガルマ様に、なんちゅうことしてくれたんじゃあ!」

「俺たちが直々に『修正』してやらんとなぁ?」ボキボキ

 

ガルマの(自称)親衛隊に目を付けられていた。

まぁ、言いたい事は分かるけどさぁ……ほならね?あんた達が助ければ良かったとちゃいまんの?

 

「俺たちが助ければ良かったなんて顔しやがってぇ!修正してやる!!」

 

げぇ!なんでバレた!うわやめろ俺は死ぬ程疲れて

 

「そこまでだ!これ以上騒ぎを起こすなら軍法会議に掛けられるものと思え!」

 

 

「し、シャア中佐……」

 

シャアの一喝により、場の空気が一変する。

 

「ッ……!命拾いしたなぁ曹長、飼い主様のお出ましのようだ。お前ら、行くぞ」

「おっ、覚えてろ!」

「お前は絶対、アフリカ送りだからな!」

 

ズカズカと歩いて行く三人組に鋭い視線を送る中佐。背中から殺気のような物が見える。その殺気が神経にチクチクと刺さって痛い。

 

「全く…威張り散らしていた男は、ジーンと同じ曹長じゃないか。良くもまぁあんな大事が言えるな」

「でも口には出さずとも、他の兵士からの視線は結構痛いですよ?皆、同じ事を言いたいんでしょう」

 

本当に皆からの視線が痛い。怒りを我慢しているのが分かるぐらい顔が赤い人もいれば、ダロタみたいに顔面蒼白になってる人もいたしなぁ。

流石に真紫色だったのはダロタだけだったが。

 

そういえばシャアはガルマの暗殺を企てていたっけ。俺に阻止されてどう思っているのだろうか…?

 

「ジーン、少しだけいいか?」

「はっ、何でしょうか?」

 

くるのか?来るのか?

 

「他の兵には言わないでくれ」

「承知しました」

「……正直、ジーンがガルマを蹴飛ばした時、余りの衝撃に顎が割れそうに外れそうになった。そして…大きな声で笑ってしまった」

 

 

 

「わ、笑った…のですか?」

「あぁ、通信回線を咄嗟に切れて良かった。あの後、腹が捩れる程に笑ったよ」

 

腹が捩れる程?原作より笑うシャアって……ガンダムさんのシャアぐらいか?

 

「いやぁ、あれは、状況が…状況だから、仕方…ない…ククク……駄目だ、思い出しただけて笑いが」

 

ハッハッハと笑い出したシャアに、周りにいた兵士達が一気に視線を向ける。そして皆がみんな、固まってしまった。ようやく笑いの収まったシャアは話を続けた。

 

「まったくだ。全く君という男はとんでもない事をしてのけるな。私が上官じゃなかったら、あの三人組の言うとおりアフリカ戦線送りだな」

「ちょっと中佐ぁ……」

「すまんすまん。だがジーン、君がガルマを蹴飛ばさなかったら、確実にガルマはガンダムのビームサーベルに串刺しになっていた。君はガルマを救った、それは事実だ。ガルマもそう怒らないはずだろ、誇っていい」

「そうですかねぇ」

 

「これで良かったのか…?」

「なんか言いました?」

「何でもない、基地に着くまでゆっくり休め」

「はっ」

 

 

 

 

 

 

……というような事があった。

気が進まないが、行かねば。行った後は野となれ山となれどうにでもなれ、ってやつだ。

 

基地内病棟へ向けてスイスイと歩く。流石北米の一大拠点なだけあって人もかなり多い。

が、何故かスイスイ歩ける。どうしてかというと、皆が皆サッと一歩(うわぁ…という顔をしながら)退くのよね。いつの世も噂という物は広まるのが早い事を実感した。

病棟に着くと、ガルマの副官ダロタが「お待ちしていました」と言わんばかりに受付横で突っ立っていた。

 

「ジーン曹長、お待ちしていました。こちらです」

 

ダロタについて行き、案内されたのはそれなりに豪華な個室だった。まさか専用病室…?何だか縁起が悪そうだが、口には出さないようにしなくては。

 

「わざわざここまで来てもらってすまない。何せ、こんな状態になってしまったからな……」

 

ガルマを見ると、頭からつま先までグルグルと包帯が巻かれている。ミイラがパジャマを着ているかのようだ。

 

「やはりこの包帯が気になるか?」

「はい…」

「君に蹴っ飛ばされて助かった代償、とでも言えばいいのかな?あぁ、蹴っ飛ばされた事はかなり驚いたが、別に君を叱責する訳ではない」

 

ホッ、とりあえずアフリカ戦線送りは無さそうだ。

 

「君に渡したい物がある。ダロタ、すまないが」

「はっ」

 

ダロタが取り出したのは小さく薄っぺらい深緑色の箱。俺の目の前で箱を開けると、中にはメダルのような物が入っていた。

 

「ジオン特別勲章だ。受け取ってくれたまえ」

「え?と、特別勲章ですか???」

 

 

 

ジオン特別勲章とは

ジオニストの間では有名なジオン十字勲章の2つ下にあたる勲章。2つ下とはいえ普通なら、一回の戦闘でMS1個中隊を一人で返り討ちにしないと貰えないぐらいの代物である。(必ず貰えるとは言ってない)ちなみにジオン十字勲章だと更に+2個小隊と戦艦5隻が最低ラインだったかなぁ……二階級特進の方が確率的に高い。

 

 

 

「これでも君達の上官に譲歩して貰った結果だからな。あろうことか兄さ…ドズル中将は二階級特進を進言したからな」

 

あの人ならやりかねんな……ガンダムも倒してないのにいきなり中尉にでもなったら、これ以上周りの視線に耐えなれない……と俺は思う。

 

「まぁそれはともかく。ジーン曹長、改めて礼を言わせてもらう。君のおかげで助かった、ありがとう」

「…光栄です!」

 

ビシッと敬礼を決める。やはりガルマはこういった事が出来る人間だから皆に愛されるんだろうなぁ。やっぱりガルマにはザビ家の長男長女には欠落した人徳という物があるんだなぁ。

 

「…さて、それでは本題に移るとしよう」

 

ガルマの声のトーンが少し下がる。さっきの話からすると、ドズルと話をしたようだから、ついでに指令でも下ったのかな?と、そこに

 

「そろそろ私も会話に参加しても大丈夫そうだな」

「シャアか?丁度いい、君の部隊への指令が下ったから、伝えようと思ったんだ」

 

チョワ!いきなりの登場にビックリしてしまった。シャアはいつもの衣装と両手には花束を持っていた。

 

「中佐、何時からここに?」

「そうだな…『わざわざここまで来てもらってすまない。』のところからだが」

「ほぼ最初からじゃないですか!」

 

ガルマが笑う。ダロタは吹き出しそうになるが、我慢できたみたいだ。

 

「ガルマ、無事で何よりだ」

「ありがとうシャア。やはり君の部下はとても優秀だな」

「そう言って貰えるとありがたい」

 

ガルマは貰った花束を花瓶に移すよう、ダロタに指示を出した。その後に咳払いを一つして

 

「それではドズル中将に代わり、今後の木馬討伐についてを話そう。君達Aー12部隊は引き続き、木馬の追跡を行ってもらう。ただし…」

 

 

 

 

 

「木馬の撃破を禁ずる。以上だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

へ?ホワイトベースをやっつけるなってこと?今までの苦労とは一体……?

 

 

 

何かを察したシャアが口を開く。

 

「あえて聞くが、木馬を撃破してはならん理由はなんだ?」

 

「元々、木馬はサイド7からジャブローへ行こうとしていたが、君達がそれを阻んで北米へと進路を変更させた。今は北太平洋を横断してアジア方面に向けて進んでいるが、最終的な目的地はやはりジャブローになるだろう」

「そこで我々が木馬を追いかけて、ジャブローの入り口を見つけ出そうという訳か」

「そういう事だ」

 

流れるような説明への導入、俺でなきゃ見逃しちゃうね。

 

「しかしガルマ、木馬が囮だったらどうする」

「その可能性は無いさ。何故ならガンダムに備わっている学習装置のデータを、量産型MSにインプットしなければならないからな。それに資料によれば今の木馬は正規の武装ではない。このまま運用を続けるのなら必ず、ジャブローで改修を受ける事になるだろう」

 

「ふむ、確かにそれならジャブローへ行く確率は高そうだが……何事にも絶対という事はない。アテが外れたらどうするつもりだ」

「…正直、V作戦のデータは手に入ったのだから、ジャブローの入り口探索以外のメリットがない。しかし、今や木馬は連邦のプロパガンダの広告塔になっている。このまま野放しにはしたくないのも事実だ」

「だが、地上軍には木馬をずっと偵察できる体力も、追い返す戦力もない。だから我々が追いかける。そうだろ?」

「流石だ、シャアは分かっていたか」

 

要するに「いっぱい動ける我々が木馬にちょっかいを出しつつ、ジャブローの入り口を探す」っていう作戦か。IFルートでもやる事はさほど変わらんのな。

 

 

 

ここでドアのノックが鳴り、軍医が検診に来た。

 

「ガルマ様、お身体の具合は如何でしょうか?」

「やっと一息ついたところだ。まだ動かせんが、手足があるだけで有難いと思わんとな」

「左様でございますか」

 

ニッコリと笑う軍医はこちら側に向き、物腰柔らかそうに退室を促し、それに従った。

 

 

 

 

 

日がテッペンに昇り、少し傾いた頃に病棟から二人は出てきた。10月の初頭だが、まだ意外にも暑い。これもコロニー落としの弊害なのだろうか。

ここでふと、シャアが持っていた紫色の花束が気になり話しかけてみた。

 

「しかし中佐、花束なんて購買部で売っていましたっけ?」

「あれか、あれは物売りから買ったものだ」

「へぇ物売り……」

 

物売りというのは、基地の入り口近くで出入りする兵士相手に商売をする人達のこと。無論、基地内には入れないが、たまに購買部では買えないものを売っていたりするので、利用する人は意外に多い。原作だとベルファストで出会ったミハルがそれに当たる。まぁ、ミハルみたいなスパイも居るから気を付けなきゃいけないけど。

 

「ちなみにあの花って、何の花です?」

「確か…サフランとか言っていたはずだが」

「へぇ、サフラン…あの花が」

 

サフランライスとか聞いた事あったけど、あれがそうなのか。

シャアが歩きながらこちらを向いて話す。

 

「さてジーン、そろそろシャトルが着く頃合いだ。そちらに行くぞ」

「え?シャトルって、定期便で来るやつですか?」

「そうだ。そういえばジーンに伝えてなかったな」

「一体何があるんです?」

「……行けば分かるさ」

 

素直に教えてくれたっていいのに…

まぁいいや、定期便の中身を観に行くとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガルマ様、約束して頂けるのですね?」

「あぁ、MSの出撃は金輪際しない」

「ほ、本当ですね!?」

「勿論さ」

 

 

 

あぁ、やっと落ち着きを取り戻してくれたのか!ガルマ様が負傷したと聞いた時は心臓が止まったかと思った。軍医から全身打撲にむち打ち、果てには軽度の脳震盪と言われた時は血液が全部抜けたかと思った。そして、まるでミイラみたいに包帯をグルグル巻きにされたガルマ様を見たとたんに神経が抜き取られたかと思った。

 

しかし!やっと!ついに!前線から身を引いて、後方でドッシリと構えてくれる日が来るとは……

 

 

 

「ガルマ様!これからもダロタ、ガルマ様の副官としてサポートさせて頂きます!」

「ありがとうダロタ、とても心強いよ」

 

 

 

 

あぁ……余りの嬉しさに背中から翼が生えて飛んで行きそうだ……

 

 

「これからも、後方でのサポートを頼む」

 

 

 

ん?ん?ん?ん?ん???テメェ今なんつった?

 

 

「え?後方…ですか?」

「そうだ、いつも通り後方で」

「いやでもさっき出撃しないと……」

「あぁMSでは出撃しない」

 

 

 

 

???????

 

 

 

 

「MSでは地上しか見渡せないからな。しかも障害物があると有視では限度がある。だから……」

 

 

 

 

 

だから??????????

 

 

 

 

 

 

 

 

「出撃はドップに限る!!」

 

 

 

 

バタン!




氏名 ダロタ 階級 中尉 役職 ガルマ大佐の副官

病名
   PTSD(軽度)
   過労
   ストレス性胃潰瘍

備考
   胃薬を規定服薬量の二倍服薬している。
   薬物乱用疑惑あり、特別病棟にて経過観察。

ガルマの暗殺を

  • 阻止すべき(生存IFルート)
  • 見逃すべき(死亡原作ルート)

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